ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-魔王と英雄- 作:凌介
レフィーヤに御守りを渡した俺は1度ガンテツさん達の所へ
向かった。
店の前に着くと扉を開ける
「おはようございます」
「おお、来たかぁ〜!」
「おはよう〜ベリル君」
2人は何故か酒盛りしていた。
「何してるんです?」
「見てわからんか?酒盛りしちょる」
「なんで酒盛りしてんのかを聞いてるんですけど…」
「大きな仕事をやり終えたから酒盛りしてんのさ!」
「そうですか……ところで装備の作成費用幾らですか?」
「いらん!いらん!その代わり今度美味い店で飯と酒でも奢ってくれ」
「アタシもそれでいいよ〜」
「そんなんでいいんですか?」
「元々ワシは魔剣ってもんを作ってみたかった、そしてワシがずっと構想を練っていた武器が擬似的とはいえ魔剣になったしの、満足なんじゃ!」
「それに素材用意したのは君じゃないか!貰うとしたら職人としての技術料だけで十分だし、それなら美味しいものを奢って貰った方が得ってもんさ」
「そういう事なら、今度豊穣の女主人でご馳走しますよ」
「あの店か!良いな!期待しちょるぞ!」
「アタシも期待してるね〜」
「わかりました。」
俺は苦笑し肩を竦めて返答する
「じゃあ、ダンジョンで稼いで来ますよ!」
「おう!戻ったらメンテに寄れ!」
「あんまり使ってないだろうけど、アクセサリーも時々錆落としというか、メンテしないとだから寄りなねぇ〜」
「わかりました。行ってきます」
「おう!行ってこい!」
「行ってらっしゃい」
俺は2人に見送られてダンジョンに向かった。
-ダンジョン12階層-
ダンジョンに来たは良いもののあまりモンスターに遭遇しない
それどころかダンジョンが静かすぎる。
「やけに静かだ……嫌な予感がする」
俺は警戒を怠らず周囲に気を配る
「本当にモンスターが1匹もいない...何故だ?」
「そりゃ、俺様が全部始末したからな!」
俺は咄嗟にその場から飛び退いてヘスティア・ブレードを構える
「誰だ!?」
「俺様は力の魔王ヴァルガだ!」
筋骨隆々、黒を基調とした和服のような戦闘衣装(バトルクロス)
拳全体を覆う銀の籠手そして左右から伸びる角が特徴的な男が立っていた。
「魔王?あんたが?」
「不満か?」
「いや、魔王って言うなら信念や理想はあるんだろうな?」
「当然!【力】だ!【力】こそ全て!気に入らないものをねじ伏せ、【力】こそが全てを支配する!」
「なるほどな...アンタにとっては力が自らの象徴って訳だ」
「その通りだ!」
「それで、その魔王様が俺に何の用だ?」
「試練を与える!」
「試練?」
「あぁ、試練だ」
「お前の全力をもって俺様に傷1つ付ける事!それが俺様からの試練だ!」
「へぇ〜、面白いな!やってやる!」
俺は地面を蹴って加速しヴァルガに斬りかかるがヴァルガは
微動だにしない
「!?」
「なかなか良い一撃じゃねえか!今度はこっちからいくぜ!」
俺は咄嗟に跳躍してその場から退くが拳の風圧で吹き飛ばされる
「ぐっ……」
なんて攻撃だ...正直掴まれたら1発アウトだぞ...
それになんて硬い皮膚だ...鉄でも斬ってるようだったぞ
「考えてる余裕があんのかよ!」
ヴァルガが拳を振るって来るが紙一重で攻撃を避け続けるが拳の風圧がかまいたちを生み出しまともに攻撃が繰り出せない
「よく避けるじゃねぇの!俺の攻撃をここまで避けられるやつも珍しいぜ!」
「お褒めに預かり光栄だよ!【獄炎】!」
黒い炎がヴァルガを覆うがヴァルガは涼しい顔で立っていた
「いい炎だ!でも、俺を焼くには火力が足りねぇ!」
また拳が振り抜かれるかと警戒していたが拳はフェイク、飛んで来たのは蹴りだった!
