The Reversed Star――逆位置の星――   作:ほいみん

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FGO二次創作長編『The Reversed Star――逆位置の星――』です。

※独自解釈/女性体オリジナルサーヴァント/ギルガメッシュ×アトラス/本文に文章生成AI補助あり
※掲載イラストは作者による手描きです。

詳しい注意事項・制作FAQはこちら:
【作品案内URL】
https://docs.google.com/document/d/1GdwYLijsN-D6iR4MKAlV2ziDaThI6rrddGUy8nim0KE/edit?usp=drive_link


カルデア小話 その5
誰の裁定か


 山道を曲がった先で、砦は山肌へ食い込むように立っていた。

 

 灰色の石壁には、新しい補修の跡が幾筋も走っている。城門の脇では矢束が運び込まれ、泥のついた担架が次々と治療所へ消えていった。近隣の集落から避難してきたらしい人々も、兵の指示に従って内側の区画へ移されている。

 

 消耗している。

 だが、崩れてはいない。

 

 誰が何をするかは決まっていて、その決まりが今も砦を動かしていた。

 

「うぉっほん。遠路、よく来てくださいましたな」

 

 城門前で一行を迎えた男は、年嵩ではあったが、鎧の手入れも立ち姿も隙がなかった。

 

「名乗るほどの者ではありませんが、この砦の指揮を預かっております」

 

 そう言って、彼は立香たちへ軽く頭を下げた。

 

 その横から、アトラスが問う。

 

「名は」

 

 男は一度、目を瞬いた。

 

「……これは失礼しましたな。私は――」

 

 彼は名を告げた。

 

 アトラスは、その名を記録した。

 

 指揮官は、紺碧の鎧をまとった小柄な王をしげしげと見た。侮るというより、どこへ置けばよいのか測りかねている顔だった。

 

 その時、城壁の上で警鐘が鳴った。

 

 短く、二度。

 

 男の顔から、先ほどまでの柔らかな調子が消える。

 

「報告」

 

 駆け寄った伝令が息を整えるより早く答えた。

 

「北壁外に魔獣! 小型、十数!」

 

「第二隊を北壁へ。弓兵は射程に入るまで撃つな。第三隊は持ち場を離れるな。陽動の可能性がある」

 

 短い。

 迷いもない。

 

 だが、兵たちは疲れていた。

 

 荷を運んでいた者の足が止まり、若い兵が隣の顔を見た。復唱の声が二つに割れ、門へ向かう者と城壁へ向かう者が一瞬だけ交差した。

 

 命令は届いている。

 届いているのに、全体の向きが揃わない。

 

 ギルガメッシュが北壁を一瞥した。

 

「あの程度で騒ぐな」

 

 金の髪が陽を弾く。

 

「我が前で、無様に列を乱すでない」

 

 誰をどこへ動かすとも言っていない。

 それでも、止まっていた手が動いた。

 

 若い兵が背筋を伸ばした。途切れていた復唱が揃う。荷車が再び軋み、弓兵たちは指揮官の命令どおり城壁へ向かった。

 

「伝令は北壁へ。第四隊は門内で待機。追撃には出るな」

 

 今度は、指揮官の命令が一度で通る。

 

 男はその様子を見て、小さく息を吐いた。

 

「……いやはや、助かりますな。私が三度怒鳴るより、英雄王が一度不機嫌になる方が早い」

 

「当然であろう」

 

 ギルガメッシュは鼻を鳴らした。

 

 北壁へ向かった兵から、すぐに次の報告が来た。魔獣は斥候に近い小集団。砦へ本格的に攻め入る気配はないという。

 

「第四隊はそのまま待機。第二隊は二名を残して戻れ」

 

 指揮官が追加の命令を出す。

 兵たちは復唱した。

 そして、動く前に何人かがギルガメッシュを見た。

 

 マシュもその視線を追い、立香と目が合った。

 

 先ほど彼の一声で列が整った。

 だから今度も、彼の反応まで確かめればよい。

 そう考えたのかもしれない。

 

