やられ役になってたまるか〜〜 黒き魔女へと堕ちるまで 作:瑠璃1
空はこれからの不吉を予言する様に、どす黒く濁り、ギシギシと軋みながら崩れかかる王城の城の中。
この世の全てを飲み込みような黒く幼い魔女に対して。
とても美しくみんなの希望であった、勇者パーティは、今は見る影もない様子で暗く瞳を濁らしながら、血まみれの状態で床に膝をついていた。
「ドサッ」
‥‥‥‥‥だが、勇者の青年は、悲鳴を上げ、軋む肉体を無視し、聖剣を杖代わりに執念だけで立ち上がる。心を奮い立たせ、最後の力を振り絞って戦おうと叫ぶ。
「…うぉーーー!!」
「ま‥‥まだだ!?‥まだ終わ‥‥ガハッ」
しかし肉体はとうに、限界を迎えていた。鮮血を口から吹き出し、前のめりに倒れ込む。
「?‥‥ふふっ‥‥なんでそんなにがんばるの?」
倒れた青年を覗き込むように、黒い魔女は心の底から不思議そうに問いかけた。
全身が血まみれで、死にかけの勇者は、それでもギラギラした、怨嗟の目で睨みつけながら、呪詛を吐くように叫ぶ。
「‥ハァ‥ハァ…お前こそ!…人のこころはないのか……ッ!?」
「‥‥なぜ?、わたしはただみんなであそんでいただけだよ?‥‥ふふふっ」
「なっ!?‥‥‥お前は‥‥人を‥殺すことを遊びと言うのか‥‥‥!?」
勇者は、魔女が自身には絶対に理解できない存在だと改めて思い知らされた。
人間を玩具のように扱い、無邪気な笑みを浮かべながら、人を殺し、人を壊し、人を堕落させ、人同士で殺し合わせる。
なのに飽きれば、心底退屈で、小さくあくびをしながら、つまらないそうな瞳でゴミの用に捨て去る。
その所業はまるで悪魔すら生ぬるい怪物の様だった。
「‥なんでひとをころしちゃだめなの?‥‥‥わたしはただあそびたいだけなのに‥‥もういいや‥‥あきたから‥このままころしちゃお♪」
魔女はその場に似つかわしくない、普通の少女の様な笑みで、こちらに手を向けた。
その小さな手には、光を呑み込み、音すら響かせない、漆黒のーー絶望が凝縮されていく。
「‥‥‥じゃあ‥ばいばい‥‥ゆうしゃのおにいちゃん♪」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ーー不気味なくらい世界から音が消えた
崩壊しかけだった王城は、跡形もないくらいに粉砕され、粉々になっている。
かつて城があった荒野の真ん中で、黒く幼い魔女は独り、壊れた人形のようにくるくると回り、虚な瞳をしながら笑い狂っていた。
その様子は、まるで幼い魔女自身が、遊んでいた玩具の人形になり下がっているようだった。
その様子を怪しい影が嘲笑うかの様に見ていた
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ところ変わってここにごくごく、普通の男がいる。
大学に通いながら、たまの休みの日に遊ぶ金欲しさに、バイトに励み、友人と大好きなゲームを徹夜しながら遊び尽くす。
時には世間の愚痴を溢す。
そんな、どこにでもいるごく普通の男だ。
そんな男は布団に寝そべり、青白い画面を見つめながら濃い隈をつけている。愚痴を零しながらスマホを布団の隅に放り投げ深いため息をついた。
その様子はダメな大人そのものだった。
「ハァ〜‥‥‥こんな結末になるなんて‥‥」
男は、ゲームに夢中になってしまい、時間が経つのを忘れてしまった。
ゲームをクリアする頃には窓から陽が昇り、男は目を細め、目に手を覆った。徹夜したのにも関わらず、結末は男が思い描いたものでは、なかったからだ。
それなのにカーテンの隙間からは、朝の日の光が突き刺す用に、男に降り注ぐ。外からは鳥のさえずりや学生達の笑い声、通勤の足音が聞こえてくる。
男は自分だけが、世界から切り離されるようだった。
そんな絶望感を醸し出してる男がしていたゲームは、世界中で話題沸騰中の大人気ゲーム
【インフィニティ・ファンタジー】
無限の選択肢を自らの手で広げよう
そんな前口上で話題のゲームだ。その出来栄えは実に見事なもので、職業の選択肢から、実に100を超え、何をするにも自由で、自らの手で作ったモノを売り、商売人として生きるのもよし、剣を携え誰も行ったことがない様な場所に行き、宝を見つける、冒険者として生きるのもよし、魔法を極め、大魔法使いとして生きるのもよし、自らの手で国を築きあげ、王として生きるのもいい。
今紹介したのも、人気の選択肢だけであって、自らの手で新たな道を、開拓するのもいい、そんなゲームに男は魅了されていた。
だが、個人の選択を極限まで尊重したこのゲームには、当然ながら救いのないバッドエンドの様な結末も用意されている。男は運悪く、その最悪の地雷を踏み抜いてしまったのだ。
男は両手で頭を抱えて、蹲りながら、唸るように叫んだ。
「‥‥普通さ!‥魔王城の目の前で、転移トラップが発動して、そのまま奈落に直行するなんて思うわけねぇだろ!? ‥クソッ‥‥しかもそれで、ゲームオーバーだなんて‥‥‥ハハ、ハハハ‥‥ハァ」
男は片手を頭にあて壊れた用に少し笑いながら、すぐにまた深いため息を吐いた。
男は今が朝なのも気にせず、布団を深く被り縮こまりながらふて寝をした。
ーーこの時、男は思いもしなかった。
慣れ親しみ、苦楽を共にした、自室で過ごす最後の時になることに。
「‥‥‥‥ジィー‥」