The Reversed Star――逆位置の星―― 作:ほいみん
※独自解釈/女性体オリジナルサーヴァント/ギルガメッシュ×アトラス/本文に文章生成AI補助あり
※掲載イラストは作者による手描きです。
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【作品案内URL】
https://docs.google.com/document/d/1GdwYLijsN-D6iR4MKAlV2ziDaThI6rrddGUy8nim0KE/edit?usp=drive_link
音が戻った。
扉が開く。
硬い金属音。
ギルガメッシュが顔を上げると、そこには見慣れた城が立っていた。
肩部装甲。
背部へ張り出す王宮外装。
足回りにも、青い結晶質の外装が戻っている。
数日前まで、休憩室の椅子へ小さく収まっていた大洋王は、何事もなかったかのようにいつもの姿へ戻っていた。
三叉槍を壁際へ置き、席につく。
金属が鳴る。
「大洋王」
「何だ」
「近頃また鎧を解かぬな」
茶器を取る手が止まった。
「開城時の機能低下が確認された」
即答だった。
ギルガメッシュの口元が上がる。
「接吻の高度差であろう」
「一項のみを抽出するな」
「他の項を挙げてみよ」
「…………」
アトラスは考えた。
「……棄却する」
「ははははは!」
「何がおかしい」
「何もなければそう言えばよかろう」
「一項のみを問題全体として扱うことを棄却した」
「では他の項を挙げよ」
「その要求を棄却する」
「増えたではないか」
「違う」
ギルガメッシュはまだ笑っていた。
アトラスは気にせず茶を注ぐ。
王宮外装の再展開に、他の意味はなかった。
閉じたいわけではない。
数日前に確認した履行実績が失効したわけでもない。
問題が一件、残った。
だから対処した。
「それで」
ギルガメッシュが言う。
「その城をどう使う」
「高度を確保する」
「鎧底を厚くしたか」
「それだけでは足りない」
アトラスは椅子から降りた。
王宮外装の一部が淡く光る。
足元に、小さな青い構造体が現れた。
段差にも満たない。
けれど、踏めば身体を持ち上げるには十分だった。
ギルガメッシュの目が細くなる。
「以前も使ったな」
「そうだ」
「我へ一撃入れるために」
「正確には、己(おれ)がお前へ届くためだ」
あの時もそうだった。
防護へ戻すことのできた王宮外装を、足場へ変えた。
守るためではなく。
届くために。
己は、お前に勝ちたい。
あの時は、そう裁定した。
「戦場用の王宮外装を、接吻へ転用するか」
「用途規定に抵触しない」
「そこを疑ってはおらぬ」
ギルガメッシュが立つ。
アトラスも彼を見る。
「英雄王」
「何だ」
「接吻する」
ごく短い間。
前回ほどではない。
「許す」
王宮外装が展開した。
足元へ一段。
アトラスが踏む。
自分で上がる。
自分で近づく。
今度は届いた。
唇が触れる。
短い。
すぐに離れる。
足場も消えた。
アトラスはギルガメッシュを見上げた。
「問題は解消された」
「…………そうであろうな」
ギルガメッシュは何とも言えない顔をした。
解法としては、正しい。
アトラスが始めた。
アトラスが高さを確保した。
アトラスが近づいた。
アトラスが離れた。
誰にも代行されていない。
接吻は、完全に成立した。
その日の茶席で。
アトラスは一度も王宮外装を解かなかった。
*
翌日も、鎧だった。
次の日も。
訓練を終えた後にも。
茶を飲む時にも。
廊下ですれ違う時にも。
硬い金属音がする。
肩部装甲。
背部外装。
足元の高度補正機構。
必要なら、いつでも使える。
接吻したいと思った時、その場で王宮外装を足場へ変えればいい。
相手に屈んでもらう必要はない。
抱き上げられる必要もない。
自分で届く。
運用上、問題はなかった。
一日。
二日。
三日。
ギルガメッシュも、最初のうちは面白がっていた。
四日。
また休憩室。
向かいには城。
五日。
金属音。
六日。
肩装甲。
七日。
背部外装。
八日。
また城。
「…………」
ギルガメッシュが杯を置いた。
「……待て」
「何だ」
「一向に解かぬではないか」
