ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか-魔王と英雄- 作:凌介
ベルの成長を感じ取る
-翌朝-
ロキから事情を聞いた俺は足りなかったピースがハマったように仮説でしか無かったものが確信へと変わった。
「さて...とりあえずは様子見かな?」
俺よりも少し早くホームを出たベルを追うように俺もダンジョンに向かった。
だが既に潜っていると思っていたベル兄がソーマ・ファミリアの冒険者に絡まれている
気付かれないギリギリまで近付き会話に耳をすませるが断片的にしか聞き取れない。
かろうじて聞こえたのが【襲う】【ダンジョン】【囮】の3つだけが聞き取れた。
「襲うって聞こえたしダンジョンとも聞こえた...つまりダンジョンで誰かを襲うって事だよな?だとすると【囮】って言葉が引っかかる」
「まずもってベル兄を罠にはめるとかならダンジョンで襲うなら本人に声はかけないし、ベル兄以外で襲う相手...それもベル兄と親しいまたは近い存在となると...もしかして……ベル兄が一緒にいたサポーターか?」
俺は聞こえた単語から推測し考えを口に出しながらまとめていく
「俺の推測が正しければあのリリってサポーターをダンジョンで罠にはめて襲うのに協力しろってベル兄に持ちかけた。だとすると【囮】ってのはあのサポーターを囮にして逃げるって算段か...」
となるとダンジョンの何処で襲われるかが問題な訳だが、とりあえずはベル兄を見失わないように着いていくしかないかと考え
ベル兄に気付かれない距離を保ちコートに着いているフードを被り
ベル兄を追うようにダンジョンに潜る
その後
ベル兄に着いてやってきたのはダンジョンの10階層だった
「この前は7階層を中心に潜ってるって言ってたのにいきなりこの階層ってことはさっきの様子から察するにサポーターの子から頼まれたって事か」
俺は遠巻きに
10階層から出てくるモンスターオークと戦うベル兄を観察する。
ベル兄は魔法を連射してオークを倒すが霧が深くサポーターと離れてしまいベル兄の周りにモンスターをおびき寄せる撒き餌が撒かれ多数のオークが集まって来てあっという間に囲まれそしてナイフを入れていたレッグホルダーが奪われる
「やっぱりベル兄のナイフも目的のひとつだったか……」
ベル兄は武器を失った訳ではないため戦えているが囲まれている為
思うように動けないようだ
「仕方ない、力を貸してやるとしますか」
ヘスティア・ブレードを抜き【獄炎】を纏わせて斬撃を放つ
「【炎獄斬】!!」
漆黒の炎がベル兄の前にいたオーク数体を焼き尽くす
「行け!ベル兄!」
「ベリル!?なんだか分かんないけど、ありがとう!僕、行くよ!」
ベル兄が駆け出すのを見送りつつベリルはベルを追いかけようとするオークを一閃しそのままの勢いでもう一体のオークを斜めに斬り裂くとヘスティア・ブレードを地面に突き立て宣言する
「こっから先は俺のテリトリーだ、入ってきたら斬る!」
オーク達は気にせず向かってくる
「ま、まだよな!」
俺はヘスティア・ブレードを地面から抜き【獄炎】を纏わせオークを斬り裂いていく中でもう1人誰かが戦っている
霧が深いため姿は見えないがオークが確実に減っている
「誰だか知らないけど、助っ人感謝するぜ!」
霧の中で身を翻しお互いの姿が見えないまま立ち位置が入れ替わりオークを倒していき周りに集まっていたオークは全滅した。
軽く剣を振り血を落とすと鞘に戻して呟いた
「なんかもう探索って気分でもないし帰るか…」
俺は来た道を戻り霧の中に消えるようにしてダンジョンを後にした。
その後ベル兄は無事サポーターを助けられたらしいがオークに囲まれていた時にエイナさんから貰ったプロテクターは無くしたらしい
がまぁ、命があっただけ儲けものと思うしかないだろう
-数日後-
ベル兄にどうしてもと頼まれサポーターの子と会うことになった
俺の隣にはヘスティア様が並んでいる。
ベル兄と一緒にやってきたサポーターの子が自己紹介する
「はじめまして、リリルカ・アーデです。」
ヘスティア様が同席するのは自らが望んだからだが俺は正直言うとベル兄がどうしてもと言うからだ、でなければ変異種探索に乗り出してる所だ
「めんどくさい事は言いっこなしだ、まだ打算的にベル兄を貶めるつもりはあるか?」
軽くプレッシャーを放ちながら問いかける
「めっ…滅相もございません。リリの命はベル様に助けられたものです。もう二度とあの人を裏切る事はしたくありません」
