先生がいないキヴォトスから来た一般生徒(覚悟ガンギマリ)   作:かまくら御前

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   ──彼女を思い出してしまう。

 激情家で見栄っ張り、本当のことを上手く言えず思ってもない言葉が出てしまう。でも根は優しく──誰よりも勇敢な彼女の事を。


一般生徒、救出に動く

 

 夜の帳が下りた頃、ネオンに照らされた街を歩く。向かう先は柴崎ラーメン。赤く染まった思考は冷え、学校に帰ろうとしたが帰り道が分からないことに気づいた。

 

  「……会いたくは無いだろうが、黒見セリカに学校への道を案内してもらうしかないか」

 

 もう帰っているかも知れないが、一縷の望みに賭けてみる。そしてもう少しで柴崎ラーメンに着く、といった所で耳に入る爆撃の音。

 

  「!その方角は……!?」

 

 爆撃の発生源、その方角にあるのは柴崎ラーメン。地獄で培った勘が警鐘を鳴らしている。おそらく、狙われているのは……

 

  「黒見セリカ!」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  「何処に行くつもりだ、あのトラック……」

 

 爆心地に着くと辺りは黒煙に包まれていた。黒煙の中にはトラックが停車してあり近付こうとした所、エンジンを吹かし走行し始める。 

 

 そのトラックを追いかけるが止まる気配がなく、つい言葉が溢れる。おそらくあの中に黒見セリカがいるはず、このまま放って置くと面倒なことになるかもしれない。

 

  「この速度での狙撃は得意ではないが……やるしかない」

 

 標的の捕捉、狙うはタイヤ。そこめがけ銃先を向ける。

 

  「対象の移動を予測、風速の計算、偏差の計算」

 

 距離は……大体150mくらいか

 

  「手のブレを修整、オールクリア。Shoot撃て

 

 撃針が雷管を叩き、銃口からはマズルフラッシュ、爆音が静寂に響き渡る。

 

  「ヒット」

 

 射出された弾は見事にタイヤをぶち抜いた。それによりトラックはバランスを失いスピン、横倒れになる。

 

  「くっそ!なんなん──がっ!」

 

 トラックの運転席から這い出て来てた悪態をつく少女の頭を撃ち抜く。助手席にも1人いたがサクッと撃ち倒した。

 

  「沈黙を確認」

 

 これ以上は敵の気配を感じないので、トラックに歩みを寄せる。そして後部扉を開け、荷箱の中に入ると縛られている黒見セリカを発見した。

 

  「ん!んー!」

 

  「分かっている。大人しくしていろ」

 

 縛っている縄を、銃先に付けてある刃で切断。

 

  「ぷはっ!あ、あんた……どうやって此処が……」

 

  「偶然、爆撃の音が聞こえただけだ」

 

  「偶然……そんなのでこんな所まで来たの……?私を助けるために?」

  

  「そうだ」

 

 話している内に、大量の気配が集まって来るのを確認した。このトラックに乗っていた少女の仲間だろう。トラックを破壊したのを気づいたか。

 

  「何で……なんてそこまでできるのよ!私は、あなたにとって嫌な事を言ったのに……!」

 

 私に向けて言ったわけじゃないだろうに、あれはただの事故私はそう思っているのだが。今の彼女にそれを言っても無意味だろう。

 

  「……これは持論だが、私は命より大切な物はないと考えている」

 

 話しながらも銃のリロード、ボルトハンドルを跳ね上げる。空薬莢は押し出され宙を舞い、次弾を装填。来たる敵に狙いを定める。

 

  「親しき者達が死に絶え、一人孤独に虚無を生きるくらいなら……私はみんなと地獄を歩む」

 

 これは、私があの世界で固まった不変の考え。それに、私の命はずっと救われて来た。私を救ってくれたみんなに返すことは出来ないが。その命で、今度は私が誰かを救うバトンを渡す番だ。

 

  「死の恐怖、大切な者を失う絶望。それを私は知っている。だから死にそうな者がいるのなら、たとえ嫌われていようとも必ず助け出す」

 

 黒見セリカ、君が死ぬと悲しむものがいるだろう?それに比べれば、個人の感情なんかは塵以下の価値しかない。

 

  「それに、どうやら勘違いをしている。私は君のことを嫌っていない」

 

  「え……」

 

  『セリカちゃん発見!生存確認しました!スゥさんもいます!』

 

 言いたい事は言い終わり近づいてくる集団に対し、引き金を引こうとした私の耳に聞こえたのは、喜色を感じる聞き覚えのある声だった。

 

  「どうやら来たようだ」

 

  「……あ、アヤネちゃん!?」

 

  「こちらも確認した、半泣きのセリカ発見!」

 

  「!?」

 

