TS特級呪術師 秋山凛子   作:オッパッピー

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第八話 連携

東京都立呪術高等専門学校。

 

朝の教室。

 

夜蛾は二人へ一枚の資料を配った。

 

「今日は戦闘ではない」

 

歌姫が資料を見る。

 

「演習……ですか?」

 

「ああ」

 

夜蛾は黒板へ地図を貼る。

 

「校内に呪霊を模した式神を配置してある」

 

「二人で捜索し、発見、状況判断、討伐まで行え」

 

「目的は討伐ではない」

 

「連携を学ぶことだ」

 

「はい」

 

 

---

 

演習開始。

 

凛子と歌姫は校舎裏の森へ入る。

 

歌姫が小声で話す。

 

「秋山」

 

「ああ」

 

「昨日みたいに別々に探す?」

 

凛子は首を横に振った。

 

「いや」

 

「今回は先生が連携を見ている」

 

「離れない方がいい」

 

歌姫は頷く。

 

「私もそう思ってた」

 

二人は一定の距離を保ちながら進んでいく。

 

 

---

 

十分ほど歩いた頃。

 

凛子が立ち止まる。

 

「いた」

 

歌姫も気配を探る。

 

「……ええ」

 

低木の陰。

 

四級相当の式神がこちらを窺っていた。

 

歌姫は小さく息を吐く。

 

「どうする?」

 

凛子は少し考える。

 

「私が正面に出る」

 

「歌姫は横へ」

 

「動きを止めたら頼む」

 

「分かった」

 

短いやり取りだけで十分だった。

 

 

---

 

凛子が一歩踏み出す。

 

式神が飛び掛かってくる。

 

凛子は迎え撃たず、一歩だけ後退した。

 

「今だ」

 

その瞬間。

 

歌姫が死角から飛び出す。

 

木刀へ呪力を流し、一撃。

 

式神は体勢を崩した。

 

凛子はすぐに踏み込み、木刀で胴を打ち抜く。

 

式神は黒い煙となって消えた。

 

静寂が戻る。

 

 

---

 

「終わったわね」

 

歌姫が木刀を下ろす。

 

凛子は首を横へ振った。

 

「まだだ」

 

「?」

 

「先生は討伐だけ見ている訳じゃない」

 

その時だった。

 

森の奥から夜蛾が姿を現した。

 

「その通りだ」

 

二人は姿勢を正す。

 

夜蛾は静かに言う。

 

「今の連携は悪くない」

 

「だが」

 

歌姫が少し身構える。

 

「秋山」

 

「お前は最初から相手の動きを読んでいたな」

 

「ああ」

 

「なら、庵へ一言伝えろ」

 

凛子は少し考えた。

 

「……確かに、説明が足りなかった」

 

夜蛾は頷く。

 

「術師同士の連携は、互いを理解することから始まる」

 

「自分だけ分かっていても意味はない」

 

今度は歌姫を見る。

 

「庵」

 

「はい」

 

「秋山を信頼して動いた」

 

「それは悪くない」

 

「だが、指示を待つだけでは駄目だ。もっと自分から提案しろ」

 

歌姫は真剣な表情で頷く。

 

「はい」

 

 

---

 

演習終了後。

 

帰り道。

 

歌姫が歩きながら口を開く。

 

「秋山」

 

「ああ」

 

「さっきはありがとう。私の動きに合わせてくれて」

 

凛子は少し首を横に振る。

 

「合わせたんじゃない」

 

「先生の言う通りだ」

 

「私は説明が足りなかった」

 

歌姫は少し驚いたように笑う。

 

「自分の反省ばかりするのね」

 

「そうか?」

 

「ええ」

 

少し考えてから続ける。

 

「でも、そういうところは嫌いじゃないわ」

 

凛子は少し照れくさそうに視線を逸らした。

 

「ありがとう」

 

 

---

 

その日の夕方。

 

職員室。

 

夜蛾は演習記録へ目を通していた。

 

「二人とも順調だ」

 

補助監督が頷く。

 

「はい」

 

「特に秋山さんは冷静な判断力があります」

 

夜蛾は静かに資料を閉じる。

 

「だが、一人で背負い込む癖がある」

 

「仲間を信じること」

 

「それを覚えれば、もっと強くなる」

 

窓の外では、凛子と歌姫が並んで寮へ戻っていく。

 

まだ息は合い切っていない。

 

だが、一歩ずつ。

 

確実に「仲間」と呼べる距離へ近付いていた。

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