ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-魔王と英雄- 作:凌介
幼い頃2人で英雄譚の本を読んだ。
でも、お互いに憧れた存在は違ったその本は、二人を同じ場所へは連れて行かなかった。
「やっぱり英雄はカッコイイねどんなにボロボロになっても必ず勝つんだもん!そしてお姫様や大事な人を必ず助けるんだ」
「確かに...カッコイイとは思うよ...でも僕はたとえ悪と言われても、世界を敵に回しても自分の信念を、理想を貫く魔王の方が凄いと思ったよ」
2人は読んでいた本を閉じた。
-オラリオ・城壁-
ガン!ギン!キィィィン!ガン!ギャリィィ!
聞こえるのは武器同士がぶつかる音
「どうして...どうして僕達が争わなきゃいけないの?」
「……うるさいな」
「僕達は兄弟だろ!」
「違う...俺は...魔王だ」
「君は僕の弟だ!例え目指すもの憧れたものが違っても僕達はたった2人の兄弟だ!」
「……甘いんだよ...英雄」
クレイモアを中心に、地獄の業火が鎧の形を借り、獄炎の意志として顕現する刃と成す
「君の目を覚まさせる!」
鐘の音と共に
燃え盛る炎の鎧を纏い、更にその上から夥しい光粒が包み込み集束される炎熱の刃
【獄炎-ヘルブレイズ-】!! 【聖火の英斬-アルゴ・ウェスタ-】!!
英雄と魔王、目指す道が違い目指す場所もまた違う2人はなぜ相対するのか...これより物語は1年と少し...遡る
ガアアアアア!
「うるさい」
向かってくるモンスターを斬り付け背後から来るもう一体にナイフを投擲し蹴りを入れてナイフを更に深く突き立てるとモンスターは消えて魔石が残る
「はぁ...つまんない...」
ダンジョンに潜ってもう3日になるが同じ敵ばかりで嫌になる
グギギギギィ
「今はお前達を狩る側だけどな、いずれ支配してやるからな魔王として!」
目の前のモンスターに刃を突きつけ倒す
「もっと...強いヤツと...戦いたい...」
そう願わずにはいられない今のままじゃ限界が分からないから
限界を知った上でどこまでできるのかどこまでやれるのか試すそれが最適解だ
ブモォオオオオ!
「あ?」
ズシンともドシンとも聞こえる足音を響かせて現れたのはミノタウロスだ
「迷い込んだのか?中層のモンスターだよな...まぁいいか!今の俺がどこまでやれるか挑戦だ!」
俺はショートソードを逆手に構えミノタウロスに向かっていく
自分に向かってくるミノタウロスの拳を避けて脚の脛を斬り付ける
「浅い!」
一瞬判断が遅れ拳を躱しきれずにダンジョンの壁に激突する
「ガハッ...」
肺の中の空気と一緒に血が吐き出される
「やってくれたな…」
すぐに立ち上がり口元を拭いもう一度ミノタウロスに接近し三度繰り出される拳が届くギリギリで跳躍し肩口を斬り付ける
「クソ!また浅い!」
ミノタウロスと距離を取り睨み合う
「こうなったらアレしかねぇな!」
俺はミノタウロスに向けて腕を突き出し指を曲げて挑発すると
挑発に乗ったミノタウロスが突進してくる
角が当たるギリギリまで引き付けて手のひらから漆黒の炎を放出する
【獄炎-ヘルブレイズ-】
ギリギまで引き付けたお陰で頭が完全に炎に包まれミノタウロスが消滅し魔石が残る
「何とか...勝った」
だが辺りにはまだ燃え続ける漆黒の炎が残る
そこへ現れる2人の冒険者
「ああ?なんだこりゃ...おいお前!」
「俺ですか?」
「お前しかいねぇだろうが!他に誰がいるってんだ!ああん?」
「一緒に来たそちらのエルフの子とか」
「わ...私ですか!?」
「コイツは今関係ねぇだろ!とりあえず1つ聞かせろ!コレやったのお前か?」
漆黒の炎の残滓が揺れる中、俺は振り返る。
冒険者の視線は警戒と敵意。
「そうだと言ったら?」
「なにか困るのか?」
「お前...何モンだ?」
「……無茶した駆け出しのソロ冒険者...」
