しかし黒幕が誰かわからなくなってきましたね。野党議員にジョブチェンジした今のパパ小路に、二次小説で良く発揮される強権はないだろうし。もしかして以前にホワイトルームを後援していた財団X的なものが居た? またはゴル〇ム!
『眩しい』
俺はゆっくりと目を開いた。そこは、
『知らない天井』ではなくテントの中。ああ、野郎用のテントの中か。数秒考えて無人島試験の最中だと思い出す。
しかし、暑い。太陽に焙られたテントは熱を帯び始めている。蒸される前に外に出たほうがよさそうだ。テントを出ると広場と釣り堀。特に変わりは見られない。滝まで行って、頭を突っ込み、頭と一緒に顔を洗う。髪の毛も湿ってしまったが、この暑さですぐ乾くだろう。
……キューティクルとかやばそうだが一時的なものだ、眼をつぶる。
ランニング、という訳にはいかないが朝の柔軟体操をしていると綾小路が、少し遅れて平田が起きてくる。おはようとか挨拶をしていると侵入者。よく見るとBクラスの神崎だ。朝の散歩?をしている最中にDクラスのキャンプ地を見つけたらしい。つまり俺達より早く起きたのか? いや、ウチのクラスのように夜にキャンプファイヤーではしゃがないで、大人しく早めに寝たのかもしれない。
知らない顔ではないのでしばし雑談し、ついでにBクラスのキャンプ地も教えてもらう。あまり離れた位置ではない。というかこの狭い島内でキャンプ候補地として用意されたのは、南側斜面にある限られた土地だけだ。そう離れてるはずがない。ほら北側って湿っていてキャンプ地には向かない気がするだろ。
栄養食の味気ない朝食と点呼を終えると、さてどうするかと考える。ポイントは節約しなくてはならないので、取れる行動は限られている。
とその時、
「なんだよお前ら!」
池の怒鳴り声。覗いてみると二人の男子生徒。……今度は知らない顔だ。
それがなんか、浜辺に来いとか言っている。で、なぜか視線は俺のほうを向いている?
平田と今後の行動について話しているよりは面白そうだ。折角だ、行ってみるか。でもその前に。
広場で生徒達が動いている。烏合の衆でなく、何らかの意思に基づいた動きだ。流石Bクラス、統率が取れている。
身を隠すこともなく堂々と近づくと、
「あ、富士宮くん!」
顔見知りの女生徒が気づいてくれた。で、ニヤニヤと、
「なに? 彼女?」
と聞いて来るので、
「いや、普通に偵察」
と言ったのだが、
「高遠さん! 彼氏が来たよ~」
と呼ばれてしまった。Bクラスでも恋人扱いかよ。しばし待ち、
「おぅ、良樹!」
と奥の方から駆け寄ってくる高遠。笑みは浮かべているが、どことなく元気がない。さすがにスルーする訳にもいかず、仕方なく両手を広げ迎えると、
「お腹が空いた!」
と躊躇わずに抱き着いて来る。推定D+のナニかも空腹のためか、普段より元気がない。
流石に食べ物は持ってないので頭をちょいちょいとなでていると、
おお、とBクラスの面々の目が生暖かい。彼らは良いとして、険しい眼を向けてくる相手は覚えておく。細井さんに報告案件だ。
「いや~、暑いですね!」と揶揄ってくる来る一ノ瀬に「南国だからね」と返す。で、
「しばらく借りて良い」と聞くと「点呼までには返してね」と満点の答え。Bクラスとしても作業量はそれほどないようだ。
一ノ瀬と神崎に許可を得て、高遠にBクラスのキャンプを案内してもらう。さすがにDクラスの上位互換、良い環境を作っている。初期投資が終わっているためそっくり真似はできないけど。ビニール袋を使ったクッションは使えそうだ。で、
「井戸?」
「そう、今朝からは全員で共有して井戸水を使ってるの」
昨日のうちに何人かにモルモットになってもらって、安全性を確かめたのだそうだ。
これが普通の井戸なら一日二日で安全性が担保できるとは思わないんだけど、この島だからな。
このサイズの島に、十分な飲み水が採れる井戸があるわけがない。これも学校側の仕業だ、問題はないだろう。
一口飲ませてもらったのだが、滝の水との違いがわからない。残念ながら、俺は利き水ができるほど風流な人間ではないようだ。
あとは、そうだ大事なこと!
