The Reversed Star――逆位置の星――   作:ほいみん

32 / 32
FGO二次創作長編『The Reversed Star――逆位置の星――』です。

※独自解釈/女性体オリジナルサーヴァント/ギルガメッシュ×アトラス/本文に文章生成AI補助あり
※掲載イラストは作者による手描きです。

詳しい注意事項・制作FAQはこちら:
【作品案内URL】
https://docs.google.com/document/d/1GdwYLijsN-D6iR4MKAlV2ziDaThI6rrddGUy8nim0KE/edit?usp=drive_link


第三節 竜宮は夕暮れを止める

 橋を渡ると、海の音がさらに遠くなった。

 

 足元には、水面がある。

 

 けれど、沈まない。

 橋の板を踏んでいるようでもあり、薄い水の膜の上を歩いているようでもある。

 

 立香は、一歩ごとに足元を見た。

 

 水は透き通っている。

 その下には青い深さがある。

 魚影のようなものも見える。

 

 けれど、魚は動かない。

 

 正確には、動いているように見える。

 尾びれは揺れ、鱗は光を返し、群れは橋の下を横切っている。

 

 だが、その動きが同じところで繰り返されていた。

 

 泳ぐ。

 止まる。

 また泳ぐ。

 同じ角度で、同じ光を受けて、同じ場所へ戻る。

 

 マシュが小さく息をのむ。

 

「映像、でしょうか」

 

 ネモが首を振る。

 

「実体反応はある。幻じゃない」

 

「では、生きているのですか」

 

「生きている。けど、時間が進んでいない」

 

 アトラスは橋の下を見た。

 

「水槽か」

 

「近いかもしれない」

 

 ネモは答えた。

 

「でも、これは観賞用じゃない。保存用だ」

 

「保存」

 

 アトラスの声が冷えた。

 

 橋の先には、竜宮があった。

 

 近くで見ても、宮は美しかった。

 

 朱塗りの柱。

 金の飾り。

 貝殻を重ねたような屋根。

 珊瑚を思わせる欄干。

 床には、波と星を組み合わせた文様が描かれている。

 

 水の上に立っているはずなのに、濡れていない。

 風があるはずなのに、幕は揺れない。

 香の匂いがするはずなのに、煙は立ち上ったまま形を変えない。

 

 美しい。

 

 美しすぎる。

 

 立香は、少しだけ肩に力が入るのを感じた。

 

 ギルガメッシュは周囲を見渡し、鼻で笑う。

 

「なるほど。財を飾る趣味は悪くない。だが、換気が足りんな」

 

「換気」

 

 アトラスが繰り返す。

 

「空気が動いておらぬ。宴も宝物も、動かぬ場所に閉じ込めればすぐに倉庫になる」

 

 ニトクリスが静かに頷いた。

 

「王宮には、風が必要です。死者のための墓であっても、祈りは外へ向かいます」

 

「外へ向かうものがない」

 

 アトラスは言った。

 

 その声は低い。

 

 彼女は宮を見ている。

 けれど、その目は、別の王宮も見ているようだった。

 

 沈んだ王宮。

 水底の墓。

 閉じられた記録。

 

 ニトクリスが、アトラスの横顔を見た。

 

「大洋王」

 

「何だ」

 

「まだ、同じではありません」

 

 アトラスはしばらく黙った。

 

「知っている」

 

 短く答える。

 

「だが、似ている」

 

「ええ」

 

 ニトクリスは否定しなかった。

 

「だからこそ、見誤らぬようにしなければなりません」

 

 マシュが端末を確認する。

 

「聖杯反応、強くなっています。中心部は宮の奥、宴席と思われる場所です」

 

「宴席?」

 

 立香が聞き返した時、奥から音がした。

 

 笛。

 太鼓。

 弦。

 人の笑い声。

 

 それらが、同時に聞こえた。

 

 楽しげな音だった。

 

 けれど、近づいてくる気配はない。

 遠ざかる気配もない。

 

 同じ音量で、同じ拍で、同じ空気のまま、そこにあり続けている。

 

「宴が開かれているようです」

 

 ニトクリスが言った。

 

「敵性反応は?」

 

 立香が尋ねる。

 

 マシュは首を振る。

 

「ありません。ただ、霊的残響が多数。人影のような反応もありますが、敵対行動は確認されません」

 

 ネモが低く言う。

 

「気をつけて。敵じゃないものが、安全とは限らない」

 

 ギルガメッシュが笑った。

 

「船長の言う通りだ。歓待ほど厄介な罠もない」

 

 アトラスは宮の奥を見た。

 

