夢見鳥、ウマソウルを啜る   作:名前は思いつきませんでした

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天皇賞・秋
終わりの始まり


私はただ、倒れるスズカさんの姿を見つめることしかできませんでした。

天皇賞(秋)。

あの時は誰もがスズカさんの勝利を確信していました。

私スペシャルウィークも、観客のみんなも、実況の人も。

誰も疑っていませんでした

このまま何事もなく、スズカさんが逃げ切るのだと。

だからこそ起こったこが信じられませんでした。

突如、先頭を走るスズカさんの走りが不自然に崩れました。

そして次の瞬間、スズカさんは芝の上へ倒れ込みました。

「スズカさん!!」

私は叫びました。

声援で満ちていた東京競馬場は一瞬で静まり返りました。

実況席は言葉を失い、観客席からは戸惑いの声が上がります。

私は気が狂いそうでした。

脚の怪我。

それが頭をよぎります。

それがウマ娘にとって何を意味するのか。

考えるだけで息が苦しくなる。

三女神様お願いです。

スズカさんを助けてください。

そんな願いも虚しく、スズカさんは苦しそうに顔を歪めていました。

でも。

本当の地獄は、そこから始まったんです。

「あ……れ……?」

スズカさんが空を見上げ、小さく呟きました。

そこには一匹のオレンジ色の蝶がひらひらと飛んでいました。

見たことのない蝶でした。

こんな状況なのに、思わず見とれてしまうほど綺麗な蝶でした。

蝶はゆっくりと高度を下げていきます。

まるで最初から狙っていたかのように。

一直線にスズカさんのもとへ。

「綺麗…」

スズカさんは微笑みながらそう呟き、ゆっくりと蝶へ手を伸ばしました。

蝶もまた、その指先へ止まろうとします。

その瞬間。

生物としての本能が強く警鐘を鳴らしました。

確証なんてない。

でも、気づけば私は全力で叫んでいました。

「逃げて!!」

私の声は間に合いませんでした。

蝶がスズカさんの指先へ止まった次の瞬間、スズカさんは白い光に包まれました。

誰も目を開けていられないほどの眩しい光。

私は思わず目を閉じてしまいました。

数秒後。

光が消えた。

恐る恐る目を開ける。

そこに、スズカさんの姿はありませんでした。

そこに立っていたのはオレンジ色の仮面を着けた騎士でした。

騎士は静かに、まるで最初からそこにいたかのように佇んでいました。

実況席は沈黙。

観客席も沈黙。

誰一人、何が起きたのか理解できませんでした。

騎士はゆっくりとこちらを向きました。

目が合った、その瞬間。

全身から血の気が引きました。

本能が叫ぶ。

逃げろ!!

騎士が剣を構える。

 

その時の私はまだ知りませんでした。

これが終わりの始まりだったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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