「ぐはァ…!!」
俺は数メートル吹き飛ばされてダンジョンの壁に激突する
そこへヴァルガが接近し俺の顔面を掴み地面へ叩きつける
「がハッ...この…ヤロー...」
俺はヴァルガの腕を掴み【獄炎】を発動する
「【獄炎】!!【獄炎】!!【獄炎】!!」
ヴァルガが手を離し俺を投げ飛ばす
俺はゆっくりと立ち上がる
「ハァ……ハァ……ハァ……」
「立ってるのもやっとか?」
「お前こそ!その腕、火傷したんじゃねぇのか...」
「軽い火傷だ!なんともねぇ!でもこれは傷とは言わねぇよ!」
「だろうな…」
俺は剣に【獄炎】を纏わせ放つ
「【炎獄斬】!!」
ヴァルガは手を広げて受け止める
「いい一撃だ!でも足りねぇぞ!」
「ならこれならどうだ!」
「【炎獄連斬】!!」
ヴァルガは両腕をクロスさせ攻撃を受け止める
「やっぱり一撃一撃は悪くねぇ、炎を纏った一撃はもう少し威力があれば俺様に届くだろうな!」
「でも、足りないんだろ?」
「足りねぇな!一撃の威力が足りねぇ!何より重さがねぇんだよ!」
「一つだけ俺様の技を見せてやる!」
ヴァルガは腰を落とし右腕を自分の顔の横で固定すると目に見える形で魔力がヴァルガの拳に集まっていく
「くらいやがれ!グランインパクト!」
鋭く重い一撃が繰り出される
俺は咄嗟にヘスティア・ブレードを盾のように構えて身を守るが踏み止まれずに吹き飛ばされて再びダンジョンの壁に激突する
「がハッ...」
肺の中の空気と共に血を吐き出す
俺は剣を杖に立ち上がる
「大したもんだ!あの攻撃を受けてその程度で済んでるとはな!」
俺は口の中に残った血を吐き捨てながら剣を構える
「正直このままやり合ってもジリ貧だ...だからこの一撃に全てを賭ける!」
「なら見せてみろ!お前の全身全霊をな!」
「言われなくても今見せてやるよ!」
俺は腰を落として剣を顔の横に固定する
「《付与-エンチャント-》【獄炎-ヘルブレイズ-】」
ヘスティア・ブレードに獄炎を纏わせる
「更に風魔の腕輪起動!迅雷のアンクレット起動!」
ユアさんから貰ったアクセサリーにも魔力を通し風と雷を纏う
そして纏っていた風を剣に纏わせる
「もっと刀身全体を覆うように」
風で炎を刀身に集約していく
「行くぞ!」
迅雷のアンクレットの効果で普段以上の速度でヴァルガに突撃し刺突を放つ
「風で炎を包み込み突撃と同時に解き放つ!」
「おもしれぇ!力比べだ!グランインパクト!」
2つの力がぶつかり合い12階層に衝撃が響き渡る
辺りは土煙が舞い何も見えないが煙が晴れた時に見えたのは2人の位置が入れ替わっていたそしてヴァルガの手首から肘にかけて裂傷が刻まれ血が滴っていた。
ヴァルガの傷を確認した俺は笑みを浮かべヴァルガに向けて拳を突き出した
「ざまぁみろ!」
そう言い放つと俺は意識を手放した。
-ヴァルガ視点ー
裂傷を負った腕を見て俺様は笑いが込み上げてきた。
「ハハハ!アッハハハハハハ!見事だ!実に見事!天晴だ!」
「過去にも魔王の素質を持ったヤツはいたが俺の試練を突破したヤツは初めてだ!」
俺様は腕輪に触れて小瓶を取り出すとその小瓶から丸薬を1粒
取り出す
「おい!小僧!少しでも意識があるならコイツを噛み砕け」
声が聞こえたからなのか、倒れただけで意識があったのかはわからないが丸薬を噛み砕いたようで身体全体が黄緑色の光に包まれ傷が消え小僧の意識が戻った。
-ベリル視点-
声が聞こえて口に放り込まれた丸薬を砕いた瞬間傷が消え
意識が完全に戻った。
「俺は...確か気絶したハズじゃ...」
「目覚めたか、小僧!」
声の方を振り向くとヴァルガが胡座をかいて頬杖をついていた。
「小僧じゃねぇ!俺の名はベリル!ベリル・クラネル」
「そうか、じゃあベリル!お前を回復させたのは理由がある」
「だろうな…じゃなきゃ俺はこの場に放置されていたはずだからな」
「話が早くて助かるぜ!まず1つは俺様の事は他言無用だ」
「なら、ギルドにはなんて説明する?」
「ギルド?あぁ、ウラヌスの野郎が仕切ってる組織の事か
それなら心配ねぇよ!」
ヴァルガは自分の左腕から腕輪と指輪を外し俺に向かって放り投げてきた
「これは何だ?」
「腕輪は収納の腕輪、指輪は力の指輪だ!腕輪は実質無制限に物が入るし、指輪は装着してる限りお前の力を50%上昇させる」
「そうさなぁ〜重量のある武器を片手で簡単に振り回せるレベルっていやわかるか?」
「ぶっ壊れアイテムじゃねぇか!なんでそんなものを俺に?」
