『うるっさい!』
俺は低く毒づいた。
走行中のバスの中、OLっぽいお姉さんがシルバーシートに座っている男に怒鳴り散らしている。
なんでも乗り合わせているお婆さんに席を譲れということらしい。
だが男は話を聞いても無視、なかなかの面の皮だ。確かに法的には問題ないが、倫理とか車内ルールとか風聞的にどうなのだろうか?俺と同じ制服な所を見ると、同じく新入生か? まあこのバスに乗っているのはほとんど新入生だが。
俺と同じ年のくせにかなり派手な金髪、染めているのか?
というか、車内でわめき散らすお姉さんも問題だと思う。おおかた軽い注意をしたら無視されて、それで引っ込みがつかなくなったのだろうけどさ。
「あの、……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」
と、助っ人登場。こっちも新入生、派手な色の髪のわりに言ってるのはまともだ。その態度はまぁ、あれだ。
彼女がバスの乗客全員に訴えると、一般席の女の人が席を譲って一件落着。
でも、結局一番かわいそうなのは悪目立ちして、席を変わってもらったお婆さんだろう。
しかしなぁ、俺は窓の外に目をやった。俺は立っているのでよく見える。
目の前にあるのは工場と荒地? 何故か長々と続く満開の桜のせいで気づきにくいが、この辺りは住宅地とか商業地ではない。
頭の中で地図を広げてみると、この先にあるのは工業地区と未整備地区と東京都高度育成高等学校、通称『高育』。
つまりだ、このお婆さんはどこから来てどこに行くのだろうか?
OLさんとかサラリーマンならわかる、仕事場だ。だけどこの先にお婆さんが用事がある場所があるとは思えない。
百歩譲ってこの先にお婆さんの家があるとしても、それはそれで方向が逆じゃないか? 朝早い通勤時間に、家から駅や繁華街に行くなら理解できるけど、家に帰るというのは考えにくい。
まあ良い、所詮は思考実験、戯言だ。
バスの運転手がチラチラ客室を伺っているのも気のせいだし、
バスの天井にやたら新しめのカメラユニットが付いているのも安全対策のためだ。
通学途中の新入生の素行を見るために、下手な役者を雇って一芝居、なんて考えすぎだ。
ほかにはトラブルなどなく、バスは平和に『高育』前に到着。俺を含めた学生が降りるとバスはそのまま発車。お婆さんを乗せたまま。
高育は外部との接触禁止の為か、高めの壁があっちから向こうまで、ずっとずぅと続いている。
この学校の敷地は六十万平米チョイあるそうだ。単純計算して800m四方。その長さの塀がズラリと続いているのは圧巻だ。
同じサイズの工場とかはあるらしいが、ここにあるのはフェンスではなく人の背を遥かに超える『壁』なので、圧迫感が違う。
第一印象は刑務所、というより少年院か?
さて俺の囚人房、もといクラスは、……Dか。
面白い奴がいると良いのだが。
東京23区内に高育規模の敷地を用意するとすれば、埋立地しかないと思います。
なのでアニメでは埋立地にあるとしたのでしょう。
利用価値の高い商業地域に置く理由がないので、自然と外部と遮断された港湾地区か工業地区あたりということになります。
いまでこそ東京の埋立地周りはきれいに開発されてます。が、所謂再開発前にバスでその辺を通った記憶では、とてもご老人が用事があるとこには見えませんでした。
1巻刊行が2015年なので、イメージは再開発前と思うとこんな発想も出ます。
なのですがよく考えれば『東京都』高度育成高等学校とはいえ、23区にある必要はないんだよね。
実は原作の最初の数巻を読み返してみたのですが、高育が埋立地にあるという記述はないのですよ(アニオリ?)
多摩地区とか、さらに東京近辺と考えれば『高育規模』の土地って何とかなります。
昔仕事で行った工業団地はもっと広かったですし。
原作者様的には山の中にあるイメージで、だから山菜定食だったとか?
いずれにせよご老人には縁がない土地ですね。
最後に一つ。
二年生編でフカシではなく、本当に日本を代表するお金持ちのお坊ちゃまと確認できた高円寺くん。
ハイヤーでも自家用車でも社用車でもなく、公共交通機関を利用するのね。意外。