「じゃ...じゃあミノタウロスを倒したんですか?」
「うん」
「どうやってだ?駆け出しの冒険者が無茶して倒せるヤツじゃねぇぞ!」
「その無茶が通っただけですよ」
「てめぇ〜」
噛み付くベート
「元気ですね、犬さん」
「ぶち殺されてぇのか!」
「その前に手足の1本くらい焼き払ってあげますよ」
「2人とも待ってください!特にベートさん!ミノタウロスを倒したとはいえあちらはどちらかと言えば被害者ですよ」
「チッ...おい!次会えたら覚えとけ!」
「そっちが俺を忘れなければ忘れるまで忘れません」
ベートと呼ばれた冒険者はイライラを隠しもせずに去っていった
目の前にはちょっとオロオロしてるエルフの少女
「………聞いてもいい?」
「...はい...何ですか?」
「君は...俺が...怖い?」
「……怖い、のかもしれない」
「でも、それだけじゃない」
「あなたの強さ……ちゃんと見たい」
「だから...わからないです」
「そうか...君にもわからないか」
「それでいいよ」
そう言って彼は、少しだけ寂しそうに笑った。
その後自己紹介だけして別れ私はベートさんを追いかけた。
地上に帰還すると昼と夕方の間くらいの時間だった。
「魔石換金して帰ろ...」
魔石を換金するためギルドに行き換金所に並んですぐに肩を掴まれる
「べ・リ・ル・君!!」
「エイナさん、お久しぶりです」
「久しぶりじゃあないわよ!ちょっと来なさい!」
エイナさんに引きずられる形で隅にある応接スペースに連れてこられる
「何ですか?エイナさん」
「何ですか?じゃあないの!また何日もダンジョンに潜ってたんでしょ!」
「なんか問題あります?」
「問題しかないけど...とりあえず今何階層を探索してるの?」
「えっと...5、6階層を行ったり来たり...ああ!でも今日はヤバかったです!冒険者が取り逃したのか一体のミノタウロスに襲われまして...ギリギリ倒せましたけど……死ぬかと思いました」
「……なあーにやってるのーあなたは!」
「冒険者です」
「そうじゃない!いつも言ってるでしょ!''冒険者は冒険しちゃいけない''って!」
「そこに未知があるなら飛び込んでこその冒険者でしょ」
「それで戻ってこなかった人を何人も知ってるわ...だから無茶はしないで...」
「無茶がまかり通るなら俺は無茶しますよ...多分ベル兄も」
「……もういいわ...とりあえず早くホームに帰って顔を見せてあげなさい」
「わかりました」
魔石を換金して帰りに果物を3つ買ってホームに戻る
「ただいま戻りました...」
「あ!おかえりベリル!聞いてよ!神様がじゃが丸くんをたくさん貰ってきてくれたんだ」
「ふっふーん!感謝したまえよベリル君」
「ありがとうございますヘスティア様、お礼に果物をどうぞ」
「気が利くじゃないか!とりあえず話は食べながらだ!」
「はい」
俺達は3人だけのジャガ丸くんパーティーを楽しんだ。
「ベリルは今どの辺?」
「5、6階層辺りをウロウロしてる」
「僕は今日その5階層で死にかけたよ」
「ミノタウロスにでも襲われた?」
「なんで知ってるの!?」
「俺も襲われたから」
「誰かに助けてもらったの?」
「無理無茶無謀をまかり通して勝った」
「平然と言ってのけるんだもん同じレベル1なのに...」
「まあまあそう悲観することでも無いさ!とりあえずステータス更新しよう」
俺は今回の更新でステータスが幾つかGに上がったが無茶をしすぎても身体がその無茶に着いて来れない事が多い...
「自分の新念を貫けるくらいには強くなりたい...昔読んだ英雄譚の魔王みたいに...」
ステータスが表示された紙を見ながら呟いたのだった……
気分転換で新作書きたくなったので書きました。
原作に沿って進めて行きつつオリジナル要素を入れて書いていくのでお楽しみに
次回「目指すべき場所...」