「試練突破の証だ!持ってけ!その腕輪に魔力を通せば辻褄合わせできる素材と魔石が入ってるからな!それ使って口八丁手八丁で丸め込め」
「んな適当な……」
「生憎と考えるのは俺の役目じゃねぇんだよ!」
ヴァルガは立ち上がると何もない空間に向かって扉をこじ開けるような動作をすると空間が裂ける
「ここ通ってけ!」
「大丈夫なのかよ!」
「俺はいつも使ってるから気にすんな!さぁ!行け!」
「ったく……ヴァルガって言ったな!次は倒す!」
「おう!次は俺様を地面に這いつくばらせて見せろ!」
その言葉を最後に俺は空間の裂け目に飛び込んだ
-地上-
空間の裂け目を通って地上に出た俺は辺りを軽く見回す
「ギルドの近くか...とりあえず説明にいくか...」
俺はギルドに向かって歩みを進めるのだった。
ギルドに着くとなんだかいつも以上に慌ただしい
俺はエイナさんを見つけて声を掛ける
「エイナさん、なにかあったんですか?凄く慌ただしいですけど」
「ベリル君!どうしたの!?装備ボロボロじゃない!」
「いやまぁ、色々あったんですけど、まずなんの騒ぎか聞いても?」
「ダンジョンで凄い地響きがあって、しかも9階層に大きな剣を持ったミノタウロスが出たみたいなの!」
俺は手で顔を覆ったミノタウロスはともかく地響きの方には心当たりがあったからだ。
「エイナさん、その...ですね...ミノタウロスは知りませんけど、地響きの方は……ごめんなさい、俺です。」
「え……」
エイナさんの表情が固まった。まさにピシッと音が聞こえそうなレベルで
その後すぐに顔を真っ赤にそれこそ昔読んだ
物語に出てきた赤鬼のような表情になる
「詳しく説明して貰えるかなぁ〜ベ・リ・ルくぅ〜ん!」
「あぁ〜はい、とりあえず個室かどこかに行きません?じゃないとエイナさんも困るでしょ!」
「ハァ〜ッわかったわよ!」
俺達はとりあえず個室に移動する
「とりあえず説明して貰える?」
「その前にこれを見て貰ってもいいですかね」
俺はショルダーバッグから素材を取り出すフリをして腕輪に魔力を通し素材を1つずつ取り出す
羽と爪、牙と角そして魔石を机の上に置いた
「これなんですけど...」
「普通のモンスターの素材じゃないわよね?ちょっとまってて!」
エイナさんは急いで個室を出て分厚いモンスター図鑑を持ってきた
「まず聞くけど、ベリル君何と戦ったの?」
「めっちゃ強いグリフォンとガーゴイルとオーク?ですかね?」
「なんでオークだけ疑問形なの?」
「だってオークにしてはゴツかったですし、この角と牙そいつのドロップアイテムですよ!信じられます?オークのくせにめっちゃパワーがあってしかも一撃が重たいんですよ!」
「…………とりあえず...続けて」
「はい、グリフォンもなんか翼を使ってかまいたちやら竜巻やら起こしてくるし、ガーゴイルなんて鉄でも斬ってるみたいな頑丈さで爪なんてめっちゃ鋭利なナイフですよあれ!」
「……ベリル君!!」
エイナさんがバンッと机を叩いて立ち上がる
「なんですか?」
「なんですか?じゃないの!君が戦ったのって全部変異種よ!」
「そうなんですか?」
「もっと危機感持ちなさい!」
「そう言われても...」
「何度も言ってるわよね!冒険者は冒険しちゃいけないの!安全に探索して安全に探索を終えて帰ってくるのが仕事なの!」
「冒険者って未知を求めて探索してナンボでしょ!それに今は変異種の話じゃないんですか?」
「そうよ!変異種の話をしているの!それなのに...それなのにキィ〜ミィ〜は!ちょっと前に10階層探索したって言ったばかりよね?」
「はい、でもなんかつまんなくて、目的もあったので12階層を探索してましたけど?」
「探索階層増やしてることも問題だけど、変異種よ!いい?ベリル君が倒したのはストームグリフォン、グランドガーゴイル、ブルーオーガって全部過去に1度だけ確認された変異種よ!」
「あいつらそんな大層な名前だったんですね…」
「それを倒したって言うの?ソロで?」
「はい、倒しました」
「なぁ〜にやってるの!あなたは!」
「冒険者ですけど?」
「知ってるわよ!」
「聞く意味ありました?」
「はァ〜、もう良いわ…とりあえずギルドの上層部にはありのままを報告するけど...これ、ちょっとした事件よ...」
「なんか……すいません」
その後俺は一通りの説明を終えてホームに帰還するのだった。
10話目です。今回は大まかに起承転結決めてたのでまだ執筆が楽でした。
次回はベリルがランクアップし新たな挑戦をしますのでお楽しみに
次回「ランクアップと素材採取」