「招く宮は、帰路を示さぬ」

 

 その言葉のあと、朱の扉が音もなく開いた。

 

 中には、広い宴の間があった。

 

 海の底の光のような青が、天井に揺れている。

 床は白く、磨かれた貝のように艶やかだった。

 円を描くように膳が並び、色鮮やかな料理が置かれている。

 

 魚。

 果物。

 菓子。

 酒。

 氷の器に盛られた、溶けない甘味。

 

 その周囲に、人影がある。

 

 舞う者。

 笑う者。

 杯を掲げる者。

 楽を奏でる者。

 

 けれど、誰もこちらを見ない。

 

 舞手は同じ角度で袖を返す。

 奏者は同じ指で弦を弾く。

 笑う者は同じ表情のまま、声だけを落とし続ける。

 

 時間が流れているのではない。

 

 同じ瞬間が、終わらない。

 

 立香は喉の奥が乾くのを感じた。

 

「これ……」

 

「記録の再生ではありません」

 

 マシュが端末を見ながら言う。

 

「霊基反応があります。ですが、個別の意志はほとんど検出できません」

 

 ネモが宴席の端に近づく。

 

 膳の上の氷菓子を見た。

 

 冷気がある。

 水滴もある。

 だが、水滴は落ちない。

 

「溶けない」

 

「魔術保存か」

 

 アトラスが問う。

 

「それだけじゃない。時間ごと止めている」

 

 ネモは周囲を見る。

 

「料理が冷めない。氷が溶けない。音が進まない。笑い声が終わらない」

 

 ギルガメッシュは不愉快そうに目を細めた。

 

「宴を飾ったまま止めるとはな。悪趣味にも程がある」

 

「宴は、終わるものです」

 

 ニトクリスが言った。

 

「終わるから、次の祈りが生まれる。終わらぬ宴は、やがて弔いを拒む場になります」

 

 立香は、ふと窓の外を見た。

 

 窓の向こうに海がある。

 

 そこには空が映っていた。

 青い空。

 白い雲。

 そして、太陽。

 

 太陽は傾きかけている。

 

 夕暮れの直前。

 昼が終わり、夜が来る少し前。

 

 だが、その角度から動かない。

 

「夕方にならない」

 

 立香が言った。

 

 ネモが頷く。

 

「ここは、夕暮れを止めている」

 

「なぜ夕暮れを?」

 

 マシュが問う。

 

 アトラスが答えた。

 

「終わる前だからだ」

 

 全員がアトラスを見る。

 

 彼女は、窓の外の止まった太陽を見ていた。

 

「昼はまだ終わっていない。夜もまだ来ていない。宴も終わっていない。帰る時刻ではない」

 

 ギルガメッシュが笑う。

 

「帰らせぬための夕暮れか」

 

「あるいは」

 

 アトラスは少しだけ目を伏せた。

 

「帰ったことを、認めぬための夕暮れだ」

 

 その時、奥の御簾の向こうで、鈴の音がした。

 

 一度。

 

 細く、澄んだ音だった。

 

 宴の音が、少しだけ小さくなる。

 

 止まっていたはずの人影が、ほんのわずかに頭を垂れた。

 

 御簾の向こうから、声がした。

 

「お客様が、いらしたのですね」

 

 穏やかな声だった。

 

 敵意はない。

 怒りもない。

 ただ、長い時間を待っていた者の声だった。

 

 マシュが盾を構える。

 

 ネモも一歩、立香の前へ出た。

 

 ギルガメッシュは口元だけで笑う。

 

 アトラスは動かない。

 

 御簾が、静かに上がった。

 

 そこにいたのは、海の宮の姫だった。

 

 長い黒髪は水のように滑らかで、ところどころに真珠と珊瑚の飾りが光っている。

 衣は白と薄青。

 裾には、波と龍の文様が織り込まれている。

 瞳は深い海の色をしていた。

 

 美しい。

 

 だが、その美しさもまた、動かない。

 

 絵巻から抜け出してきたようであり、同時に、絵巻へ戻ることを拒んでいるようでもあった。

 

 彼女は立香たちを見て、柔らかく微笑んだ。

 

「遠いところを、ようこそ」

 

 ニトクリスが杖を握る。

 

「あなたは」

 

 姫は静かに答えた。

 

「豊玉姫」

 

 その名が、宴の間に落ちた。

 

 続けて、彼女は少しだけ首を傾ける。

 

「けれど、人は私を、乙姫とも呼びました」

 

 マシュの端末が反応する。

 

