魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~   作:タナト

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第33話 希望のピース 後編

 

「搭乗型!?そ、それって乗るってことですよね!?」

 

 あまりの動揺に、急に博士が現れたことも気にせず、頭痛が痛いみたいな聞き返しをしてしまう一実だった。

 

「そうとも!」

 

「ふわあぁぁっ!? それって人類の夢ですよ!」

 

 胸を張り、誇らしげに宣言する博士に、飛び上がるリアクションで応える一実。彼女はそれまでの不安が吹き飛ぶレベルでテンションが上がっている。

 

「もちろん、歩けるんだよね!?二足歩行だよね!」

 

「おお、さすがツボを押さえてるね!もちろん、勇者をそのまま拡大した動きが可能になっている! ホバー移動とかでごまかしたりはなしさ!」

 

 一実の質問は、悠夜の期待していたものだったらしく、彼も嬉しさを隠せない声で答えた。

 

「……?すごいのは認めるが……そんなにか?」

 

「このサイズのゴーレムはあっちでも珍しいですし、できたとしてもデカいだけになっちゃいますからね……すごい代物ですよ」

 

 異常なテンションの向上を見せる一部の面々を見て、教官は理解しきれないとでも言うような息を吐く。レミアの方は妖精ならではの視点で巨人を評価していた。

 

「何言ってるんだよ教官!30mの巨大ロボットだぜ?ああならない方がおかしいって!」

 

 一実と同じ側だった朝陽は、彼女たちの様子を誇らしげに眺めていた。

 

「さすがにそれは、ズレてると思うんだけど、まぁ……ワクワクはするよね」

 

 冷静な翼は、初めて組み上がった巨人を見たときの心のざわめきを思い出す。その威容は理屈を超えた感動を与えてきたものだ。

 

「これ、翼さんが乗るんですよね?朝陽さんも一緒に動かす感じですか?」

 

「ええ。勇者が制御ユニットとして頭部に入って、魔法少女がパイロットとして胸部のコクピットに乗り込む形式で、2人で動かすんだよ」

 

 一歩踏み込んだ質問をしてくる一実は、訊かれる博士にとっても、教え甲斐……もはや自慢しがいがある相手だと言えた。

 

「“いかにも”ですね!それで見た目通りのパワーが出せると……」

 

 一実が次に期待するのは、巨大な全長にふさわしいパワーだ。エクスマインのもともとの大きさから考えて15倍ぐらいは欲しいところだが……。

 

「もちろんよ! このインテグレーション・ボディのコンセプトは一体化! 魔力的なリンクを行いながら、1つの身体を動かすことで魔法少女と勇者の魔力共鳴を最大限に引き出すの。さらにボディに載せたサブ・サーキットに通して増幅すれば、指数関数的に増えた魔力による攻撃が可能よ!!」

 

「なるほどです! 確かにこれがあるなら、鋼魔も何とかできそうですね!」

 

 悠夜が目に見える希望と形容したもの。勇者という頼もしい存在がそのまま何十倍にも大きくなったようなもの。確かにこれがあるなら、理屈とは別に希望を感じてしまうというものだ。そんなことを一実は思った。

 

「でもね、まだ克服できていない弱点があるの……」

 

 ひとしきり自慢を終えた後、冷静になった博士は明らかに気分を落として話す。

 

「なんですかそれ……?ひょ、ひょっとしてまだ実際には起動できてないんですか?」

 

 一実は、そうすごいものには手が届かないお約束から、そんな予測を口にする。

 

「いや、起動そのものはできるんだ。ただ、動かし始めるときに莫大な魔力を入力する必要があってね」

 

 困った困ったとでも言いたげな様子で博士は頭をさすった。

 

「ここにいるシンセリーが【インフレア】でブーストしないと動かないレベルなの!」

 

 本当に背の高い博士が、一実から見て十分高身長な翼の頭をポンポンと叩く。

 

「なるほど」

 

「おまけに常に最大出力で動かさないといけないから、必殺技しか使えない状態ですぐガス欠になっちゃうし」

 

「な、なるほど……」

 

(だいぶまずくないか……?)