  「なにぃー!うちの可愛いセリカちゃんが泣いていただと!そんなに寂しかったの?ママが悪かったわ、ごめんね~!!」

 

  「う、うわああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!」

 

 そうやって声を上げる黒見セリカは顔を赤く染め、目尻には涙が溜まっている。誤魔化すには無理があるだろう。

 

  「泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙拭いて差し上げますから!」

 

 奥空アヤネ、砂狼シロコ、小鳥遊ホシノ、十六夜ノノミ。黒見セリカ救出のためにアビドス対策委員会、総出のお出ましだ。

 

  「あーもう、うるさいってば!!違うったら違うのっ!!黙れーっ!!」

 

  “セリカ、無事でよかった。それに、スゥもここに居たんだね“

 

  「な、何で先生まで!?どうやってここまで来たの!?」

 

  “伊達にストーカーじゃないからね!“

 

 そう言う先生の顔には、見たこともない爽やかな表情を浮かべていた。

 

  「ふ、ふざけないでよ!この変態教師!!」

 

 ……その発言には、同意せざるを得ないかもしれない。今尚爽やかな笑顔を浮かべる先生を見てそう思う。

 

  「うへ、元気そうじゃ〜ん?無事確保完了〜」

 

 さて、再開を喜んでいる所悪いが……

 

  「話は済んだか。そろそろ動くぞ、包囲されている」

 

 前方、重火器で武装したヘルメットを被った集団に、半装軌車に乗って来るFlak41が包囲網を築き、向かって来ている。

 

  「おうおうおう、ホントだ〜。敵ながらあっぱれ……それじゃ〜、せっかくだから包囲網を突破して帰りますかね〜」

 

  「開戦の狼煙は任せろ」

 

  「うへ?何するのさ篝ちゃん」

 

  「見ていろ。……すぅ、標的の捕捉。対象の移動を予測、風速の計算、偏差の計算」

  

 ルーティーンを行い集中を高める。

 

  「姿勢の修整、手のブレを修整。オールクリア」

 

 片膝を付きストックを肩のくぼみに当てる。頬はストックに少し当たるくらい、肘を立っている方の脚の上に軽く乗せる。

 

  「Shoot撃て

 

 引き金を引き、爆音。弾丸が射出されFlak41まで向かう。

 

  「ヒット。標的の“爆破“を確認」

 

 射出された弾丸はFlak41の()()()()()に侵入し、命中。火が吹き荒れそのまま爆発した。

 

  「ヒュウ〜!ナイスショット!さて一番厄介なのも無くなったし、それじゃ……行こうか?」

 

  “指揮は任せて!“

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

 黒見セリカを救出し包囲網を抜けた後、学校に帰還しそこから一夜が明けた。黒見セリカもFlak41の対空砲を食らいはしたが、1日休みある程度は動けるようになっている。

 

  「スゥ、先輩。昨日は……ありがとう」 

 

  「構わない。私も、君に殺気を向けてしまった。謝罪しよう」

 

  「……いいわよ。あれは私が悪かったし。もう、冗談でも言わないわ」

 

 お互いに謝罪を口にする。

 

  「えっと……それでは早速議題に入ります。“学校の負債をどう返済するか“について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は、挙手をお願いします!」

 

  「はい!はい!」

 

 司会を務める奥空アヤネが意見を求めると、黒見セリカは右手を勢いよく伸ばした。

 

  「はい、一年の黒見さん。お願いします」

 

  「……あのさ、まず名字で呼ぶのやめない?ぎこちないんだけど。ってそうよ!スゥ先輩はいつになったらフルネームで呼ぶのをやめるわけ?普通に名前で呼んでくれればいいじゃん!」

 

  「うへ〜、そう言えばそうだね〜。おじさんたち、まだ一回も名前だけで呼ばれたことないや」 

 

 痛い所を突かれた。確かに私はフルネームでしかアビドスの面々を呼んだことはない。堅苦しいのは分かる、でも……

 

  「……すまない。私にとっては、名前で呼ぶことは特別な意味合いがあるんだ」

 

  「それはどんな意味があるの」

 

  「ちょ、ちょっと!シロコ先輩!そう言うのは普通聞かないものでしょ!?」

 

  「ん、でも気になったから……」

 

  「黒見セリカ、構わない。理由が知りたいんだろう?簡単な事だ、私はシャイなんでな親友と呼べるまでに仲を深めた者にしか、名前で呼べないんだ」

 

 これは昔からの癖、変えることは出来なかった。

 

  「教えてくれてありがとう」

 

  「え、ええ……スゥ先輩がシャイってあり得ないでしょ……」

 

  「ま、まあ……良いじゃないですか、本人もそう言っている事ですし。それより、セリカちゃんの意見を聞かせてください」

 

