The Reversed Star――逆位置の星―― 作:ほいみん
※独自解釈/女性体オリジナルサーヴァント/ギルガメッシュ×アトラス/本文に文章生成AI補助あり
※掲載イラストは作者による手描きです。
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【作品案内URL】
https://docs.google.com/document/d/1GdwYLijsN-D6iR4MKAlV2ziDaThI6rrddGUy8nim0KE/edit?usp=drive_link
プロローグ 変奏する星詠みの詩
カルデアの廊下に、小さな歌が流れていた。
誰かの足音より軽く、空調の音より少しだけ高い。
星の間を抜けてきたような、細い声。
ボイジャーが歩きながら歌っていた。
歌詞と呼ぶには短い。
旋律と呼ぶには古い。
記録と呼ぶには、あまりに柔らかい。
星詠みの詩。
遠き星から来た者たちが、この星の空を覚えるために作った歌。
ガイアの一員となるための歌。
兵器でもなく、王権記録でもなく、沈められなかったただ一つの糸。
その歌が、廊下に流れている。
誰かが聞き、誰かが覚え、また誰かへ渡った結果が、いま廊下を歩いている。
ただし、原型とは少し違っていた。
音がひとつ、長い。
終わるはずのところで、ほんの少しだけ尾を引く。
沈むはずの音が、波間に浮かぶように揺れる。
ボイジャーは気づいていない。
あるいは、気づいていても気にしていない。
彼にとって、遠くへ届くものが少し変わるのは、たぶん当たり前のことだった。
紺碧の外装が、静かに廊下の光を受ける。
アトラスが足を止めた。
海水に血を溶かしたような瞳が、わずかに細くなる。
「原型と異なる」
ボイジャーが振り返る。
「うた?」
「そうだ」
「まちがってた?」
アトラスは沈黙した。
廊下の奥で、カルデアの照明が白く揺れる。
遠くの管制室から、誰かの声が微かに聞こえる。
アトラスは、ボイジャーを見た。
星の子は、責められるのを待っている顔ではなかった。
ただ、答えを待っていた。
「損耗か、継承か、現時点では分類できない」
「そっか」
「不許可ではない」
「うん!」
「返答が軽い」
「うん!」
「二度目も軽い」
ボイジャーは笑った。
その笑い声の中に、さっきの変奏した一音がまだ残っている。
アトラスは、廊下の窓へ目を向けた。
カルデアの外には、本物の夜空はない。
それでも、人は星を描く。
記録し、呼び、歌う。
届くものは、変わる。
変わるものは、欠けるのか。
まだ分類できない。
だが、不許可ではない。
ネモが廊下の向こうから歩いてくる。
「ボイジャー、また歌ってたの?」
「うん。アトラスが、ちょっとちがうって」
「違うんじゃなくて、変わったんじゃないかな」
ネモは端末を片手に、肩をすくめる。
「歌ってそういうものじゃないかな。航路も同じだよ。毎回同じ海を通っても、まったく同じ波にはならない」
アトラスはネモを見た。
「原型から逸脱してもか」
「歌われるならね」
ネモはそう言って、ボイジャーを見る。
「誰かが歌って、次の誰かに届くなら、それはもう動いてる。止まってない。保管されてるだけじゃない」
保管。
その語に、アトラスの瞳が微かに動いた。
それは不快ではなかった。
少なくとも、今のところは。
「動いているものは、完全な原型を保たぬ」
「うん」
「保たぬものを、欠落と呼ぶか」
ネモは少し考えた。
「呼ばないかな。少なくとも、ぼくは」
ボイジャーが頷く。
「とおくへいくと、すこし、かわる」
アトラスは、二人を見た。
星詠みの詩。
沈めなかった歌。
未来へ渡した糸。
それが、変わっている。
壊れたのではない。
失われたのでもない。
歌われている。
その事実は、アトラスの分類表にまだ入らない。
入らないまま、残る。
「仮分類」
アトラスは言った。
「継承による変奏」
ボイジャーの顔が明るくなる。
「まちがってない?」
「原型とは異なる」
「うん」
「だが、現時点では欠落と断定しない」
「うん!」
「三度目の返答も軽い」
「うん!」
「……訂正不能」
ネモが笑いを噛み殺した。
その時だった。
廊下の照明が、一瞬だけ落ちた。
暗闇ではない。
海底のような、黒に近い青。
床に、波紋のようなノイズが走る。
ネモの端末が警告を吐いた。
「何だ……?」
カルデアの通信が乱れる。
