価値観置き場ー 作:なんで?
「空虚。」
「ん?」
「俺は先程、何もない空虚な時間を過ごしていた。」
場所は学校から変わって、夕暮れに染まった河川敷だった。
少しどろっと濁った川が流れていて、地面から伝わる草の感覚が心地いい。日差しは少しヒリヒリとするけども、それ以上に風が優しく吹いて暖かく、されど冷たく包んでくれるから辛くなかった。
「俺は、能動的に生きると決めていた。だが、俺は先程何もしなかった。考えることも、やりたい事を考えることも、ただ時間に身を置いていた。効率という点で見るなら、恥ずべきことであってはならないことだ。
なのにどうだ。俺はそれを心地いいと感じていた。いや、もしかしたらそれだけじゃないかもしれない。俺が時間に身を委ねているのは、ボール遊びや、アメフトボールを投げている時もそうだ。あんなのは何も生まない、なのに、何故か無性にしたくなる。
マイページを訳もなく眺めている時もそうだ。更新されている作品は何もない、なのに何故か未練がましく張り付いている。なんなのだ、この現象は。どこから来ている。」
「理屈で説明がつかないこと、か。それは面白いね。多分それは理性に則った合理的な行動ではない。本当に君が自分をコントロール出来ているならそんな時間はすごさない。なら、習性という観点で見るべきじゃないかな。
情報や現実に翻弄されてすぎて、訳もなくただ感情の整理のために身を置いておきたい。それが起きるのは午後の時間帯だろう?勉強が無味乾燥に見えてしまう時、それが発生するなら。そういうことだろう。」
「それでも、分からんのだ。何故俺はそれを心地いいと思った?そこが1番な疑問だ。焦燥感はなかった。充実感さえもあった。それは何故?何故だ?」
「んー、分からないね。お手上げかな?ま、性分というかそういう気質として受け止めるしかないのかな?理屈とか理解するものじゃなくてただ『当然』のものとして受け止める。それが君にとっての最善」
「な訳がないだろう。これはチャンスだ。自分を見つめるための、分析するための、強くなるための。原因は、潰す。なら、それに見合った行動をするまでだ。午後と午前の一時間の長さは一緒なのだから、貴重に思うべきだろう。」
「ふーむ。単純に疲れているからじゃない?あ、でもそれだと夜に能動に動ける理由が分からないか。じゃあ、逆に考えよう。君が午後を有意義に過ごせるのは、どんな時だった?」
「ゲームか、執筆だな。」
「そう、ここから分かるのはある程度の快楽を伴っているということじゃないのかな?それか目の前に繋がっていること。
午後になると強い刺激を求めて、脳が勉学で刺激を摂取しばらくなってくる。これが要因かな?」
「それで、解決策は?」
「ふーむ。音楽をかける。というのも手段してはアリだが。それさえするゆとりもない訳だ。なら、宿題を溶かす。タスク系のやつにシフトした方がいい。暗記とか、そういう目に見えないものじゃなくて、何ページ進んだとか。そういうやつ。」
「それで、いいのか。」
風が一段と強く吹いた。今度は冷たく肌を突き刺し、思わず目を細めてしまう。
ずっと、この時間が続けばいいのに。きっと、これが本音だ。
「何もしたくない、か。日常の喧騒から身を置きたいのかな?」
でも、それは許されないことだから。未来の俺のためにはならないから。
だから俺は草むらからそっと身を起こした。気づけばいつも使っているペンが、俺の手にあった。
今を犠牲にするんじゃない、と思う。ただ、午後は少しゆったりとして、気持ちを遠くやりながら作業するのがいいのではないかと思った。
やっぱり、河川敷特有のあの幻想的というか、時間から隔絶した雰囲気は一際素晴らしいというか、心惹かれますよね。多分、理屈じゃないんだろうな。
あそこで一生グータラしてたら何もないはずなのに、何故か後悔しないんすよね。これは、俺がそれ相応の価値を見出してるということですかな?
やはり、人生って不思議だなー