やられ役になってたまるか〜〜 黒き魔女へと堕ちるまで 作:瑠璃1
シエルは服が汚れることも気にせずに、俺の弱音や叫びを最後まで優しく抱きしめてくれた。
‥‥‥ヒック、ヒック
ようやく涙が引いてきた俺は、シエルの胸から、恥ずかしさの余りに、顔を真っ赤に染め、彼女の胸を押し出す形でバッと離れてしまった。
涙で溢れ濡れる顔を乱雑に拭い、だらだら出した鼻水をすすりながら、頬を赤く染めた俺は、慌てて取り繕い、固い言葉で口を開いた。
「‥‥お見苦しいところを、お見せしてしまい申し訳ありませんでした」
そう言って、まだ止まらない涙と声を出しながら深く頭を蹲める俺の頭を、シエルは愛おしいものを見る目でぽんぽんと優しく、撫でてくれた。
「‥フフッ、大丈夫だよ。誰にだって泣きたい時はあるから、だからまた泣き出しそうになったら私の胸の中で泣いてもいいよ♪」
「‥‥‥いや、もう大丈夫です」
「フフッ、ならお母さんが用意してるご飯食べに行こうか♪」
「ほら、立って、あっちまで競争だよ♪」
俺は再び手を引っ張っられた。だが今度は不思議で嫌でもなく、むしろシエルの横顔から目を離せなかった。
「あら?お帰りなさい。もうご飯できてるわよ♪お父さんも丁度仕事が片付いたみたいだから、みんなでご飯を食べましょう♪」
「やったーーーー」
「ね!お母さんのご飯はとっても美味しいんだよ!」
「えっ!そんな悪いですよ。助けてもらってご飯までご馳走になるなんて」
(ぐうぅーーーーーー)
「‥‥ッ!」
「‥フフッ!大きいお腹の音だね♪」
シエルが楽しそうに、クスッとした笑みを溢されて、俺は赤く染まった顔を見られない為に両手で隠し、その場で小さく蹲りたくなった。
そんな状態なのに、お腹は空気を読む事なく、再度「ぐうぅ」と盛大に鳴り響く。
「あら?ふふ、遠慮なんかしなくていいのよ。シエルに振り回されて疲れたでしょう?さぁ、冷めないうちに頂きましょう♪」
優しく微笑んでくれる、シエルのお母さんの手には、湯気が立ち込める熱々のシチューと、香ばしい匂いが溢れるパンが乗ったお盆が握られていた。いつの間にか後ろにいたシエルのお父さんも「お、美味そうだな!」と席についている
「ほら!シエルも君もこちらに来て早く食べなさい」
シエルのお父さんは、俺が、この世界の日常の恐怖で足がすくんで動かないを見て、優しく穏やかな目で、俺に対して手招きしてくれる。
「美味いぞーー、母さんの料理は世界一だからな!」
「ほら、いっこ!一緒に♪」
その様子を見たシエルは、俺の手を握って、微笑みながら、動けない俺を引っ張ってくれた。「‥‥うっ!」この人達の優しさに泣きそうになりながら、俺はこの世界で初めての一歩を漸く踏み出した気がした。
「さぁ、みんなで頂きましょう」
とても美味しそうな料理達を囲んで、シエルのお母さんは穏やかな声が響くと、シエルとお父さんは一斉に、食いついた。その勢いにビクッとしながらも、目の前に広がるお肉や野菜がゴロゴロと入っている、黄金色のシチューに恐る恐るスプーンを滑り込ませた。
「‥‥‥っ!」
お肉を食べているはずなのに、溶けるようにホロホロと解け、旨みが溢てくる。野菜は果物のように、甘く、優しい味が中から溢れ出てくる。
そのあまりの美味しさに、言葉を失い、駆け込みながらスプーンを走り出させた。
「‥ハグッ、ハグっ‥‥おいしいよ」
「フフッ、ゆっくり食べていいのよ♪」
「いや、母さんの料理は世界一美味いんだ。シエルと一緒にがっつくのも無理はないさ。ガハハハハハハ」
「もう、そういうお父さんだって、料理に齧り付いてたくせに!!」
「うっっ!?」
お母さんが優しく微笑み、お父さんが豪快に笑って、それを娘のシエルがプンプンと怒りながら指摘する。そんなごく普通の家族の姿に俺は腹の底から笑いが込み上げて来た。
「‥プッ‥フフッ、フフッ、ハハハハ」
「フフッ」 「ガハハハ」
「ハハハハ、楽しいね♪」
こんな美しい光景がまさかあんな事に、なるなんてこの時は考えもしなかった。このまま、帰れなくても、この美しく、優しい家族がいれば良かったのに。
漸く笑いが収まり、突如として「カラン」とスプーンを置く音が、響いた。シエルのお父さんは、俺の方を向き、真剣な表情をしながら、俺に対してあくまで優しく聞いて来た。
「‥ふうっ、所で君の名前を聞いてもいいかな?」
