ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-魔王と英雄- 作:凌介
-早朝-
ホームを出てダンジョンへと向かう俺とベル兄
「ベリル、今日はどこまで潜るの?」
「ん〜昨日と同じ辺りかな?一気に進んでも良いけど、 ソロだし堅実にやっていくさ」
「じゃあ、途中までは一緒だね」
「だな」
なんて話しつつ歩いていると後ろから声がして呼び止められる
「あの〜、すいません」
「ん?俺?」
「それとも、僕ですか?」
「えっと...そちらの白髪の...」
「なにかありました?」
「昨日、コレ落としていきましたよ」
小さな魔石が手渡される
「ベル兄焦って換金し忘れたんじゃね?」
「全部換金したと思ったけど...とりあえずありがとうございます」
頭を下げると同時にベル兄の腹が鳴る
「お腹...すいてるんですか?」
「あはは...朝早いのでまだ何も食べてなくて...」
「そういや、俺もまだだったな...」
「ちょっと待っていてください」
鈍色の髪のウェイトレスさんは店内からお弁当を持ってきてくれた
「これ、あなたの食事じゃ...」
「私の方は店が始まれば賄いが出ますから...」
「で...でも...」
「どうしてもなにかお礼をということでしたら…本日の夕飯は是非とも当店で!」
「もちろんそちらの黒髪のあなたも」
「俺も?」
「はい!是非!」
「ん〜、まぁ、良いか!じゃあそういう事で!」
「ありがとうございます。行ってきます」
「お気をつけて行ってらっしゃい」
結局弁当を受け取り俺達はダンジョンへと向かった。
-ダンジョン6階層-
ベル兄と別れてやってきた6階層、俺の前にはウォーシャドウという影みたいなモンスターが2体
「いくぞ!」
ショートソードを逆手に構えてウォーシャドウに向かっていき
一体を斬り付けもう一体を蹴りで引き離し隙を着いてショートソードを突き刺し魔石に変え斬り付けたウォーシャドウには更に連続して斬撃を入れて倒す
「よし!上々!」
俺はそのままダンジョン6階層を探索するとキラーアントに遭遇する
「うげっキラーアントかよ、1匹いたら複数いると思えっていつだったか教わったな…」
とりあえず現状見えてるのは一体だけなのでキラーアントに肉薄し一瞬で首を跳ねて魔石に変えるが断末魔の悲鳴が仲間を呼び寄せる
「クソ!警戒怠った!」
俺は通路の中央に陣取り向かってくるキラーアントを各個撃破していき残ったヤツらは【獄炎】で一掃する
「ったく...【獄炎】は今の俺には乱発キツイんだから勘弁しろよ..
嫌になるぜ」
目の前には倒しきれなかったキラーアントと戦闘音に導かれたのかウォーシャドウやコボルトまでいる
「武器!まだいける!」
「回復薬!十分!」
「【獄炎】...は撃ててあと2発!」
「やってやる!」
ベリルは致命傷になりそうな攻撃のみを避けて戦いモンスターを着実に倒し1箇所に集まれば【獄炎】で焼き払うを繰り返してモンスターを倒しきった
「ふぅ〜、今日は...帰るか...」
魔石とドロップアイテムをバックパックに入れて来た道を帰り
魔石を換金する際ミノタウロスの魔石も買い取って貰った
「5万5千ヴァリス...ミノタウロスの魔石が意外と高かったみたいだ」
「武器の修理や新調、消耗品の買い物を考慮してもまだ余裕はある」
「今日はベル兄と少し贅沢するか」
そうして豊穣の女主人の前でベル兄と合流する
「ベル兄、お待たせ」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ」
店内に入るとシルさんがこちらに気付いて声を掛けてきた
「お2人ともいらしてくれたんですね」
「えぇ、まぁ」
「せっかくなので」
テーブルに着き周りを見るとお酒を飲んで仲間内でワイワイする人や静かに食事を楽しんでいる人達が目につく
「料理は何にします?」
「ん〜じゃあ肉団子と野菜の大盛りパスタと本日のオススメ白身魚の香草揚げをお願いします」
「じゃ...じゃあ僕もそれで」
「飲み物はどうします?」
「飲み物のオススメはあります?」
「本日のオススメはよく冷えた蜂蜜ソーダです」
「じゃあそれをお願いします」
「僕は果実水で」
「かしこまりた〜」
料理を待ってる間に飲み物が運ばれてくる
「お先に飲み物をどうぞ蜂蜜ソーダと果実水です」
琥珀色の炭酸果実水と果実水が俺たちの前に置かれる
ベルはメニューを見ながら小さく呟く