 ギルガメッシュは何も言わなかった。

 

 ほんの一拍。

 

 指揮官の声が強くなる。

 

「行け。命令は以上だ」

 

 兵たちはようやく走り出した。

 

 ギルガメッシュは、指揮権を取ろうとも、命令へ口を挟もうともしていない。

 ただそこに立っているだけだった。

 

 立香は兵たちの背を見送り、それからギルガメッシュを見た。

 

 彼を見ることで、兵は早く立ち直った。

 だから、その後も彼を見る。

 まだ言葉にはできなかったが、その二つが別々の出来事ではないことだけは分かった。

 

     *

 

 北壁の危険が小規模だと確定すると、一行は司令室へ移動した。

 

 その途中、指揮官が何度か咳払いをした。

 

「うぉっほん。英雄王、一つお願いがありましてな」

 

「許す。申せ」

 

「兵どもへ、この砦では私の命令を聞くよう、仰っていただけませんかな」

 

 ギルガメッシュの眉が上がった。

 

「なぜ我が、貴様の兵へそのようなことを言わねばならぬ」

 

 足を止めることなく言い放つ。

 

「貴様が指揮官であろう。己で命じよ」

 

「命じております」

 

 指揮官は困った顔で答えた。

 

「ですが、命じた後に皆があなたを見るのですな」

 

「ならば、我を見るなと命じろ」

 

「それをあなたが仰ると、あなたの命令として見るのをやめるのです」

 

 短い沈黙が落ちた。

 立香は口元を押さえた。

 笑ってよい話なのか、かなり迷う。

 

 マシュは隣で、きわめて真面目な顔をしていた。

 

「もっとも」

 

 指揮官は続ける。

 

「あなたが一声かければ、兵が立ち直るのも事実でしてな。役に立たぬなら、こちらも困るだけで済むのですが」

 

 席を押し出されることには困っている。

 

 だが、その力によって自分の兵が救われたことも知っている。

 

 だから、単純に拒むこともできない。

 

 ギルガメッシュは少しだけ目を細めた。

 

 この男が自分を責めているのではないと分かったのだろう。

 

「……面倒な雑種どもだ」

 

「実務上、どうにも困るのですな」

 

「驕るなよ。我の知ったことではない」

 

 そう言いながら、ギルガメッシュは先へ進んだ。

 

     *

 

 司令室には、砦と周囲の山道を写した大きな地図が掛けられていた。

 

 指揮官は机上へ古い図面を広げる。

 

「魔獣どもは数日おきに山道へ現れます。今のところ、砦を落とせるほどの群れではありませんがな」

 

 指が、砦の下を走る細い線へ移る。

 

「むしろ気がかりなのはこちらです。地下に古い水路が通っておりまして。雪解けに加えて、先日の揺れで水圧が上がっているようなのです」

 

「正確な構造は分かりますか?」

 

 マシュが尋ねる。

 

「増築を繰り返した砦ですからな。残っている図面も、この通り継ぎ接ぎですぞ」

 

 指揮官は図面を見下ろし、少し考えてから続けた。

 

「正直、地下についてはこちらだけでは判断がつきません」

 

「地下水路と第三保管区の処置は、カルデアへお任せしてよろしいですかな」

 

「うん。アトラス、お願い」

 

「承知した」

 

「兵の運用はこちらで預かりますが、その区画の処置はお任せしますぞ」

 

 第三保管区には食料、薬、矢が集められている。

 

 避難民を抱えた今、それを失えば砦の防衛は一気に苦しくなる。

 

 説明の間も、指揮官の顔は主にギルガメッシュへ向いていた。

 

 アトラスは何も言わず、図面を見ている。

 

 紙の上の線を追い、荷の一覧を見て、砦の断面図へ血色の瞳を止めた。

 

「見る」

 

「地下をですかな?」

 

「水路と、保管区を確認する」

 

「承知しました。案内を――」

 

 指揮官はそこでギルガメッシュを見た。

 

