家に天使が来た話 作:ナニワのおっちゃん
今日は土曜日。
あの後、俺達は普通に寝た。
俺は寝れなかったが。珈琲を飲んだのがまずかった。カフェインで寝るのに時間がかかった。
...それで。
俺達は約束通り、今はデカめのショッピングセンター的な場所にいる。
そして。
今、気分が悪い。
人目を引くのだ、
前に、人形みたいだ、と表現をした。つまりところ、綺麗ではあるのだ...人間とは思えないほどに。
まあ、天使ってのは外見がよくなきゃあ成立しないんだろうが。
...もしくは、化け物じみているか。
よかった、聖典で見るような悍ましい天使がウチに来てなくて。
「そう思いますよね?やっぱり先輩、外見が怖いんですよ。」
「読むな。家にいないからって。」
結構通りかかる人が、俺達の方を見ているのを感じる。
「...ねえ、あの人女の子を連れまわしてるわ。」
嫌な囁きも聞こえる。
「天使には性別はないんですけどね。」
「黙れ。お前が何か話して、聞かれでもしたら面倒になりそうだ。」
「はぁい。」
「曲がりなりにも天使なんだから、もう少し天使らしい振る舞いをしてくれ。」
こいつが、ずーっとウキウキなのだ。...車でここに来たのだが、乗ってる間も鼻歌やら降りても跳ねながらついてきたり...子供なのか?
「ウキウキしてるだけです。だって、人間の文化にしっかり触れるのは初めてなんですもん。」
「お前、一回降りたんじゃないのか?」
「ええと、だいぶ昔の話ですので。こういう、所謂現代的な場所に来るのはこれが初めてなんです。」
こいつもこいつで、謎が多いな。なんでわざわざ降りて来たんだ?
「業務機密です...迎えに来た先輩がいいよって言ったら、多分話せるので...すいません!」
「まあ俺は結構どうでもいいから、別に話さなくてもいいよ。」
「んで、良い物は見つけたか?」
俺達は今、ショッピングセンターの服屋にいる。
こいつの私服を見繕って、部屋着とかも買わなければいけない。
「おい。ところで、お前、下着とかはどうするつもりなんだ?」
「あぁ~。えーとですね。さっきも言った通り、天使に性別はないんですよ。」
「なので、適当にフィットするサイズを...あ、すいません。」
店員に話しかけに行った。サイズを測ってもらうらしい。
今は、アイツは俺の私服を着ている。もちろん、無難な物ではあるが、女性的な容姿である天使には似合わない。
というか、ダサい。
俺自身のファッションセンスが不安になって来た。
あいつが好きに選んだものだからかもしれないが、短パンにストライプのTシャツは...小学生しか着ない。
「...そうなんですか...?」
そんな犬みたいな目でこっちを見るな。
「...だから、買いに来てるんだろ。好きなの選べよ。」
「やったあ!」
自分で言うのもなんだが、俺は高給取りだ。
人を一人養うくらい、どうってことない。
やろうと思えば、3人くらいは多少暮らしは難しくなるが、養えもするだろう。
...だが。
この出費はやばい。
「見てください、これ!」
アイツが持ってきたのは、たくさんの服。
随分待った。だいたい、2時間程度だろうか。どうやら、こいつは気に入った物を片っ端から持ってきたらしい。
店員が若干ヒいている。大丈夫だ、俺もヒいている。
腕に...10本くらいハンガーが下がって、それが両腕分。うち、どうやって使うのか全く分からないダサTがある。
「ダサくないです!」
「うるさい。...お前、それ全部買いたいのか?」
「はい。その、もちろんその分働くので!」
「...働き方を教えるのは俺なんだが?」
「うっ。」
「...俺が高給取りでよかったな、本当に。」
「買ってくれるんですか?!」
「お前、この先覚悟しろよ。」
「えっ。」
...結局、買った。
俺の家のクローゼットに入らなかった。
ひとまず洗濯竿にひっかけてある...お前、どれだけ俺の家に居座るつもりなんだ?