アトラスが顔を上げる。
「必要性がある」
「何のだ」
「接吻可能高度の常時確保」
「常時だと?」
「接吻の発生時刻は予測できない」
「…………」
ギルガメッシュが黙った。
アトラスは茶を飲んだ。
理屈は通っている。
いつ接吻したくなるかは、確かに予測できない。
発生してから王宮外装を準備するより、常時利用可能な状態にしておいた方が確実だ。
しかも。
条件が崩れれば、また閉じるであろう。
そうだ。
よい。
それを認めたのは、ギルガメッシュ自身である。
「お前から提示された高度調整案も棄却済みだ」
「覚えておる」
「現在の方式に手続き上の瑕疵はない」
自分の装備を使う。
自分で高度を確保する。
相手へ支援を要求しない。
双方が合意した時だけ接吻する。
何も間違っていない。
アトラスが問う。
「異議があるか」
「ある」
「述べろ」
ギルガメッシュの目から、笑いが少し消えた。
「貴様は先日、常時外装を維持する必要性は低いと裁定したな」
アトラスが止まる。
「……した」
「では、今の城は何だ」
「新たな必要性が発生した」
「発生したのは必要性か」
一拍。
「それとも、望みか」
アトラスは答えなかった。
目だけが止まる。
以前の記録。
休憩室。
敵性反応なし。
退出経路、正常。
三叉槍、使用可能。
王宮外装、即時再展開可能。
接触運用、正常。
そこに変化はない。
新しく発生した敵はいない。
防衛条件も変わっていない。
増えたものは。
「……己は、お前へ接吻することを望んだ」
「うむ」
「その執行条件を、常時外装維持の必要性として処理した」
「そうであろうな」
アトラスの目がわずかに下がる。
「以前の裁定と、新たな運用判断を接続しなかった」
外装を使うことは、誤りではない。
接吻を望むことも。
届くために自分の能力を使うことも。
ただ。
必要がないと裁定したものを、望みを実行するために常時必要なものとして置き直した。
接続しなかった。
ギルガメッシュが言った。
「我は、貴様が己の裁定を曲げてまで寄越すものなど要らぬぞ」
アトラスが顔を上げる。
鎧を解けとは、言わなかった。
接吻するなとも。
彼はそれ以上、何も決めない。
「……再検算する」
「好きにせよ」
ギルガメッシュは茶へ戻った。
*
記録端末の上に、四行が並んだ。
安全上、王宮外装の常時展開は必要ない。
己は、岸へ接吻することを望む。
実行の代行は求めない。
王宮外装の足場利用は可能。
アトラスはしばらく、その四行を見た。
矛盾はない。
そして、その下へ一行を加える。
己は、望みを必要性へ分類した。
指が止まる。
外装を使ったことが誤りだったわけではない。
望んだことも。
問題は、その望みをいつでも実行可能にするために、
常時外装を維持する必要性は低い。
という以前の裁定を、恒常的に撤回する運用へ移ったこと。
現在の方式では。
開城。
能動的接吻。
その二つが、同時に成立していない。
端末の最後には、以前の問題設定が残っていた。
己の高度をどう増やすか。
アトラスはそれを消した。
新しく書く。
開城状態を維持したまま、己から岸へ届く条件をどう確保するか。
そこで手を止めた。
高度差は、一方だけの変数ではない。
しかし、接吻の実行中に相手へ支援を要求する方式は、すでに棄却した。
現時点で、新しい解はない。
記録を閉じた。
*
次の茶席。
ギルガメッシュは座っていた。
珍しいことではない。
アトラスも向かいへ座った。
翌日。
別の場所。
座っていた。
資料を読んでいる。
その次。
共有スペース。
やはり座っている。
さらに次の日。
廊下脇の長椅子。
座っている。
「…………」
アトラスは見た。
ギルガメッシュ。
椅子。
現在位置。
自分。
一度では、終了条件にしない。
その日は何も言わなかった。
次の日も。
彼は座っていた。
海は毎日、閉じていた。
今度は岸が、毎日少しだけ下がった。
ただし、ギルガメッシュは一度も理由を説明しなかった。
貴様のためだ、とも。
これを使え、とも。
座る。
それだけ。
その高さを何に使うかは、彼の裁定ではない。
数日後。
いつもの休憩室。
アトラスはまだ鎧を着ていた。
