初日にバラさんでもええやん…… 作:匿名うゆ
5月1日。
今日はポイントが支給される日のはずなんだが……
端末には昨日と変わらないポイントが映し出される。
画面を見間違えたかと思い、もう一度更新をかける。しかし表示は変わらない。
学校側の不手際……いや、違うな。
オレは坂柳にメールを送ることにした。
『坂柳、率直に聞くが、もうポイントは支給されたか?支給されてたとしたら、それは何ポイントだった?』
すると、驚くほど早く返信が帰ってきた。
『94000ポイントです。綾小路くんはどうでしたか?』
『生憎と、1ポイントも振り込まれていなかったな』
『おやおや、ご愁傷さまです』
これはものすごく嫌な予感がするな……
登校し、席へ着く。
「堀北、ポイントは支給されていたか?」
「いえ、私のポイントは増えていなかったわ。学校側の不手際かしら?」
これは嫌な予感が的中していそうだ。
「バグじゃね?朝ジュース買えなくてマジで困ったわー」
「後で先生に聞こうぜ」
あちこちからそんな声が聞こえてくる。
その喧騒を切り裂くように、教室のドアが開いた。
茶柱先生が険しい顔で教室へと入ってくる。
もしかして生r……いや、この考えはまずいか。
「せんせー、ひょっとして生理でも止まりましたー?」
おい池、オレが辞めた考えの続きを話すんじゃない。
それと、池と同レベルな発想をしてしまった自分に嫌気がさすな。
もしこんなことを堀北に言ってしまったとしたら……
考えるだけで恐ろしいことになりそうだ。
「お前たちは本当に愚かな生徒だな……」
オレの悪い予感は的中したらしく、茶柱先生からこの学校の本当のシステムが通達された。
これはDクラスにとっては死刑宣告のようなものだろう。
概要としては、この学校は生徒を実力で測り、オレたちDクラスポイントは0ポイントだったこと。
クラスは実力順に配属され、オレたちは不良品の集まるDクラスだということ。
まともに授業を受けてるやつの方が少ないのだから当然といえば当然だな。
などと冷静に分析しているように見えるオレだが、内心貰えるポイントが0ポイントということには驚愕している。
特段物欲がなく、ポイントもあまり使わないオレだが、これはあまりにも酷い。
今月から朝のヨーグルトは1個までにしておこう……
そして、小テストの結果が貼り出された。
そして、赤点を取った生徒は即退学ということも通告される。
もちろんオレの点数は100点だ。
おお、オレの名前の下に、沖谷の名前がある。
沖谷もあの高難易度な問題を解いて100点を取っているようだ。
クラスは喧騒に包まれる。
「あなた……本当に100点だったのね」
「ああ、ホワイトルーム様々だな」
「はあ……私は現状に納得できてないけど、あなたはどうなの?曲がりなりにも私より高い点数を取っていて、それでいて身体能力も高い。どう考えてもDクラスに配属されるべき人材ではないと思うのだけど」
「いや、ポイントを除けばオレは特に不満はないな。まあ、普通に考えれば小中と学歴がなかったからDクラス配属になったと考えるのが妥当だが」
入試で50点を意図的に取ったのが問題かもしれないが、それを言う必要は無いだろう。
「あなた、小学校も中学校にも行ったことがなかったのね。コミュニケーションが下手だとは思っていたけれど……憐れんだ方がいいのかしら」
「憐れむのはやめてくれ」
「そう。とにかく、私は納得していないから」
阿鼻叫喚の教室では、ポイントのカツアゲのような行為(貸し借りという建前はあるが)や、自分の所有物を売ろうとしている生徒が見受けられる。
ポイントの残高を見て頭を抱える生徒や、怒りからか怒鳴っている生徒までいる。
わずか数十分前まで普通だった教室は、まるで別の場所になってしまったようだった。
そんな中でも、一人だけ普段と変わらない笑顔を浮かべながらクラスメイトに声を掛けて回っている女子がいた。
