FAIRYTAIL~錬鉄の魔導士~【凍結中】   作:深淵の守人

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最終投稿から約四ヶ月。
借り住まいを探したり、学校の課題におわれたりとなんやかんやでおろそかになってました。
今回は少し短め。
次の週からペースを戻していくつもりです。


七話

~七話 ゼレフの遺産~

 

数分前、サクヤは集まった野次馬を飛び越え、オシバナ駅内部に潜入していた。

 

警戒しながらも奥に進んでいくと、通路に武装した兵士が十数人倒れていた。

おそらく鉄の森(アイゼンヴァルド)の襲撃を受けたのだろう。

幸い命に別状は無いようだが、怪我を負っている。

辺りに飛び散った鮮血が遠い日の記憶のフラッシュバックさせる。

 

一人一人応急処置をしているサクヤの顔は酷く苦悶に満ちていた。

彼にとって納得のいく状況ではなかった。

 

此処に来た兵士達は当然こうなる事も覚悟していただろう。

それでもサクヤには納得がいかない。

彼らが傷つく理由などなかった、自分が至らなかったばかりに、そう自意識過剰にも等しく自身に罪を押し付ける。

 

楽園の塔の一件(あの日)以来、サクヤの人間観は狂ってしまっていた。

自らの価値は地より低く、他者の価値が絶対化した。

善悪を推し量り、己の手が届く人々をただ救い続ける。

 

それはまるで罪を償う罪人のようで―――

 

―――その背は彼の錬鉄の騎士と重なっていた。

 

 

 

 

「テメェ、如何やって追いついた?」

「何、脚は人並み以上には自信があってね。走って追いついただけだ」

「冗談ぬかせ」

 

宙を舞うエリゴールを見据えて皮肉を言う。

当然の反応だろう。

ただ走っただけでは生身の人間が列車に追いつく事など不可能だ。

 

それを可能に出来るのは魔術を使ったからだ。

“軽量化”の魔術と“強化”の魔術を併用する事で速度を維持して跳躍してきたのだ。

 

サクヤは投影した弓を破棄し、新たに干将莫耶を投影する。

そのまま距離を詰めエルザ達に並ぶ。

 

「あのぉ、どちら様でしたっけ?」

「可笑しなことを言う。君と会うのは初めてな筈だが?」

 

露出度の高い服を着た金髪の少女の問に返す。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のサクヤだ。君が噂の新人君かね?」

「えっと、そうです。ルーシィって言います」

 

噂の、の辺りから表情が引き摺っているルーシィに、サクヤは何か失礼でもあったのかと思うが、彼女が、何でもないです、と何かを諦めたように言うので深くは追求しなかった。

 

会話の最中、終始仏頂面のサクヤの表情を見たエルザが笑みを漏らした。

 

「久々だな、サクヤ。如何して此処に?」

「ふむ。私としては君達が此処に居る事の方が不思議なのだが。私はエリゴールを追っていたからだよ」

 

簡略して話せばこうだ。

 

 

 

 

数日ほど前のことだ。

クエストが終了し、久々の帰郷の前に新しく情報を仕入れに情報屋を訪れていた。

 

どの世界おいても情報というのは貴重だ。

事に裏の情報は簡単に手に入る物ではなく、自ら捜査するには手間が取る。

そんな事もあり、情報捜査に長けた存在が情報屋だ。

彼らは経済や政治からマフィアや裏市場に至るまであらゆる情報を手に入れ、それらを売り稼ぎを得ている。

 

ところが、サクヤが以前から好意にしていた内の一人の情報屋が何者かによって殺されていたのだ。

首が胴体から切り離され、デスクの上に首が置かれていた。

首から滴る血はデスクからまるで滝の様に流れ、顔は恐怖に引き攣っていた。

 

部屋は暴れた様子はあれど漁られた形跡は無く、物取りで無いと解ったときデスク周りの捜査資料を探った。

そして一番新しい日付の物を見つけた。

 

その内容は闇ギルド『鉄の森(アイゼンヴァルド)』の近状について。

連日に渡る記録。

活発化していることを示唆する記述。

 

それらを見て確信した。

彼は口封じの為に殺されたのだ、と。

 

 

 

 

 

「酷い……」

 

「闇ギルドの連中は得てしてそういう奴が多い。今回の事に限らず、な」

 

ルーシィの呟きに半ば反射的にサクヤは返した。

先の話を聞き取ったエリゴールが笑い声を上げる。

 

「ああ、あの男か!いや、アイツは傑作だった。恐怖に歪んだ顔がなんともねぇ!」

 

風で舞い上がったエリゴールが悦楽に浸るようにクルクルと回る。

 

「黙れ」

 

瞬間、サクヤが弾丸の様に跳ぶ。

エリゴールの大鎌とサクヤの干将莫耶が甲高い金属音を上げ、衝突する。

勢いに乗ったサクヤの剣でエリゴールは列車の上空まで押し戻されるが、すぐさま剣ごとサクヤを弾き飛ばす。

 

停車したままの列車の上に着地したサクヤは更に追い討ちをかける。

足場が無いと不利と判断したエリゴールは列車の上に降り立ち、サクヤの追撃を迎え撃つ。

大鎌の刃がサクヤの剣を受け止める。

 

「貴様には評議会の方で手配が出されている。発見次第捕縛するように、と。また、生死を問わない、ともな。貴様は此処で仕留める!」

 

サクヤの言葉でエリゴールは不気味な笑みを浮かべる。

 

「勝てると思ってんのかよ?」

 

「勝てないとでも?」

 

皮肉を皮肉で返す。

その言葉を最後に衝突は激しさを増す。

 

