ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-魔王と英雄- 作:凌介
旅の間にアルテミス様との交流し絆を深めていく
飛竜を駆りオラリオの外へ飛び出した俺達は空の旅を楽しんでいた。
「ヘルメス様、この飛竜名前はあるんですか?」
「いや、特になかったと思うが…何故だい?」
「どうせなら名前をつけてやろうかなと」
「いいんじゃないかな?飛竜とも確かな絆が生まれれば多少の無茶にも答えてくれるだろうからね」
「なら、お前の名前はアルカスだ!よろしくな」
グルルとのどを鳴らし答えてくれる飛竜-アルカス
「アルカス……」
「どうしました?」
「なんだか、懐かしい名前だと思ってな…聞いた事ない名のはずなんだがな」
「俺が爺さんから聞いた貴方の話に出てきたんです。貴方の傍付きをしていた妖精の息子の名です。」
「ベリルって変なところで詩的というかロマン主義というか」
「俺がロマン主義ならベル兄はゼウス様に似て浮気者だな!」
「なんで!?酷い!」
「憧れて焦がれた人がいるのに他の女性にも手を出してるから」
「そんな事してないよ!」
「まぁまぁ、あまりオリオンをからかわないでくれ、我が剣よ」
「仰せのままに」
「そうしてると本当に女神の剣だなベリル」
「実際女神の剣だからな」
なんて話していると当初の予定通り最初の野営地点に到着した。
「今日はここで野営しよう」
「なら俺は少し剣を振ってきます!良さって時に使えませんじゃ話になりませんから」
俺は少し離れた場所に行き森の少し開けた場所で剣を振る
シュン!シュン!と風を斬る音が響く
「軽いのにどこまでも手に馴染む、そしていい感じに重さもある!」
俺は連撃を意識して剣を振りそこから距離をとり刺突の構えをとり
地を蹴って体重を剣に乗せ刺突を放つと木の表面が陥没する
パチパチパチパチ
拍手が聞こえた方を見るとアルテミス様が
「ベル君に着いてなくて良いんですか?アルテミス様」
「君は私の剣なのだろ?ならば私の剣がわたしを守るために振るう剣を見たいじゃないか」
「光栄です。」
「綺麗な剣だな」
「これですか?」
俺は今持っている剣を逆手に持ちアルテミス様の前に差し出す
「君が振るう剣の事だよ」
「俺のですか?」
「あぁ、強い信念が宿っていると感じたよ」
「俺は貴方の剣ですから、貴方を守るという信念があります」
「それだけではないのだろ?」
「え?」
「たしかに、私を守るという信念を感じたのも事実だが、それとは別に己の根底にあるべき信念というか概念だろうか?そんなものを感じたのだ」
俺は少し考えた後目の前の木を切り倒し俺は切り倒した木に座りアルテミス様を切り株に座るように促す
「少し、話しませんか?」
「もちろん」
俺はアルテミス様に何から話すべきか考え口を開く
「俺はベル兄の隣に並びたい訳ではないんです。むしろベル兄の前に立ちはだかる強大な敵でありたいと考えています。」
「ならば我が剣はオリオンの敵になるのか?」
「そうなりますね…」
「何故だ?同じ血が流れし兄弟なのだろ?」
「アルテミス様、ベル兄の魂が穢れなき白だったとして、俺の魂は何色ですか?」
「宝石のように輝く紫紺だよ、何故そんな事を聞く?」
「魂の在り方からして違うって話です。幼い頃、爺さんから沢山の英雄譚を聞きました。字が読めるようになってからは二人で英雄譚の本を読んでいました。」
アルテミス様は頷きつつ耳を傾ける
「英雄譚の話を聞いて、読んだ時憧れた者が、もっと言えば憧れた存在が違いました。」
「オリオンは英雄に憧れたのだな」
「はい、兄は英雄に憧れました。そして俺は...魔王に憧れました。」
「魔王に...」
「はい、例え悪と呼ばれ蔑まれても信念を曲げずに英雄の前に立ちはだかる強大で理不尽な存在、魔王に俺は憧れました。」
「そうなのか、我が剣は魔王に...」
「えぇ、なので俺は自分が信じた道を行き信念を貫き通した果てに魔王と呼ばれても構わないと考えています」
「そうか...話してくれてありがとう、ベリル」
「2度目ですね、名前を呼んでくれたのは」
「私の剣になると誓ってくれたのだから我が剣と呼ばねばと思ったが、嫌だったか?」
