入学から一か月。
東京呪術高等専門学校。
朝のホームルーム。
夜蛾は教卓へ立ち、二人へ一枚ずつ封筒を置いた。
「今日はお前たちの現在の実力を確認する」
歌姫が配られた封筒を開く。
「等級判定……」
「ああ」
夜蛾は頷く。
「術師は実力に応じて等級が与えられる」
「今日の目的は昇級ではない」
「現時点のお前たちが、どこまで戦えるかを知ることだ」
「はい」
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訓練場。
演習用の結界が張られていた。
夜蛾が説明を始める。
「相手は私が用意した式神だ」
「四級から二級相当まで順番に出す」
「無理はするな」
歌姫が静かに息を吐く。
「緊張するわね……」
凛子は木刀を握り直した。
「自分の力を知る機会だ」
「そう考えればいい」
歌姫は少し笑う。
「相変わらず落ち着いてるわね」
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最初は四級相当。
歌姫が危なげなく祓う。
続いて凛子。
術式は使わず、木刀へ呪力を流した一撃だけで式神を祓った。
夜蛾は黙って記録を付ける。
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次は三級相当。
今度は二体同時だった。
歌姫は一体を牽制しながら距離を保つ。
凛子はもう一体を引き付ける。
「歌姫」
「ええ」
短い声だけで意思が通じる。
歌姫が呪力を込めた一撃で一体を祓う。
凛子も木刀を振り抜き、もう一体を倒した。
夜蛾は静かに頷く。
(連携は確実に良くなっている)
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最後。
二級相当の式神。
それまでとは空気が違った。
歌姫が小さく呟く。
「強い……」
式神が地面を蹴る。
速い。
歌姫は攻撃を受け止めきれず、数歩後退した。
凛子がすぐ前へ出る。
木刀で受け流す。
だが。
「重い……」
腕へ衝撃が走る。
夜蛾は二人の動きを静かに見ていた。
(ここから先は経験が必要だ)
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十分後。
夜蛾が式神を解除した。
「そこまで」
二人は大きく息を吐く。
夜蛾が近付く。
「現時点では十分だ」
「四級、三級相手なら問題ない」
「だが二級相当になると、お前たちだけではまだ厳しい」
二人は真剣に頷く。
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演習後。
教室。
夜蛾は判定表を机へ置いた。
「秋山」
「ああ」
「判断力、剣術、術式精度」
「どれも高い」
「だが」
凛子は顔を上げる。
「呪力量がまだ少ない。出力不足だ」
凛子は静かに頷いた。
以前の訓練でも感じていたことだった。
「術式は優れている」
「だからこそ、呪力をもっと練れ」
「はい」
夜蛾は歌姫へ向き直る。
「庵」
「はい」
「呪力量は十分ある。だが近接戦闘に迷いがある」
歌姫も素直に頷いた。
「自覚しています」
「なら鍛えろ」
「迷いは経験で消える」
「はい」
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夕方。
寮へ戻る坂道。
歌姫が空を見上げる。
「悔しいわ」
「あんなに差があるなんて」
凛子は静かに歩きながら答えた。
「今日負けたことは悪くない」
歌姫が振り向く。
「え?」
「自分に足りないものが分かった」
「それだけでも収穫だ」
歌姫は少し考え、小さく笑う。
「そうね」
「先生も同じことを言いそう」
凛子も珍しく笑みを浮かべた。
「そうだな。だから明日も鍛える」
「ええ」
二人は歩みを止めない。
まだ未熟。
だからこそ、一歩ずつ前へ進む。
その積み重ねが、数年後に呪術界を支える二人の術師へと繋がっていく。