「Bクラスって全員居る? 何人か行方不明ってない?」
と聞くと、皆いるよという答え。だけど、
「一人Cクラスの男子がいるよ」
と、マイが俺に抱き着くように耳打ちしてくる。
Bクラス全員の顔を知っているわけではないが、なんか動きが違う男子が一人。
「なんか龍園君に殴られて、クラスを追い出されたんだって」
それは周りのみんなに聞こえるように。ふーーん、なるほど。こちらを見返す高遠に眼にも好奇の色がある。
「じゃあ、見に行こうか」
ヒョイと肘を向けると、マイはおうとばかりに腕を組んできた。
「おお!」
「凄いね!」
Cクラスのキャンプ地に行くと、そこはレジャーの真っただ中だった。
パラソルの花が咲き、バーベキューの良い香りが漂っている。
そんな中、水着姿の女の子が闊歩している。なにがどうしたモノか、皆セパレート、というかビキニ姿。自信があるんだな、というか似合っている。多分バカンスにあわせて新調したモノだろう。……良いな、Dクラスは水着を新調できるようなポイントはないんだ。
水着はおいておくとして、他にも色々派手に使っている。実は機材購入といっても消耗品以外はレンタルで日割り可能だ。初手で派手に使ってもそのあとは……
なるほどとCクラスの戦略を考えていると、
「……とんでもないことをするものだわ」
キャンキャン吠える女生徒の声が。誰だか予想できるなとそちらを見ると、想像通りの堀北さん。もちろん保護者の綾小路付き。高遠と顔を見合わせ苦笑する。で、
「やあ、堀北。こんなところで奇遇だな」
と一応彼女に声をかけ、だが涼しい顔で堀北さんをあしらっていたCクラスリーダーに、よお、と手を振り近づいていく。一方的に因縁をつけられただけだが、彼、龍園とは顔見知りだ。
「あなた達、何しに来たの?」
自分の行動を棚に上げたセリフだ。だから当然、
「勿論」腕をちょいと開けば、高遠はそれを抱きしめるように腕を組んでくる。「「甘酸っぱいデートだよ♪」」
「……お前たち、そのフレーズ気に入ってたのか?」
「何となく」
「ねぇ♪」
「ブーッ」
と何が受けたのか噴き出したのは龍園。
「なるほど、お前たちはそういうスタンスなのか」眼の奥に明らかな興がある。示してしまった何かを誤魔化すように「で、デートの最後はシッポリ青姦か」
粗野な雰囲気のわりに意外と難しい言葉を知ってるな。まあアレな事だからか?
「あ、あおって!!」
と何かなんかあわあわしている堀北さん。意味知ってるんだ、意外とむっつり?
チラリと龍園と目くばせ、彼も意図が分かったよう。なので、
「ふーーん、分かるんだ。堀北さんって」
「結構スケベなんだな」
俺と龍園の視線に負けた様に
「だ、だって!」
「だってって?」彼女の相方に目をやる。「綾小路は意味わかってないみたいだよ」
「え?」
と視線を向けると普段より無表情な男。わかった振りすらしていない。だから流れを変えよう。
「で、だ。悪いけど」組んでた腕を解いて、俺は高遠の腰に手を回す。初めて触れるが想像通り細い。「こいつはお嬢だからね。少なくても最初はベットの上でないと家族が煩いんだ」
流石に高遠はこれくらいで動じないか。
「折角だ、肉でも食っていけ」
と龍園は近くで肉を焼いていた男に合図。黒っぽい肌の巨漢。目立つから覚えている、確か山田君だ。山田君は『OK, Boss』と、焼けたばかりの肉串を差し出してくる。
横目で見てたが小細工していた感じはなし。だから、
「Oh! thank you!」と受け取る。
「ありがとう、山田君!」
勿論、高遠もニコニコ顔だ。
「やめなさい!、みっともないわよ」
などと堀北さんがなんか言ってくるが無視。つまり、
「これは戦略なんだよ」「そうなのよ」
?な堀北さんに高遠は、
「こうやってご飯をもらえばその分Cクラスの資材は減っていく。これは兵站を叩く、高度な戦略なのですよ」
「おお」と感心したのは綾小路だけ。堀北には共感してもらえなったようだ。
肉串に興味深々な綾小路を引っ張って、どこかに行ってしまう。と行っても行く場所は限られている。馬鹿をやらないと良いのだけど。
まあ、いただいた分、情報料は払おう。なので、
「そういえばCクラスって全員居るか? 何人か行方不明になってないか?」
と問うと、龍園は
