先生がいないキヴォトスから来た一般生徒(覚悟ガンギマリ)   作:かまくら御前

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 我慢できないから投稿しました。時系列としては一章を解決して少し経った後。ネタバレもあるので、見たくない方は私が一章を終わらせるまで待っていただけたら幸いです。

 それでは〜ほんへに、ゴー!














   ──覚悟の準備は出来ているか?































   ──考えてたんです、ずっと。私の罪について。

 聞こえてくるんです、死者の怨嗟が。許さない、お前だけ、死んでくれと。動くはずのない骸が私の足を見えない泥沼に引きずり込む。
 
 私は恨まれて当然の人間です。罪のない人間を殺し、のうのうと屍の上を生きている。

 先生、あなたは前に一度言いましたよね?犯罪を犯したものでも、変われる余地があると……なら、私は?
 
 こびり付き、落ちる余地もないほど血で真っ赤に染まった私は?変われると?
   
   ──先生、教えてください。私はもう、答えを出せない。



幕間
幕間:救いはここに、底なしの泥沼に差し込む一筋の光。


 

  『──人殺し』

 

 ああ、まただ。また、この声だ。私を責め立てる死者の囁き。

 

  『何故、お前はのうのうと生きているんだ?』

 

 夢だ、これは夢。顔を黒く塗りつぶされた少女──私が殺した少女。忘れるなと私の罪を突き付けてくる。

 

  『死ね、死んでしまえ!』

 

 動かない私の首を万力で絞め、怒声を上げる少女。

 

  『お前、なんかぁぁ!!』

  

   ──ああ、分かってる。

 

  『“私たち“だって生きたかった!!』

 

   ──知ってるよ。

 

  『死ねぇぇぇ!!!』

 

 万力のままに首から脚を掴まれる。脚はそのまま思っいきり引っ張られ、トプンと暗い、暗い、底なしの沼に引きずりこまれる。

 

 私だって思ってるよ──何で私が生きてるんだろうって。

 

 視界が闇に染まる。忘れるな、篝スゥ。

 

   ──お前は裁きを受ける人間なんだと。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  「……はぁ」

 

  “おはよう、スゥ。今日もため息からスタート?“

 

  「おはよう……先生。ため息は、そうだな……癖になってるかもしれない」

 

 時刻は早朝、6時30分辺。何時ものように悪夢に魘され真夜中に起床し、そのままこの時間帯まで書類仕事をしていた。

 

 集中していて気付いていなかったがどうやらもう、こんな時間だ。

 

  “……もしかして眠れないの?“

 

  「!よく分かったな……先生に言ったことは無かった筈だが……」

 

 気付かれると絶対心配されてしまうので、気付かれないようにしていたのだが、どうやらバレていたらしい。

 

  “一回夜中に起きちゃってね、そこで見ちゃったんだ。スゥが仕事してるとこ“

 

  「成る程……迂闊だった」

 

 先生がいるのに気付けなかった、どうやらその日は相当参っていたようだ。

 

  “大丈夫?一度病院に行った方が……“

 

  「いや、原因は分かっている。それに、病院に行ったところで解決なんて出来ない」

 

  “原因は何なの?“

 

  「……ストレス性の睡眠障害だ。それも、重度な」

 

 言い換えるならPTSD。心的障害とも取れる。

 

  “いや!?全然大丈夫じゃないよ!?“

 

  「でも治るものでも無いんだ、先生には心配を掛けるすまない……」

 

  “……分かったよ。でも!何かあったら私に報告して、できる限りのことをやるから“

 

  「ああ、分かった。ありがとう、先生」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  “……あぁ!書類が減らない!仕事が終わらない!“

 

 あの後話は終わり、仕事を再開した。黙々と、2時間ほど書類を捌いていただろうか、先生が愚痴りだした。

 

  「そうだな、アビドスでの一件以降。強権に相応しい実績をシャーレは手にした。今まで不審がっていた者達はこれを期にと、続々依頼を出しているわけだ」

 

  “うぅ……最初の内は何ともなかったのに“

 

 依頼は多岐に渡る、迷子の猫探しなどの軽度なものや学校からの依頼といった重度なものまで。

 

  「頑張ってくれ、先生。できるだけ私も負担を減らすが、私では捌けない書類もある」

 

  “それはもう、本当に助かってるよ……私よりも何倍も速く書類を処理してくれるから。スゥがいなかったらと思うと寒気がするよ“

 

 風紀委員会1年目は内勤だった、毎日毎日書類に追われる日々。それを続けていく内に圧倒的な処理速度を手にした。

 

 だが機密の書類に関しては、先生しか書くことが出来ず、培った技術虚しく私は指をくわえることしか出来ない。

 

  "……よし!仕事終わり!スゥ、遊びに行かない?"

