なので今回はヘイト回なオリジナルです。
須藤にOSEKYOUした次の日、
『1年Dクラスの富士宮君、至急生徒会室までお越しください、繰り返します……』
昼休み開始直後、校内放送で呼び出された。
俺は悪いことした覚えはないな、と須藤のほうを見ると、奴は関係ないとばかりに頭を振ってきた。
クラスメイトの猜疑の視線の中、俺は生徒会室に行こうとして、はたと足を止める。で、
「……堀北」
「なに?」
生徒会室って何処? 多分一般生徒は知らないぞ。
トントントン、ノックは三回。知らない人も多いけど基本だよ。
「富士宮です。お呼びとのことですが」
「わざわざすまない」
入室すると、堀北会長が席から腰を上げた。背はそれほど高いわけではないが、相変わらず威圧感がすごい。これで高三か?
席には数葉の書類、昼休みだというのに仕事中だったようだ。隣にはお団子頭の女子、秘書子さんか?
「というか、五時間ぶりですね」
と返すと秘書子さんが首をかしげる。顔見知りなら、わざわざ呼び出す意味はないだろう。
「彼とは早朝ランニングで顔を合わせる仲だ」
「はぁ?」
「昼休みをつぶして悪いな、その代わりというとなんだが、昼食を用意させてもらった」
と、確かにテーブルの上に購買弁当が三つ、抜かりはないということだ。
「さて、食事の前に……」
会長の気配が鋭くなる、おいおい本当に高校生か?
「先月のアレを見せてもらおう」
なるほど、幾つかパターンは予想はしていたが先月の分か。なので俺は携帯端末を取り出すと、先月のアレを再生する、つまり、
『ニャーォ』
「あ、可愛いです」
夜一さんがゴロンと寝転ぶ、例の動画ファイルだ。
堀北会長は一瞬あっけにとられたように表情を緩めると、一瞬後には目の奥に理解の色が浮かぶ。
「で、お前はソレをどうするつもりだ」
「別に悪用するつもりはないですよ」無害を主張するため、手をパタパタ振る。「今のところはですけど」
「そうか、だが念のため『その時の』ファイルは送っておいてくれ」
とアドレスを告げられたので、夜一さんファイルと堀北兄妹DVファイルを送信する。ついでに、
「あのう」
と秘書子さんが物欲しげな顔をしたので、夜一さんファイルとおまけにモルガナファイルを送っておいた。秘書子でなくて書記の橘さんなのね。彼女はウキウキという感じでお茶を入れ始めた。
堀北会長としては彼女がいると決定的なことを口に出せないので、何故此処いるのかは不明である。もしかして会長としても彼女が此処にいるのは想定外なのかもしれない。ひょっとして橘先輩としては会長と一緒にお弁当を食べたかったのかと思うと、なんか微笑ましいか?
俺の携帯端末に入学以前のファイルがあるということは、携帯端末はなんらかの外部機器が接続できているということである。
つまり携帯端末にあるファイルを消しても、バックアップは残る可能性が高い。
なのでそれを消させるより、使うなと釘を刺しておいたほうが良い。それが会長の判断だ。DVファイルを送らせたのは、俺が使ったファイルなのか、判断するための確認用だろう。
お昼ご飯は、カツ丼弁当だった。意外と洒落が効く人なのかと感心。なので口も軽く、
「実は昨日のことで怒られるのかと思っていましたよ」
「あれは喧嘩ではなくてお遊びだったんだろ」それはわかるか。「怪我人が出たわけじゃない。この学校はそのくらいで目くじらを立てるほど、窮屈ではない」
「やっぱり怪我させるのは拙いんですか」
正当防衛を主張する須藤を思い浮かべる。あれはしっかり怪我人がでていた。
「お前も中学時代のように暴れると、不味いことになる」会長の声に威圧感が増した。「お前も須藤のようになるぞ」
よくご存じで。つまり、
「生徒会って私たちのプロフィールを閲覧できる、ってことですか?」
結構重要な情報だ。
「生徒会だからではない」
「?」
「俺だから知っている、というだけだ」
「なんか、格好良いですね」
というと橘先輩がうれしそうに微笑んだ。結構可愛いお姉さんだ、こういう姉が欲しかった。
だけど、
「そういえば富士宮くんは堀北会長の妹さんと同じクラスなんですよね」
それを聞いちゃう?
