やられ役になってたまるか〜〜 黒き魔女へと堕ちるまで   作:瑠璃1

4 / 4
 救済 

 

 

  

   こちらに手を伸ばしてくる男

 

 

 

 「誰!‥‥いややめて!‥‥‥殺さないで!」

 

 全身がこの世界に拒絶を示し震え続ける。自分を守るために、全身を隠すように丸める。

 あれが、もしあの化け物と一緒だったら、俺を地獄へ誘うために手を伸ばしてきているんだ、あの時は助かったけど、今度こそはダメかもしれない、もしそうだとしたら、家に帰れないまま『死ぬ』

 

ーーー怖い‥‥怖い‥‥怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわい、こわ「大丈夫だよ‥あなたを虐める人はいないよ‥」

 

 

 「え?」

 

 

 誰かが、優しく穏やかな声で安心させようと、俺を抱きしめてくれた。

 「‥大丈夫‥大丈夫‥ここは、私の家だよ‥‥安全な場所だから‥」

 

 (‥‥暖かい‥心地がいい‥)

 

 恐る恐る、顔を上げる。

 そこには、全てを癒して包み込む湖のような瞳が、俺に対して、慈しみを持つ目で見てくれている。

 服が汚れる事も厭わずに、涙で溢れる顔をそっと拭き取り、地獄に咲く一輪の花のような笑みを浮かべた。

 

 「‥ほら‥これで可愛い顔に戻ったよ♪」

     

      とくん

 

 その笑みに対して、俺は震える体が嘘のみたいに止まり、代わりに全身が真っ赤に染まる感覚に襲われる。

 

 

 

  「‥‥ふぇ?」

   「‥ふぇーーぇ!!」

 

 

 

    バタン?

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

     数時間後

 

 

 

 「‥‥とこ‥‥‥女の子‥」

 

 「‥見た‥‥‥か」

 

 

 

 「‥‥うん?」

 

 木の天井が見える。俺の家の天井じゃない

 

 ?あれ俺って何してたんだっけ?確か徹夜でゲームをして、ふて寝したんだったっけ?取り敢えず起きて、大学に行かないと

 (あぁ!絶対遅刻だ!)

   

    バァン

 

 「ハァ!え?ここどこ!」

 

「‥あ!やっと起きた!お母さんお父さんあの子起きたよ!」

 

「おぉ!起きたのか」  

 

「あら♪起きたのね。じゃあご飯にしましょうか♪」

 

 ドタドタと音を立てながら、驚きで硬直している俺にベッドを囲む形で詰め寄ってきた。

 俺は突然、声をかけられ目を回し、肩をびくりと振るわせながら、引き攣った声で返事をしてしまった。

 

 「‥‥‥はいっ!」

 

「‥フフッ、それじゃあご飯の準備をするから、シエルにこの家を案内してもらいなさい♪」

「ほら、あなたはまだ仕事片付いてなかったでしょ。さっさと片付けてみんなでご飯を食べましょう♪」

 

「はーーーーーい」

「ほら、一緒にいこっ!この家を探検するぞーーー!」

 

「お、俺はもう仕事が終わっているからこの子達と一緒に探検してくるよーーー」

 

「あら?あなた、まだ仕事は片付いてないって聞きましたけど?どこに行くと言うんですか?(ピキッ)」

 

「ま、まって母さん本当に終わったって、あっ、あーーーーー」

 

 

 

「よっし!まずはどこから案内しようかな♪」

「フフッ、と言っても全然広くないんだけどね」

 

「あ、あの、ちょっと待って! 待ってよ。そもそもここは、どこなんだよ?」

 

 俺は、掴まれた手をベッドから強引に引きずられて、このシエル?という子を追いかける形で、必死にこの状況について聞こうとしてるのにこの子全然話を聞いてくれない!

 

「うん?ここ!ここはね。すいげつ村だよ」

 

 突如先ほどまでのわんぱくさは、嘘のように、彼女は振り返った。

 黒く煌めく髪をふわりと靡かせ、その綺麗な瞳を爛々と輝かせながら、自信満々な笑顔でそう言い放った。

 

      とくん

「‥‥ッ!だからそもそもすいげつ村ってどこなんだよ?」

 

「えぇ、もしかしてすいげつ村のことなんにも、知らないの?」

 

 ニマニマしながら、煽るような笑みを浮かべ、彼女は覗き込む形で俺にズイッと顔を近づけてきた。

 目の前に迫る綺麗な顔に思わず、ドキッとしてしまうが、いやいや今はそれどころじゃない。首を横に振りながら、この得体の知れない世界について問いただしてやろうと腹をくくった。

 

「‥だ・か・ら・ここは、日本じゃないのか!?」

 

「日本?ってなに何処かの集落のこと?」

 