  

  「先生、現実逃避はやめろ。目の前には書類の山が先生を待っているぞ」

 

 しびれを切らしたのか、書類の山に目を背け席を立とうとする先生。

 

  "うっ!あ、明日やるから……だめ?"

 

  「……はぁ。七神リンに叱られても私は庇わないぞ」

 

 ネチネチお小言を言われながら、泣く泣くやることになっても私は見て見ぬ振りをする。

 

  “!それじゃあ!“

 

 仕方がない……こんな調子じゃあ、仕事にも熱が入らないだろう。

 

  「ああ、たまにはいいか。働きっぱなしも体に毒だ、先生にも息抜きがあったってバチは当たらない」

 

 今日1日休みを取って明日に備えたほうが、先生にとっては効率のよいやり方だろう。嫌々やりながら進めるよりは、七神リンにネチネチ言われながらやった方が。

 

 それに、八神リンの説教を先生はご褒美と言っていたからいい環境で仕事できるので捗るだろう。

 

 ……説教をご褒美とは、相変わらずの変態具合ではあるが。

 

  “ありがとう!スゥ。それじゃあ準備したら行こう!“

 

  「了解した」

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  「……ここは何処だ?」

 

 あの後直ぐに準備を済ませ、シャーレの部室があるサンクトゥムタワーを出た。そして先生に連れられ向かった先は、人の喧騒と電子音が鳴り響く来たことも無い場所だった。

 

 人々は筐体の前に立ち、時に笑い、時に怒り、悔しさに顔を滲ませたりと、私が知らない世界がそこにはある。

 

  “あれ?スゥ知らないの?ゲームセンター“

 

  「ゲームセンター?ああ、ここがそうなのか。噂だけは聞いたことがある」

 

 アナログではなく電子での遊戯。それが沢山ある場所がこの、ゲームセンター。

 

  “そう!お昼までまだ時間があるから、ここで遊ぼう!“

 

  「あ、ああ。それはいいんだが、私はゲームというものを一度もやったことが無いのだが……」

 

  “大丈夫!私が教えるし、スゥができるものをやるから!“

  

 余程やりたいのだろうか?いつにも増してニコニコ顔の先生は、素人にもできると力説している。

 

  「……分かった。やれるだけやろう」

 

  “!よし!じゃあ先ずはあれから!“

 

 指を差し、先生が向かった先にあったのはホッケー台と思わしきもの。

 

  “ルールは分かる?“

 

  「ああ、これは流石の私でも分かる」

 

 ディスクの様な球を、円状のラケットで相手の陣地に入れその得点で勝敗を決める遊戯。

 

  “私がコインを入れたら、機械が動いて始まるよ。準備はいい?“

 

  「準備完了だ」

 

 どちらとも位置につき、ラケットを握る。

 

  “じゃあ……開始!“

 

 先生がコインを入れた少し後、真ん中からディスクが射出された。

 

  “こっちに来た!や!“

 

 射出されたディスクは先生の方に向かった。先生はそのディスク向かって勢いよくラケットを突き出す。先生のラケットに押し出されたディスクはこちらに向かってくる。だが……

 

  「……遅」

 

 残念かな、先生の小枝の様な腕ではパワーが足りないらしい。飛来する銃弾が見える私にはこの程度の速度、人が歩いているのと変わりない。

 

 のそのそとようやく打てる範囲までやって来たディスク。そのディスクに対し、軌道の計算をして軽くラケットを当てる。

 

  “速ぁ!?全然見えなかったけど!“

 

 打たれたディスクは壁に反射し、先生の陣地に綺麗に着弾した。

 

  「先生。悪いが──ワンサイドゲームだ」

 

 そこからは蹂躙だった、先生が放つ球は尽くが跳ね返され、私が打つ球は全てが正確無比に得点を刻んでいく。

 

  “そ、そんな……何もできなかった、だと……“

 

