初日にバラさんでもええやん……   作:匿名うゆ

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サッカー部に体験入部したその日、オレは帰宅して今後のことを考えていた。

 

考えに考え、オレはサッカー部に入部することにした。

 

サッカー部に入るメリットやデメリット。

そんなことよりも、昨日感じた楽しいという感情をもっと追いかけてみたくなったのだ。

 

この表現はちょっと大袈裟すぎるか……

 

ま、ただ楽しかったから入部してみたくなったってのか本音だ。

それに、沖谷の言っていた青春というものもしてみたいしな。

 

 

入部届けを職員室にまで提出すると、茶柱は意外そうにしていた。

 

「まさかお前が部活、それもサッカー部に入部するとはな」

 

「いや、先生がオレの何を知ってるんですか」

 

「さあな。しかし、相手が自分の情報をどこまで持っているのか考えるのは大切なことだぞ?」

 

「はあ……」

 

オレの情報と言っても、ホワイトルームの事はすでに暴露されてしまったし、仮にホワイトルームの事を知っていたとしても、この教師ごときが詳細を知っているはずもないのだから、こいつは何も知らないのと同じだと思うが……

 

「この入部届は受理しておく。教室に戻って授業の準備をしておけ」

 

 

オレのサッカー部での青春(予定)が今始まる……!

 

 

─────────‪──────────────

 

 

サッカー部に入部して四日が経った日の朝。

 

寮のベッドで目を覚ましたオレは、数秒間ぼんやり天井を見つめていた。

 

……感慨深いな。

 

ほんの数日前まで、毎朝目覚めるたびに最初に考えていたのは「監視されていないか」「あいつの刺客は来ないのか」といった内容だった。

 

だが今は違う。

 

今日の授業、沖谷や平田という友人、放課後の部活。考えていることが普通すぎる。

 

実力やホワイトルームの事を特に隠さなくていいというのが大きいのかもしれない。

隠し事は人付き合いにおいて良くないということがこの前買った雑誌に書いてあったしな。

 

これが普通の高校生活というものなのかもしれない。悪くないな。

 

 

寮を出てたまたま会った沖谷と平田と登校していると、須藤から声をかけられた。

 

「おお、サッカー部組じゃねえか!」

 

「須藤くんかい。今日も元気だね。おはよう」

 

「おお、バスケに元気は欠かせねえからな!聞いたぜ綾小路、お前結局サッカー部入ったんだってな」

 

「ああ、そうだ。よく知っているな」

 

「バスケ部の先輩がサッカー部に未経験の天才がいるって話しててよ、誰かと思ったら綾小路って名前が出てくるじゃねえか。お前、体育の時も凄かったけど、サッカーも上手いんだな!」

 

そう、オレは入部4日目にして、レギュラー争いに参加できるほどの実力になっていた。

2年3年の先輩にはまだ届かないかもしれないが、1年の中ではトップの実力だろう。

 

「まあな」

 

「おお、かっけえな……今度勝負しようぜ!」

 

「いや、競技が違うだろ」

 

「細けぇこと気にすんな!」

 

須藤は豪快に笑う。

 

須藤には同じスポーツマンとして好感を持たれているらしい。

こいつと一緒にいると自分まで明るくなったような気分になって良いな。

 

 

─────────‪──────────────

 

 

「聞いたわよ、綾小路くん。サッカー部に入ったんですってね」

 

教室に入ると、堀北に話しかけられた。

 

「なんで知ってるんだ」

 

「登校している時に須藤くんと大きな声で話していたじゃない。十分距離を取っていたのに聞こえてきたわよ」

 

「それは須藤の声が大きいだけな気がするんだが……」

 

「そう、私にはどちらでも同じことだけど。それで、どうしてサッカー部なんかに入ったの?私の予想では、部費のために強く勧誘されてそのまま押し切られてしまったというものだけど」

 

「お前の中でのオレはそんな人間なのかよ」

 

「違ったかしら」

 

堀北は全く悪びれずそう言う。

 

「そんなにオレが入部した理由が気になるか?もしかして、同じ帰宅部仲間から離脱されて寂し……いやなんでもないです」

 

