翌朝。
東京都立呪術高等専門学校。
鳥のさえずりが響く中、凛子は校舎の前に立っていた。
昨日、夜蛾から制服を受け取り、そのまま学生寮へ案内された。
慌ただしい一日だったが、不思議と疲れは感じない。
(今日からここで学ぶのか)
校舎を見上げ、小さく息を吐く。
すると背後から声が聞こえた。
「秋山」
振り返ると夜蛾が立っていた。
「ついて来い」
「ああ」
短いやり取りを交わし、二人は校舎へ入る。
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教室。
扉を開けると、一人の少女が席に座っていた。
肩まで伸びた黒髪。
凛とした佇まい。
少女は静かに凛子へ視線を向ける。
「庵歌姫だ。お前と同学年になる」
歌姫は立ち上がり、軽く頭を下げる。
「庵歌姫です。よろしくお願いします」
凛子も一礼した。
「秋山凛子だ。こちらこそよろしく頼む」
夜蛾は教卓へ立つ。
「現在、この学年は二人だけだ」
「互いに切磋琢磨しながら学べ」
「「はい」」
二人は同時に返事をした。
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午前中は座学だった。
呪力とは何か。
呪霊とは何か。
帳の役割。
補助監督の仕事。
一般人へ呪術を秘匿する理由。
凛子は黙々とノートを取る。
(理屈は違うが)
(やること自体は対魔忍と大きく変わらない)
昨日まで抱いていた違和感が、
「秋山」
夜蛾が問い掛ける。
「復習だ。呪霊とは何だ」
凛子は少し考えて思い出し、答えた。
「人の負の感情から生まれる存在」
「それを祓うのが呪術師」
夜蛾は静かに頷いた。
「理解が早いな」
歌姫は横目で凛子を見る。
(昨日来たばかりなのに……)
その理解の速さに素直に感心していた。
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昼休み。
食堂。
向かいの席へ歌姫が腰を下ろした。
少し間を置いてから口を開く。
「秋山」
「ああ」
「昨日、高専へ来たばかりなのよね」
「ああ」
「急に環境が変わって戸惑ったりしなかった?」
凛子は味噌汁を一口飲み、静かに答えた。
「戸惑っても状況は変わらない」
「だから考えないことにした」
歌姫は少しだけ目を丸くする。
「……そう」
「あなたは随分落ち着いているのね」
「そうか?」
「ええ」
歌姫はそれ以上何も言わなかった。
(少し変わった人だけれど)
(悪い人ではなさそう)
それが凛子への第一印象だった。
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午後。
訓練場。
夜蛾は二人へ木刀を一本ずつ渡した。
「今日は基礎を見る」
凛子は慣れた手つきで木刀を握る。
その所作を見た歌姫は小さく驚く。
(木刀の扱いに慣れている……)
夜蛾は静かに言った。
「秋山。構えてみろ」
「ああ。わかった」
凛子は自然な動きで中段に構える。
肩の力は抜けている。
重心も安定していた。
夜蛾は僅かに頷く。
(剣道の他は独学とは思えん)
続いて歌姫も木刀を構えた。
夜蛾は二人を見比べながら話し始める。
「剣や武術は術式を支える土台になる」
「どれほど優れた術式を持っていても、基本を疎かにすれば足元を掬われる」
「今日からは、それぞれの課題に合わせて鍛えていく」
「はい」
二人は力強く返事をした。
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夕方。
寮へ戻る道。
歌姫が前を向いたまま静かに口を開く。
「同じ学年なんだから、これから色々あるでしょうけど」
「お互い頑張りましょう」
凛子は静かに頷く。
「ああ。よろしく頼む」
歌姫も小さく頷いた。
「ええ」
こうして二人は、同じ学年の仲間として歩み始めた。