夢見鳥、ウマソウルを啜る   作:名前は思いつきませんでした

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虐殺の幕開け

騎士は静かに剣を構えたまま一歩前へ歩み出しました。

その進行方向にはスズカさんと同じ天皇賞(秋)を走ったウマ娘がいました。

彼女は突然現れた騎士に困惑し、その場で立ち尽くします。

「だっ、誰……?」

答えはありませんでした。

騎士はゆっくりと剣を振り上げます。

「危ない! 逃げて!」

私はまた叫びました。

ですが、間に合いませんでした。

一閃。

勝負服が赤く染まり始める。

「え……?」

そのウマ娘はその場によろめき、力なく膝をつく。

本人は何が起きたのか理解できていないようでした。

やがてその体は芝の上へ倒れ込む。

芝生に赤い染みが広がっていく。

数秒遅れて競馬場中に悲鳴が響き渡った。

「きゃああああっ!!」

一人の悲鳴が引き金になったように東京競馬場は一瞬で大混乱に包まれます。

観客は出口へ殺到し、転ぶ人、泣き叫ぶ人、呆然と立ち尽くす人で辺りは混沌としていました。

私は恐怖でその場から一歩も動けなかった。

目の前で起きたことが信じられなくて、足が地面に縫い付けられたように動かない。

「スペ!」

気がつくと目の前にはスズカさんと同じ天皇賞(秋)を走ったステイゴールドさんが立っていました。

さまざまな土地を旅し、数多くの危険な場所を渡り歩いてきた経験から培われた勘により危険を察知しいち早く逃げ出した彼女は私に「早く逃げろ!」と言いました。

その表情は普段の落ち着いた顔ではありませんでした。

私はいつも落ち着いた顔をしているステイゴールドさんがここまで切迫した表情を見せるのを私は初めて見ました。

「何してる! 早く!」

肩を強くつかまれ、私はようやく我に返ります。

「で、でも……スズカさんが……!」

私は騎士の方へ目を向けました。

「見るな! いいから走れ! あいつから離れるぞ!」

ステイゴールドさんの声には焦りが滲んでいました。

「あれはスズカじゃない!とにかく今は逃げることだけを考えろ!」

ステイゴールドさんに腕を引かれ私はようやく走り出しました。

「助けて!」 「いやあああっ!」 「逃げろ!!」

あちこちから叫び声が聞こえる。

私は耳を塞ぎたくなりました。

立ち止まってスズカさんの元へ戻りたい。 スズカさんを助けたい。

そんな思いが頭をよぎる。

「振り返るな!」

ステイゴールドさんが怒鳴るように叫ぶ

「止まるな! 少しでも距離を取れ!」

私たちは出口へ向かって走りました。

出口に着いた時、あんなに警告されたのに私はどうしても気になって後ろを振り返ってしまいました。

そこには大方、天皇賞(秋)に出場したウマ娘を殺し回った騎士が観客席へ向かって歩いてました。

その剣からは赤い雫がぽたり、ぽたりと芝へ落ちていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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