お互い一歩も引かず強力な一撃を繰り出す。

それを弾き、受け、流す一進一退の攻防。

 

一方は死神の笑みを浮かべ、一方は無表情を象る。

 

打ち合う事、数合。

小回りの利く小剣を扱うサクヤに比べ、大鎌を使うエリゴールは息を切らしてきた。

エリゴールは大鎌を薙ぐ様に使っていて、尚且つサクヤの基本カウンター型の戦い方をする。

自ら仕掛ける必要が無い為、常に大立ち回りしているエリゴールの方が疲労が激しいのだ。

 

当然その事をエリゴール自身も気付いている。

右の大鎌を振るいながら、空いた左腕に風を纏わせ鎌鼬を飛ばす。

クロスレンジで放たれた鎌鼬を避ける為に、サクヤは大きく後退する。

 

しかし、鎌鼬そのものはワイドレンジ。

狭い列車の上では避けきるのは困難と言っていい。

即断したサクヤは列車から跳び、エルザ達の下に降り立つ。

 

それを見届けたエリゴールが再び空に舞い上がる。

 

「時間をくった。テメェらは妖精(ハエ)共をもてなしてやれ」

 

エリゴールは窓を突き破ると隣のブロックに消えていった。

 

「クッ、待てエリゴール!」

 

去るエリゴールに手を翳すもサクヤに止める術は無い。

赤原猟犬(フルンディング)による追尾もこう建物の中では壁などの障害物により意味を成さない。

壁を破壊しようにも外にいる野次馬への影響もある。

 

事実上、此処でエリゴールを捕らえる術は無い。

サクヤは次に考え得た策を指示する。

 

「ナツ、グレイ。エリゴールを追え。エリゴールの確保は最優先だ!奴にあの呪具を使わせるな」

 

「うっし!」

 

「任せとけ」

 

ナツもグレイもサクヤには十年来の信頼を置いている。

指示を受けるや否や隣のブロックに繋がる通路に走っていった。

 

「ちッ!逃がすかよ!」

 

「こっちもだ!!あの桜頭だけは俺が仕留める!!」

 

一人が影に沈み、もう一人は指から伸ばした糸の様なモノで二階に跳ね上がりナツとグレイを追う。

サクヤにとって誤算ではあったが、想定の範囲内だ。

 

「残る連中の一掃を如何するか、だな」

 

残りの魔力の残量を考えるに、エリゴールとの再戦を考え魔力は温存しておきたい。

しかし、後の小事を考えるに此処に居る連中も野放しには出来ない。

 

「一掃するだと?テメェら三人で何が出来るってんだよ!」

 

「何。足止め程度如何という事では無い」

 

ナツとグレイがエリゴールを捕らえる事に賭ける、サクヤが下した結論だった。

 

「男の方は如何でもいいが、女の方は生け捕りだ!」

 

「脱衣ショーでもやらせるか」

 

サクヤの発言により、慢心を色濃くした鉄の森(アイゼンヴァルド)のメンバーが罵詈雑言をとばす。

サクヤにとってこの状況を作り出す事が先の発言の意図である。

 

同時に、彼らの傍に転がる()()()視線を逸らす為でもある。

 

「忠告だ。敵が落とした物に不用意に近づかない事だな」

 

―――壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

剣に内包された魔力が爆ぜる。

込められた魔力は少しだったものの連中を吹き飛ばすには十分の威力だった。

 

「ガァアアッ!!」

 

「ぐわあああ!!」

 

爆発により四方に飛ばされ、立っているのは運良く爆発に巻き込まれなかった二人だけだ。

 

「テメェ…図に乗んじゃねぇぞっ!!」

 

残った内の一人が腕に魔力を纏わせ突進してくる。

しかし、鷹の眼はその程度の動きを見切れない訳など無い。

半身だけ動かし最小限の動きで避けると後ろから後頭部を干将の柄で叩いて気絶させた。

 

最後の一人はサクヤが睨みを利かせると、ひぃ、と怯えた声を上げ、通路の奥に消えていった。

 

それを見据えて静かに言い放つ。

 

「準備も覚悟も足りなかったな」

 

サクヤは投影した剣を破棄して、エルザ達の下へ向った。

 

 

 

没エピソード

 

「男の方は如何でもいいが、女の方は生け捕りだ!」

 

「脱衣ショーでもやらせるか」

 

サクヤの発言により、慢心を色濃くした鉄の森(アイゼンヴァルド)のメンバーが罵詈雑言をとばす。

サクヤにとってこの状況を作り出す事が先の発言の意図であったが、思惑外の事が起きる。

 

「……サクヤ」

 

唐突に呼びかけられたサクヤの背筋に悪寒が走る。

自分に向けられてモノではないが、その怒気は凄まじいものだ。

無論、此処にそれだけの怒気を放てるのは一人(エルザ)だけだ。

 

「足止め程度では生温い―――」

 

振り向いた先には魔法の鎧・騎士(般若)のエルザがいた。

如何やら、サクヤの発言は味方を炊きつける事にも繋がったらしい。

 

―――循環の剣(サークルソード)

 

「完膚なきまでに一掃するっ!!」

 

無数の剣がエルザ達を中心に展開され、鉄の森(アイゼンヴァルド)のメンバー達を斬りつける。

一人、また一人と崩れていく敵にエルザは口を開く。

 

「これ以上、妖精の尻尾(フェアリーテイル)への侮辱は許さん。何より―――」

 

「その下卑た視線で私を見るなっ!!私をその様に見ていいのはサクヤだけだ!!!」

 

そう豪語するエルザを見て、サクヤは道を誤った気がして頭痛が隠せなかった。

 




没エピソードは完全にネタです。
今後もちょいちょいおまけを入れたりするつもりです。
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