やられ役になってたまるか〜〜 黒き魔女へと堕ちるまで 作:瑠璃1
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
静寂で辺りは静まり返る、先ほどのことが嘘のように
もはや巨獣は、何処かにいってしまった。そこにはかつて美しかった少女の肉塊だけが残っていた。
突如として飛び散った肉の破片、血、骨、が生き物のように逆流し始めた。
骨格を形成し、肉塊や血が繋ぎ合わせり集まり出す。まるで何事もなかったように、誰もが見惚れる銀髪の少女の型へと美しく収束していく。
「‥‥‥ハァ‥‥ハァ、何が起こったんだ?」
「俺って、今死んだよな?」
飛び起きた少女
「俺は今、あの化け物に踏まれて死んだはずだ。なのになんでこんなにも綺麗なままなんだ?」
「‥‥ッ!」
ーーここは現実なのか、ゲームの、夢のなかじゃなかったのか?それに俺の声は、こんなにも綺麗な声だったか?
「‥‥なんなんだよ? 意味がわからないよ?」
口から溢れでた震える自分を抱きしめながら、俺はこの世界が現実だと確信してしまった。
「‥‥‥取り敢えず、水だけは探しにいかないと」
「‥‥そうだ‥水だけでも‥探さないと‥」
少女は虚な目をして、震える体を叩き起こし、水場を求めて歩き出した。
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ピチャン ピチャン
「‥‥やった!やっと見つけた!」
タタタタ
ゴクゴク
「‥‥プハァ‥‥これで、助かるかもしれない‥‥‥え、誰だコレ」
俺は泥混じりの水を、喉を鳴らして浴びるように貪り飲む。だが俺はその薄汚れた水面に映る自分自身を見た。それは男の自分ではない、汚れてもなお神秘的な銀髪の美少女の姿だった。
「‥‥これは?俺‥なのか」
「‥‥なんで俺は‥‥女になっているんだ?」
‥‥なんだよ?俺は自身の変容に頭を抱えて座り込んだ。
ズシン ズシン
「‥ッ!またあいつだ!」
遠くから確かに、あの時俺を踏みつけて殺した、化け物の地響きが鳴り響く。俺はすぐさま辺りを見回した。
ーーあの化け物だ。まだこの近くに居るんだ。
「嘘だろ‥‥なんでなんだよ」
絶望が、俺の喉を締め付けてくる。
「‥‥逃げないと‥‥あいつに見つからない場所に」
「隠れなきゃ!!」
俺は、化け物の恐怖で視界がボヤけ、震えて堪らない体を抱きながら、駆け出した。
「‥‥ハァ‥‥ハァ、ここまでくれば」
「‥‥大丈夫だよな?」
あの、地響きが聞こえなくなるまで、ただただ走り続けた。
まだ、こっちに向かってきているかもしれない、隠れないと少しでも、あいつに見つからないために。
「‥‥あ!あの場所、隠れるのにいいかも」
そこには、大木の張り出した根が偶然にも人一人をすっぽりと隠してしまうほどの空洞を作り出していた。俺はその空洞の中に、隠れるために急いで駆け込んだ。
「‥‥なんで、こんなことになったんだろう‥なんで、女になってんだよ‥‥あの化け物なんなんだよ‥‥うちに‥家に帰りたい」
暗い大木の空洞の中で座り込み、膝に頭を埋めながら、自分の啜り泣く声と、荒い呼吸だけが、狭い空間に反響して響いてくる。
(‥‥どうして‥‥‥なんで、俺はただ家でゲームをしてただけなのに‥‥‥母さん、父さん‥‥もう会えないの)
自分のものとは思えない、泥に汚れていても、白く細い美しい指先。それが自身の涙を拭う度に、ここが夢ではなく現実だと否応でも突きつけてくる。
俺自身のアイデンティティが、異世界の理不尽な暴力によって、内側からメキメキと音を立て、侵食され、引き剥がされていく恐怖が体内を駆け回る。
「‥‥神様でも悪魔でもいい‥‥頼むから、俺を助けてくれるって言ってくれよ‥‥」
自分自身を更に小さくして、体を丸め届くはずがない祈りを呟く。
外では、あの化け物の地響きが、まだ遠くで地響きを鳴らしながらこちらに近づいてくる気がして、ゆっくりと休むこともできない。
少し物音が聞こえる度に、肩が「ビクッと」跳ねる。
もし、近いてきていて、こちらに迫っているとしたら、またあの『死』が待っている。更に荒く早く鳴る呼吸と心音を封じ込めるために、胸を押さえ付け叩く
「‥ハァ‥ハァ‥ハァ」
ドン ドン
「やめ‥やめ‥やめ‥」
極限の緊張が身体中を悪寒で満たす
容赦なく体中の力という力を奪ってくる恐怖の残滓
もはや幼い肉体は、限界を迎え、視界がボヤけ、徐々に暗くなっていく、脳が強制的にシャットダウンされ、前のめりに倒れ込む。
(‥‥寒いな‥‥俺って‥死ぬのかな‥)
(‥‥うちに‥かえりたい‥)
「‥‥‥‥えっ!どこここ?」
「おや?起きたのかい!」