先生がいないキヴォトスから来た一般生徒(覚悟ガンギマリ) 作:かまくら御前
着実に近づいてきています、黒幕へと。この地であなた達は何を見て何を聴くのでしょう?
もしかすると、案外簡単に見つかるかも知れませんね。その時にまた、あなた達に問いましょう。
“便利屋68?“
「ああ、ゲヘナでは有名な何でも屋だ。構成員は4人。社長、陸八魔アル。室長、浅黄ムツキ。課長、鬼方カヨコ。平社員、伊草ハルカ。美食研究会、温泉同好会と並んで風紀委員の頭を悩ませる質の悪い連中だ」
便利屋は撤退、私はアビドスの面々に彼女達の説明をしていた。
「彼女達の指針は真のアウトロー。まったく……馬鹿げだことを目指している」
“アウトロー?そんな子達には見えなかったけど……“
「うへ〜、そうだね。ピンク髪の子、社長ちゃんだっけ?襲って来てたけど、おじさんも悪い子には見えなかったかな〜」
「……陸八魔アルはゲヘナの間でいい子ちゃんとして知られている」
アウトローに憧れているなんてのたまってはいるが、根はおそらくゲヘナで一番の善人だろう。
“やっぱり、そうなんだ“
「その性格故に、受けた依頼は真摯に取り組む。今回もそれが災いしたな。流石の彼女も、襲撃を仕掛ける学校の生徒だと知ってただろうに」
少し前まで仲良く喋っていた人達の学校に襲撃に行くのは、善人の彼女には堪えただろう。
今回もだが、何故か彼女達は毎度の如く騒ぎを起こす。ちゃんと依頼を達成したことなんて、1割も無いんじゃないだろうか?
「襲撃して来た彼女達のことも分かりましたし、一度解散しましょう。私は気になることがありますので少し、調べてみます」
“うんじゃあ、そうしようかな“
「了解した」
◇◆◇
日は巡り翌日。教室には全員集まっている。
「全員揃ったようなので始めます。昨晩、私達を襲った方々についてはスゥ先輩のおかげで判明いたしました。それとは別にもう一つ、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです」
“何か分かったの?“
「はい。先日の戦闘で手に入れた戦略兵器を分析した結果……現在は取引されていない型番だということが判明しました」
「もう生産してないってこと?」
「それをどうやって手に入れたのかしら」
みんな疑問に思っているようだが、そういったものが流れて来るのは一つの場所しか無い。
「“ブラックマーケット“だ、そこしかない」
生産停止のものから違法なものまで、何でもござれの無法地帯ブラックマーケット。連邦生徒会ですら手出しできず、あくどい連中が跋扈している。そんな場所。
「はい。スゥ先輩の言う通り、ブラックマーケットでしょう。それに便利屋68も、何度か騒ぎを起こしていると聞きました」
「では、そこが重要ポイントですね!」
「はい。2つの出来事を探すのも、一つの方法かもしれません」
「よし、じゃあ決まりだね〜。ブラックマーケットを調べてみよう。意外な手がかりがあるかもしれないしね」
ああそうだな……もしかしたら君達は一連の騒動。その黒幕の足掛かりをブラックマーケットで見つけれるかもしれない。
そうなった時──君達はどうする?
◇◆◇
「う、うわああ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!!」
喧騒賑わうブラックマーケット、そこに響く銃声と悲鳴。着いて早々、何事だろうと音の発生源を見る。
そこには鳥?の形をしたバックをからった、小綺麗な制服に身を包む少女が、追いかけてくるスケバンから全速力で逃げていた。
「ん?こっちに来るぞ」
「わわわっ、そこどいてくださいー!!」
少女は止まれないのかその勢いのまま、砂狼シロコと激突した。ドン!と鈍い音を立てて少女は尻餅をつく。
「い、いたた……ご、ごめんなさい!」
「大丈夫?なわけないか、追われてるみたいだし」
少女が来ていた後ろ、スケバン達も追い付いてきた。
「なんだお前らは。どけ!アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」
「あ、あうう……わ、私の方は特に用はないのですけど……」
「カツアゲか?こんな所に来るトリニティの生徒は珍しいからな」
トリニティ総合学園、キヴォトスにあるマンモス校の一つ、言うならばお嬢様学校。つまり、お金持ちだ。
「そんなちっぽけなものと一緒にするな!私たちはそいつを拉致って身代金を頂く算段なんだよ!」
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろ。どうだ、お前らも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は──「その前に」……?なんだよ」
「自らの安全を確保したほうがいいぞ」
「ん?」
スケバン達が馬鹿みたいに自分達の計画を説明している間に、砂狼シロコと十六夜ノノミは気取らせないよう背後に周っていた。そして銃を鈍器の様に振り被る。
「うぎゃあっ!」
ボコ!という音とドガァッ!という音がスケバン達の頭から鳴り響き悲鳴を上げ崩れ落ちていく。
“うわぁ……痛そう……“
ピクピクと地に伏し痙攣しているスケバン達を見て、先生は顔を引きつらせる。
「悪人は懲らしめないとです☆」
「うん」
「あ……えっ?えっ?」
助けられた筈の少女も、これには理解が追いつかないらしい。放心し始めた。
数分程そうしていただろうか、止まっていた体は動き出し自己紹介を始めた。
「わ、私の名前は阿慈谷ヒフミです」
「私は小鳥遊ホシノよろしくね」
「ん、砂狼シロコ」
「十六夜ノノミです〜!」
「黒見セリカよ、よろしく」
『奥空アヤネです!よろしくお願いします!』
「篝スゥだ」
“先生だよ。よろしくね、ヒフミ“
少女の名前は阿慈谷ヒフミと言うらしい。阿蘇谷ヒフミは頭を下げ、私達に感謝をしてきた。
「あ、ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした……」
「それはいいんだが、何故トリニティの生徒がブラックマーケットにいる。目に見えて分かるだろう、先程の光景になることが」
助けるのはいいのだが、何故トリニティの生徒が一人でこんな所にまで来ているのだろうか?
