先生がいないキヴォトスから来た一般生徒(覚悟ガンギマリ)   作:かまくら御前

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   ──前は嫌いだった抗争が愛おしく感じる。

 死が感じられない銃弾に、骸ではなく気絶して動かない少女。罵声を吐き、焦燥を口にするその感情。前の世界と比べると、まるで天国のようだ。

 でも、私はこの天国にいて良いんだろうか……人を殺した。射出される弾丸は身体を貫き風穴を開け、振り下ろす刃は肉を裂く。

 何人殺したんだろう、どれだけ手を血で染めたのだろう。分からない……それでも、殺した感触は覚えている。

  私は罰を受けるべき人間だ、ドス黒い血と罪に塗れた救いのない人間。でも、それでも──
 


一般生徒、猫の手となる

 

  「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」

 

 あの会話の後、私達は襲撃に来た【カタカタヘルメット団】拠点を逆に襲いに行った。蹂躙と言っていいほどの被害を出したので、暫く襲ってくることは無いだろう。

 

 戦闘中、ポンポンポンポンと宙を舞い悲鳴を上げる少女を見るのは、少し懐かしさを感じた。

 

  「それにしても……凄いな先生。戦術指揮なんて出来たのか、戦いやすさが段違いだった」

 

  “ははは……ありがとう。そんなに褒められると、照れるね“

 

 敵の配置、仲間との連携、それも初対面の。そのどれもが今まで戦闘してきた中で段違いのやりやすさだった。私の世界の風紀委員会時代に先生がいてくれたのなら、ゲヘナ中の不良を殲滅できていただろう。残念だ。

 

  「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」

 

  「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」

 

  「うん!先生のおかけだね、これで心置きなく全力で“借金返済“に取り掛かれるわ!」

  

  “借金返済って?“

 

  「……あ、わわっ!」

 

 しまった、と言う様子で慌てる黒見セリカ。

 

  「ああ、そう言えば。アビドスには9億の借金があったな、忘れていた」

 

  ……何故ここまで借金が重なったのかも私は知っているが、そちらは言わないほうがいいか。言ったところでどうすることもできないからな。

 

  「!?何で、アンタが知ってるのよ!」

 

  「うへ〜、それはおじさんも気になるねぇ。おじさんの容姿も知ってたみたいだし」

 

 黒見セリカと小鳥遊ホシノは、疑念の顔を浮かべ始めた。

 

 アビドスの借金、多くは広まっていない。別世界から来たくらいじゃ、説明にはならないか。

 

  「私はこれでも、ゲヘナでは風紀委員をやっていてな。その時に、ヒ、んん、委員長から聞いたことがある。アビドスの借金、そして……“暁のホルス“」

 

 聞いていた性格と違うのは驚いたが、まあ“本質“はどうやら変わっていないらしい。

 

  「暁のホルス?先輩、そんな中二病みたいな名前で呼ばれてたの?」

 

  「うひゃぁ!?おじさんの黒歴史を、皆の前で言わないで欲しいなぁ」

 

  「そうか……それは失礼なことをした」

 

 黒歴史、後輩も知らないとは。どうやら余程“変えたい“過去のようだ。

 

   ──私と似ているな。

 

  “えっと、借金は分かったけど。借りた理由は何なのかな?“

 

  「借金をすることになった理由ですか?それは……数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。学区のいたる所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜り続けてしまい」

 

  「それをどうにかするために、多額の借金を負ったと……」

 

 まあ、それだけでは無いのだが。

 

  「……はい。最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。しかし砂嵐は毎年更に巨大な規模で発生し……学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化の一途を辿りました……」

 

  “成る程……分かった。辛いこと話してくれてありがとう。私も、その借金返済を手伝うよ“

 

  「そ、それって……あ、はいっ!よろしくお願いします、先生!」

  

  「へえ、先生も変わり者だね〜。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」

 

  “スゥも良いかな。私が勝手に決めちゃったけど“

 

  「問題ない。先生の意向に従おう」

 

  “ありがとう“

 

  「ちょっと!私は認めないわよ!!」

 

 今まで沈黙を貫いていた黒見セリカだったが、何を思っているのか私達の助けは認めないと声を荒げた。

 

  「何故だ?黒見セリカ。9億の借金、猫の手も借りたいだろう?」

 

 それに、聞いた話。シャーレはかなりの強権を持っている。そんな組織に属している先生が助けてくれるんだ、返済の目処は立つつかもしれない。

 

  「そうだよ〜、セリカちゃん。確かに先生がパパっと解決できる問題じゃないけどさ。他になにかいい方法があるわけじゃいよね〜。それとも、セリカちゃんはなにかいい方法があるのかな〜?」

 

  「う、うう……だ、だって!この学校の問題は、ずっと私たちでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んで来るなんて……私は認めない!!」

 

 感情が爆発したのか、ダッ!と集まっていた教室を出ていく黒見セリカ。

 

  「セリカちゃん!?」

 

  「私、様子を見てきます」

 

 十六夜ノノミは、何処かに行ってしまった黒見セリカを探しに後を追った。

 

  「ごめん……先生。セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生達が初めて」

 

  “大丈夫だよ、こんな状況じゃあ人を信用できなくなるのは仕方がないからね“

 

