FAIRYTAIL~錬鉄の魔導士~【凍結中】   作:深淵の守人

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連日のバイトで疲れ気味で更新が遅れました。
じゃあ、早速どうぞ。


呪歌編
六話


~六話 過ぎ去りし時と共に~

 

 

夢を見た。

 

遠い日の夢。

 

俺がまだ■■■■だった頃の夢。

 

映像のように映し出されたそれを見る。

砂嵐のように掠れた映像を見る。

途切れた継ぎ接ぎの映像を見る。

 

そしてその記憶が抜け落ちている事に気付くのだ。

磨り減っていく■■■■の変わりにエミヤシロウが入ってくる。

 

俺はまたエミヤになっていった。

 

 

 

 

「何だ。エルザは居ないのか?」

『うん。帰ってくるなりナツとグレイ連れて何処かに行っちゃたの。ブレーキ役に新人の“ルーシィ”って子も一緒に行ってもらったわ』

 

魔水晶に映った白銀の髪の女性“ミラ・ジェーン”と通信をしていた。

 

「爺さんも不在か。ふむ、仕方あるまい。事後報告だけすることにする」

『何か問題でもあったの?』

「クエストとは関係無いがな。それ自体は十日程前に完了した。帰還の際に少しばかり面倒事が起きてな。二日程で片付くとは思う」

 

路地裏からある店の一角を監視しながら言う。

正確には“ある人物”を、だが。

 

その人物が店から出てきた。

 

「っと、すまない。動きがあったからもう切るぞ」

『うん。マスターには伝えておくから』

「頼む」

 

通信を終え、手早く袋に仕舞うと人込みを避けつつ追跡を開始した。

 

 

 

 

オニバス駅を越えクヌギ駅に近づいていた頃、周辺にはゴロツキの様な男達が集まっていた。

 

「ふん。成る程、此処が合流地点と言うわけか。列車でも占領する気か?」

 

木陰から様子を伺っていた俺の視線の先には監視していた大鎌を担いだ男がいる。

闇ギルド『鉄の森(アイゼンヴァルド)』のエース“死神”エリゴール、それが男の名だ。

有事の際の準備は幾つかしてあるが戦力として此方が余りにも劣勢過ぎる。

目的も定かでない以上仕掛けるわけにはいかない。

 

しかし―――

 

「おい。何時まで隠れてるつもりだ。出て来い」

 

どうやら敵もそう莫迦ではなかったらしい。

得策とは言い難いが此処で出て行かなければ背後を見せたまま魔法を放たれるのが落ちなので大人しく木陰から出る。

 

「それなりに気配は消していたつもりだったのだがね」

「俺は『風をよむ』事が出来んだよ。テメェが付けていたのは結構前から気付いていたぜ?」

 

迂闊だった。

最低でもキロ単位で離れてる必要があったようだ。

 

「緑衣に赤髪。妖精の尻尾(ハエ)のとこの“剣聖”か。噂はかねがね聞いてるぜ?つい最近も八頭の大蛇を殺してきたらしいじゃないか」

「楽ではなかったがね。無傷など持っての他だよ」

 

先日完了したばかりの十年クエストの事だ。

何故かは知らないが、この世界にも神話の化生がいるらしい。

例によってそのクエストの標的は『ヤマタノオロチ』だったのだから。

 

「それで。折角そちらの方が戦力的に優勢なのだ。このまま私にぶつけてみるかね?」

「いいや。こいつ等は後に使うつもりだからな。今戦力を削られるのは困るんだよ」

 

皮肉な笑みを浮かべて問う俺にエリゴールは否定した。

成る程、つまり此処はあくまで“通過点”と言うわけだ。

 

「買い被り過ぎだと思うがね」

「ぬかせ。S級魔導士が何言ってやがる。―――さて、折角名高い剣聖がいるんだ。俺が直々に首を落としてやる」

「妄言はその辺にしておきたまえ。痛々しくて目も当てられない」

「晒し首決定だなァ。テメェらは先に行ってろ」

 

エリゴールが後ろにいる連中に指示を出すと、ぞろぞろとクヌギ駅の方へ向っていった。

向き直ったエリゴールの顔は殺戮を嗜好する狂人のそれになっていた。

この手の奴は単純で楽だ。

挑発にしっかり乗ってくれた。

 

「では無駄話はこの辺にしておこう。―――投影、開始(トレース・オン)

 

魔術回路に魔力を流し、自己の心象に埋没する。

剣の丘から引き抜いたのは、自分にもよく馴染んだ黒白の陰陽剣。

 

「死ねェ!!」

 

宙に浮かんだエリゴールは大鎌を振り上げながら高速で接近してくる。

振り下ろされた大鎌を、腕をクロスさせ右の干将で防ぎ、左の莫耶で刺突を放つ。

しかしエリゴールは風に乗ってひらりと避け、距離を取る。

 

「どっちが“ハエ”だよ、全く……」

 

久々に(サクヤ)の地が出たが、即座に思考を切り捨てる。

戦闘面で俺《サクヤ》の思考は殆ど役に立たない。

特に相手が手加減してくれるような者で無いなら尚更だ。

 

I am the bone of my sword.(我が 骨子は 捩れ 狂う)

 

干将莫耶に魔力を流し込む。

すると、ビキビキと音を立てて形状が変化した。

それは正しく“翼”。

短剣から一層伸びた刃が異様な雰囲気を作り出す。

 

