先生がいないキヴォトスから来た一般生徒(覚悟ガンギマリ) 作:かまくら御前
あなた達は知った、欲に塗れた大人の影を。だが敵は強大、規模は未知数、立ち向かいますか?それとも見て見ぬ振りをしますか?
どちらを選択しても苦しいことには変わりはないでしょう。まるで出口のない部屋に入ったかのようなこの状況……
──あなた達はどうしますか?
「帰ったかみんな」
“ただいま。スゥ、アヤネ“
「書類は無事に入手できたか?」
「それはもうばっちりだよ〜。少しトラブルもあったけどね〜」
「そうか……なら、早速確認しよう」
あの後、私はアビドスまで戻っていた。逃走の手助けもしなかったのは、覆面の集団に混じっていると目立つから。それでヒナと勘違いされたら元も子もない。
ということで、私は手伝うことが出来なかったがみんなも無事に目的の書類を手に帰ってきたようだ。
そして書類を机の中央に置き、みんなで内容を確認する。そして──
「な、何これ!?一体どういうことなのっ!?」
バン!と机を叩き、声を張り上げる黒見セリカ。
確かに……この内容では声も荒げたくなるな。
「アビドスでの集金が788万……そしてカタカタヘルメット団に対し“任務補助金500万“提供、と」
“これは……“
つまりは……そういうことなんだろう。
「君達が必死の思いで返していたお金は、君達を襲撃するための資金として利用されていた……」
アビドスの借金元は知っていたが、その返済のお金がどこに行っているかまでは分からなかった。まさか襲撃の資金になっているとは。確かに、カタカタヘルメット団の武装は他のヘルメット団に対し次元が違かったが、そういう理由だったか。
「任務補助金だなんて……カタカタヘルメット団に……?ヘルメット団の背後にいるのは、まさか……カイザーローン?」
そしてどうやら……とうとう──真相に辿り着いたようだ。
「ど、どういうことでしよう!?理解できません!学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに……どうしてそのようなことを……?」
「ふーむ……それは、篝ちゃんが知ってるんじゃないかな〜?」
瞳の奥に、いつもとは違う鋭い光を宿した小鳥遊ホシノは私に問いかける。
「……何故、私が知っていると?」
「うへ〜。だって篝ちゃん、おじさん達の借金も知ってたでしょ?だから──元々黒幕も分かってたんだよね?」
彼女はどうやら私が知っていると確信しているようだ。問いかける声音には迷いがなかった。
もう、隠すことは出来ないか……
「……ああ」
「えっ!?スゥ先輩知ってたの!?ならどうして教えてくれなかったのよ!!」
「そ、そうですよ!スゥ先輩、教えていただけたらもっと早く対策を立てることができましたよ!?」
私が言わなかったことが不満だったのか、抗議をの声を上げた黒見セリカと奥空アヤネ。
「……逆に聞くが、君達は黒幕を知ったところで何が出来た?この際だ、隠さず言おう。敵は──カイザーPMC」
「カイザーPMCですか!?民間軍事会社が何故……」
「……確かに、おかしい。なんで黒幕が軍事系統のカイザーなの?」
カイザーPMCは、カイザーコーポレーション子飼いの私兵のようなもの。カイザーコーポレーション本社の息も掛かってはいるが、主導しているのはこのカイザーPMC。
「うへ〜、おじさん達の場合は武力なんて使わなくともお金は稼げると思うけどね〜。黒幕がPMCってことは……つまり、お金が目的じゃないってことかな?」
「鋭いな小鳥遊ホシノ、正解だ。カイザーの目的は金自体ではない」
と言っても、私も全部を知っているわけではないが。
「じゃ、じゃあ!あいつらの目的はいったい何なのよ!!」
「私も詳しくは知らない。だかアビドスの捨てられた砂漠。あの場所でカイザーコーポレーションはコソコソと何かを成そうとしている」
「捨てられた砂漠で、ですか……?」
「ああ、それ以外は何も分からない。だが少なくとも、碌なことでは無いのは分かる」
◇◆◇
「みなさん、色々とありがとうございました」
「変な事に巻き込んでごめんない、ヒフミさん」
「あ、あはは……」
答えの出ない問題の対策を考えても仕方がないので、ここまで手伝ってくれたヒフミを取り敢えず見送る。
「まだ詳しいことは明らかになっていませんが……これはカイザーコーポレーションが、犯罪者や反社会勢力と何かしら関連があるという事実上の証拠になり得ます。戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します!」
阿慈谷ヒフミ。陰謀塗れる政治、陰湿なイジメが蔓延るトリニティにてここまで純粋な者が現れるとは。それに、ゲヘナの私を見てもなんとも思っていない。
嘗て、私の友であった
「……トリニティの生徒とは思えないほど優しいな、阿慈谷ヒフミ。彼女達の事を思ってくれてのことだろう。だが……それは無意味だ」
「え?何故ですか?」
「そうだね〜、篝ちゃんの言う通りティーパーティーはもう知っているだろうからね〜」
「は、はいっ!?」
「ゲヘナの風紀委員長ちゃんも知ってたみたいだしさ、トリニティの首脳部なら、それくらいはもうとっくに把握してると思うんだよ〜」
ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム。キヴォトスでも屈指の規模を持つ学校の首脳陣は、とっくに把握しているだろう。
「それにほら、今のアビドスって廃校寸前じゃん?トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよ〜。言ってる意味、わかる?」
トリニティの世間知らずのお嬢様方が手伝いをできると?ゲヘナの生徒がそもそも手伝いに来ると?期待するだけ無駄だろう。
「……サポートする名目で悪さをされても、それを阻止できない……ってことですよね。……そうですよね、その可能性も無くはありません。あうう……政治って難しいです」
「でも……ホシノ先輩、スゥ先輩も、悲観的に考え過ぎなのではないでしょうか?本当に助けてくれるかもしれませんし……」
「うへ〜私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってね〜」
「私は事実を述べてるだけだ。確かに真面目にやる者もいる。だがそれは極少数、手伝いに来たものすべてがその少数とは限らないだろう?」
それに、私が知っている極少数はそもそも他校を手伝えるほど暇でもない。
「……“万が一“ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー」
これでこの話も終わり。
「では……えっと……本当に……1日で色んな出来事がありましたね」
阿慈谷ヒフミもこんなことになるとは思ってもみなかっただろう。まさか銀行強盗をする羽目になろうとは。
「そうだね、すごく楽しかった」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
「あ、あははは……私も楽しかったです」
銀行強盗を楽しかったと?何ともゲヘナらしい、やはり本当にトリニティ生か?さっき感じた純粋さを早くも疑ってしまいそうだ。
「いやぁ~、ファウストちゃん、お世話になったね」
「ファウスト?なんだそれは……」
よく分からない言葉が出てきた。
「そ、その呼び方はやめてください!」
「よっ、覆面水着団のリーダーさん!」
「……覆面水着団?」
更に意味の分からない言葉が飛び出してきた。
“……後で教えるね“
「……頼む」