「うへ〜、そうだよ〜。ヒフミちゃんだっけ?トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」
服装が私服ならまだしも、制服を着てやって来ている。危機管理能力が余程無いのか、それとも制服で来れるほど来慣れているのか。
「あ、あはは……それはですね……実は、探し物がありまして……。もう販売されてないので買うこともできない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて……」
「もしかして……戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学武器とかですか?」
物騒な予想しかでてこない。先日の対策会議から思っていたことだが、アビドスは修羅の国か何なのか?
「えっ!?い、いええ……えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
「ペロロ?」
それは何だろうか?聞き覚えが全く無さすぎる。
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!」
そうして阿蘇谷ヒフミはバッグの中から何かを取り出した。
「これは……いや、分からん。何だこれは」
“わぁ、凄い冒涜的だぁ“
手のひらサイズの、目が完全にイッている鳥。そのくちばしにはミント味だろうか?ソフトクリームがねじ込まれ、舌がはみ出している。
「限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ。ね?可愛いでしょう?」
この気持ち悪い鳥を本当に可愛いと思っているのだろう、ウキウキで私達に見せびらかし力説している。
「……」
“え、ええっとぉ……“
これには流石のアビドスの面々も渋面を作っている。まあこんな万人には好かれない、物凄く特徴のあるぬいぐるみを好きな者は早々いないだろう。
「わあ☆ももフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねえ!私はミスターニコライが好きなんです」
……どうやら身近な所に居たらしい。十六夜ノノミは阿蘇谷ヒフミと楽しそうに会話を始めた。
「ももフレンズ……キヴォトスではこんな物が流行っているのか?何を言ってるのか理解ができない」
「いや~、おじさんも何の話か全然分からないや〜」
「スゥ先輩はイメージ通りだけど、ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」
「ふむ、最近の若いやつにはついていけん」
それには共感できるかもしれない、私も前の世界ではこの手の話題にはついてけなかった。
「歳の差、ほぼないじゃん……」
“ホシノもまだまだ若いよ、安心して“
「おお〜、流石年長者が言うことには説得力があるね〜」
あの2人がももフレンズ談義に花を咲かせている間に、こちらもそんな話をしている。そして語り終わったのか、2人はこちらに帰ってきた。
「というわけで、グッズを買いに来たのですが、先ほどの人たちに絡まれて……みなさんがいなかったら今頃どうなっていたことやら。……ところで、アビドスのみなさんは、なぜこちらへ?」
「私たちも似たようなもんだよ。探し物があるんだ〜」
「そう。今は生産されてなくて手に入れにくい物何だけど、ここにあるって話を聞いて」
「そうなんですか、似たような感じなんですね」
『皆さん、大変です!四方から武装した人たちが向かってきています!』
「さっきの彼女達の仲間だろうな、見たところ格好も類似している」
先程のスケバン達と似た格好をした集団が、目をガン開き物凄い勢いでこちらに向かってきている。
「まったく、なんでこんなのばっかり絡んでくるんだろうね?私たち、何か悪いことした?」
まあ強いて言えばあの二人組をぶん殴ったことだろう。明らかにこの集団は報復に来ている。
「応戦していたら埒が明かないな」
このまま戦闘に突入すると、ブラックガードが十中八九出現するだろう。さっさと終わらせる、それに限る。
"?スゥ。何か策でもあるの?"
「ああ、先生。見ているといい」
一撃、それで終わらせる。
「地獄を照らせ」
放つ弾丸。それはまるでレーザーの様な光の軌跡を残す。
「「「がぁぁぁ!」」」
弾丸は周囲のスケバンを薙ぎ倒し建物を貫通、ドでかい風穴を空けた。立ち上がる砂埃と広がる絶叫。
「や、やべぇ!?コイツ……やりやがった!逃げろぉ、お前ら!」
スケバン達は、大慌てで蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。
「えっ、ええっ!?何してるんですかスゥさん!?み、みなさん。私たちも逃げましょう!」
阿蘇谷ヒフミは出会った時のような勢いで、この場を離れていく。かなりの慌てよう、アビドスの面々もその気迫に押され駆け足でこの場を去る。
“わ、私は!?そんなに速く走れないよ!?“
一人。ヘイローを持たない先生は、取り残され悲鳴を上げる。
「先生。少し失礼する」
“え、ちょっ!スゥ!?“
その先生を抱き上げ、私も彼女達の後を追う。
「揺れるから気をつけてくれ」
“わ、わぁ〜お姫様抱っこだぁ“
備考:篝スゥの過去話。
彼女がラーメンやももフレンズといったものを知らないのは、3年間の全てを風紀委員に費やしたから。だから彼女は、ヒナが親友と言ってくれるまで友達の一人もいなかった。
彼女の黙々と仕事をする姿を見た風紀委員の仲間は、彼女の事を【仕事の悪魔】だと揶揄した。
つまり彼女は……世間知らずで、無知無知の18歳なのだ。