家に天使が来た話   作:ナニワのおっちゃん

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数字、無理くりでもいいですかね。


8度目の乾杯

「乾杯!」

 

「ああ、乾杯。」

 

今日はクリスマス当日。俺達はといえば、家でチキンやらケーキやらの準備を終えて、乾杯をしている。

俺はクリスマスに誰かと過ごすっていうのは大人になってから初めてだった。

それは何故かといえば、徹の野郎は合コンやら家族やらと過ごしてるし、他の友達もそんなもんだったから。

彼女が欲しいとか思った事はなく、俺はこれで十分だと感じていた。

 

意外と、外の喧騒をBGMにしての一人宅飲みというのも悪くない物だった。

俺は、そうして何年かクリスマスを一人で過ごしてきたわけだが、今はこうして二人でいる。

 

といっても、二「人」なのかは怪しいが。

 

「っ...ぷはー!」

 

「お前な。ぷはーとか言うなよ。一応神聖なイメージのはずの俺の天使像が壊れるだろうが。」

 

「今更じゃないですか?まあ、初めて目にした天使が私だった事はどんまいですけど。」

 

「本当にな。」

 

「否定してほしかったです。」

 

「お前が言い始めた事だろうが。」

 

駄弁りながら、酒やら料理をつまむ。

普段と特段変わらない日ではある。

俺達は疲れた日によくこうやって飲み会みたいな事をするから。

 

「...特別感あるのは、このケーキくらいですかね?」

 

「まあそうだな。肉料理も特段珍しい物でもないし。」

 

「イチゴ多めの部分要ります?」

 

「もらうわ。」

 

 

「...てか。」

 

「はい。」

 

「クリスマスって宗教的に大事な日じゃねえの?」

 

「そうですけど。」

 

「そうですけどって...お前、信仰対象だろ。」

 

「ええ、まあ。でも、私自身は信者じゃないので、人間が決めた文化はぶっちゃけなんでもいいと言いますか。」

 

「お前酒入ると色々ぶっちゃけるよな。...元々か。」

 

「元々です。」

 

「...」

 

「...」

 

「寒ぃな。」

 

「私は寒くないです。」

 

「そうか。」

 

グビリ、と互いに酒をまた一杯飲む音が響く。

 

俺は、沈黙は大きく二分化されると思っている。

気まずい沈黙...例えば、そうだ。話題がなくて、会話が続かない時とかはこれだろう。

だいたいこういう時は、どっちかはどっちかの目を見て話してないんだ。

 

心地よい沈黙。今の状況を表現するなら、こっちだろう。

別に話さずとも、相手を不快にさせる事がない、みたいな。

 

もしかしたら俺達はどっちも花より団子のタイプの生物なのかもしれない。

だって、テーブルに用意された料理を自分の好きな分だけ取って、景色を見たりせずただ頬張っているのだから。

 

「我ながら美味いな。」

 

「ええ。私も作ったんですから、褒めてくれてもいいんですよ?」

 

「じゃあ美味いな。さすが俺の弟子だ。」

 

「弟子になった覚えはないんですけど...」

 

「まあ、家事教えてんだから弟子みたいな物だろ?」

 

「私の立ち位置コロコロ変わりすぎじゃないですか?」

「居候、穀潰し、専業主婦、家事手伝い、弟子ですよ、これまで上がった中だけでも」

 

「事実だろ。」

 

「だいたい間違ってないから否定はしませんが。」

 

「家事覚える前なんて、お前何も出来なかったじゃねえか。」

 

「...お風呂沸かせましたよ。」

 

「栓閉めてボタン押すだけだろ。赤ちゃんでもできるぞ。」

 

「...うぅ。」

 

勝った気分だ。

 

「負けました。」

 

俺は少し笑って、ふと、外を見た。

暗い空に、雪がこんこんと降る。

白と黒というのは、どこでも合う物だ。雪と夜空。モノクロ。囲碁とかのボードゲーム。

 

「...ん?」

 

俺は何故か、空が赤くなっているような幻視をした。

太陽が上がっているかのような。

...いや、違う。一部分が煌々と輝いているのだ。星とは違う、何かが燃えているような。

 

赤く、丸い球体が浮かんでいる。

 

「...おい。今、何時だ。」

 

「はい?えーと...23時ですけど。」

 

「あれ、太陽か?」

 

我ながら、バカげた質問だな、と思った。

空が暗いんだから、そんなわけがないのにな。

 

「は?」

 

そりゃあ、そんな反応にもなる。

 

「とにかく見てみろ。」

 

メシティスの頭をひっつかみ、窓の方に向ける。

 

「...うわあ。なんですか、あれ。」

 

「知らねえよ。お前、超常的存在なんだから知っておいてくれよ。」

 

「私だってただの生き物ですよ。UMAみたいな物なんて知りませんって。」

 

「じゃあ、あれ、なんだよ。」

 

「星...なんですかね?」

 

「だといいが。...」

 

...少しずつ、大きくなってきている?