堀北、コンパスを構えるのはやめてくれ。

 

「ま、意思の弱いあなたの事だからいつ幽霊部員になるのかが楽しみね」

 

「それがだな堀北。須藤曰く、オレは上級生に未経験の天才と呼ばれているらしいぞ」

 

どうだ、これには堀北も驚くだろう。

 

「そう」

 

いや、塩対応すぎないか。

これは信じていないな。

 

「信じてないだろ」

 

「当たり前でしょ?追い詰められた貴方が自己防衛本能で嘘をついたというのが私の見解だけど」

 

「えぇ……」

 

ひどすぎるぞ、堀北。

 

 

─────────‪──────────────

 

 

「やっぱ櫛田ちゃんだよなー!」

 

「いや、長谷部も捨て難いぞ!」

 

そんなことを堀北と話していると、男子の方でどうやら盛り上がっているみたいだ

 

聞き耳を立ててみると(立てなくても聞こえるが)どうやら今日のプールの授業で見れる女子の水着を楽しみにしているらしい。

 

女子の突き刺すような視線をあいつらは気にしないらしい。

いや、気づいていないだけか。

 

オレはあそこに参加するのはやめておこう。

 

池が手をこまねいているが無視だ無視。

 

オレが参加しないことを察した池は、次に沖谷の元へ向かった。

 

おい沖谷、強い意志をもて……!

あ、池と山内に連行されてしまった……

どんまい、沖谷。

 

 

そうして、プールの授業の時間になった。

 

 

「おおー!」

 

櫛田や堀北の水着に男子たちの歓声があがる。

いや、露骨すぎるだろ……

 

しかし、水着、思ったよりも素晴らしいものだな。

なんというか……眼福です。

 

 

「何を黄昏ているの?」

 

「己との戦いに没頭してたんだ」

 

堀北が何やらオレの身体をじろじろと見ている

おい、それオレが女子にやったら悲鳴をあげられて通報コースだぞ。

 

「あなた、サッカー部に入ったって聞いたけど……確かに良い身体をしてるわね……」

 

どうやらホワイトルームで培ったオレの筋肉が気になるらしい。

 

「これなら、朝のあなたの虚言も一応信憑性があるわね」

 

「いや、本当に虚言だと思ってたのかよ」

 

「当然でしょ?」

 

本当にひどいぞ、堀北。

 

 

体育の先生がやってきた。

 

「よーしお前ら集合しろ!」

 

見学者は16人だった。

女子の半分以上が見学とは、少し異常だな。

女子の水着の良さを理解したオレとしては、朝の件で女子を見学に追い込んだ池と山内その他もろもろには制裁を与えたいところだ。

 

1人の男子が泳ぎに自信が無いという旨の発言をするが、「後で必ず役に立つ」と体育の先生に丸め込まれてしまった。

 

一通り泳いだ後、男女別で50M自由形の競争をすることになった。

1位には5000ポイントが支給されるらしい。

 

別に本気を出す必要も無いが、手を抜く必要も無いのでほどほどに本気で泳ぐことにする。

 

女子のグループが終わり、最初の組に配属されたオレは、須藤と沖谷と同じ組だった。

 

「綾小路、沖谷、勝負だな!」

 

「だね、一緒に頑張ろう!」

 

「ああ、負けないぞ」

 

先生の笛がなり、同時にプールに飛び込んだ。

オレは綺麗なフォームで須藤をだんだん突き放していく。

沖谷……こいつは早いな、オレの泳ぎにも着いてくる。

しかし、沖谷は途中まではオレと並走していたが、途中で失速してしまった。

 

オレたちは50Mをものすごい勢いで泳ぎきり、オレが真っ先に水面へ顔を上げた。

 

男女から驚嘆の声が上がる。

 

「あ、綾小路……22秒96!?沖谷は23秒82!?須藤も25秒を切っているし……お前たち、水泳部に入らないか?特に綾小路、お前は全国に絶対に行ける!」

 

「俺はバスケ一筋なんで。水泳なんて遊びっすよ。それより綾小路……おまえすげえな!」

 