  「あそこまで昂る感情。余程借金返済を、真摯に取り組んでいる証拠だろう。怒りを出す道理はない」

 

  「ん、ありがとう」

 

  「えっと……では、ノノミちゃんとセリカちゃんもいなくなってしまいましたし、今日は解散しましょう」

 

  “うん。分かったよ“

 

  「了解した」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  「いらっしゃいませ!柴崎ラーメンです!何名様ですか?空いてるお席にご案内いたしますね!」

 

 一夜明け、私達は黒見セリカがバイトをしているらしい柴崎ラーメンと言う店に来ていた。入って早速、黒見セリカを見つけると、営業スタイルに元気な声を上げ客を歓迎している。

 

  「いらっしゃいませ!柴崎ラーメンで……」

 

  「随分と様になっている。まるで戦場に慣れ始めた戦士のようだ」

   

  「わわっ!?」

 

 声をかけた客が私達だと気づいた黒見セリカは、驚愕の声を上げ、頬を赤く染める。

 

  「あの~☆6人何ですけど〜!」

 

  「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」

 

  「お疲れ」

 

  「み、みんな……どうしてここを……!?」

 

 遅れて出てくる疑問。見た所どうやら、誰にもここでバイトしていることを言ってなかったようだ。

  

  「うへ〜やっぱここだと思った」

 

  “どうも“

 

  「せ、先生まで……やっぱストーカー!?」

 

 先生は学校に行く途中、バッタリ会った黒見セリカのバイト先が気になり付いて行っていた。それでストーカー扱いされているのだろう。まあ、途中で撒かれていたが。

 

  「うへ、先生は悪くないよ〜。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの」

 

  「ホシノ先輩かっ……!ううっ……!」

 

  「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文を受けてくれな」

 

 厨房からこの店の店主らしき人物犬人が、黒見セリカを窘める。そこから、席に案内された。席に座る際、先生が砂狼シロコ、十六夜ノノミのでチラの隣に座るかの一悶着があったが、私が十六夜ノノミの隣にさっさと座り解決した。

 

  「……すまない。ラーメンと言う食べ物を食べたことがないのだが、オススメは何だろうか」

 

 黒見セリカを弄り倒し、じゃあ注文を、となった時。私がそう零すと、賑やかだった空気が一瞬にして凍りついた。

 

  “え、ええ……“

 

  「……ん、オススメは塩」

 

  「うへ〜味噌ラーメンもいいよぉ。あ、セリカちゃん私は特製味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」

 

  “……私は豚骨かな?“

 

 みんな見事にバラけてしまった。

 

  「そうだな……他も捨てがたいが私は塩にしよう」

 

 だがオススメは聞いたがどの道、()()()()()。一番安い塩ラーメンを選ぶ。

 

  「うひょ~!キタキタ!いただきます!」

 

  「……いただきます」

 

 注文して暫く経ち、配膳されて来たラーメンを啜る。

 

  「どうですか〜?初めてのラーメンは」

 

  「……ああ、美味しいよ」

 

 ()()()()()ラーメンを美味だと嘯きながら啜る。

   

   ──味覚食害、何時なったかすら覚えていない。

 

 最早私にとって食事は、栄養補給以外に見出すものはない虚無の時間になってしまった。

 

 

 

  「ご馳走様」

 

  「いやぁ~!ゴチでした〜、先生!」

 

 食事も終わり店を出る、お金は先生が出してくれた。本当に頭が上がらない。

 

  「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」

 

 外まで付いてきた黒見セリカは、見送りの言葉を発するかと思いきや飛んできたのは罵声だった。余程恥ずかしかったようだ。

 

  「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」

 

  「ホント嫌い!!みんな()()()()──っ!?」

 

  “?スゥ……?“

 

 脳裏に映る最悪の光景。殺気が溢れ出す。聞き捨てならない言葉を聞いた。

 

 冗談のつもりだったのだろう。でも、たとえ冗談だろうの私はその言葉を発することは許さない。真っ赤になる思考、その端に映る黒見セリカの方を見ると、身体を震わせこちらを見る目は恐怖を灯していた。

 

  「ああ……すまない。つい、出てしまった」 

 

 やってしまったと思い、溢れ出る殺気を抑え込み謝罪を口にする。

 

  「い、いいわよ」

 

 震えは止まったようだが、恐怖は未だに消えていない。私は姿を消したほうが良いだろう。

 

  「……一度頭を冷やしてくる」

 

  “まっ、待って!“

 

 背を向け、先生の制止を無視し都市の波に消える。怖がらせるつもりは無かった。君のそんな顔を私に向けてほしくなかった。  

  

   ──大好きだった、彼女に似ている君に。

 




 
 ここでネタバレの無いプロフィールを、ボン!!

 篝スゥ

 年齢:18歳。
 所属:元ゲヘナ学園→new シャーレ。
 部活:風紀委員。
 好きなもの:友達、他は忘れた。
 嫌いなもの:弱い自分、守られる事。

 身長は149cm、顔の造形は風紀委員のモブ。ただ違うのが、所々が欠けたヘイロー、光の灯さない仄暗い漆黒の瞳、目元まで伸ばした白髪に黒のメッシュが入っている。
 
 そして、2本ある朱色の角は片方が粉々に砕け、背中にある翼は片方は無くなり、もう片方は半ばほどまで消滅している。
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