TS特級呪術師 秋山凛子   作:オッパッピー

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凛子の術式は空間を斬る斬撃ですが、無下限を突破する為には通常斬撃では出力不足です。


第五話 初任務

入学から一週間。

 

凛子と歌姫は、高専での生活にも少しずつ慣れ始めていた。

 

この日も朝から訓練場では木刀の音が響いている。

 

「そこまで」

 

夜蛾の声で二人は木刀を下ろした。

 

「今日から実地訓練へ移る」

 

歌姫の表情が引き締まる。

 

「実地訓練……ですか」

 

「ああ」

 

夜蛾は二人を見渡す。

 

「補助監督が同行する」

 

「危険と判断した場合は私が介入する」

 

「だが、基本はお前たち二人だけで対処しろ」

 

「「はい」」

 

 

---

 

車内。

 

補助監督が静かに説明を始める。

 

「現場は廃工場、呪霊の等級は四級」

 

「一般人はすでに避難済みです」

 

歌姫が資料へ目を通す。

 

「四級なら、私たちでも対応できますね」

 

補助監督は頷いた。

 

「今回は戦闘よりも、周囲の確認や連携を学ぶことが目的です」

 

凛子は窓の外を見ながら話を聞いていた。

 

(初任務か)

 

(昨日までの戦いと違うのは、一人じゃないということだ)

 

 

---

 

廃工場。

 

帳が下ろされる。

 

周囲の空気が一変した。

 

歌姫は小さく息を吐く。

 

「やっぱり、この空気は慣れないわね」

 

凛子は静かに周囲を見渡す。

 

「気配は奥だ」

 

歌姫も頷く。

 

「私も感じる」

 

二人は慎重に工場内へ足を踏み入れた。

 

 

---

 

鉄骨が並ぶ広い空間。

 

油の臭いが今も微かに残っている。

 

その時。

 

「ギィィ……」

 

天井から黒い影が飛び降りた。

 

四級呪霊。

 

いやらしい異形の姿をした呪霊が二人を睨み付ける。

 

歌姫はすぐに構えた。

 

「秋山。左右から同時に行きましょう」

 

「ああ」

 

二人は同時に走り出す。

 

呪霊が歌姫へ飛び掛かる。

 

歌姫は冷静に攻撃を受け流した。

 

「今!」

 

その声に合わせ、凛子が踏み込む。

 

木刀を一閃。

 

術式は使わない。

 

木刀に呪力だけを流し込み、呪霊を斬り裂く。

 

呪霊は悲鳴を上げながら霧となって消えていった。

 

静寂が戻る。

 

 

---

 

歌姫は木刀を下ろした。

 

「終わった……」

 

凛子も周囲を確認する。

 

「他に気配はない」

 

補助監督が建物へ入ってくる。

 

「お疲れ様です。見事な連携でした」

 

歌姫は安堵したように笑う。

 

「ありがとうございます」

 

補助監督は凛子を見る。

 

「秋山さん」

 

「最後、術式を使いませんでしたね」

 

凛子は木刀を鞘代わりの袋へ戻しながら答えた。

 

「必要ないと判断した」

 

「相手の力量に対して、過剰な力は使うべきじゃない」

 

補助監督は感心したように頷く。

 

(十五歳とは思えない判断力だ)

 

 

---

 

高専へ戻る車内。

 

歌姫が静かに口を開いた。

 

「ありがとう」

 

「最初の任務だったけれど」

 

「秋山が一緒で心強かったわ」

 

凛子は少しだけ笑う。

 

「私もだ」

 

「一人では気付けないこともあった」

 

歌姫は意外そうに凛子を見る。

 

「そう思ってくれていたのね」

 

「ああ。夜蛾先生の言う通りだ」

 

「一人ではできないことも、二人ならできる」

 

歌姫は小さく微笑んだ。

 

「ええ。これからも、お互い頑張りましょう」

 

「ああ」

 

夕日に照らされながら車は高専へ戻っていく。

 

この初任務は決して派手な戦いではなかった。

 

しかし凛子と歌姫にとって、「仲間と共に戦う」という術師として最も大切な一歩となった。

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