「霊基反応、確認。神霊級ではありませんが、複数の伝承が重なっています。豊玉姫、乙姫、竜宮、玉手箱……いずれも霊基に混線しています」

 

「名が重なっている」

 

 アトラスが言った。

 

 トヨタマヒメは、アトラスを見る。

 

「ええ。名は、流れ着くものです」

 

 その言葉に、アトラスの瞳がわずかに細くなった。

 

「流れ着く」

 

「海は、失われた名を拾います。遠くへ行ってしまったものも、別の物語として、また戻ってくることがある」

 

「戻るとは限らぬ」

 

「ええ」

 

 トヨタマヒメは微笑んだ。

 

「だから、戻ってきたものは、大切にしましょう」

 

 ギルガメッシュが鼻で笑う。

 

「大切に、か。随分と大仰な箱にしまったものだな」

 

 トヨタマヒメはギルガメッシュを見る。

 

「英雄王」

 

「ほう。我を知るか」

 

「この宮に来るものは、みな記されます。岸の王。黄金の蔵。ひときわ騒がしい光」

 

「騒がしいとは無礼な」

 

 アトラスが即座に言った。

 

「外れてはいない」

 

 ギルガメッシュがアトラスを見る。

 

「大洋王」

 

「事実だ」

 

 立香は二人のやり取りに少しだけ安心しかけたが、すぐに気を引き締めた。

 

 目の前の姫に、敵意はない。

 

 だが、この宮全体が異常であることに変わりはない。

 

 立香は一歩前へ出た。

 

「私たちはカルデアから来ました。この海域に、特異点反応が出ています」

 

「特異点」

 

 トヨタマヒメは言葉を口の中で転がすように繰り返した。

 

「そう呼ぶのですね」

 

「あなたが、この宮を止めているんですか?」

 

 マシュが少し慌てる。

 

「先輩」

 

 問いは直接的だった。

 

 けれど、トヨタマヒメは怒らなかった。

 

 ただ、静かに笑った。

 

「止めている、というほど強いものではありません」

 

 ネモが言う。

 

「海流が止まっている。時間流も固定されている。聖杯反応に近い魔力核が、宮の中心で循環している」

 

「船長様は、海の流れに敏いのですね」

 

「敏いというより、止まった海は危険だから」

 

 トヨタマヒメは、少しだけ目を伏せた。

 

「危険」

 

「進めない。戻れない。変われない」

 

 ネモの声は穏やかだったが、はっきりしていた。

 

「船にとっては危険だ」

 

 トヨタマヒメはしばらく黙った。

 

 そして、ゆっくりと言う。

 

「ここにいれば、急がずに済みます」

 

 宴の音が、また少し戻った。

 

 同じ笛。

 同じ笑い声。

 同じ杯の音。

 

「夕暮れは美しい。宴は楽しい。波は穏やか。誰も帰らない」

 

 立香は息を呑んだ。

 

 その言葉は、幸福の説明に聞こえた。

 

 けれど、その幸福には出口がなかった。

 

 ニトクリスが静かに言う。

 

「帰らないのではなく、帰れないのではありませんか」

 

 トヨタマヒメの微笑みが、ほんの少しだけ薄くなる。

 

「帰れば、終わってしまいます」

 

 アトラスが口を開いた。

 

「何が」

 

 トヨタマヒメは、アトラスを見た。

 

 海の姫と、海の王。

 

 動かぬ宮の主と、沈んだ王宮を知る者。

 

 二人の視線が、宴の間の中央でぶつかった。

 

 トヨタマヒメは言う。

 

「待つことが」

 

 短い答えだった。

 

 だが、その一言で、空気が変わった。

 

 立香は、胸の奥が少し痛むのを感じた。

 

 待つこと。

 

 帰ってしまった誰か。

 戻らなかった誰か。

 見送ったのか、置いていかれたのか。

 それすら、言葉にされていない。

 

 アトラスは、彼女を見続けている。

 

「誰を待つ」

 

 トヨタマヒメはすぐには答えなかった。

 

 宴の奥で、杯が鳴る。

 

 同じ音が、また繰り返される。

 

「帰っていった人を」

 

 姫は言った。

 

「山の方へ。陸の方へ。時の流れる方へ」

 

 マシュが小さく呟く。

 

「山幸彦……」

 

 トヨタマヒメは微笑む。

 

「名は、いくつもあります。けれど、私にとっては、一人でした」

 

 ネモは端末を見る。

 

「聖杯反応が強くなった。彼女の発言に反応してる」

 

 ギルガメッシュが言う。

 

「願いと箱が噛み合ったか」

 