「...えっと、先輩が迎えに来るのがいつになるかわからないので...何年単位、かも。」
「...」
「す、すいません...」
「いや、受け入れたのは俺だしな...」
別に、嫌じゃないかも。なんとなく、そう思った俺がいた。
やっぱり、一人は寂しかったらしい。
「まあ、お前にはこれからキリキリ働いてもらうからな。覚悟しろよ。」
「が、頑張ります。」
さて、俺は今まで、散々後悔しただのなんだの挙げてきたが。
特に今までの行動を後悔したのは、ここだった。
奴は、とんでもなく...不器用だった。
「あのな、こうトントンって入れるんだ」
「は、はい...」
料理をさせてみた。
最初は、簡単なのからやった。
「台所に立つ時には、必ずエプロンをしろ。俺がいつも使ってる奴が、ここにかかってる。」
「はい!」
「それと、手を洗え。お前には、基本的に俺がいない時に家事をこれからやってもらう。」
「は、はい!」
「電子レンジは、こう使う。ここにボタンがあるから、あたためと解凍を...」
「なるほど。」
「コンロは、こうだ。ここで火、ここで換気扇。火を使う時は、必ず換気扇を付けろ。」
「...えーと、ここが...はい。」
何時間か経って。
調理器具、ある程度の機械の使い方はわかったらしい。
「...お前さ。」
「はい。」
「なんかしたい事とかないの?」
今は一息ついて、雑談タイムだ。
「ええと...今日の買い物とかはそうだったです。」
「他に。...あんな買い物ずっとされたら俺が破産する。」
「...うーん...」
「まあ、なんだ。せっかく天使様に人間界に来てもらってるわけだし、楽しんでもらわなきゃな、と思ってな。」
「えっと、ありがとうございます?」
「天界は退屈なので、もう既に結構楽しませてもらっては頂いてるんですけど...」
「あ、これ美味しいですね。なんて食べ物なんですか?」
「カレーライスだ。」
「甘くて...うーん、手が進みますね。...美味しい物、たくさん食べてみたい、とか?」
「俺が作れる範囲なら、手伝ってやるよ。」
「...!ありがとうございます!」
「お前に家での過ごし方とか教えてたら、俺の休日は溶けちまったし、俺は明日からはまた仕事だ。」
「多分、退屈だろうし、やりたい事でも探してみろ。」
「それこそ、今日使い方は教えたし、少しの料理くらいはできるだろ?」
「やってみます!」
「色々試してみてくれ。」
「はい、泊めて頂いてるのに色々やらせていただき、ありがとうございます...」
「ああ。俺は、もう寝るからな。」
「私も、そうします。おやすみなさい。」
そういうと、奴は柔和な笑顔を浮かべた。
こう見ると、しっかり天使してはいるんだけどな。
「天使ですって。」
「なんかいまいちそれっぽくないよな、お前。」
「一応天使ですよ~?」
「なんかさ、その輪っかと翼以外に証明手段ねえの?」
「...あるにはあるんですけど、多分、嫌な気分になりますよ?」
「ちょっと気になるな...」
「ほら、前言ったじゃないですか。高位になるほど、人間から姿を離していく、って。」
「あれ、別に下位の天使でもできるんです、ちょっぴりですけど。」
「例えば、本来あり得ない形に腕を曲げたりとか、ある程度の範疇に納まってるなら、形を変えたりできますよ。」
「...どこまでできるんだ?」
「そうですね...腕もう一本生やすくらいなら...全然余裕でできます。」
「天使の階級はどちらかと言うと翼の数の方が重要なので。」
「翼は生やせないんだな?」
「ええ。ズルしようとすると、堕天しちゃいます。」
「へぇ。神は見てる、とかそういうやつか?」
...じゃあなんで、コイツを助けに来ないんだ?
「.,.わからないです。結構重要な役目ではあったはずなんですけど、なんで放置されてるのか...」
「大変だな。」
「本当に。」
「じゃあな。俺は本当に寝るぞ。」
「はい、おやすみなさい。」
だいぶ筆が乗っています。4時間でだいたい1万文字くらいでしょうか。