「英雄王には、ここでお待ちいただいても」

 

「我も行く」

 

 即答だった。

 

 立香は、なんとなく予想がついた。

 

     *

 

 石段を下りるほど、空気は冷たく湿っていった。

 

 壁を伝う水が、松明の光を鈍く返している。天井は低く、ところどころで根が石の隙間から覗いていた。

 

「……湿気が鬱陶しいな」

 

 後ろから、予想どおりの声がした。

 

「うん。こうなると思ってた」

 

 立香は振り返らずに答えた。

 

「何だ、その返答は」

 

「だって、ギルガメッシュが自分でついてきたんだよ」

 

「我は大洋王の観測を見に来たのだ。この穴蔵の劣悪さまで許容した覚えはない」

 

 先を歩いていたアトラスが言う。

 

「ならば戻れ」

 

「誰が戻ると言った」

 

 やっぱり帰る気はないらしい。

 

 指揮官が恐縮したように振り返った。

 

「英雄王には、上でお待ちいただいてもよかったのですがな」

 

「貴様は黙って案内せよ」

 

「承知しましたぞ」

 

 第三保管区の手前で、アトラスが足を止めた。

 

 壁へ片手を触れる。

 それから床を見た。

 

 敷石の一枚だけが、わずかに沈んでいる。

 

「止まれ」

 

 全員が足を止めた。

 

「話すな」

 

 ギルガメッシュが眉を上げる。

 

「我に命じたか」

 

「音が要る」

 

「よかろう」

 

 水の流れる音。

 どこかで滴が落ちる音。

 その下に、低く、長く続く響きがあった。

 

 アトラスは壁から手を離し、保管区へ入る。積み上げられた箱の位置を見て、支柱の根元へ視線を落とした。

 

 さらに奥の水路まで歩き、石壁の湿りを指でなぞる。

 

「ほう……」

 

 指揮官が声を抑えた。

 

「水路だけでなく、上の荷まで見ておられるのですな」

 

「分離できない」

 

 それだけ答えて、アトラスは再び水音へ耳を澄ませた。

 

 指揮官は感心したように頷く。

 

 立香には、その顔が少しだけ分かった。

 

 この人は、アトラスをきちんと評価している。

 

 ただ、何として評価しているのかまでは、まだ分からなかった。

 

     *

 

 司令室へ戻ると、アトラスは地図の上へ指を置いた。

 

「第三保管区を閉鎖する」

 

 指が、北塔と東詰所へ移る。

 

「内部の物資は、二か所へ分けろ。食料は北塔。薬と矢は東詰所」

 

 次に、地下水路の南側を示す。

 

「ここを切り離す。作業員は日没前に全員退避。以後、崩落区画へ人を入れるな」

 

「第三保管区を、丸ごとですかな」

 

 指揮官が図面を覗き込む。

 

「今のところ、目立った損傷はありませんぞ」

 

「崩落は今ではない」

 

 アトラスは水位の記録へ一本の線を引いた。

 

「水位が次の線を越えれば、床下の支柱が落ちる」

 

「いつ頃ですかな」

 

「日没後」

 

 指揮官の顔が引き締まる。

 

「猶予はある。ゆえに、今閉じる」

 

 アトラスは地図から指を離した。

 

「砦全体の指揮権を求めてはいない。地下水路と保管区の処理について、己が結果を引き受ける」

 

 指揮官は図面と物資一覧を見比べた。

 

 理解は早かった。

 

「なるほど。荷を一か所へ置いたままでは、崩落そのものより、救出と回収で人を失う」

 

 北塔と東詰所を指で結ぶ。

 

「先に分けておけば、区画そのものを棄てられるわけですな」

 

 顔を上げる。

 

「見事なご助言です」

 

 アトラスの血色の瞳が、彼を見た。

 

「うぉっほん。では、英雄王の了承を得て、ただちに――」

 

「助言ではない」

 

 小さな声だった。

 だが、部屋の全員が聞いた。

 

「裁定だ」

 

