価値観置き場ー 作:なんで?
「ふぅーむ。人は当時最善と思える行動を取る。それは同意しよう。でも、それが未来に繋がることが否かは分からないというのが難儀なものだな。」
「人間は、いかなる時間においても理性と感情の戦いを起こしている。楽しさ、というものを追求しすぎると現実が崩れ、逆に未来に殉じすぎると夢が遠のく。
だから、写真というのは重要なんだ。夢見た時間はいつか風化してしまうが、写真という現実に投影した瞬間、それは夢ではなくなる。」
「あぁ、全くだ。だが、感情は痛みというのを極度に恐れる。失敗、嘲笑、苛立ち、孤独。そういうのが辛いんだな。
俺は今、現実に夢を見れていない。」
「受験は団体戦、よく言ったものだね。
きみは個人戦だ。誰もいないね。クラスではもう馴染めていないだろう。」
「あぁ、なにぶんこの足だから。動けるものも動けんのさ。すると会話する機会が減る。それの繰り返しだ。何せ隣のやつは喋れないから。もう少し饒舌だったらなー、少しはこの空虚もマジになったような気がするが。」
「辛いねー。きみはこのクラスからどんどんと忘れ去られている。だが、それはきみの精神的部分もあるだろう。」
「今はワールドカップ一色だが。生憎と俺はそれに馴染めん。それが原因かもなー」
「云々、仕方ないね。」
「情けないものだ。」
そう言って俺は再び勉強机に向かった。
SAPIX時代の産物を裏紙として使って、構造式を書き連ねていく。
ベンゼン環、ビウレット反応、ニンヒドリン反応、前九年の戦い。
そうやってどんどん力を身につけていく。
失敗をこの場で恐るな。成功のための礎となって、何もかもを捨てきれ。
「勉強、というのは果たして題材となり得るのかな?
勉強している風景を文字で描写するとは中々新鮮だね。意外と面白い。」
「ま、これを実際やっている最中は文学的表現なんて微塵も浮かばないもんさ。」
そうだ。この時は娯楽からも何もかもから遠のいた気がして、それが嫌なのだ。
勉強という道のりは隔絶している。ネットを弄ることは誰かを見つめているから安心できる。
こういう観点からも分析できるのか。
「きみはきっと何かの娯楽にずっと触れていたい。いや、少し語弊があるか。
君は何かに属していたい訳だ。娯楽とか楽しさに満ちた何かにさ。」
「それが楽しさの正体、とでもいうつもりか?」
「いやいや、そんな訳ないよ。だったら写真フォルダを見つめているのが最も楽しいこと、になってしまうからね。ただ、重要なワードではあると思うよ、その、なんていえばいいのかな、そう、たしか、繋がり?ってやつかな
君がアクリルスタンドを飾っているのも、音楽を聴いているのも、過去の自分、他人と繋がっていた過去の自分と繋がっていたいから生まれたものだ。
強いていうなら、そうだな。」
「貴方の電波に犯されたい!かな?」