  「分ったわよ。取り敢えず!対策委員会の会計担当として言わせてもらうけど!我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわっ!」

 

 借金は9億以上。毎月の返済額は、利息だけで788万円だそう。確かに、これだと利息の支払いで手一杯だろう。

 

  「このままじゃ、埒が明かない!何かこう、でっかく一発狙わないと!」

 

 ……嫌な予感がする。

 

  「これこれ!街で配ってたチラシ!」

 

 カバンから取り出し、こちらに見せてくるチラシ。それに書かれているのは……

 

  「“ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金“……」 

 

   ──見るからに詐欺と分かるような胡散臭い内容だった。

 

  「これね、身につけるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの3人に売れば……」

 

 ハキハキとまるで名案を披露するように喋る黒見セリカ。その彼女を見るみんなの目には、生暖かい感情が混じっている。

 

  “それは……“

 

  「……小鳥遊ホシノ」

 

  「うへ……分かってるよ。セリカちゃん……」

 

  「……ホシノ先輩、どうしたの?」

 

  「却下〜」

 

  「えーっ!?何で?どうして!」

 

 自分の考えが通ると、心底思っていたんのだろう。信じられないといった声を上げる。

 

  「セリカちゃん……それ、マルチ商法だから……」

 

  「へっ!?そっ、そうなの?私、2個も買っちゃったんだけど!?」

 

 ああ……どうやらもう遅かったらしい。黒見セリカ子猫は鴨にジョブチェンジだ。

 

 十六夜ノノミに慰められている、黒見セリカを見てそう思う。

 

  「えっと……それでは、黒見さんからの意見はこの辺で……他にご意見のある方は……」

 

 その後、小鳥遊ホシノと砂狼シロコが提案を出したが。まさかのどちらともが犯罪の提案だった。

 

 小鳥遊ホシノの案は、登校中のスクールバスをジャックし、アビドスへ転入するよう脅すこと。

 

 生徒が増えれば、毎月学校に納める金額も確かに増えるだろう、そうして学校も大きくなれば議員を輩出することもでき、連邦生徒会での発言権が得られる、成る程いい案だ。それが犯罪でなければ。

 

 そして砂狼シロコ。これは一発アウト。市街地にある中央銀行の襲撃、借金返済どころか投獄され出てこれなくなるだろう。どうやらこの場所にいるみんなの覆面も用意していたらしい、阿呆だ。

 

  「あのー!はい!次は私が!」

 

  「はい……2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見をお願いします……」

 

  「はい!犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!アイドルです!スクールアイドル!」

 

 アイドル?それは、あれだろうか。フリフリの衣装を纏って可愛らしい踊りを踊るあの?そんなもの……冗談じゃない。

 

  「「却下」」

 

  「あら……これも駄目なんですか?」

 

 私が否と言ったと同時、小鳥遊ホシノも同じことを言っていた。どうやら小鳥遊ホシノもアイドルは嫌らしい。

 

  「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大ウケしそうなのに」

 

  「うへ〜こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょ〜。ないわ〜。ないない」

 

  「私も似たようなものだ。本気でやるのなら、私がいると人気なんか出ないだろう」

 

 こんな見た目だ、出るほうが可笑しいだろう。その点、小鳥遊ホシノは美少女と言って差し支えが無い。だから、自虐している理由が分からないのだが。

 

  「あの!スゥ先輩はなにか意見はありませんが?」

 

  「私か?そうだな……傭兵や賞金稼ぎなどしか思いつかない。すまん……」

 

  「い、いえ!謝らないでください!今までで一番まともな意見ですよ!」

 

  「そうか?そう言って貰えると助かる」

 

 私だけだったら銃や弾丸を作製する事が出来るのだが、皆で出来ることとなるとこれくらいしか思いつかない。

 

  「うへ〜。じゃあ、意見も出そろったし。先生に決めてもらお〜」

 

  “私?そうだね……アイドルとかいいんじゃない?私一度やってみたかったんだよね、プロデューサーに!“

 

 どうやら1番最悪な択を選んだらしい。変態疑惑がかかっている先生だ、候補には入れているだろうとは思っていたが、1番最初に選ぶとは……

 

  「やった~!やりました。それじゃあ皆さんの衣装作りに取りかかりましょう!」  

 

  「ほ、ホントに?これでいいの?」

 

  「い……」

 

  「い……?」

 

  「いいわけないじゃないですかぁ!!

 

 堪忍袋の緒が切れたのだろう。奥空アヤネは怒鳴り声を上げ、ちゃぶ台をひっくり返した。

 

   ──いや何故、こんな所にちゃぶ台が?

 

  「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

 

 その後、対策委員会の面々と先生は奥空アヤネに説教を食らい、会議は終了した。

 





  
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