 指揮官は姿勢を正した。

 

「これは失礼しました。大洋王の裁定として、英雄王へ上申いたしますぞ」

 

「訂正されていない」

 

 指揮官が止まる。

 

 功績の帰属を直されたと思った。

 

 アトラスが直したのは、権限の種類だった。

 その二つは、彼の中ではまだ同じ場所に置かれている。

 

 指揮官は、困ったようにギルガメッシュへ向き直った。

 

「英雄王。大洋王の裁定について、ご了承を――」

 

「我に問うな」

 

 ギルガメッシュは明らかに不機嫌だった。

 

「裁定したのは大洋王だ」

 

 指揮官はすぐに頷いた。

 

「承知しました。以後、大洋王の裁定は、大洋王へ直接確認いたしますぞ」

 

 一見、正しく届いたように見えた。

 

 彼は入口の伝令を呼ぶ。

 

「英雄王より、大洋王の裁定に従うよう命が――」

 

「その命は下っていない」

 

 アトラスが止めた。

 指揮官の口が閉じる。

 

「……うぉっほん」

 

 また分からなくなったらしい。

 

 立香は、今度こそ少しだけ笑ってしまった。

 けれど、アトラスは笑っていなかった。

 

     *

 

 作業の準備が始まると、ギルガメッシュは壁際に立つアトラスへ声をかけた。

 

「我が一言、命じれば済むことだ」

 

 伝令たちには届かない声だった。

 

「我の名を使え」

 

「棄却する」

 

「であろうな」

 

 断られると分かっていた口調だった。

 

 アトラスは、移送に必要な時間と日没までの猶予を確認する。

 

「損失が生じない範囲で、経路を観測する」

 

 ギルガメッシュは何も答えなかった。

 

 その言葉が、現地の誤りだけを記録するものではないことを知っている顔だった。

 

 アトラス自身が、今回はこの経路を止めないと決めた。

 

 人的損失が生じない範囲に限って。

 

     *

 

「第三保管区を閉鎖。第一班は食料を北塔へ。第二班は薬と矢を東詰所へ移せ。日没までに全員退出。残置物の回収は禁止する」

 

 現地指揮官の声に、普段の柔らかさはなかった。

 

 兵たちは復唱する。

 そして何人かが、またギルガメッシュを見た。

 

 彼は腕を組んでいた。

 何も言わない。

 

「命令を復唱しろ」

 

 指揮官が重ねた。

 

「第三保管区を閉鎖! 日没までに全員退出!」

 

 今度は揃った。

 

 作業は始まれば早かった。

 

 指揮官は各班の進行を確認し、通路が詰まりそうになれば順番を変えた。重い箱を扱う者と記録を整理する者を分け、移送先での混乱まで先回りして潰していく。

 

 兵たちもよく動いた。

 

 中でも一人、少し掠れた、よく通る声で年若い兵たちをまとめていた男は、荷の偏りを見るなり配置を変えた。

 

「薬箱を下にするな。そっちは二人で持て」

 

 仲間が笑う。

 

「急に細かいな」

 

「英雄王がいるうちに、面倒なことは全部片づけよう」

 

 男はそう返し、第三保管区の奥を振り返った。

 

「あの小さい軍師、よく気づいたな」

 

 悪意はなかった。

 むしろ、素直な感心だった。

 

 その言葉を聞いた立香は、アトラスを見た。

 

 アトラスは何も言わず、移送される箱の数を記録していた。

 

     *

 

 日が落ちた後、第三保管区の床が沈んだ。

 

 最初は、遠くで大きな石が転がったような音だった。

 

 次に、砦全体を下から押し上げるような揺れが来る。

 

 封鎖された扉の向こうで支柱が折れ、石床が崩れ落ちた。地下水路の一部が土砂に塞がれ、濁った水が別の流れへ押し出される。

 

 だが、そこには誰もいなかった。

 

 食料は北塔にある。

 

 薬も矢も東詰所へ移されている。

 