ギルガメッシュは、やはり座っている。
アトラスが見る。
椅子。
英雄王。
自分。
直近の着座頻度。
位置関係。
高度。
演算。
「英雄王」
「何だ」
「高度差の調整か」
赤い瞳が向いた。
「ようやく読んだか。遅い」
「申告がなかった」
「我が座るのに、何故貴様の許可が要る」
アトラスは黙った。
正しい。
ギルガメッシュが立つか座るかは、ギルガメッシュが決める。
同じように。
その高さを利用するかは、アトラスが決める。
「……記録した」
ギルガメッシュが鼻を鳴らした。
*
次の茶席。
音がしなかった。
扉が開く。
水青の髪。
三叉槍。
細い肩。
王宮外装は、ほとんど展開されていない。
アトラスが入ってくる。
ギルガメッシュは最初から椅子に座っていた。
赤い目が彼女を見る。
「今日は随分と小さいな」
「その評価には以前回答した」
「覚えておる」
「ならば繰り返すな」
「小さいものは何度見ても小さい」
「……不快だ」
アトラスはいつもの席へ向かった。
途中で、一度。
ギルガメッシュを見る。
高さを測る。
この状態なら。
王宮外装は要らない。
その場で屈んでもらう必要もない。
自分で届く。
茶席は普通に進んだ。
報告。
異論。
茶。
途中で一度、アトラスが席を立つ。
ギルガメッシュの前まで行った。
二人の間には、まだ何も触れていない。
「接吻する」
ギルガメッシュが顔を上げる。
今度は、ほとんど止まらなかった。
「許す」
アトラスが近づいた。
ギルガメッシュは座ったまま。
姿勢を変えない。
抱き寄せない。
アトラスが、自分で距離を詰める。
届いた。
唇が触れる。
短い。
そして自分から離れる。
王宮外装は使っていない。
実行中、岸からの補助もない。
開いたまま。
自分から届いた。
「この高度なら支障はない」
「であろうな」
「常時着座を必要条件とはしない」
「当然だ」
「必要なら己から高度調整を要求する」
ギルガメッシュが片眉を上げた。
「先日は棄却したであろう」
「実行中ではない。接触前の条件調整としてだ」
「ほう」
短い間。
「好きにせよ」
方式は一つではない。
王宮外装を足場にしてもいい。
ギルガメッシュが先に座っていてもいい。
必要なら、接触前に高度の調整を要求してもいい。
その要求に応じるかどうかは、また相手が決める。
一つ増えた。
それだけだった。
航路が。
アトラスが一歩離れる。
ギルガメッシュは追わない。
短い沈黙。
「まだ要るか」
アトラスが彼を見る。
以前なら、もう少し長く検算したかもしれない。
今は一拍だけだった。
「……要る」
言葉は消えなかった。
短くなった。
アトラスが再び近づく。
今度の接吻は、さっきより少しだけ長かった。
それでも、終えるのはアトラスからだった。
ギルガメッシュは何も言わない。
茶へ戻る。
しばらくして、アトラスも席へ戻った。
「次回以降、この配置を適用する」
「勝手に我が椅子まで条約へ組み込むな」
「異議があるか」
一拍。
「ない」
「では採用する」
ギルガメッシュが鼻を鳴らした。
正式な文書はない。
署名もない。
海が開いた状態でも岸へ届くために。
海は、自分で使える足場を持つ。
岸は、自分で高さを変えられる。
どちらも相手の身体を決めない。
どちらか一方へ、届くための負担を固定しない。
使える方法だけが増えた。
その運用を、双方が受理した。
接吻高度条約、批准。
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アトラスのキャラクター性・内面
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ギルガメッシュとの関係性
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王としての在り方・王権のテーマ
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ストーリーの展開
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