「そういえば僕、そんなにお金ないよ」
「今日は俺がご馳走する」
「え?」
「今日も無事生きて帰ってきたことを祝おうじゃん。」
ベルは少し驚いたあと、苦笑しながら頷く
「...うん。ありがとう、ベリル」
俺はグラスを持ち上げる
「じゃあ今日も無事生還って事で。」
ベル兄もグラスを持ち上げる
「うん!」
「「乾杯」」
二つのグラスが軽い音を立てて触れ合った。
そして運ばれてきた料理に舌鼓をうちつつ他愛ない会話を楽しんでいると
一際大きな声が店内に響く
「ご予約のお客様、ご来店にゃ!」
一斉に視線が入口に向くと大勢の冒険者達が酒場へと入ってきた。
笑い声と談笑が飛び交いそれまででも賑やかだった店内は一気に熱気を帯びる
「今日はロキファミリアの打ち上げだったか。」
俺が小さく呟く
ベル兄も入口に目を向ける
「あっ……。」
最後に入ってきた女性冒険者を目で追うベル兄
「あの人?」
「うん、僕を助けてくれた人」
「そして憧れの人ってわけね...つかあの人もいるのかよ…」
俺は顔を顰めつつ蜂蜜ソーダを飲む
「あの人?」
「あの犬みたいな人!ミノタウロスの件で絡まれたんだ」
「犬って...あの人ワーウルフ...」
「いや、犬じゃん...」
そんな他愛ない話をしているとロキ・ファミリアの席から
大きな笑い声が響く
酒が進んで気分が良くなったのだろう。
犬さんが上機嫌であの時の事を話題に上げる
「そういやよ!遠征の帰りに何匹か逃げたミノタウロスがいただろ!1匹はムカつく雑魚に仕留められたんだけどよ、もう1匹逃げたヤツはアイズが仕留めたんだけどな、その時その場にいたルーキー、ミノタウロス見てビビって腰抜かしてやがんの!ギャハハハ」
「そんでそのルーキーはミノタウロスの血浴びて真っ赤なトマトみたくなっててよ!助けてもらったアイズに礼も言わずに逃げちまった!情けねぇったらねぇよな!」
その時の事を思い出しているのだろう、目を伏せたアイズは静かに反論する
「あの時のあの状況なら仕方なかったと思う…」
「ああん?お前は雑魚を擁護する気か?なら例えばだアイズ、お前はあのトマト野郎に迫られたら受け入れるってのか?そんなわきゃねぇよな!他ならぬアイズ・ヴァレンシュタインが許すはずがねぇ!」
「何より雑魚がお前の隣に並べるわけがねぇんだからな!」
犬さんの言葉を聞いていたベル兄が逃げるように店を出て行った
「ベルさん!」
「あっ!おい!すいません!勘定は置いていきますご馳走様でした」
俺も店を出ると遠くに見えたベル兄を追いかける
「あんな風に飛び出されたら、放っておけねぇよ」
ベル兄の行先はダンジョンだった。
「うあああ!」
ベル兄はただひたすらに目の前のモンスターを倒していく
俺は邪魔にならないようベル兄の死角から襲い来るモンスターにだけ対処する
(今はまだそれでいい...前だけ見て進め...)
ベル兄のナイフが目の前のウォーシャドウを一閃する
すかさず落ちたウォーシャドウの指刃を拾うが掌が裂け血が滴る
「そこまでするのか...」
俺は背後に現れたウォーシャドウを一閃し
天井から舌を伸ばしたフロッグシューターの舌を切り落とした
間髪入れずナイフを投擲
フロッグシューターは灰に変わる
ベル兄は脇目も振らず目の前の敵をひたすらに屠り続ける
「僕は...自分自身が許せない...」
「何もしなくても...なんとかなると思っていた自分自身が許せない!」
「……ッ!」
俺は逆手に持った剣を握り直す
「ベル兄...その答えだけは...自分自身で...見つけなきゃいけないもんだ...」
その後戦闘は夜通し続いた。
ダンジョンを出ると僅かに朝日が見える
フラフラになり足取りもおぼつかないベル兄
気を抜くと今にも倒れそうだ...
「……ッ!」
思った通り限界だったようだ。
倒れそうになるベル兄に肩を貸す
「……ベリル?」
「無茶しやがって...まぁ、生き残れたんだから今はまだ...それでいいのかもな...」
「………うん」
「帰ろうぜ、俺達のホームに...」
ベル兄に肩を貸しながらホームへと続く道を歩いていく
「……ありがとうベリル」
「なんの事やら……」
肩を貸しながら、朝焼けに染まる道をゆっくりと歩いた。
2話目です。キリよくいい感じにまとめられたのでここまでとして
1話のあとがきの方でもタイトルを変更しておきました
次回からモンスターフィリアを書いていきますのでお楽しみに
次回「怪物祭(モンスターフィリア)」