「ベル兄本人に、何よりここにいるヘスティア様に誓えるか?」
「は……はい!」
「そこまでだベリル君、威圧するのをやめたまえ」
「別に威圧してるつもりはないですけど、まぁ、やめろと言うならこれ以上は口出ししませんよ」
俺は肩を竦めてプレッシャーを引っ込める
「サポーター君、僕はねベル君の事を大事に思っている。あの子なら目に入れても痛くないと豪語できるほどにね。ここにいるベリル君も事だって大切だけど、大切のニュアンス、いやベクトルかな?そういうものがベル君とベリル君では全く違う」
「俺はその辺わかってるんでなんとも」
「すまないね、贔屓しているようで不快に思うかもしれないけれど、嘘偽りなく述べるならどうしても優劣を付けるような言い方になってしまう」
「お気になさらず。」
「とにかくだベル君を失いたくないと言うのが心からの本音だよ」
「まぁ、ベル兄から話を聞いて君の境遇は概ね把握しているつもりだ。何故どろぼうまがいのことをやっていたのかも含めてね」
「俺は俺でソーマファミリアがきな臭いと思ってずっと調べて回って推測が確信に変わったから行動した。だからこそ事情は知ってるしやすい同情をする気もない。」
「だから俺とヘスティア様からの頼みだ傍にいてベル兄を悪意や害意から守れ」
「君の事だベル君の優しさで心が押しつぶされそうなんだろ」
獣耳がビクリと反応する
「ま、そういうことだ。恩返しってならそれで十だろ!俺はベル兄と歩む道が違うから道が交差した時のみ隣に立つ。だから俺は真正面きってベル兄を助けてはやれないからな、まぁ、助ける気もないけど…」
「どういう事ですか?」
「この2人は仲が悪い訳では無いけど、目指す場所が違うからなのか一緒に行動しないんだ。」
「それに、ベル君よりも強いよ、ベリル君は」
「そうなんですか!?」
「ベル君が武器、防具あり、ベリル君はブレストプレートのみって条件でやりあった結果ベル君は武器を奪われ組み伏せられたよ」
「ベル様が...」
「まぁ、弟として兄にだけは負けられないんでね」
「え!?ベル様の弟なんですか?」
「言ってなかった?俺、弟、ベル兄は俺の兄貴だよ!ずっとベル兄って呼んでたけど気にならなかったか?」
「はい……」
「まぁ、そういうことで!俺は俺で行くとこあるんでこれで失礼します!」
ベル兄が戻ってきたタイミングで俺は外に出る
この後2人にもみくちゃにされるベル兄を助けるのなんざごめん被る
何が悲しくて女同士の喧嘩に首突っ込まなきゃ行けないのかって話だ。
俺はとりあえずガンテツさんの店から行くことにした。
いつもの路地を曲がりガンテツさんの店へ
「こんにちは、ガンテツさん」
「おう、来たか…いい素材は手に入ったか?」
「変異種は会えませんでしたけど、上位種なら」
そう言ってヒュージシャドウの爪刃を見せる
「ほう、上位種でも中々会えんというに運が良いの、これなら多少の強化は出来るぞ!」
「中層でも戦えますか?」
「中層で使えんこともないが...ギリギリじゃろう本格的に変異種を狙うしかあるまい」
「ガンテツさんが一番最初に譲ってくれたこのロングソードはどうなんです?」
「そいつは耐久力を主として鍛えてあるからの中層までなら耐えられるじゃろ!それ以降となるともっと斬れ味と耐久を両立させんと無理じゃな」
そうなるとまだ先だろうがこの先中層に行くことを見越して装備を更新していかないといけない
「ガンテツさん、本格的に中層を見越して装備を更新していきたいです。」
「そう来ると思っておったからこそ変異種やら上位種やらの素材をお前さんに集めるよう言っとるんじゃ!」
「そうですよね...今出来るのは上位種や変異種は狙っていかないと、ガンテツさんの武器がまだ上層向けなのがいたいですね」
「上層で手に入る素材を集めて中層てやり合えるようにするしか無かろうな」
「そうすると狙うは鉱石ですかね?」
「上層でも鉱石は採れるが武器にしても品質は数段落ちるが混ぜ合わせて合金にすればなんとかなるかの...」
「わかりました。とりあえずはまた変異種探索しつつ鉱石採取してきます」
「そうしろ、変異種は本当に簡単に出現するものでも無いからの」
なんて話しつつもガンテツさんは槌を振り続けてシャドウ・ソードの強化を完了させた。
「できたぞ!と言っても強化じゃから改ってところかの...」
「シャドウ・ソード改ですか...何か特別な力が?」