「願いではありません」

 

 トヨタマヒメは静かに否定した。

 

「これは、ただの宮です」

 

 アトラスが言う。

 

「違う」

 

 その声は、低く鋭かった。

 

「何が違うのです」

 

「宮は、外へ通じる」

 

 アトラスは言った。

 

「王宮であれ、墓であれ、祈りであれ、記録であれ、外へ届く道を完全に失えば、ただの封鎖だ」

 

 トヨタマヒメはアトラスを見る。

 

「封鎖」

 

「そうだ」

 

 トヨタマヒメは、静かに笑った。

 

 その笑みは、穏やかで、悲しい。

 

「ならば、封鎖で構いません」

 

 アトラスの目が細くなる。

 

 トヨタマヒメは言う。

 

「流れれば、失われます」

 

 宴の灯が揺れずに光っている。

 

「波が連れていけば、帰ってきません」

 

 水面に映る宮は、動かない。

 

「時が進めば、あの方は遠くなります」

 

 太陽は夕暮れの前で止まっている。

 

「ならば、ここに置きましょう」

 

 彼女は両手を重ねた。

 

 その指先に、小さな箱のような光が浮かぶ。

 

 貝と金で飾られた箱。

 波と星の文様が刻まれた、掌ほどの器。

 

 だが、その中にある魔力は、掌に収まる量ではなかった。

 

 マシュの端末が警告音を鳴らす。

 

「聖杯反応、急上昇!」

 

 ネモが言う。

 

「箱が核だ」

 

 ニトクリスが息を呑む。

 

「玉手箱……」

 

 トヨタマヒメは、箱を胸元へ抱く。

 

「開けなければ、終わりません」

 

 立香は、思わず言った。

 

「でも、それだと始まらない」

 

 トヨタマヒメは立香を見る。

 

「始まらなくてもよいのです」

 

 その声には、初めて少しだけ硬さがあった。

 

「始まれば、終わりますから」

 

 沈黙が落ちた。

 

 アトラスは、ゆっくりと口を開く。

 

「流れれば、失われる」

 

「ええ」

 

「止めれば、失われぬ」

 

「ええ」

 

 トヨタマヒメは微笑んだ。

 

「あなたなら、分かるのではありませんか」

 

 その問いに、立香はアトラスを見た。

 

 分かる。

 

 たぶん、アトラスには分かる。

 

 外へ流さぬために沈めた王。

 王宮を墓にした王。

 星詠みの詩を、最後まで沈めなかった王。

 

 トヨタマヒメの言葉は、アトラスの過去に触れていた。

 

 アトラスは否定しなかった。

 

「かつての己なら、異議を唱えなかった」

 

 トヨタマヒメは、少しだけ嬉しそうに目を細めた。

 

「では」

 

「だが」

 

 アトラスの声が、静かに遮った。

 

「止めたものは、届かぬ」

 

 トヨタマヒメの表情が、わずかに変わる。

 

 宴の音が、また小さくなる。

 

 アトラスは続けた。

 

「沈めたものも、届かぬ」

 

「それでも、守れるものはあります」

 

「ある」

 

 アトラスは認めた。

 

「だが、守ることと、閉じることは同義ではない」

 

 トヨタマヒメは黙った。

 

 その沈黙は、怒りではなかった。

 

 傷ついた者が、自分の傷を初めて他者に見られた時の沈黙だった。

 

 ギルガメッシュが、小さく笑う。

 

「よい。ようやく宮らしくなってきたではないか」

 

「英雄王」

 

 マシュが少し咎めるように言う。

 

「何だ。美しいだけの宮など退屈だ。傷が見えた方がまだましよ」

 

 トヨタマヒメはギルガメッシュを見た。

 

「あなたは、終わることを恐れないのですね」

 

「終わらぬものなど、つまらん」

 

「強い方」

 

「違うな」

 

 ギルガメッシュは笑った。

 

「我は、終わったものすら見届ける王だ」

 

 その言葉に、アトラスが一瞬だけ視線を動かした。

 

 トヨタマヒメは、玉手箱を抱く手に力を込める。

 

「ならば、どうぞ」

 

 彼女の声は、また穏やかになった。

 

「宴をお楽しみください」

 

 立香が眉を寄せる。

 

「待って。話はまだ」

 

「急がなくてよいのです」

 

 トヨタマヒメは言った。

 

「ここでは、急ぐ必要がありません」

 

 瞬間、宴の音が大きくなった。

 

 笛が鳴る。

 太鼓が鳴る。

 笑い声が重なる。

 杯の音が響く。

 