「いいえ、貴方の剣である事を誇りに思いますよ」
「ならば良い!さて、戻ろうじゃないか!」
「はい、戻りましょう」
その後俺達は食事を楽しみつつ念の為と交代しつつ見張りをしている
最初は俺が担当する
見張りを始めて少し経った時ベル兄が起きてきて隣に座る
「交代には早いぜ」
「わかってる、少し話したくて」
「どうした?」
「ベリルはどうしてアルテミス様に剣を捧げるなんて言ったの?」
「不服か?それとも俺がアルテミス様に近付くのが嫌か?」
「そんなんじゃないよ。純粋な興味」
「18階層で言った事覚えてるか?」
「共通してる事があるって話?」
「あぁ、もう一つそれに当てはまることがあるんだ。それは守るべきものがある事だ」
「守るべきもの...」
「あぁ、俺はアルテミス様を守らないとって思った。それが何故なのかと言われれば、信念というか概念みたいなもんだ」
「そっか...わかった。」
ベル兄は納得したのか天幕へと戻っていく
「ベル兄」
「何?」
「俺はあの人を守る事はできるけど、救う事は出来ない。本当の意味であの人を救えるのはベル兄だけだ。それをよく覚えとけよ」
「………うん」
ベル兄は頷くと天幕の中に戻って行った。
-次の日-
早朝から飛竜を飛ばし目的地を目指す中俺は聞くタイミングを逃していたと思いつつヘルメス様に尋ねた。
「ヘルメス様、そういえば目的地ってあと、どのくらいなんです?ついでに場所何処です?」
「そういえば言ってなかったね、オラリオから遥か遠く離れた大陸の果て大樹海の秘境に存在するエルソスの遺跡さ」
「エルソスの遺跡...」
「気になるかい?」
「冒険者ってダンジョンだけじゃなくて遺跡を探検して宝物を探すっていうイメージがあって」
「残念ながらそこには厄介なモンスターが眠っていただけで
宝物とかはないよ」
「言ってみただけなんで気にしないでください」
「でも、ベリルが言うこともわかる気はするね...遺跡探索ってのも楽しそうだし」
「ベル兄は遺跡探索で仲間庇って重症追うタイプだろ」
「酷い!じゃあベリルはどうなのさ?」
「俺?そうだなぁ~最後の1人になっても突き進むタイプかな?」
「確かに、ベリル様はそんな感じかもしれませんね」
リリルカが同意する
「ついでに、ベリルが言ったベルの事も当たってそうだな」
「ヴェルフまで...ならさベリル、ヴェルフとリリは?」
「リリルカは最後まで諦めずくらいついて来て最後に裏切って宝物持ち逃げするタイプだな!」
「リリスケならやりかねないな!」
「リリはそんな事しません!やるなら巧みに罠があるところに誘導したりして一人勝ちします!」
「そういうとこだぞ!リリスケ...」
「ヴェルフは味方で損するタイプと見るね」
「なんでだよ!」
「だってヴェルフ拘り強いし譲れないと思ったら梃子でも動かないタイプだから」
「否定出来ねえのが辛いところだな...」
「ヘスティア様は案外罠に嵌りまくるくせにやたらと幸運で生き残りそうですね」
「なんだいそれ?人をトラブルメーカーみたいに...」
「ちなみに俺はどうかな?」
「ヘルメス様は...人に任せて自分は何もしないまま手柄だけ横取りするタイプですかね?」
「ヘルメスならやりそうだ...」
「ヘスティアまでそんな事言うのかい?」
「なら私はどうだろうか?」
「アルテミス様は状況把握が早そうですし皆を引っ張ってくれて頼りになるんですけど、いい所で空回りしそうです」
「これまたアルテミスならありそうだと思えてしまうね…」
「同意するよヘスティア、彼女ならありえないとは言えないだろうね」
「ある意味ベリルの人を見る目を評価すべきなのかな?と思うけど、言われてることが酷いというかなんというか…」
「実際、仮の話だから気にするなよ」
なんて話しつつ飛竜を飛ばしつつ次の野営地に到着し俺達は野営の準備を始めた。
準備の後時間が出来た俺は剣にスキルを付与し自主練を始めた。
ヘスティア・ブレードとは違い魔力が霧散する感覚はあまりない
「熱心だね、ベリル」
「ベル兄か、なんか用?見ての通り自主練中なんだけど?」
「いや、ベリルがスキル纏った剣を振ってるの見えたから」