「ポイントない人達は大変だねー。綾小路くんはどれくらいポイント使った?」
そう話しかけてきたのは、クラスのアイドル、櫛田桔梗だ。例の自己消化で浮いていた入学当初のオレとも話してくれた天使でもある。
「いや、オレはあまりポイントは使っていないな。サッカー部でもそこまで必要なものはなかったしな。櫛田こそ、ポイントを貸したりして大丈夫なのか?」
櫛田は困ったように笑う。
「そうなんだ。うーん、私の事は大丈夫だよ。もし、ポイントに困ったら言ってね!もしかしたら、助けになれるかもしれないから……」
「そんな簡単に人へ貸していいのか?」
オレは純粋な疑問として尋ねる。
「え?」
「返ってこない可能性だってあるだろ」
櫛田は一瞬だけ目を丸くしたあと、いつもの笑顔に戻った。
「それでも困ってる人がいたら放っておけないんだ。もちろん、ちゃんと返してもらえるって信じてるけどね」
「なるほど、櫛田は人を信頼してるんだな」
オレには真似できそうにない考え方だ。
ホワイトルームにいた時よりは人を信頼していると思うが……
考えはそう簡単に変わるものではない。
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『1年Dクラスの綾小路くん。担任の茶柱先生がお呼びです。』
放課後、オレは平田にクラスポイントを得るための話し合いに誘われていたが、茶柱先生に呼び出されてしまった。
オレは教員室のドアを叩く。
「あの。茶柱は居ますか?」
「え?サエちゃん?うーん、さっきまではいたんだけど」
返答をしたのは、セミロングのウェーブのかかった髪型をした先生だ。
「ちょっと席を外してるみたい、中に入って待ってたら?」
オレは中に入る勇気はなかったので廊下で待つという旨の返事をすると、何を思ったのかその先生が廊下に出てきた。
「私、Bクラスの担任の星之宮知恵っていうの。茶柱先生とはチエちゃんサエちゃんって呼び合う仲なんだー」
聞いても無い情報を喋りだしたぞ。
「あ、君もしかしてサッカー部の綾小路くん?うちのクラスの子が話してたよー。もしかしなくてもキミ、モテるでしょ?」
初対面の相手に対する距離感がおかしい。
人懐っこいと言えば聞こえはいいが、対応する側としては少々疲れるタイプだ。
茶柱先生とは正反対の教師だな。
「まあ、多少は」
一度たりとも告白やそれに該当する行為はされていないのだが、最近女子と話すことが多いので少し見栄を張ることにしてみました。
「うわー、いかにもモテ男の発言だー。なんでサエちゃんに呼び出されたの?ねえねえ、どうして?彼女はいなそうだけど、先生との恋愛はご法度だぞ?」
この人、グイグイ距離を詰めてきて少し話しづらいな。
「さあ、それはオレにもさっぱり……」
「ふーん?」
「何をやってるんだ星之宮」
急に茶柱先生が現れて星之宮先生の頭をクリップボードでスパンと叩いた。
助かります。茶柱先生。
そのままオレは茶柱先生に連行される。
星之宮先生は着いてこようとしてきたが、薄ピンクの髪の女子生徒に話しかけられてあえなく断念していた。
「で、なんですか茶柱先生。オレが何か問題行動をしましたか?」
「その事だが……話をする前に、少しここに入っていてくれ」
茶柱先生は指導室の中にあるドアを開けて、給湯室にオレを誘導する。
「お茶でも沸かしましょうか?オレ、最近抹茶にハマってるんですよ」
特に、抹茶の粉をヨーグルトに入れたあの味は格別だ。
「そんなことはどうでもいい、良いか、決して音を出すんじゃないぞ。出したら退学だ」
えぇ……そんな権限あるわけないでしょ……
とも言いきれないのがこの理不尽な学校だ。
この学校本当に国立ですか?
オレが給湯室に籠っていると、茶柱先生と誰かが話す声が聞こえてきた。
この声は……堀北だろうか?
