『うるっさい!』
俺は口の中で毒づいた。
授業は……、これ授業か? 幼稚園のおままごとでないか?
お喋りする者、携帯をいじる者、中には腕を枕に熟睡する剛の者もいる。こういうのを学級崩壊というのか?
俺の周り、隣の席の松下とか反対側の伊集院とかはまだましだが、とても授業に集中できない。
入学早々10万ポイント、現金10万円相当を貰ったことで、何かのタガが外れたみたいだ。生活費込みで考えればたいしたことないのにはしゃぎ過ぎ。
イライラしたまま数十分、チャイムが鳴ると教諭は挨拶もなしに教室を出て行った。
さて。
「おぅい、富士宮。飯行こうぜ!」
声をかけてきたのは伊集院、しかし。
『……富士宮? 誰?・・・ああ、俺か!』
セルフ突っ込みなボケをかますと、相手に向き直る。
「ああ、急ごうぜ。席が無くな……」
「チョイ待って、私も行く」
と声をかけてきたのは隣の松下さん。あれ?
チラリと彼女の顔を観て、教室の中ほどを見る。イケメンな平田と彼を取り巻く女生徒たち。その中心にいるのは松下さんと仲が良い軽井沢。
なるほど、あの集団で食べるのはね……。
なので、まじめに授業を受ける仲間の俺に声をかけたようだ。
では真面目仲間としてはと、教室の後ろに目をやると。いつものように綾小路と堀北がじゃれあっている。
あいつら本当に仲良いな。つまり、邪魔しちゃ悪いということだ。
なのでこの三人。
「OK、行こうぜ」
伊集院はもちろん女子が混じるのに嫌な顔はしなかった。
今日のお昼は山菜定食に別売の温泉卵。なのだが
「えー、富士宮君。それ食べるの?美味しいの?」
顔をしかめる松下さん。
「もちろん不味い、食べてみる?」
と皿を差し出すと嫌な顔で手を振る。
「不味いならもっと良いもの食べればいいじゃん」
ポイントならあるしと。と、それは甘い。
「俺は朝昼晩とコンスタントにおいしいもの食べたいからね、だから今日はポイント節約する日!」
「だからポイントはまだあるでしょ?」
この子、家計簿とかつけないな。
「まだ自炊してないから、晩御飯はケヤキモールで外食でしょ。朝昼晩と食べて、学校の帰りにお茶したりラーメン食べたりすると一日2000ポイント位飛ぶのよ。一か月で6万ポイント」
両手で六と出す。
「寮の部屋に冷蔵庫と電子レンジと湯沸かしポットはあるけど調理器具なし」
「うんうん」
「住みやすくするために小物とかクッションとか食器とかもいるし、アレが欲しい」
「アレって?」
「炊飯器、お高い炊飯器はご飯が美味しく炊けるのだよ」
「……お前って意外と家庭的なのな」
「いや、良いことだと思うよ。私関心しちゃうな」
松下さんに褒めてもらったので良し。
「正直、今月10万ポイントでギリギリだよ」
「なるほど、そういわれるとね」
快適な1人暮らしのためには初期費用が掛かるのだよ。
「だからこの不味い山菜定食を」
山菜を一口、うんエグイ。……、ん、なんか閃いた。そうか、使えるぞ。
「そういえばさぁ、この学校、実は理事とかいるじゃん」
「え? そんな人いたっけ?」
少なくとも入学式で理事長のなんとかさんは、なんか偉そうにお話していたぞ。
理事がいて、理事長がいて、理事会があるんだよな?
「あれ、何してるのかと思ったら……」
老害で理事な爺さんが
・最近の若い者は苦労が足りない。
→ワシが若いころはこんなまずいものしか食べられなかった。
→高育の生徒も山菜定食でも食べて苦労しろ
とかでメニュー決めてる。
「とか?」
「まさか!」と二人は笑うけど、
観光地だって山菜は山で採ってくる来るんじゃなくて栽培だよ、コスト考えると普通の野菜で定食作るほうが絶対安い。
なんらかの意図がないと山菜なんて出さない!
「えーと」
「いわれてみると確かにそうなんだけど」
視線を泳がせて、
「「……そんな理事っていらないね」」
ところで国営の高校に理事や理事長っているもんだろうか? 私は県立高校の出身だけど理事が居た覚えはないです。
調べたところ、学校の運営方針を決める機関として私立高には理事会が必要なそうな。
公立高校の場合、その辺は教育委員会とか文部科学省が決めるので不要みたい。
高育の場合は国策で動いているので、お役所というより政府機関が直接動かしている筈。
つまり理事というのは通称で、実体は日本政府が大好きな、内閣直属の有識者によるナントカ委員会なのかも?
あと、原作二巻を読み返したら、綾小路君が地の文でこっそり『寮の食堂で食事』などと言っている。
だけど一巻にはそのような表現はなかった。二巻からの話なので食堂は五月から稼働ということでよろしく。
だって原作小説だってアニメだって二次小説ですら、寮の食堂でのシーンなんて見た覚えがないんだもの。
そんなのあるの、気づかないよ。