「斬撃の威力が上がる程度じゃな影を操れるなら纏わせるくらい出来るかもしれんが、そんな事お前さんでも出来んだろ」
「炎は操れても影はちょっと無理ですね」
「まぁ、しばらくは上層探索しとれ!中層いくならどの道Lv2からじゃなければ無理じゃからの」
そこはやはり地道にということか…焦っても仕方ないからな
俺はお金を払って剣を受け取った後ダンジョンに向かった。
今日は1日だけで済ませるつもりだシャドウ・ソード改の斬れ味を試すだけだ
俺は9階層までやってきてウォーシャドウを狩る
「ウォーシャドウはたくさんいても上位種や変異種は1匹もいないってか!しかも今日は指刃のドロップも少ないし...」
俺は1度10階層まで降りると珍しいくリザードマンに遭遇した」
「ちょっとは歯ごたえあるかな?」
シャドウ・ソード改を鞘に戻しヘスティア・ブレードを引き抜き
炎を纏わせる
「持続時間を伸ばす訓練にはちょうどいい」
炎を纏った斬撃でリザードマンが持つ武器だけを狙って攻撃し
時には腕ごと斬り飛ばすが油断すると尻尾による攻撃が来るため
常に警戒が必要だ
「持続時間は20秒くらいに伸びたけど、それ以上となると霧散するな…」
ヘスティア・ブレードは魔力が通りやすいだけでそれを纏めないと霧散してしまう
「斬撃にして飛ばすことはできるが纏わせて持続させるとなると中々上手くいかないな...」
「【炎獄斬】!!」
ならばと炎獄斬の範囲を調整出来ないか試してみるが今日のところは成果ナシだ
「シャドウ・ソード改の使い心地はわかった。他の事については今日は成果ナシで良い」
今日の所は帰還する事にした。
-その夜-
食事を終えて協会の入口で風に当たっているとベル兄が隣に立った
「なんか用?ベル兄」
「ベリル、僕と模擬戦してくれない?」
「前は嫌だって言ったのにどんな心境の変化?」
「実は、アイズさんから訓練を受けたんだ」
「遠までの間にベル兄の訓練を買って出てくれたってとこかな?」
「うん、それで前はベリル素手だったけど、今回はショートソード1本とブレストプレートだけ装備して戦って欲しい」
今のベル兄の実力を知るいい機会だと思ったので受けることにする
「良いよ、やろうか!」
俺は寝床件物置からブレストプレートとショートソードを取ってきて装備すると順持ち手でショートソードを抜き腕をだらりと下げる
「準備は?」
「いつでもいいよ!」
「ならどっからでもかかって来なよ!ベル兄」
「いくよ!」
ベル兄が駆け出しナイフを振り抜くと見せかけて蹴りを放ってくる
俺も蹴りを放って迎え撃ちベル兄の蹴りを相殺し拳を撃ち込むがベル兄はそれを躱しナイフによる連撃を繰り出すが
俺はショートソードでそれを全て受け切り流す
「くっ...」
「終わり?」
「まだまだ!」
2本のナイフを逆手に持ち速さを活かして攻めてくるが動きが素直すぎて躱したり受け流すのは容易い
「もう少し技とか駆け引き覚えなよ…たしかに強くなったけどまだまだ動きが素直すぎ!」
俺はショートソードをベル兄に向かって投擲しベル兄が弾いた瞬間にショートソードを掴み取り身を低くして懐に潜り持ち手でベル兄の腹部を打つ
「ぐっ...」
怯んだ隙を見逃さずベル兄を蹴り飛ばして距離を開けた
「1本!でいい?」
「うん...僕の負け」
「強くなったねベル兄」
「でも、また勝てなかったよ。」
「もしもベリルが得意の剣使ってスキルと魔法アリならどうなってたかな?」
「その装備がボロボロになってただろうね」
「ベリルはなんでそんなに強いの?」
「力をどう使うかを常に考えてるから」
「どういう事?」
「困ってるから助けるじゃダメなんだ、助けるなら勝つのは当たり前じゃなきゃね」
「勝って助けるんじゃダメなの?」
「それは英雄のやり方さ、助けるな勝たなきゃ信念は貫けないからね例えそれで魔王と呼ばれても関係ない」
「ベリル...僕は強くなるよ!君にも負けないくらいに!そしていつか...英雄になる!」
「俺は自分の信念を貫く例えそれで魔王と呼ばれても」
「次は負けない」
「なら本気で来い!いつでも待ってるぜ英雄」
「いつか倒すよ!魔王!」
そう言って拳をコツンと合わせて笑いあった。
7話目です。今までよりちょっと短い分読みやすいと思いますが区切り次第では長くなったり短くなったりすると思います。
次回はベルとアイズさんの特訓にベリルが1日だけ参加してその後レフィーヤと一緒にダンジョン探索しますのでお楽しみに
次回「合同訓練/魔法使いと剣士」