「そうか...」
俺は【獄炎】、【氷獄】、【水獄】とスイッチしながら剣を振る
「ベリルはさ、アルテミス様に選ばれたのが自分だったらとは考えなかったの?」
「何?」
俺は剣を振る手を止めてベル兄に向き合う
「だってさ、アルテミス様の剣だって言って実際そうあろうと鍛練してるんでしょ?」
俺はため息混じりに返答する
「はァ〜、あのなベル兄、俺は底抜けのお人好しじゃないんだよ、英雄なら勝って助けることが出来るかもしれないが、魔王には助けて勝つ以外の選択肢はねぇんだよ」
「それにな、助ける以上勝てなきゃ信念は貫けないんだよ!」
「ならベリルの信念って何?」
「例え悪と言われようとも自分が信じた道を歩むこと、その先に魔王に至る道が必ずあると信じて進むこと」
「ベリルは英雄になりたいって思わないの?」
「ふざけんな!英雄なんざ死んでもごめんだ!英雄ってのは自らを傷付けながら進むんだよ!その果てに心が擦り切れて死んでくんだ。そんな生き様ごめんだね」
「僕はそうは思わないよ」
「なら、なんだって言う?」
「英雄だって誰かに頼ってもいいと思う、助けてって言っていいと思う、僕は弱いから、時に誰かに寄りかからないと立てないんだよ」
「甘いんだよ!英雄はいつだって孤独だ!魔王はいつだって孤高だ!【孤高】と【孤独】を履き違えるなよバカ兄貴」
「ベリル……」
「文句があるなら力を示せ!俺はいつだってそうしてきた。
なんなら俺の魔天龍受けてみるか?今のベル兄にそれを弾き返せる力があるか?」
「なんで...なんでいつもそうなんだよ!ベリル!時にはわがままになっても良いんだよ!自分が救えたらって思ったって良いじゃないか!」
「俺は守って助けてやれるけど救ってはやれないんだよ!わかれよ...そのくらい...だから自らの剣で守り、助けるんだって事くらい察しろよ!」
「分からずや!」
「お人好しは引っ込んでろ!」
俺は拳に魔力を纏うと思い切りベル兄を殴った。
ベル兄も【英雄願望】の力を蓄力し俺を殴りにきたが俺は拳を受け止める
「!?」
「わかるか?これが差だよ、ベル兄迷ってんだろ?本当に自分でいいのかってさ」
「それは……」
「図星だろ?だから俺を焚き付けた」
「なんで...いつも見透かしたように...」
「わかりやすすぎて反吐が出る」
「そんな言い方...」
「迷うなとは言わねぇよ、迷って先に進むもんだからな…でも、もう一度言うけどな、俺はあの人を守る事はできるけど、救う事は出来ない。本当の意味であの人を救えるのはベル兄だけだ。それをよく覚えとけバカ兄貴」
俺は投げ捨てた剣を拾い鞘に納めると野営地に戻った。
後ろをベル兄が着いてくるが声をかけることはあえてしなかった。
野営地に戻るとベル兄の腫れた頬を見てヘスティア様、アルテミス様が心配する
「ベル君!どうしたんだい!?その頬」
「何かあったのか?」
「ちょっとベリルに喝を入れられました。」
苦笑いしつつ誤魔化すベル兄、まぁ、不安にさせるよりはと思いつつ肩を竦め同意する
「まぁそんな感じです。腑抜けたバカ兄貴に喝を入れました。物理的に」
「全く、やり方が過激すぎやしないかい?」
「いいや、むしろ兄弟だからこそ譲れない部分があったからこその拳だったんじゃないかな?」
「どういう事だ?説明してくれヘルメス」
俺はヘルメス様が余計な事を言いそうだったので【獄炎】を【魔力収束】で圧縮し熱線を足元に放つ
「ヘルメス様、余計な事を言ったら次は眉間ですよ!」
「……オーケー...黙ろうじゃないか!」
冷や汗を掻きつつ黙るヘルメス様
「ベリルよぉ、ちょっと過激すぎじゃないのか?」
「ヘルメス様にはキッツイくらいがちょうどいいんだよ
盗人、詐欺師、狡猾さの神様で冥界の案内人の役でもある神なんだからな」
「だから、旅と伝令の神でもあるんだって散々言ってるんだけどね…」
俺はヘルメス様の呟きを無視してそろそろ食事にしようと声を掛ける
「そろそろ食事にしようぜ、久々に腕を振るっても良いしな!」
「え!?ベリルが……」
「不満かよ?」
「ベリル様失礼ですけど、料理出来るんですか?」
「オラリオに来るまで誰がベル兄の飯の世話してたと思ってる?俺だぜ?」