 人影たちが一斉に動き出した。

 

 いや、動き出したように見えた。

 

 同じ舞。

 同じ笑み。

 同じ拍。

 けれど、その数が増えていく。

 

 宴の間が、同じ瞬間の反復で満たされる。

 

 マシュが盾を構える。

 

「先輩!」

 

 ネモが叫ぶ。

 

「時間流が乱れてる! いや、乱れてるんじゃない、同じ瞬間に引き戻されてる!」

 

 ニトクリスが杖を掲げる。

 

「これは歓迎ではありません。足止めです!」

 

 アトラスは三叉槍を手にした。

 

 青い光が、濡れたウェットスーツの線を走る。

 

「足止め」

 

 彼女は静かに言った。

 

「不快だ」

 

 トヨタマヒメは御簾の向こうへ下がっていく。

 

「どうぞ、ごゆるりと」

 

 その声は遠ざからない。

 

 近づきもしない。

 

 同じ場所から、同じ温度で響いている。

 

「夏は、まだ終わりません」

 

 御簾が下りた。

 

 宴の間の灯は、揺れずに燃えていた。

 

 立香は、止まった夕暮れの中で拳を握る。

 

 敵性反応は、まだ出ていない。

 

 けれど、帰る道が少しずつ遠くなっていくのを感じた。

 

 アトラスが前へ出る。

 

「マスター」

 

「うん」

 

「止まるな」

 

 立香は頷いた。

 

「止まらない」

 

 アトラスは、宴の奥を見据えた。

 

「ならば、進む」

 

 止まった竜宮の中で。

 

 沈まぬ娘と、大洋王は、終わらない夏の奥へ歩き出した。

 




アトラスの水着イラスト描きました。

【挿絵表示】


前日譚の『The Reaching Shore――届かせるもの――』も連載中です。
https://syosetu.org/novel/420096/

この作品の興味をもったところは?

  • アトラスのキャラクター性・内面
  • ギルガメッシュとの関係性
  • 王としての在り方・王権のテーマ
  • ストーリーの展開
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

紙芝居をしただけなのに(作者:何処にでもある)(原作:Fate/)

 昔々、蛮族の集団で悠々自適に過ごす為の芸が巡り巡って無辜の怪物になった男がおったそうな。▼ その者腕っこきはからっきし、童話を紙芝居で読むのだけは上手く、ペラ回し一本で英霊に立ち向かわざる得なくなって途方に暮れたそうな。▼ この者の本名を亀男、英霊としての名前をカルメン。▼ 無辜の怪物で周囲から理想のタイプの女に見える、しがない一般サーヴァントである。


総合評価:5971/評価:7.87/完結:27話/更新日時:2026年07月01日(水) 23:00 小説情報

Fate/世界で超絶美形と魅了:EXになって転生したった(作者:プル山門左衛門)(原作:Fate/)

尚、転生先は神代ギリシャに加えて男にも女にもなれる身体な模様。▼そんな主人公が様々な冒険をしたり求婚を断ったり、女神に愛されたりする話。▼ボーイズラブ、ガールズラブのタグはギリシャ神話だから念の為入れてます。


総合評価:2757/評価:8.31/連載:5話/更新日時:2026年07月30日(木) 00:00 小説情報

いや、死神とか聞いてないし(作者:わお)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

死神少女にTS転生してしまった一般人。▼本人はただの下っ端役職だと思っている。▼だがそんなはずもなく。


総合評価:3550/評価:7.81/連載:11話/更新日時:2026年06月21日(日) 20:03 小説情報

ダンジョンに魔虚羅がいるのは絶対に間違っている(作者:パクチーダンス)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

深夜に思いついたネタ▼呪術廻戦とのマコラとは一部乖離がある。▼


総合評価:4812/評価:8.51/連載:4話/更新日時:2026年05月18日(月) 08:30 小説情報

【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie(作者:セロ弾きのゴーシュ)(原作:Fate/)

古代ギリシャ、それは偉大なる神々と鮮烈なる英雄が歴史を綴る、ロマン溢れる時代____▼に見せかけた超男尊女卑社会、かつ神々の癇癪で英雄はバタバタ死に、神々のムラムラとイライラで女性は何処かへ連れ去られる修羅の世界である▼そんな時代に、オレは大英雄ヘラクレス(死亡フラグ①)の双子の妹(死亡フラグ②)として生まれてしまった▼死んだんじゃないか?▼☆▼本編は完結い…


総合評価:12380/評価:8.68/完結:30話/更新日時:2026年07月26日(日) 22:35 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>