魔法少女×勇者!!!~愛の魔法と勇気のメカ、掛け算すれば無敵です!!~ 作:タナト
勇者と合流した魔法少女の2人は、格納庫で出撃準備をしていた。
『出現した鋼魔の数は2。一方は大阪、もう一方は新宿区に出現』
「離れてるのか、まずいな……」
翼はアナウンスを聞いて危機感を覚える。こちらも2組に増えたのだから、敵の数が増えたこと自体はそこまで問題ではない。むしろ、こちらの戦力を分断されることの方が危険だ。
『2人とも聞こえるか、陣屋だ。聞いての通りだ。効率を考えれば、星原に大阪、碧乃に東京の方を担当してもらいたいんだが……』
戦術を担当する陣屋がインカムで指示を飛ばしてくる。一実も彼とは顔合わせを終えている。しかし、命令というには歯切れの悪い言い方だ。翼にはその理由が分かるので、一実の顔を見て確認する。
「私と悠夜は大丈夫です。2人だけでもやれます」
一実は翼の意図を汲み取って即答する。隣に立つ悠夜も力強くうなずいている。
「そうだね、私もできると思うよ。でも、命だけは大事にしてね」
戦士としての一実は、その言葉を市民の命を救うことを大事にしろという意味に取るべきかもしれない。しかし翼個人としては、この可愛い後輩を失うことなどごめん被る。何としても生き残ってほしいという思いの方が強かった。
「誰も死なせるつもりはありません。それが私の目指す魔法少女ですから」
翼の心情を知ってか知らずか、一実はやるべきことを徹底してやる、という心持ちのようだった。
「安心しろよ。すぐに終わらせて援軍に来てやるよ」
「無理をするつもりはない。でも一実はもう十分な力を持っていると僕は見ている」
男2人は張り合うような会話をしていた。
「それじゃあ、始めようか……ブローミング・ドライブ……」
「はい、ブローミング・ドライブ!」
魔法少女2人は勇者の後ろに立ち、変身の呪文を唱える。変身という儀式は、彼女たちの心さえも戦士のものへと切り替える。その呪文は、変わることの宣誓だった。
「愛齎天望シンセリー・テルス!」
「愛審聖裁マーシー・リブラ!」
「天巌勇者エクスマイン」
「影光勇者ノクストス!」
『両ペア、カタパルトへ。順次発進してください』
「おっしゃ!とっとと仕事を済ませてくるぜ!」
「なるべく急いで戻ってくるから」
シンセリー・テルスを上に乗せた巡行形態のエクスマインは、格納庫に設けられたレールの上に乗った。
『レール展開、ハッチ解放します』
格納庫の天井が開き、出口に向かってレールが伸びていく。
「発進します」
シンセリーが静かに言うと、その声をかき消す風圧を伴って彼女は射出された。
「相変わらず、すごい勢い……」
「威力、弱めてもらおっか?」
先輩と同じように巡行形態で配置についたマーシーとノクストスは、そんな会話をしていた。
「ううん、大丈夫。早く着くに越したことはないし、最初よりは慣れてきた」
「それは、頼もしいね」
「うん。……射出、どうぞ」
そうしてマーシーも、シンセリーと同じように出撃するのだった。
※
現場は23区内だったため、数分のうちにマーシーとノクストスのペアは反応のあった地域に到着する。
「ギジギジ……ギジャァァァ!」
「ああぁ……し、死にたくない……殺さないでぇ……」
道路の真ん中で、鋼魔獣が若い女性を襲っている。頭をつかんで持ち上げ、そのまま頭からかぶりつこうとしていた。
「させない!」
“ザッシュッ!”
間一髪、マーシーが飛び込んで鋼魔獣の腕を切り落とす。落下する女性はノクストスが受け止めた。
ボトリと落ちた腕は、人間に戻ることもなくそのまま地面に転がった。
「大丈夫ですか?1人で立てますか?」
「は、はい。ありがとうございます……」
マーシーの後方で、ノクストスが助けた女性の状態を確認する。同時に行ったスキャンでも骨に異常はなかったので、そのまま自分の足でシェルターへ向かってもらう。そこでノクストスはふと違和感を覚えた。休日の繁華街だというのに、その場にいた市民は彼女1人だけだった。
「ギギチィッ……」
しかし、巻き込む危険性がないのはよいことだ。それに、目の前の敵への対処が最優先なのは間違いない。ノクストスは敵に意識を集中させる。
その鋼魔獣の姿は、二足歩行のイナゴのようだった。OIDOからデストローカストのコードネームを与えられた鋼魔は細身で、頭部には横開きの顎があり、ガチガチと音を立てている。見ようによっては、より異形になった仮面のヒーローのようにも見える。
「何なのコイツ……」
まだ経験を積んでいるわけではないので確信は持てなかったが、マーシーはこの鋼魔が今までの個体とは何か違うと感じていた。鋼魔獣は取り込んだ生物の量に比例して巨大化していくため、基本的にデカさ=強さである。その意味では、目の前の鋼魔獣は成人男性より2回りほど大きい程度で、人に似た体型も相まって等身大とそう変わらないように見える。しかし、これまで相対してきた鋼魔と同じ、あるいはそれ以上の存在感があった。
「こっちで観測してみたけど、人間の命を消化中ってわけでもないのにエネルギー密度が高い。確かに異常だ」
ノクストスはマーシーの違和感を共有し、分析をかけてみる。
「ギギィッ!」
イナゴらしく大きく発達した脚部を持つデストローカストは、不意に、マーシーが吹き飛ばされるかと思うほどの風圧を巻き起こしながら彼女に迫ってきた。
“ガジンッ!”
「させないぞ……」
だが、そこはスピード自慢のノクストス。マーシーと敵の間に割り込み、取っ組み合いになる。
デストローカストの上半身にはもともと4本の腕が生えており、そのうち1本を斬られている。しかし、そんな状態でもノクストスに力負けしないだけのパワーがあるようだった。
「マーシー、今のこいつには人間が含まれていない!……とりあえず僕がやってみる」
単に人間を取り込み始める前にマーシーたちが到着したのか、それとも考えたくはないが、すでに消化を終えたのかは分からない。ただ、助けるべき人間が敵の体内にいないのなら、ノクストスも出力や武装をフルに使って戦える。ならばマーシーが前に出る理由はない。
“ガインッ!”
「くっ……!」
デストローカストは、ノクストスに両手を押さえられていない残りの腕で、相手の胴体を殴りつけてくる。
ノクストスは怯まずに、右足で蹴り返す。
「ギギィ……!」
デストローカストは弾かれたのか、自ら退いたのか、ノクストスと距離を取る。
“シューン……!”
(再生した……!?)
デストローカストは見せつけるようにして、最初に斬られた腕を再生している。
(再生する余裕があるほどのエネルギーを内包しているのか……)
ノクストスは、生まれたての成長途中にある個体とは思えない圧力を敵から感じた。すでに相当数の人間を吸収し、消化し終えているのではないかという悪い予感が強くなっていく。
“ジュギン!”
「ギギィ……!」
さらにデストローカストは腕の先にある鉤爪を伸ばし、刃と言える長さにする。
「お前がやる気なら、付き合ってやる!」
敵の動作に応えるように、ノクストスは腰に差した刀型の武装『裂光』と『斬影』を抜いて構える。
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