「逆らった奴がいたから追い出してやったんだよ、軽く仕置きしてやってな」
と手で頬を叩くような動作を見せる。つまりだ、
「聞いたな、マイ」
「確かに、良樹」
「ん? なんだ」
と意味が分からないような龍園。だから親切な俺は教えてあげる。
「傷害っていうのは親告罪じゃないんだぞ」
「はあ? お前、何言って……」
「ここは日本なんだ。Cクラスのローカルルールや、高育の決まりより日本国の法律が優先されるんだよ」
意味不明という顔な龍園。俺はさらに続ける。
「お前に殴られて、追い出された生徒が教師に見つかったらどうなると思う?」
少なくてもBクラスに保護されたナントカ君は龍園に殴られたと話している。つまり学校側は殴られた本人の意思を無視して、龍園に処罰を与えられるわけだ。
「Dクラスの近所にも殴られたポイ女生徒が流れ着いてね」
「ほう、お前らに助けを求めた「い~や!」……」
なんか疑問を浮かべた龍園に、
「教師を呼んで引き取ってもらった」
「お前ら!、先公に泣きついたのか!!」
なので当たり前だろ、と嗤いかける。今はあくまで学校行事中だ、クラス内の問題ならともかく、他クラスの問題なら教師に任せるのが当然の流れだ。
「学校内ならCクラスの担当がもみ消せたかもしれないけどね。今は各クラスの担任、副担任、運営方総出で動いているんだ。監視の目は逆に普段より厳しいぞ」
Dクラスの処にいた女生徒に暴力痕があれば、当然Bクラスに保護された男にも調査が入る。彼を学校側が引き取ると言えば、お人よしのBクラスでもそれに嫌はないだろう。
「試験中はお咎めはないだろうけど、船に帰ったら呼び出しくらうんじゃないか?」
「く、クク。そんなこと……」
笑い飛ばそうとしたが、ダメだ、顔が引きつっている。
「で、な!」
「なんだ?」
サッと手を出す。
「情報料」
「なに!」
「学校側が動く前に大事なことが知れたろ。対策を考える時間が出来たということで」で、山田のほうを見て、「あと一本ずつで良いぞ」
「チッ」
舌打ち一つつつも、龍園の指示で肉串もう一本ゲット。で俺の分は、
「ほれ」と高遠に渡すと、
「わーい、良樹も龍園くんも大好き」と満面の笑みで受け取る。
?と変な顔をする龍園に
「こいつはこのルックスの癖に、実は腹ペコキャラでな」
とばらすと流石に恥ずかしいらしく蹴りが来た。高遠の蹴りはパワーがフルでしっかり痛いんだ。
Cクラスを離れ、次はAクラスに。
こっちは、完全に塩対応だった。俺達の前に某カップルが来て、喧嘩を売っていた模様。
対応に出た戸塚とかいう生徒はBクラスの高遠はともかく、Dクラスの俺への当たりはかなり悪い。
まあ、堀北はともかく、綾小路も来たのなら何らかの成果はあった、のかもしれない。
で、最後はDクラス。
キャンプの出来としてはBクラスには及ばず。高遠としても見るものはないだろう。
ただし流石に川を抑えているのは驚いたようだ。水をチャプチャプして、水浴びするには浅いと残念がっていた。
高遠が来たのに気づいて佐倉や松下が出迎え、百合百合するのを見るのは眼福だね。
偵察が終わって、高遠をBクラスに送ってるときだ、
「ねえ?」
「なに?」
「Cクラスで気になっていたんだけど」
?と返すと、
「……アオカンってなに?」
何も言わないから流したと思っていたが、実は気になっていたのか……
「えーとね……」
「ん?」
と、彼女は無防備に下から顔を覗き込んでくる。なので仕方なく……
二度目のマイちゃんキックは、さっきのモノより痛かった。
二次小説ではよく無人島に水着持ち込みは不可とかになっていますが、原作小説では持ち込み可になっています。Dクラスは例の幅10メートルもある川?で水着に着替えて水浴びしています。また山内の泥かけの後は、堀北さんでさえ水着に着替えて川で髪を洗っています。(アニメでは下着姿で滝行してますが)
そもそもバカンスという名目で島に連れてきたのに、手荷物検査で何の持ちこみを制限したのだろうか? バカンスで使えそうな道具を制限するのは理由付けが難しいと思う。
バカンスに使えるものは可で、キャンプに使えそうなものは不可だとすれば理解できるが。
なのでナオキ君はバカンス用品と言えるものをそこそこ持ち込んでいます。