 失われたのは、空になった区画だけだった。

 

「本当に落ちたぞ」

 

「全員、出てるな?」

 

「ああ。数も合ってる!」

 

 兵たちの間に安堵が広がった。

 

「英雄王は、実に優れた軍師をお連れだ」

 

「さすが英雄王だ。崩落まで読んでいたとは」

 

 称賛だった。

 誰もアトラスを侮っていない。

 能力を疑ってもいない。

 

 それでも、言葉の中心はギルガメッシュへ戻っていく。

 

「うぉっほん」

 

 指揮官が兵たちへ向き直った。

 

「崩落を予測したのは、大洋王ですぞ」

 

 立香は少しだけほっとした。

 

 だが、指揮官は続けた。

 

「英雄王の了承を得て、私が実行したのです」

 

 すべて事実だった。

 崩落を予測したのはアトラス。

 ギルガメッシュへ確認した。

 命令を執行したのは指揮官。

 一つも間違っていない。

 そして正確に並べられたことで、

 

 アトラスが発案し、

 

 ギルガメッシュが承認し、

 

 指揮官が実行した、

 

 という順序が完成した。

 

 立香は、司令室での言葉を思い出した。

 

 助言ではない。

 裁定だ。

 

     *

 

 夜の中庭には、崩落した地下から湿った空気が上がっていた。

 

 立香は、記録端末を開いているアトラスの隣へ立った。

 

「作戦は成功したよね」

 

「そうだ」

 

「みんな、アトラスが正しかったって分かってる」

 

「そうだ」

 

 答えはどちらも即座だった。

 

「でも、違う?」

 

 アトラスの指が止まる。

 

「己の判断は実行された」

 

 端末には、裁定時刻と適用範囲が並んでいた。

 

「結果も、己の観測と一致した」

 

 人的損失なし。

 主要物資の損失なし。

 砦の防衛能力への影響なし。

 

「だが、己の裁定としては届いていない」

 

 立香は、もう一度、崩落した区画の方を見た。

 

「それって、何が困るの?」

 

 アトラスもそちらを見た。

 

「今回は、困らなかった」

 

 その答えに、立香は何も返せなかった。

 

 アトラスは記録を続ける。

 

 英雄王の発話後、復唱と行動開始が統一。

 

 現地最高指揮官の命令伝達時間、短縮。

 

 現地最高指揮官命令後、部隊の一部が英雄王の反応を確認。

 

 行動開始までに遅延あり。

 

 英雄王への照会を経て、現地側が実行。

 

 照会経路、未訂正。

 そして最後に、一行を加えた。

 当該経路を、観測対象として存置。

 

「直さないの?」

 

 立香が尋ねる。

 

「言葉は訂正した」

 

 一拍。

 

「挙動は変わらなかった」

 

 血色の瞳が、記録を閉じる。

 

「記録した」

 

     *

 

 翌朝。

 

 指揮官は少し晴れやかな顔で、カルデア一行へ報告した。

 

「うぉっほん。物資の再配置は完了しましたぞ。これで次の襲撃にも備えられますな」

 

 それから、アトラスへ向き直る。

 

「大洋王の裁定には、助けられました」

 

 今度こそ、正しく届いたように見えた。

 

「次の作戦についても、英雄王とよくご相談いただければ――」

 

 アトラスが彼を見る。

 指揮官の言葉が止まる。

 何かを間違えた。

 それだけは分かったらしい。

 だが、どこが違うのかは、まだ分かっていない。

 

「……うぉっほん」

 

 アトラスは訂正しなかった。

 

「承知した」

 

 遠くで、警鐘が鳴った。

 

 一度。

 

 二度。

 

 昨日よりも長く、重い音だった。

 




活動報告で、制作裏話や本編に採用する場所のなかった掌編などを公開しています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=332978

この作品の興味をもったところは?

  • アトラスのキャラクター性・内面
  • ギルガメッシュとの関係性
  • 王としての在り方・王権のテーマ
  • ストーリーの展開
  • その他
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