 先生はよほどのショックを受けたのか手と膝を地面に付け、こう垂れる。

 

 32-0。結局、1点も取られることなくゲームは終了した。

 

  “ぐっ!ま、まだだ……まだ次がある!スゥ!次に行こう!“

 

 保ち直したのか、先生は立ち上がり次のゲームに行く提案をする。

 

  「了解した」

 

 それを受け、ホッケー台を離れ次の筐体へ向かう。

 

  “お次はこれ!“

 

  「これは……ハンドルが付いているな」

 

  “そう!次はレースゲームだよ!“

 

 次の筐体。それにはハンドルと運転席シート、足元にはアクセルとブレーキと思わしきものがあった。

 

  “これも、ルール説明は要らないね。はいこれ、コイン。これを入れてスタートボタンを押したら始まるから“

 

 そう言われ渡されるコイン、それを受け取る。

 

  “同時に入れるよ?せーの!“

 

 掛け声に合わせコインを入れる。そしてハンドル付近にあるスタートボタンを押した。

 

  『車体を選択してください』

 

 筐体からアナウンスが流れ、画面には様々な車が映っている。

 

  「これにするか……」

 

 少し悩み、選んだのはPorsche 911 GT3と書かれたマニュアルのスポーツカー。

 

  『マップを選択してください』

 

  「マップ……じゃあこれで」

 

 選んだのは市街地コース。選んだ後、画面に様々なコースが映されシャッフルされ始めた。最終的に選ばれたのは、私が選んだ市街地コース。

 

  『3.2.1』

 

 マップに車が並び、カウントダウンが始まる。周りからはエンジンを吹かす音がなり、どうやら待ちきれないよう。

 

  『GO!』

 

 始まった、タイミングよくシフトアップ、アクセルを踏み勢いよく飛び出す。走っている車は6台、そのうち私は先頭の一つ後ろに位置付けている。

 

 暫くは直線の道、エンジンの回転数に合わせギアを段々と上げ、スピードドアップ。先頭に位置付けている車を抜きにかかる。

  

  「上手いな……」

 

 先頭の車はその速度はさることながらブロッキングが上手い。私が抜かそうとすると、その道を直ぐに防いでくる。結局抜かすことは叶わず、直線は終わりカーブが見えてきた。

 

 私はギアを段々と下げ、できるだけ最短のコーナリングでカーブを曲がる。

 

  「……これでも抜けない」

 

 こういった攻防が続き、結局一度も先頭を取れることはなく2位でレースは終了した。

 

  “いや~、何とか1位になれたけど……危なかったぁ“

 

  「あの先頭の車。先生だったのか」

 

 筐体から離れ、先生の下まで行くとそんな言葉が聞こえた。

 

 やけに上手いと思ったら、どうやら先生が運転していた車らしい。

 

  “後ろにずっと付いていたスポーツカー。あれスゥでしょ?凄い上手だったけど、車の運転をしたことあるの?“

 

  「マニュアルの免許は持っている。もっとも、忙しすぎて数える限りしか運転したことはないが」

 

 時代が進んだキヴォトスにて、マニュアルの取得は教習所のロボット教員にマニアックだと言われたが。今思えば確かに、私は何故こんな化石の様な形式を学んだのだろうか……

 

   ──思い出せない。でも、理由はあった筈なんだ。

 

 “へ〜、マニュアル車の免許!凄いね!“と言っている先生を尻目にそう、考える。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

  “何か好きな物を頼んでいいよ!“

 

 時刻はお昼。私達はゲームセンターを離れて、近くのカフェに来ていた。店に入り席に座る、そして品書きを渡されそう言われる。

 

  「……取り敢えずコーヒーを。それと……」

 

 当たり障りのない物を、と探していく。すると一つ、何故か異様に目に留まる物があった。

 

  「バウムクーヘンを」

 

 自然と声に出る、慣れ親しんだ言葉を発するときの様に。

 

  “本当にバウムクーヘンでいいの……?“

 

 小首を傾げながら聞いてくる先生。

 

  「?ああ」

 

 何故先生は小首を傾げたのだろうか。

 

  “大丈夫なら頼むね?“

 

 呼び鈴を鳴らし、従業員ロボットに注文を伝える。

 

  “ゲームセンターは楽しかった?“

 

 注文の品を待っている間に、先生がそんなことを聞いてきた。

 

