TS特級呪術師 秋山凛子   作:オッパッピー

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第九話 初めての等級判定

入学から一か月。

 

東京呪術高等専門学校。

 

朝のホームルーム。

 

夜蛾は教卓へ立ち、二人へ一枚ずつ封筒を置いた。

 

「今日はお前たちの現在の実力を確認する」

 

歌姫が配られた封筒を開く。

 

「等級判定……」

 

「ああ」

 

夜蛾は頷く。

 

「術師は実力に応じて等級が与えられる」

 

「今日の目的は昇級ではない」

 

「現時点のお前たちが、どこまで戦えるかを知ることだ」

 

「はい」

 

 

---

 

訓練場。

 

演習用の結界が張られていた。

 

夜蛾が説明を始める。

 

「相手は私が用意した式神だ」

 

「四級から二級相当まで順番に出す」

 

「無理はするな」

 

歌姫が静かに息を吐く。

 

「緊張するわね……」

 

凛子は木刀を握り直した。

 

「自分の力を知る機会だ」

 

「そう考えればいい」

 

歌姫は少し笑う。

 

「相変わらず落ち着いてるわね」

 

 

---

 

最初は四級相当。

 

歌姫が危なげなく祓う。

 

続いて凛子。

 

術式は使わず、木刀へ呪力を流した一撃だけで式神を祓った。

 

夜蛾は黙って記録を付ける。

 

 

---

 

次は三級相当。

 

今度は二体同時だった。

 

歌姫は一体を牽制しながら距離を保つ。

 

凛子はもう一体を引き付ける。

 

「歌姫」

 

「ええ」

 

短い声だけで意思が通じる。

 

歌姫が呪力を込めた一撃で一体を祓う。

 

凛子も木刀を振り抜き、もう一体を倒した。

 

夜蛾は静かに頷く。

 

(連携は確実に良くなっている)

 

 

---

 

最後。

 

二級相当の式神。

 

それまでとは空気が違った。

 

歌姫が小さく呟く。

 

「強い……」

 

式神が地面を蹴る。

 

速い。

 

歌姫は攻撃を受け止めきれず、数歩後退した。

 

凛子がすぐ前へ出る。

 

木刀で受け流す。

 

だが。

 

「重い……」

 

腕へ衝撃が走る。

 

夜蛾は二人の動きを静かに見ていた。

 

(ここから先は経験が必要だ)

 

 

---

 

十分後。

 

夜蛾が式神を解除した。

 

「そこまで」

 

二人は大きく息を吐く。

 

夜蛾が近付く。

 

「現時点では十分だ」

 

「四級、三級相手なら問題ない」

 

「だが二級相当になると、お前たちだけではまだ厳しい」

 

二人は真剣に頷く。

 

 

---

 

演習後。

 

教室。

 

夜蛾は判定表を机へ置いた。

 

「秋山」

 

「ああ」

 

「判断力、剣術、術式精度」

 

「どれも高い」

 

「だが」

 

凛子は顔を上げる。

 

「呪力量がまだ少ない。出力不足だ」

 

凛子は静かに頷いた。

 

以前の訓練でも感じていたことだった。

 

「術式は優れている」

 

「だからこそ、呪力をもっと練れ」

 

「はい」

 

夜蛾は歌姫へ向き直る。

 

「庵」

 

「はい」

 

「呪力量は十分ある。だが近接戦闘に迷いがある」

 

歌姫も素直に頷いた。

 

「自覚しています」

 

「なら鍛えろ」

 

「迷いは経験で消える」

 

「はい」

 

 

---

 

夕方。

 

寮へ戻る坂道。

 

歌姫が空を見上げる。

 

「悔しいわ」

 

「あんなに差があるなんて」

 

凛子は静かに歩きながら答えた。

 

「今日負けたことは悪くない」

 

歌姫が振り向く。

 

「え?」

 

「自分に足りないものが分かった」

 

「それだけでも収穫だ」

 

歌姫は少し考え、小さく笑う。

 

「そうね」

 

「先生も同じことを言いそう」

 

凛子も珍しく笑みを浮かべた。

 

「そうだな。だから明日も鍛える」

 

「ええ」

 

二人は歩みを止めない。

 

まだ未熟。

 

だからこそ、一歩ずつ前へ進む。

 

その積み重ねが、数年後に呪術界を支える二人の術師へと繋がっていく。

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