東京都立呪術高等専門学校。
朝の教室。
夜蛾は二人へ一枚の資料を配った。
「今日は戦闘ではない」
歌姫が資料を見る。
「演習……ですか?」
「ああ」
夜蛾は黒板へ地図を貼る。
「校内に呪霊を模した式神を配置してある」
「二人で捜索し、発見、状況判断、討伐まで行え」
「目的は討伐ではない」
「連携を学ぶことだ」
「はい」
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演習開始。
凛子と歌姫は校舎裏の森へ入る。
歌姫が小声で話す。
「秋山」
「ああ」
「昨日みたいに別々に探す?」
凛子は首を横に振った。
「いや」
「今回は先生が連携を見ている」
「離れない方がいい」
歌姫は頷く。
「私もそう思ってた」
二人は一定の距離を保ちながら進んでいく。
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十分ほど歩いた頃。
凛子が立ち止まる。
「いた」
歌姫も気配を探る。
「……ええ」
低木の陰。
四級相当の式神がこちらを窺っていた。
歌姫は小さく息を吐く。
「どうする?」
凛子は少し考える。
「私が正面に出る」
「歌姫は横へ」
「動きを止めたら頼む」
「分かった」
短いやり取りだけで十分だった。
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凛子が一歩踏み出す。
式神が飛び掛かってくる。
凛子は迎え撃たず、一歩だけ後退した。
「今だ」
その瞬間。
歌姫が死角から飛び出す。
木刀へ呪力を流し、一撃。
式神は体勢を崩した。
凛子はすぐに踏み込み、木刀で胴を打ち抜く。
式神は黒い煙となって消えた。
静寂が戻る。
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「終わったわね」
歌姫が木刀を下ろす。
凛子は首を横へ振った。
「まだだ」
「?」
「先生は討伐だけ見ている訳じゃない」
その時だった。
森の奥から夜蛾が姿を現した。
「その通りだ」
二人は姿勢を正す。
夜蛾は静かに言う。
「今の連携は悪くない」
「だが」
歌姫が少し身構える。
「秋山」
「お前は最初から相手の動きを読んでいたな」
「ああ」
「なら、庵へ一言伝えろ」
凛子は少し考えた。
「……確かに、説明が足りなかった」
夜蛾は頷く。
「術師同士の連携は、互いを理解することから始まる」
「自分だけ分かっていても意味はない」
今度は歌姫を見る。
「庵」
「はい」
「秋山を信頼して動いた」
「それは悪くない」
「だが、指示を待つだけでは駄目だ。もっと自分から提案しろ」
歌姫は真剣な表情で頷く。
「はい」
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演習終了後。
帰り道。
歌姫が歩きながら口を開く。
「秋山」
「ああ」
「さっきはありがとう。私の動きに合わせてくれて」
凛子は少し首を横に振る。
「合わせたんじゃない」
「先生の言う通りだ」
「私は説明が足りなかった」
歌姫は少し驚いたように笑う。
「自分の反省ばかりするのね」
「そうか?」
「ええ」
少し考えてから続ける。
「でも、そういうところは嫌いじゃないわ」
凛子は少し照れくさそうに視線を逸らした。
「ありがとう」
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その日の夕方。
職員室。
夜蛾は演習記録へ目を通していた。
「二人とも順調だ」
補助監督が頷く。
「はい」
「特に秋山さんは冷静な判断力があります」
夜蛾は静かに資料を閉じる。
「だが、一人で背負い込む癖がある」
「仲間を信じること」
「それを覚えれば、もっと強くなる」
窓の外では、凛子と歌姫が並んで寮へ戻っていく。
まだ息は合い切っていない。
だが、一歩ずつ。
確実に「仲間」と呼べる距離へ近付いていた。