 

 一実はエクスマインとシンセリーの攻撃規模を以前に目撃した。ビルを、街を、敵もろとも吹き飛ばすような圧倒的な力。あれがさらに増強したものをポンポン飛ばすこと、そういうものをこそ求められているところがあるのだろうが、それしかできないというのは問題だろうと分かる。

 

「そこで、あなたの出番……」

 

「えっ……?」

 

 急に話を振られて、一実はきょとんとしてしまう。

 

「あなたが最初のときに受けた検査の資料を見たけど、魔力量と魔力出力ともに歴代一番なの。その出力をもってすれば、素の状態でインテグレーション・ボディを動かせる可能性が高いの!」

 

「はぁ、そうなんですか?」

 

 魔力というものについて、2回の実戦を通して体感的になんとなく掴み始めていたところで、その詳細を理解できているわけではない。そういうものを学ぶためにここにきているというところもある。なんとなくすごいと褒められていることは分かるが、どう捉えるべきかは分からない。

 

「魔力量を水槽、魔力出力を蛇口だって考えましょう。魔法少女の間でも、水槽が大きいけど蛇口が小さいから一度に出せる量が少ない子と、逆に水槽は小さいけど一度に出せる魔力が大きい子もいますね!」

 

 一実が怪訝そうな顔をしているのを察して、レミアが解説してくれる。

 

「一実はその水槽も蛇口も誰よりも大きいってことだ。僕も数値を見たときは驚いたよ」

 

「だ、誰よりも!? ……そ、その……翼さんよりもってこと!?」

 

 まずシンセリーが比較対象に出てくるのは筋金入りと言える。一実が恐る恐る視線を送る。翼は何度もうなずいていた。

 

「えへ、えへへへへ……そっかー、私って才能あるんだー!」

 

 学校の勉強ではまったくと言っていいほど人の上に立つ経験がなかったので、一実は一気に浮足立ってしまう。反射的に卑屈になってしまいそうにもなるが、翼が肯定してくれている手前、謙遜することもできず、素直に嬉しくなってしまう。

 

「調子に乗るな! お前が動かせるかもしれないという予測は、お前が魔法少女として、戦士としての研鑽を積むことが前提だ!! ヘラヘラしている余裕はないぞ!」

 

「ひゃ、ひゃいっ!?」

 

 とはいえ、一実という人間に浮ついている余裕はなく、教官から釘を刺されてしまう。

 

(ああ、どうしよう……教官の言う通り気を引き締めないといけないんだろうけど、浮かれる自分が止められない……!)

 

「ねえ、一実ちゃん、私と競争しない?」

 

「競争ですか?」

 

 博士からの突然の提案を受け、一実は戸惑ってしまう。世界レベルの超天才と競争しようと言われても、勝負になる分野が思い浮かばないのが一実という人間だった。正直走るのだって普通に負ける気がしている。

 

「そう、今2号機をノクストス用で計画してるの。だから、あなたがパイロットになれるぐらい強くなるのが早いか、私が2号機を完成させるのが早いか、競争しましょう?」

 

「ママ、いいねそれ!一実!一緒に頑張ろうよ!」

 

「それはいいんですけど……完成までどのくらいかかります?」

 

 魔法少女として、戦士として己を鍛えること。命がかかる事柄である以上、どうあっても手を抜くことはできない。しかし、目標がはっきりしていた方が張り合いが出ることもあるだろう。一実は乗り気になっている悠夜の反応を見て、そう考えた。

 

「1号機を作ったときは1年ぐらいかかったんだけど、共通機構とかノウハウもあるから3か月ぐらいで作れそうかな」

 

「いいじゃないか!ならこっちは1か月でものにしてやろう。地獄を見せてやるから覚悟しておけ!」

 

「え、えぇっ!?」

 

 30m級の巨大ロボットがどのくらいの期間で作られるものなのかなど知る由もない。自分がどのくらいの期間でパイロットができるまで成長できるかも分からない。しかし、利害の一致したミサト教官も一実の背を叩いて圧を掛けてくる。

 

(正直、そもそもそこまでの伸びしろが私にはないかもしれない……でも……)

 

 戸惑いながらも、一実は改めて巨大なエクスマインを見上げた。目に見える希望、そんな表現が大げさではないと感じるほど、それには価値があるとも思えていた。

 

「頑張ります! 私にできるすべてをかけて!」

 

「その意気だよ、一実!」

 

「うん、私もなるべくサポートするよ」

 

 悠夜や翼も一実の背を押してくれる。道は険しそうだけど、絶対に進み抜いて希望を掴もう。そう彼女は決意した。

 




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