      ボソリ

「‥‥‥ッ!やっぱりここは、違う世界なんだ」

(‥ハハッ‥‥俺の‥気のせいじゃなかったのか)

 

「ねぇねぇ、それよりあなた何処から来たの?この辺の子じゃないよね」

 

 そうだよな、こんな場所、聞いたことも見たこともない、それにあの化け物が現実にいるかとも思えない、だとしたらここは、異世界?なのか。

 ‥‥だとしたら、現実の体や両親にはもう会えない。このままこの世界で暮らすしかないのか。

俺は腹の底から湧き上がる憤りを抑えきれずに、顔を伏せたまま思わず叫んでしまった。

 

 

「だったら、俺って一体なんなんだよ!?」

 

     ビクッ!!?

 

「ど、どうしたの?お腹でも痛いの?」

 

「ち、違うんだ。ごめん、気にしなくていいからさ」

 

 いきなり叫んで彼女を驚かせてしまい、俺は慌てて苦笑いを浮かべながら『大丈夫』と取り繕うことしか出来なかった。本当は大丈夫じゃないと自分自身が一番わかっている。

 だけど‥‥なぜか、彼女の前だけは、弱い情けない自分を見せたくなかった。

 

「ご、ごめんね。俺は大丈夫‥‥だ」

     ガシッ!!

 

「大丈夫じゃないよね。だってそんなに泣いてて大丈夫なわけないよ。まだ怖かったんだね。‥‥大丈夫だよ。貴方が泣き止むまで、ずっと傍にいるよ。だから今だけは、私の胸の中で泣いててもいいよ」

 

「あ、あーーーーーーーーッ!!?」

 

 彼女の温もりに包まれた瞬間、これまで抑えて来たダムが決壊したように涙が溢れ出した。俺は幼い彼女に顔をうずめて、子供みたいに泣き出してしまった。

 

「ここって何処なんだよ‥‥ッ!?なんだよあの化け物は‥‥ッ!?なんで俺、女になってんだよ‥‥ッ!?‥‥母さんと父さんに会いたいよぉ‥‥ッ」

 

 ヒックと、勝手に出てくる歪む息を吐き出しながら、胸の奥から湧き出てくるぐちゃぐちゃな感情を彼女に吐き捨てる。

「なんで?なんでそんなに、優しくしてくれるんだよ!」

 

「大丈夫、大丈夫だからね‥‥‥。心配しないで、たくさん泣いていいんだよ‥‥‥。此処には貴方をいじめるものなんて何一つないんだから」

 

 服が汚れることも気にせずに、俺の弱音を最後まで優しく抱きしめてくれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ニチアサ系で禁断の『主人公勢洗脳闇堕ち全滅エンド』を目指したい(作者:匿名希望)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ニチアサ系変身ヒロインアニメの世界に、主人公の双子の姉としてTS転生した朝霧夕陽(あさぎりゆうひ)。原作主人公勢の活躍を特等席で見ることができる! と喜んでいたのだが――悪の組織に勧誘(洗脳)されて、理性のブレーキがぶっ壊されてしまう(なお、洗脳自体はすぐに自力で解除した模様)。▼「見守りたい」という純粋な想いは歪んでいった。▼これは禁忌とされるバッドエンド…


総合評価:1558/評価:8.43/連載:10話/更新日時:2026年07月20日(月) 14:05 小説情報

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1364/評価:8.28/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

魂を人形に移す魔法を使ってくるタイプの魔王軍幹部(作者:新人ブラック)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

タイトル通りになってしまった(・・・・・・・)TS主人公が、勇者や魔王軍の戦いを横目に『コレクション』を増やしていくお話。


総合評価:102/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年04月24日(金) 19:02 小説情報

因習村の怪しげな神にTS転生した話(作者:大崎 狂花)(オリジナルファンタジー/コメディ)

因習村の神になったおじさんの話です


総合評価:284/評価:7.44/完結:10話/更新日時:2026年07月08日(水) 22:45 小説情報

たとえ転生先が鬱ゲーな上に主人公の幼なじみだとしてもTS少女は曇らせがしたい(作者:ヒナまつり)(オリジナル現代/ホラー)

いつも、俺は小説を読んで思っていたことがあった。▼それは、どんな登場人物でも曇らせにあった瞬間が世界一美しいと言うものだ。▼クール美女も、甘々幼なじみも、ミステリアスな不思議ちゃんも…全部、全部絶望に伏せて泣き喚くあの瞬間が俺にとっては最高で、その後色々あって立ち上がるまでの道のりが世界で一番好きだった。▼けれど、残念ながら現実の俺は誰かにとってそこまで大切…


総合評価:152/評価:5.75/連載:9話/更新日時:2026年04月29日(水) 22:14 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>