「どんな娘なんです」
橘先輩、おっとりした感じの人かと思えば、すごい心臓だ。
「あれは孤独と孤高を取り違えた馬鹿な妹だ」
堀北会長は聞いて欲しくないという感で彼女の興味を遮る。だが堀北が孤高? 孤独? あれはそんな良いものじゃない。堀北会長と話をしてわかった、。あれはただの不良品だ。だから、
「あれは孤高とか孤独とか、そんな格調高いもんじゃないですよ」
「ほう?」
続けろと暗に促される。綾小路を観察していると、良く一緒にいる堀北さんも視界に入る。ある意味わかりやすい人物像なので、俺なりのプロファイリングは出来ている。
「そうですね。例えば彼女にはお利口で強くて格好いいお兄ちゃんがいたとします」
「幼い日の鈴音ちゃんはそんなお兄ちゃんが大好きです」
「なのでそんなお兄ちゃんしか目に入りません」
「クラスメイトとか周りの子供はお兄ちゃんに比べればカスです」
「カボチャやジャガイモと同じです」
「意識する必要すらありません」
「そんな風に育っていれば」
人を人と思わない、
「お兄ちゃん以外は傷付つけようと、罵ろうと、気にも留めない」
「……ただ一人のボッチが出来た。多分、そんな感じですよ」
彼女は孤高なんじゃない、周りの人間に関心がないだけ。だから須藤以下に身勝手だ。
コンパス攻撃を受けた綾小路なら同意してくれるだろう。
「耳が痛い話だな」
「ちょっと、それは酷くないですか」
と橘先輩が唸る。
「ならあなたが彼女を調教したらどうですか」貴方たちの近くで。「生徒会に引き込むなりして」
「それは無理だな」興味深げな会長のレス。「何とかする方法はないか?」
この人マジか? なので少し考える。
「自分より優れたもの、親しい友人。あとはメタな話、恋人でもできれば違うかもしれませんね」
「恋人!?」
変な目で俺を見る。
「まさかブラコン全開で、俺の妹に近づく奴は許さん! とかいうつもりですか?」
「さすがにそんなつもりはないが」首を傾げ「……親しい友人か、君はどうだ?」
「ははは」ご冗談を。
「俺にはマイ、Bクラスの高遠がいますしね」乾いた笑いを浮かべる。「あれはあれでサバサバしたようで、実は重い女なんですよ。俺は彼女一人で精一杯です」
思わず浮かべた笑みをどうとったのか、橘先輩がホウと息を漏らす。
「いっそのこと、彼女の友人に任せるというのはどうですか?」
「涼音の友人? ああ、彼か?」
「綾小路は色々面白い男ですよ」
第一、
「兎に角、俺は堀北にこれ以上かかわる気はないですよ」
「なぜだ?」
「彼女は金に汚い」
「? そんな覚えは」
堀北会長は意外そうな顔をした。思い当たる節がないらしい。なので、
「一か月前のことです。俺は堀北のためにポイントを立て替えました」
須藤の点数の件だ。
「で、あとになって、彼女は俺に返す必要はないとか言ってきました」
私たちが借りたのは高遠舞人という人間だ、だから富士宮直樹に返す必要はないと。ちょっと揶揄っただけなのにひどい話だ。茶柱にも文句をいったが、民事不介入とかお役所くさいセリフではねつけられた。この時期の三万は痛い。
「……ああ、なんかすまないな」
細かい事情を聴くと流石に悪いと思ったのか、堀北会長は携帯端末を取り出すとポチポチ、Piと鳴った俺の携帯端末を見ると53万の入金。
「わかっていると思うが、迷惑料と『口止め料』だ」
「……わかりました、口外しませんよ」
ちぃ、堀北会長を甘く見すぎた。想定外のシチュエーションでの口止めだ。
会長は口止め料を払う機会を狙っていたということだ。これで俺が何かに使ったら俺が悪者ということ。
正直使う気はなかったが、いざという時の切り札にはしたかった。それを無効化されたということ。高育史上、最高の生徒会長という噂は伊達でないということか。高遠にも釘を刺しておかないと。
だが堀北会長の実力、確認させていただきました。
教室に帰るとクラスメイトがワッと。
「昨日の件、問題になったの?」
と聞いて来るので、そっちは問題ないと返す。安心する皆に、
「やんちゃしてた中学時代のことでネチネチ突っ込まれて大変だったよ」
と俺は櫛田にハハハと笑う。
「なんか生徒会メンバって、生徒の中学生時代のコト調べられるらしくてね?」
櫛田の顔色が一瞬変わる。が何事もなかったように元通りに。
「考えてみれば中学時代の事、茶柱先生は知ってるだろうし、副担任や学年主任も知っている気がするんだよね。この学校って個人情報管理どうなってるのかな?」
綾小路に変化なし、平田と櫛田にわずかな緊張。
「まあ、多少のことがあってもこの学校で三年間、問題なく過ごせばお国が何とかしてくれるでしょう」
経歴ロンダリングだ。
「それに、俺は警察沙汰にはなってないし……」
「「「いや、十分やばそうじゃん」」」
「彼女は金に汚い」
このネタをやりたかったから、堀北兄妹関係イベントは二巻分に回した次第です。
ただ単に直樹くんに揶揄われたからポイント返さないぞ、というお子様な対応です。初期北さんは人として本当にダメダメ。彼女を調教しようとした初期小路君は本当に何を考えていたのでしょうか?
あと、
「それに、俺は警察沙汰にはなってないし……」
オリ主が時々いう自虐セリフですが、彼は実際に暴力事件を含む問題行動は犯したことはないです。
スペックが高いオリ主をDクラスに入れるために、細井理事が高育にねじ込んだ偽情報です。なので『警察沙汰にはなってない』は嘘ではないのです。
勿論マイちゃんも知っていて、ノリノリで口裏を合わせてます。