「え、えっと、あの」
「おっと!これは、失礼だったね。俺の名前は、ゴンザレスというんだ」
バシッ
「違うでしょ。この子に嘘の名前を名乗らないの!!」
「‥‥イッテェ!‥‥冗談だよ、ジョーダン!」
夫の頭をバシッとはたいたお母さんは、呆れながらも、何処か愛おしそうにふっと息を吐く。
「もう……。この子はただでさえ、緊張して喋れないんだから、あなたの変な冗談で、さらに喋れなかなっちゃうでしょ!ごめんね。この人の寒い冗談に付き合わせて」
「寒いとは、なんだーーー」
「いいギャグだったろ」
お母さんは、こちらに非がないように、俺の頭を優しく撫でて笑い、お父さんは寒いギャグで場を和ませてくれる。 その光景に心がホッと暖まる。
お父さんは頭をさすりながら「いやぁ、ひどいなうちの奥さんは‥‥ハハハハ」と笑って照れるのを誤魔化している。そのお父さんの姿を見たシエルは、「ふふっ、自業自得だからね♪」とクスクスと両手で笑いを抑えている。
「‥‥さて、改めて俺の名前はバッカス・アッシュって言うんだ」
「フフッ、私の名前はサフラ・アッシュよ。よろしくね♪」
「はい!はい!私の名前はね。シエル・アッシュ。ふふぅいい名前でしょ!」
「では、君の名前は?ゆっくりでいい。俺達に君の素敵な名前を教えてくれないか?」
バッカス、サフラ、シエル。
そんな、気が良い家族達は、どこまでも優しく、こんな不審な俺を受け入れてくれようとしている。「なんで?なんでだよ?こんな俺に」ポツリと声を溢してしまう。
名前を名乗ってしまったら、元いた世界から完全に離れてしまう気がして、名乗るのが怖い。そして、この美しい銀髪の少女の体は、俺の本来の姿じゃない、もしかしたらこの体だから、俺に優しくしているんじゃないのか?そう、俺の心の闇が囁いてくる。
でも、これだけ優しい家族を前に、名乗らないのは失礼だと口を開こうとする。
空いたまま口をパクパクさせて、言葉を出そうとも出ない。でも、いつまでも、このままじゃいけないそう思い。震える口を開いた。
「……俺の‥名前‥は」
「いいよ。名乗らなくても、それがあなたにとって辛い事だって、わかんなかったの、だから大丈夫。ごめんねお父さんが余計な事言っちゃて」
サフラが優しく包み込む。穏やかな声は、ガチガチに硬直している俺の耳にすっと染み込んでくる。
急かされたわけでも、責められているわけでもないんだ。ただ、ただ俺のことを知りたくて、怯えや葛藤を肯定して守ろうとしているだけなんだ。
その言葉の前からこの人達が、優しい人だとわかっていたはずなのに、視界に涙が滲んでくる。
「さ!ご飯を食べましょう♪」
その、どこまでも優しい声に俺は背中を押された。例えこの家族に嫌われても、俺はこの家族の前だけは、誠実であろうと。
「……大丈夫、大丈夫です。俺の名前は五反田吾郎と言います。ごめんなさい、こんなに良くしてもらったのに、名前を名乗らなくて」
絞り出すように発した俺の名前は、元いた世界で生きた証であり、同時にこの家族と共に、進み出すための一歩だった。
俺の言葉を聞いたバッカスは、先程まで少しバツが悪そうだった顔から、一転して俺の名前を褒めてくれた。
「そうか五反田ゴロウか!!いい名前じゃないか!よく勇気を出してくれた。すまんな俺の無神経さで、お前を傷付けちまって」
「うん、うん凄く素敵な名前だよ。ゴロウちゃん♪」
シエルも、パッと花が咲いたような笑顔で手を叩く。
「そう。勇気を出して言ってくれて嬉しいわ♪ありがとうゴロウくん♪」
サフラも、俺が勇気を出し、名前を言ってくれた事が嬉しいようで微笑みを浮かべている。
胸につかえていた物が優しさでスッキリと洗い流され、目の前には、やはり普通の家族の笑顔があった。
この瞬間、俺の心にあった恐怖と孤独の氷は完全に溶けていた。この世界で生きていくための居場所が、心の中に築かれていった。
「……フフッ、ありがとうございます♪」
この小説、実はプロットや感情のベースは自分で書いて、文章のニュアンスや構成の確認でAIに壁打ちを手伝ってもらっています(いわゆるAIアシステッド・ライティングです)。
人間のこだわりとAIの客観的なサポートを組み合わせて、一番いい形で読んでもらえるように試行錯誤しながら書いてます!
もし、AI利用を乗せた方がいいなら、教えて欲しいです。お願いします