短剣の長所は小回りが利くと言う点だ。

その要素を捨ててでも剣の骨子を曲げたのには理由があった。

エリゴールは大鎌を使いながらも動きは素早い。

敵が最速と謳われるランサーのサーヴァント“クー・フーリン”ならば短剣で良かったかもしれない。

槍の基本動作は“突く”だ。

攻撃の範囲は“点”となる。

となれば軌道を反らすだけで最小限の動きで回避が出来る。

だがエリゴールの使う得物は大鎌だ。

大鎌の基本動作は“薙ぎ”だ。

加えて曲がった特殊な形状から防御がし難い。

下手に軌道を変えて反らすより受ける方が得策だ。

ならばレンジの短い短剣である必要は無い。

 

「これなら如何だッ!」

 

エリゴールが手を動かすと同時に突風が吹く。

飛ばされないように脚に力を入れて両腕で吹き込む風を防ごうとした。

次の瞬間、左肩、右肘、左胴、右膝に身を切る感触が走る。

 

「くっ!鎌鼬か!」

 

流血した肩を押さえながら、エリゴールを見る。

エリゴールが大鎌を振り上げ、再び接近してくる。

振り下ろされた大鎌を右の干将で弾くと今度は此方が後退する。

だがエリゴールも追撃の手を緩めない。

此方もこれ以上後退すればペースを乱される。

繰り出される斬撃に応じる。

一撃、二撃、三撃、四撃、五撃、六撃、七撃、八撃、九撃。

最良の手段によって防ぎ、弾き、撃ち落す。

鋼の二重奏が響く。

執拗な攻撃を鉄壁の防御を持って迎え撃つ。

次第にエリゴールの方がペースを乱され、最後に大振りで一撃するとエリゴールは後退した。

 

「(凌げたか)」

 

態勢を立て直せばまだ反撃のチャンスはある。

だと言うのにエリゴールは笑みを浮かべていた。

 

「如何した。気でも狂ったか?」

「何。十分足止めさせてもらった。列車も占領したようだし、残念ではあるが此処で打ち止めだ」

 

エリゴールの物言いに目を強化して駅の方を見る。

窓越しから先の連中が乗っているのが解った。

時間を掛けすぎたか。

 

「じゃあな、剣聖。全てが片付いたらその首、貰いに来てやるよ」

 

手を動かして印を結んだエリゴールが俺に手を突き出す。

 

「―――暴風波(ストームブリンガー)!!」

 

直射上に渦巻く風が放たれる。

魔力ブーストを上げ、射線上から離脱する。

 

見上げた空には去っていくエリゴール。

 

「逃したか」

 

強化した目でエリゴールが列車に乗ったのを確認すると、投げ出していた袋から止血剤で簡易な応急処置を済ませると列車が去った方角を見据える。

 

「(確か次の駅はオシバナ駅だったな)」

 

魔力の残量は六割弱。

強化と軽量の魔術を使用しながら、数キロを走れば二割はもっていかれるだろう。

エリゴールと先の連中を肩抱けるには少々心許無いがやる他は無い。

 

「―――同調、開始(トレース・オン)

 

魔術回路に魔力を走らせる。

腕に、脚に魔力を満たす。

 

そして、列車が走り去った方へ駆け出した。

 

 

 

 

数刻の後、オシバナ駅にてナツ、グレイ、ハッピー、ルーシィ、エルザはエリゴール率いる『鉄の森(アイゼンヴァルド)』と相対していた。

列車の上に腰掛けていたエリゴールは忌々しげな表情をした。

 

「今日はつくづく妖精の尻尾(ハエ)に縁がある日だな」

 

エリゴールの言葉にエルザ達は首を傾げたが、気を取り直す。

 

「貴様らの目的は何だ?」

「何だろォなァ」

 

エリゴールは不敵な笑みを浮かべ、エルザ達の神経を逆撫でする。

苛立ちを隠せず奥歯を噛み締めたエルザを見て、エリゴールは更に表情を歪める。

エリゴールは風で舞い上がり、駅内の放送スピーカーをコツコツと叩いた。

 

「まさか!呪歌(ララバイ)を放送するつもりか!?」

「ふははははっ!この駅の周辺には何百…何千もの野次馬共が集まっている。音量を上げれば死のメロディーが街中に響く!!」

「何の罪の無い人々を無差別に殺すと言うのか!」

「罪が無いものか!“権利”を奪われた者の存在を知らず、“権利”を掲げ生活を保全している。これはそんな愚か者どもへの粛清だ!」

 

憤りを顕にするエルザ達を前に、エリゴールは朗々と言う。

 

「この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって死神が罰を与えに来た!」

「貴様ァ!」

 

高笑いを続けるエリゴールに、エルザは唸った。

 

その時、背後から声が響いてきた。

 

「非道な行いに憤る程成人してくれたのは嬉しいが、まずは右に避けろ」

 

えっ、と聞き覚えのある声に驚き振り向いたエルザの目の前を、何かが高速で通り過ぎる。

それはエリゴールへ真っ直ぐに飛んでいく。

 

「ッ!」

 

エリゴールは肩に担いだ大鎌を振るう。

甲高い金属音が響き、弾かれたそれは鉄の森(アイゼンヴァルド)の軍勢の中央に落ちた。

 

それは歪な形の黒い西洋剣。

そこには()()の魔法剣には無い魔力が内包されている。

 

それを理解した時、エルザは誰よりも歓喜に震えた。

長年再会を待ち望んでいた思い人が来てくれた、と。

 

照明が落ちた暗い通路から人影が見える。

エリゴールはそれを確認して先程には比べられない程の忌々しげな表情をした。

 

「またテメェか……“剣聖”!!」

「あぁ。また邪魔させてもらうぞ……“死神”」

 

暗い通路から現れた青年サクヤは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 




戦闘を続けて書こうとすると、どうしても一話が長くなるので一旦区切ります。
次回もお楽しみに。
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