音が、遠くなる。
ボイジャーの歌の最後の一音が、廊下の空気に残ったまま、黒い波形へ変換されていく。
音ではない。
記録でもない。
何かが、歌の輪郭を測っている。
ネモが端末を叩く。
「音声ログに外部干渉! いや、違う。これは……音だけじゃない!」
廊下の壁面に、黒い波形が浮かび上がる。
星図のようで、海図のようで、目録のようでもあった。
そこから、声がした。
「欠落を確認」
低い。
冷たい。
だが、怒りはない。
「補完対象」
「正常化候補」
ボイジャーが一歩下がる。
「うた……?」
アトラスの外装が、わずかに軋んだ。
黒い波形が、星詠みの詩の変奏だけでなく、アトラスの霊基外装へも触れようとしている。
紺碧の城塞。
王宮記録。
王名。
未開放宝具。
沈められたもの。
沈められなかったもの。
それらの輪郭へ、黒い海のようなものが指を伸ばす。
「欠落を確認」
「補完可能」
「保管に移行する」
アトラスは、静かに前へ出た。
ボイジャーの前に立つ。
ネモが息を呑む。
「アトラス、待って。まだ解析が」
「不要」
アトラスの声は低い。
黒い波形が、彼女の胸元へ伸びる。
触れる前に、紺碧の外装が光を帯びた。
「汝の分類は、不快だ」
黒い波形が、ほんのわずかに揺らぐ。
「欠落」
「補完」
「正常化」
「保管」
アトラスの瞳が、血を溶かした海の色に光った。
「黙れ」
その一言で、廊下の黒い波形が弾ける。
照明が戻った。
空調の音が戻る。
ボイジャーの歌の残響だけが、微かに廊下に残っていた。
だが、ネモの端末にはまだ黒い波形が表示されている。
消えていない。
遠ざかっただけだ。
ネモは画面を見たまま、声を落とした。
「……今の、こっちを見てた」
ボイジャーが、アトラスの背を見る。
「うた、しまわれちゃう?」
アトラスは答えなかった。
代わりに、黒い波形の残る端末を見た。
星詠みの詩。
変奏。
欠落。
補完。
保管。
その語の並びは、まだ分類できない。
だが、不快だ。
そして、ひとつだけ明確だった。
あれは、歌を聴いていない。
由来を読んでいない。
ただ、測っていた。
廊下の通信が、ようやく管制室へ繋がる。
ダ・ヴィンチの声が飛び込んできた。
『今の波形、全館で観測した! アトラス、ボイジャー、ネモ、無事かい!?』
「現時点で損耗なし」
アトラスは答えた。
「ただし、干渉を確認」
『うん、こっちでも見えてる。すぐ管制室に来て。これ、音声ログだけじゃ済まない』
通信の向こうで、警報が鳴り始める。
ネモが端末を握り直した。
「行こう。たぶん、もう始まってる」
ボイジャーは、まだアトラスを見ていた。
「まちがってないよね」
アトラスは沈黙した。
短い沈黙。
「現時点では」
ボイジャーが頷く。
「うん」
「だが、あれは違う」
「うん?」
「あれは、歌を保管物として見た」
アトラスは歩き出す。
紺碧の外装が、廊下の白い光を受ける。
「歌われぬ歌を、未来とは呼ばぬ」
ボイジャーは、その言葉を完全には理解しなかったかもしれない。
けれど、彼は小さく頷いた。
ネモが先導する。
三人の足音が、管制室へ向かって響く。
背後の廊下に、もう黒い波形はない。
だが、アトラスの内側には、さきほどの声が残っていた。
欠落を確認。
補完対象。
正常化候補。
保管に移行する。
アトラスは、振り返らない。
ただ、低く呟いた。
「分類不能」
その声は、誰にも届かなかった。
いや。
届かなかったはずだった。
廊下の奥で、黒い波形が一瞬だけ瞬く。
そして、沈んだ。
深淵の向こう側から、まだ名のない保管者がこちらを見ていた。
この作品の興味をもったところは?
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アトラスのキャラクター性・内面
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ギルガメッシュとの関係性
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王としての在り方・王権のテーマ
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ストーリーの展開
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その他