「なんでベル様は微妙な表情なんです?」
「ベリルの料理は食べ過ぎちゃうから...」
「そんなに美味しいんですか?」
「美味しいって言うよりも癖になる味?なのかな?」
「物は試しだ食ってみようぜ!美味い飯頼むぜベリル!」
「任せろ!」
俺は腕輪からスパイス等を取り出し腕を振るう
途中で鳥を仕留めて解体しておいたのが役に立つ
鶏肉の表面を軽く焼いて焼き色がついたら香草と一緒に料理用の紙に包み蒸し焼きに
その間にスープも作るスパイスが効いたピリ辛スープだ
スープが出来上がると同時に鶏肉を取り出し切り分け野菜と一緒にパンに挟み完成だ
「出来たぞ!鶏肉の香草サンドとピリ辛スープだ」
「おし!言い出したのは俺だ!俺が先に食うぜ!」
ヴェルフは豪快に香草サンドにかぶりつく
「美味いな!鼻に抜ける香草の香りが最高だ!スープがまた良いな!ピリ辛で食欲を刺激するぜ!」
「ヴェルフ君がそこまで言うなら間違いないね!食べようじゃないか!」
そうして皆が食事を楽しんでいるがアルテミス様は今回も食事をとらないようだ
「アルテミス様、口にあいませんか?」
「いや、そんな事はない、だがあまり人に食事をする所を見られたくないのだ」
「そうですか...」
神だって食欲はあるが昨日もそして今日も一度も食事している所を見ていない...アルテミス様は食事している所を見られたくないと言っていたが、多分違うと俺の勘が言っている
「踏み込むべきじゃないな...」
「なんて?」
「なんでもねぇよ!喋んなら飲み込んでからにしろベル兄!」
そうして食事の時間は皆満足して終わった。
夜、皆が寝静まったタイミングで俺はヘルメス様を呼び出した。
「ベリル君から呼び出すなんてね...何かあったのかい?」
「単刀直入に聞きます。何を隠してるんですか?」
「なんの事だい?」
「【水圧水晶刃-アブレシブジェット-】!」
高圧水流とそれに混ざった氷晶がヘルメス様の足元に線を刻む
「脅しかい?」
「盗人、詐欺師、狡猾さの神様ってのは伊達じゃないんですねヘルメス様」
「ベリル君、何度も言うが旅と伝令の神でもあるんだよ俺は」
どこまでもはぐらかすヘルメス様に怒りが湧いてくる
右手に【獄炎】左手に【氷獄】を纏うとヘルメス様に告げる
「凍傷と火傷、またはその両方のどれがお好みですか?黙って話してくれませんか?別に誰にも言うつもりはありませんし、あの方を貶めるつもりは無いですから」
「知ってどうするんだい?」
俺は炎でまた足元を焼き氷でヘルメス様の足を凍らせる
「聞いてんのはこっちなんだよ!良いかヘルメス様、さっきも言ったが他言する気は無いんだよ!でもおかしいだろ?あの方がアルテミス様なのか?本当に?俺は守るべきものがどういう存在なのか知っておきたいだけなんだよ!話してくれ!」
「はァ〜、わかったわかった。とりあえず氷を溶かしてくれるかい?」
「【氷獄】」
俺はヘルメス様の首から下を凍らせて身動きを封じる
「何故だい!?話すって言っただろ!?」
「逃げられないようにです。話してください」
「わかったよ...」
俺はヘルメス様からアルテミス様の正体を聞いた。
いわゆる思念体や残滓のようなものらしい、唯一残った心の1部が残滓となってベル兄が持つ槍に宿った存在らしい
「あの槍も、アルテミス様関係ってなら槍じゃなくて矢ですよね?」
「気付いていたのか…」
「話を聞いて確信に変わったってだけです」
「頼むよ、ベリル君他言はしないでくれ...これは悲しんでいる1人の女の子を英雄が死という名の救いを持って助ける物語だ」
「わかってますよ、俺は俺のやり方であの人を守ります」
「頼むよ...ベリル君」
俺はヘルメス様を拘束していた氷を溶かすと踵を返して
1人で森の奥の開けた場所にやってきて剣を振るう
「時が来れば...あの方は消えなければいけない、死ななければいけない...それをベル兄がやらないといけないのか...」
俺は剣を振るうのをやめて空を見あげた
夜空には三日月が浮かんでいた。
19話目です。次回クライマックスなのでちょっと長いかもしれませんが今後の展開を楽しみにしていてください。
次回「絶望と希望」