 

「...あれ、デカくなってきてね?」

 

「...ほんとですね。...あ、違う。これ、近づいてきてます。」

 

「は?」

 

「着地点...あー、どうだろ。ここかな...?」

「窓、開けっぱにしておいてくださいね。」

 

「は??」

 

不穏な事が聞こえた。

俺は冷や汗が止まらない。

 

「ちょ、ちょっと待て。何しようとしてる?」

 

「ドッジボールです。」

 

「は???」

 

「なんか突っ込んで来てるので、キャッチします。家、壊したくないですし。」

 

「なんでお前そんな平気そうな顔できんの?」

 

「...え、天使ですし。仰った通り、超常的存在ですよ。」

 

「お前、なんでもできんのな。」

 

「私が野球に出れば、大谷翔平の二刀流なんて目じゃないです。」

 

「お前には絶対にスポーツをさせない。」

 

ゴオオ、と何かが燃えているような音が聴こえる。また、窓を覗く。

明らかに大きく...いや、メシティスが言うには近づいてきているらしいが。

 

あいつは、小学校のドッジボールの強いやつがよくやる前かがみの体勢を取っている。

 

「...大丈夫だよな?お前、死んだりしないよな??」

 

「心配してくださってるんですか?えへぇ、大丈夫ですよ。」

 

「なんかきもい。心配した俺が間違ってたかも。」

 

「酷いですね...」

 

「...にしても。」

 

音がでかい。深夜だぞ?

全員、起きるんじゃないか。

 

「さすがにいつもの便利結界は出来ませんよ。範囲が大きすぎますから。」

 

「なんでもは出来ないんだな。」

 

「...落ちこぼれですいません...」

 

「そんな事言ってないだろ。」

「...というか、それをどうにかできる時点で、十分上振れだろ。」

「人間がどうにかできる代物じゃなさそうだし...」

 

俺は、多分、安心していたんだと思う。

今まで、だいたい何とかなっていたから。

 

轟音が、すぐ近くまで来ている。

明らかに地面...もとい、建物が揺れている。

 

何だ、これは。

 

俺は恐ろしかった。

 

「天使が来る」という全く持って意味不明の事象が起きた時、俺ははっきり言って動転していた。

でもなきゃ、いきなり来た人に怒鳴るなんてしないだろ。

 

また何か起こるのか?これが衝突した時、俺は死ぬのか?

恐かった。でも、どこかでこの天使がなんとかしてくれるんじゃないか、と思っていた。

頼りきりなのは情けないが、祈るしかなかった。

 

バァン!!!

 

窓を"それ”が突き破る。

既に轟音でガラスは砕け散っている。

 

それで、何が起こったかと言えば。

 

俺の目の前の...見てくれはただの女性(メシティス)が、それをキャッチしていた。

 

それも、一歩も動かずに。

 

シュウ、と煙を上げながら、抱きかかえられてる物は、

 

隕石のような物だった。

 

大きな石だ。赤子の頭くらいの大きさはあるだろう。

 

「見てください、キャッチしましたよ!」

 

俺は腰が抜けていた。

腕...もう、腕とも表現しがたいが、真っ赤にそまった元は腕だったであろう棒がそれを高く掲げているんだから。

 

ここまでグロい光景を見たのは初めてだ。

吐きかけた。

 

「...それ、なんとかしてくれ...うっ」

 

「えっ?!ちょ、ちょっとどうしたんですか...あっ。」

 

バキ、ボキ。やはりいつ聞いてもグロい音が鳴り響く。

瞬きをすれば、姿はいつものメシティスに戻っていた。

 

「あっぶね~、チキン、吐くとこだったわ。」

「お前、それ、何?」

 

「...えーと、わかりません。隕石ですかね。」

 

「........」

 

「えい。」

 

瓦割りのように、メシティスがチョップをその石にすると、簡単に...恐らく、人類からすれば簡単ではないのだろう。

 

石が割れた。

 

中には...紙のような物が、一枚。

 

メシティスがそれを拾い上げて、チラと見る。...嫌な顔をして、ポイと捨てた。

 

「おい、何が書かれてたんだよ。」

 

「...見ます?」

 

「おう。」

 

書かれていたのは、一文。

 

"明日、迎えに行く。"

 

「お、やっとこさお迎えか。神様からか?」

 

「ええ、そうみたいです。」

 

「なんでそんな嫌な顔してるんだ。天界に戻れるじゃんか。」

 

「...長期有給休暇の旅行中に、いきなり会社に戻ってこいって言われてるような気分です。」

 

「...すごくわかりやすい例えだな。...なら、無視しちゃえばいいんじゃねえの?」

 

「上司にそんな事したら...まあ、首とか飛んだりとかするのは、わかりますよね...はぁ。」

 

「........そうだな...俺、絶対できないわ。」

 

「嫌です、帰りたくないです~~~!」

 

「おい、抱き着くな!服が濡れるだろうが!」

 

「うええ...」

 

「ってか泣くな!さっきめっちゃ格好よかったのに!台無しだろうが!」

 

「...本当ですか?」

 

「露骨に機嫌治すな...まあ、格好良かったのは事実だけど。今の泣き顔で台無しだぞ。」

 

「うええ...」

 

「泣きながらチキンを頬張るな!」

「俺も食う!残しとけ!!」

 

 

 

動乱の一日だった。

まるで意味がわからない。

死ぬ恐怖というのは、本当に身近に迫るまでわからないものだ。これは夢か?となんど思った事か。

もしかしたら、メシティスに会って、ここまで全部、大きくて、永い夢なのかもしれない。

 

「そんなことないので、安心していいですよ。」

 

「そうか。お前が来たのも、隕石が突然俺の部屋に降って来たのも現実だと。」

「...あんまり信じたくないけどな...」

「ってか、明日、これ俺事情調査とかされるよな...面倒なんだが...」

 

「あー、そこは神様が上手い事やると思います。人間に迷惑かけるような神様は、優しくないので下っ端の天使が迷った所で迎えになんて来ないですよ。」

 

「...そういうもんか。」

 

雰囲気ぶち壊しだな...と、俺は思った。

なんの雰囲気なのかはあんまりよくわかんなかったが。

なんとなく、しんみりしてたのに、いきなり隕石が降ってきてギャグになっちまった。

 

なんだってんだ。

 




更新が遅れました。...最近忙しくて。頑張ります。
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