  「楽しい……?私は楽しかったのだろうか?」

 

 確かに、初めてだらけで新鮮だった。でも、楽しかったか聞かれても分からない。そもそも──

 

  「──楽しいとは何だったんだろうか?」

 

 私は知っていたはずだ。だが、そんなものは彼女達と共に骸になってしまった。それに……私がそんなものを感じていいんだろうか。夥しい量の死を築いた私にそんな資格があるのだろうか。

 

  “スゥ!、スゥ!“

 

  「あ。す、すまない先生……」

 

 深く考え込みすぎてしまったようだ。先生の呼びかけに全く気付けなかった。

 

  “スゥ、君は一体何を経験し──“

 

  『ご注文をお持ちしました』  

 

 先生が何かを私に問おうとした瞬間、従業員ロボットが商品を運んで来た。

 

  “……取り敢えず食べようか?“

 

  「……了解した」

 

 置かれたバウムクーヘンを一口サイズに切り分け、口の中に運ぶ。

 

  “どう?美味しい?“

 

  「ああ。()()()()()美味しい味がしないよ」

 

 嘯く、毎回毎回、心にもない言葉を発する。

 

 何時もはこれでみんな騙される。でも、今日の先生はなんだが様子が違う。顔に、何時も浮かべている笑顔がない。

 

  “……スゥ。本当の事を教えて欲しい。無いんでしょ──味覚“

  

   ──どうやら今日は厄日のようだ。

 

  「……何で分かった」

 

 今朝も睡眠障害がバレた。そして今、今度は味覚障害が露呈した。──悪夢は、いつもより激しかった。

 

  “アビドスのみんなとブラックマーケットに行った時、たい焼きを食べる話になったでしょ?その時にスゥは()()()は好きじゃないって言ったんだよ?“

 

  「……成る程。バウムクーヘンは甘かったのか……」

 

 先ほど首を傾げていたのはこの事か。

 

 盲点だった。あの時は適当に言って脱したがまさか、あの会話が仇となるとは。

 

  “スゥ。さっき言いたかった事をもう一回言うね。君は前の世界で一体何を経験してきたんだい?もう、隠さないで欲しい“

 

 真剣な表情。あの時、便利屋を逃がした時の様なそんな顔。

 

 

  「……地獄を見たんだ。青い空は紫光に染まり、地上は凶暴化した生徒が跋扈し始めた」

 

 話していく、“色彩“のことその紫光を浴びた生徒のことを。

 

  「友も全員死に、私だけが取り残された」

 

  “……じゃあ、そのロングコートは……まさか“

 

  「そうだ、これは元々ヒナが羽織っていたものだ。私は彼女に託された、思いと、このコートを」

 

 所々に穴が空き、血で赤く染まっているがそれでも、ずっと羽織り続けていた。

 

  「先生、今度は私が問おう。あの時、便利屋を逃がした時。先生は言ったな?罪を犯した生徒でも変われると」

 

  “……うん。言ったね“

 

  「じゃあ──人を殺した生徒でも、あなたは変われると、そう言えるのか?」

  

 沢山、数え切れないほど殺した。撃った銃弾は頭を、首を、胸を貫く。振るう刃は肉を裂く。

 

  「夢に出るんだ、私が殺した生徒の亡霊が。何故、どうしてそう私に問いかけて来る。──お前が何故生きてるんだって」

 

 何度出てきたか分からない、その怒りを何度受けてきたか分からない。

 

  「教えてくれ、先生。私は一体──どうすれば良いんだ」  

 

 死ねたらどれだけ良かったんだろう。解決するにはそれが一番早くて楽だ。でも、約束したんだ。生きるって、だからこの命は差し出せない。

 

 板挟みだ、怨嗟と約束の。重みで体が押しつぶされる。

 

 だから先生──私に教えてを救って欲しい。

 

  “……変われる。君は変われるよスゥ“

 

    ──ああ、あなたならそう言うと思った。

 

 でも、それだけじゃ納得はできない。この鎖は解けない。だから、もっとあなたの言葉が欲しい。私の凍った心を溶かす、魔法の言葉が。

 

  “仕方がないとは言わない。理性が無くなった、だから殺していいなんて私は口が裂けても言えない“

 

 それはそうだろう。私も、殺してもいいなんて言ってたら軽蔑していた。

 

  “確かに、殺人という罪は重いよ。消えることは無いかもしれない……でも、軽くは出来ると思うんだ“

  

  「軽く……?殺人という絶対的な罪を……?」

 

  “うん、出来るよ。当人が本当に償いたいと思っているなら“

 

  「……この世界で不変の大悪だぞ。それを償えると……?」

 

  “……スゥ、もしかして君は自分を悪人だと思ってる?