内容を聞くには、堀北がクラス分けに納得してない旨を抗議しにきたようだ。
「あぁ、そうだった。もう1人指導室に呼んでいたんだった。お前にも関係のある人物だぞ」
「関係のある人物……?まさか、兄さ───」
「出てこい綾小路」
いや、出ていきたくねー。
もう1つの出口から帰るとするか。
「出てこないと退学にするぞ」
はい……
「なんですかね。もう待ちくたびれましたよ」
「綾小路くん、あなた、話を聞いていたの?」
「いやまあ、少しはな?」
「馬鹿を言え綾小路。給湯室はこの部屋の言葉がよく聞こえるぞ」
「……正直に言うと、全部聞いていたな」
「あなたねえ……先生、どうして綾小路くんを?」
「じゃあ、その訳を話そうか。お前は面白い生徒だなあ、綾小路。入試の成績は全ての教科で50点、しかしながら、この間の小テストでは高難易度の問題が含まれているのにも関わらず100点。これはどういうことだろうな」
うわ、ちょっと恥ずかしいな……
目立ちたくないからやったことだが、100点を取った後に今これを見られるのは黒歴史を見られている気分になるぞ。
今思えば、もう少し点数をばらけさせてもよかった。
全教科50点というのは、さすがに露骨だったかもしれない。
「綾小路くん……どうしてこんなことを?」
「目立ちたくなかったというかなんというかだな……まあ、そんな理由だ」
「そんな理由で50点に揃えたっていうの?あなた、馬鹿じゃない?」
これはぐうの音も出ないな。
「ま、こいつの場合は高円寺のように成績なんてどうでもいい、DでもAでも良いと思えるような特別な理由があるのかもしれないがな」
茶柱先生はどこまで知っているのだろうか。
オレにはその理由も特に隠す必要は無いんだがな。
「もしかして、その理由ってホワイトルームという施設と何か関係があるのでしょうか?」
堀北が質問をしてきた。
だいぶ本質を突いてくるな、と少し驚いた。
「ホワイトルーム?なんだそれは」
「……先生もご存知ないんですね。綾小路くん、そこのところどうなの?」
「関係はあるな。詳細はあまり話したくはないが」
「話してちょうだい」
「いや、今はまだ話せないな」
今はまだ、という表現をしたが、実際にはこの場に茶柱先生がいるからだ。
オレの入試結果を簡単に他人にバラしてしまう先生にオレの素性をあまり離したくはない。
「そう……」
「私はもう行く、そろそろ職員会議の始まる時間だ。ホワイトルームとやらについては私も気になるが、今日は2人とも帰れ」
そう言ってオレたちは廊下へと放り出された。
「……とりあえず帰るか」
「……そうね」
オレは堀北と一緒に帰ることにした。
堀北を置いて帰っても良かったのだが、追求を後日にされるのが面倒だったからだ。
「さっきの事だけど、本当に教えてくれないの?」
「今なら少しは話せるが……聞きたいか?」
「ええ、聞かせてちょうだい」
「簡潔にいえば、オレの親父が権力者で、親父が運営する施設から逃れる為に外部からの接触を防げるこの学校に進学したんだ。だから、オレにはAクラスだとかに興味はないんだ」
「そうなのね……あなたも、大変な人生を歩んできたのね」
「まあ、そうだな。普通の人よりは大変な人生だという自覚はある」
「あなたがAクラスに興味がないのは分かったけど……どうか私にAクラスに上がる協力をしてくれない?……だめかしら」
以前のオレならば、断っていただろう。
だが、今のオレは考え方が違う。
「ああ、いいぞ」
「え、いいの?」
「そうだと言っている。仲間と協力するのも悪くないなと思っていたところだからな」
「……仲間」
「違ったか?オレたちは仲間であり、友達だろ?」
「……ええ、そうね。これからよろしくね、綾小路くん。」
堀北は少しだけ笑ってそう言った。
赤バーじゃなくなってる( ; ; )
ここからの展開が難しいんですよね
見切り発車でごめんなさい