「ああ、ありがとう須藤。先生、オレもサッカー部に入ってるんでそれは無理ですね」

 

「ぼ、僕もそうです……」

 

「くそ……サッカー部が羨ましいな。いや、30万プライベートポイントを支給するから移籍しないか?」

 

オレの泳ぎにそこまでの価値があったとは驚きだ。

 

「いえ、やっぱりオレはサッカー部一筋なんで」

 

須藤の真似をしてみたが、このセリフはかっこいいな。

 

「おい、綾小路のやつやべえぞ……」

 

「自己紹介の時に沖谷くんが言ってたなんでもできるって本当なのかもね……」

 

「ねぇ……綾小路くんってちょっとかっこよくない?」

 

「わかるー」

 

少しというかだいぶ目立ってしまったな……

まあ、今更か。

 

その後黄色い歓声を浴びながら泳ぐ平田や、オレと同じくらいのタイムを出す高円寺などが泳ぎ、決勝戦になった。

メンバーはオレ、沖谷、須藤、平田、高円寺だ。

 

「やあ、ミスター綾小路、私に匹敵する存在を見つけたのは久しぶりだよ。だが、私が負けることなどないのだけどねぇ」

 

「そうか、ならオレも本気を出そうか」

 

「ほう?さっきのが本気ではなかったと?」

 

「そうだ」

 

「フッフッフ。なに、それは私も同じことだからねぇ。負けるビジョンは見えないよ」

 

これは燃えてきたな。

 

オレたち5人はスタート台に立つ。

 

「「「「平田くん頑張ってー!」」」」

 

平田に対する女子の声援は凄いな……

オレに対する声援は……

 

「「綾小路くんも頑張れー!」」

 

……え?

どうやら数人の女子が応援してくれているらしい。

嘘だろ、オレにもモテ期というやつが来たのか?

 

そんなことを考えている間に笛が鳴ってしまった。

しまった。少し出遅れた。

 

オレは隣のレーンを豪快かつ綺麗なフォームで泳ぐ高円寺に追いつこうとするが、なかなか差は縮まらず、結局オレは2位でゴールした。

 

くそぅ、これが悔しいという感情か。

 

 

─────────‪──────────────

 

 

その日もサッカー部に行くと、何やら見たことの無い金髪の先輩がいた。

 

「よう、お前が綾小路か。いかにも無気力そうな奴だな。おい今村、こいつが例の未経験の天才か?」

 

「うん。この子まだサッカー初めて五日目なのに物凄く上手いんだよ!」

 

この先輩は誰なのだろうか。

 

「へぇ。おい綾小路、オレと勝負しろ」

 

……勝負?

 

「ええ、なんでですか?それに先輩は……」

 

「あぁ?俺の事を知らないのか?知らないなら教えてやる。俺は生徒副会長で2年A組の南雲雅だ。ったく、俺の事を教えてねえのかよ今のサッカー部は……」

 

「なぜ先輩と勝負を?」

 

「そんなもんどっちが上か決めるために決まってんだろ。さ、やろうぜ。やり方はお前が決めて良いからよ」

 

どうやらこの南雲という先輩は非常に面倒くさい先輩のようだ。

ここは受けておくとするか……

 

「じゃあ、PK対決で」

 

「ああ分かった。先行か?後攻か?」

 

「じゃあ、後攻で行かせてもらいます」

 

ここは勝っても面倒だし適当に負けておこう。

別に負けたからと言って辞めさせられる訳じゃないのだ。

 

南雲のシュートがネットに突き刺さり、次にオレは甘いコースにシュートを打つ。

 

結果は5対3でオレの負けだ。

 

「おい、綾小路。お前、手抜いてただろ」

 

「いや、抜いてないですよ。言いがかりはやめてください」

 

「ほう?言いやがるじゃねえか。ま、そういうことにしておいてやるよ。俺はこれから生徒会の用事があるが、次はもっとちゃんとした勝負をしてやるよ」

 

「はあ……」

 

どうやら面倒くさい先輩に目をつけられてしまったらしい。

これから先が思いやられるな……




とりあえず入部させました。
もしかしたら後で生徒会に入れるかも?
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