 

  「逆にそれ以外に何がある。人殺しの私が悪でなかったら、この世のすべては善になる」

 

  “それは違うよ。悪はそんなに単純なものじゃない“

 

  「……じゃあ、何が悪だと言うんだ?」

 

  “──罪に対して何も思わないこと、それは明確な“悪“だよ。だから……スゥ、君は悪じゃない。そうやって悩んでいる姿こそ、君が善である証拠だ“

 

  「──私が……善人?」

 

 思ってもいない言葉が出てきた。私が善人……?もはや白い部分がないほどに赤く染まった私が……?

 

  “そうだよ。だから君は償う機会が、変われる機会がある。悪は何も思わない、つまり罪を罪と認識していない。だから変われないんだ。必ずもう一度同じ事をするから“

 

  「だが……私は何度も……」

 

  “じゃあ君はこの世界で殺人をしたいと思うかい?“

 

  「いや、それだけは絶対にない」

 

 そんなのは冗談じゃない。もう一度彼女達を殺すくらいなら、私は生きることを諦めるかもしれない。

 

  “でしょ?君は悪じゃないよ。断言できる“

 

 曇りも無い……そんなに言われるのなら、私は悪では無いと思えてきてしまう。

 

  「……でもだ、私が悪では無いとしても。どうやって罪を軽くするんだ……」

 

  “ふっふっふっ……そのためのシャーレだよ!スゥ!君は知っているでしょ?この世界では君が殺したかもしれない生徒は生きているんだ!“

 

 ハッとした。そうだ……生きているんだ彼女達は。ヒナ達はだけじゃなく。彼女達も。

 

  “世界は違うかもしれない、君が償いたいと子達とは。でも!どんなに世界が変わっても、彼女達は変わらない!その本質は絶対に!どこまで行ったってその子はその子なんだ!だから……この世界の彼女達を助ける事が、償いにならないかな?“

 

  「償えるのか……?私が殺した彼女達に?」

 

  “そう!だから、君は変われる!血塗れの身体と終わるはずのない悪夢に、()()終止符を打とう!

 

  「変われるのか……?血で赤く染まった私は?ああ……そうか……」

 

 こんな私でも、あなたは変われると言ってくれるのか。なんだろう、やっと──

 

  「先生……ありがとう」

 

   ──憑き物が落ちた気がした。

 

  “……す、スゥ!?もしかして……笑った!?“

 

  「?そうだろうか……?私には分からなかったが」

 

 頬に触れてみるが、特段いつもと変わることはない。鏡を見たらおそらく、死んだ瞳をした顔色の悪い真顔の少女が映っているだろう。

 

  “いや!絶対に笑った!スゥが笑ったところ初めて見た!“

 

  「そんなにはしゃぐ事だろうか……」

 

  “それはそうだよ!ずっと見たかたったから!“

 

  「そ、そうか……」

 

 鼻息荒く食い気味で宣言する先生。その勢いには流石の私も内心照れてしまう。

 

  “良かった……スゥの笑顔が──ん?ごめん、電話が掛かってきたみたい“

 

 何か言おうとした先生に電話が掛かってきた。先生はポケットからスマホを取り出す。

 

  “はい、もしも──『どこにいるのですか先生!!』わっ!“

 

 先生が電話先に声をかけた瞬間、スマホからこちらまで聞こえてくるほどの大声が聞こえてきた。

 

 この声はどうやら七神リンの声のようだ。

 

  “え、えっと、今スゥと一緒にDUのカフェに来てるんだけど……“

 

  『カフェですか!?仕事を放っておいて?早く帰ってきてください、いいですね!』

 

 言うだけ言い残し怒れる七神リンは、ブツッと電話をブチ切った。

 

  “……帰ろうか。スゥ“

 

  「ああ、帰ろう」

 

 先生、私を泥沼から引きずり出してくれたあなたに。捧げそう、この身を。あなたに危機が迫った時、その時は──あなたを守る盾となろう。

 

  

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