その菊、手折られず   作:もちがゆ

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其五 グラッシー・ブロンド 4

 

「相殺……し切れなかった……!」

 

 突き出した両手が吐く息で大きく揺れている。

 

 咄嗟に詠唱破棄の断空を張り、更にその上から『バッドランズ・プレデター』で虚閃(セロ)の霊圧を奪い消滅させようとしたのだが……

 

 私の右肩辺りは霊術院の制服が吹き飛び、肌からはまだ煙が上がっていた。

 避けるわけにはいかなかったとは言え、未熟な鬼道と霊子分解速度では威力を殺しきれなかったのだ。

 

 横目で後方を覗けば、ちょうど院生たちが避難を始めたところ……

 

 ――この場所で次を撃たせてはいけない。

 

 そう判断した私は、すぐさま霊圧を抑えていた鬼道を解き、霊力を高めた。

 

 爆発的な霊圧の高まりに敵大虚(メノス・グランデ)が一瞬の硬直を見せたのを見逃さず、瞬歩で一気に間合いを詰める。

 そしてその無防備などてっ腹に、突っ込んだ勢いのままドロップキックを放った。

 

 破道の一 衝

 

 更に足裏に鬼道による衝撃波を発生させ、大きく吹き飛ばす。

 ダメージは期待出来ない類の破道だが、霊圧を込めれば衝撃の度合いは高まる。

 

 敵の影は見る見る小さくなっていき、私は再び霊子を足場に瞬歩で追い縋った。

 

 

「――ここまで離れれば気は済んだか?死神のガキ」

 

眼下から建物が消え、海岸が見えたところで大虚が急停止する。

 

(こいつ……言葉を!?)

 

 月明かりが差し、ようやくその姿がはっきりと闇夜に映し出される。

 虚閃を発射可能な大虚にしては並の虚ほどしかない体躯。

 しかし、その内から感じる巨大な霊圧は教科書に載っていたような下級大虚(ギリアン)等とは一線を画している……

 

中級大虚(アジューカス)……!)

 

 全身に霊力を巡らせ、油断なく斬魄刀を引き抜き、正眼に構える。

 

「その口ぶりだと、最初から狙いは私だったってことかしら?」

 

 私の言葉にピクリと反応した中級大虚は、肩部から生えた鳥類を思わせる巨大な翼を人の両腕の様に器用に胸の前で組むと、くつくつと嗤った。

 

「……恐れも怯えもしねえとはな、聞いてた通り大したタマだ」

 

(聞いてた……ね……)

 

「アンタには縁も恨みもないが……だからって虚が死神を襲わない理由にはならないだろ?」

 

 腕組みならぬ翼組みを解き、虚特有の瞳孔のないガラス玉の様な眼に殺意が灯る。

 その顔部分は獲物の肉を裂き、食い千切る事に特化した鉤状の嘴を模した仮面。

 そして一本足という異形ではあったが、同じく鉤状に爪を生やした鳥足。

 毛に覆われたその大腿部をギチギチと音が聞こえそうなほど張り詰めさせたその姿は、正に贄となる子鼠を狙う猛禽類のそれだった。

 

「……ハーピー・マルガリーダだ」

「……」

「ノリが悪いな……くそガキ――!!」

 

 引き絞った矢が放たれるように、先手を打った中級大虚が飛び出す。

 

 ――速い!

 

 翼を折りたたみ、更に独楽の様に体を回転させる中級大虚。

 音の壁を超えて加速するその姿はまるで自動車大のライフル弾のようだった。

 

(……けど、直線的!!)

 

 刃の切っ先を突っ込んでくる相手に合わせ、衝突の瞬間、半身になり刀の棟部分を押し当てて軌道を僅かに逸らす。

 

「やるじゃねーか、じゃあ……これはどうだ!」

 

 マルガリーダはすぐさま翼を広げ反転すると、今度は霊圧をたっぷり込めた鉤爪を顔面目掛けて振り下ろしてきた。

 

「くっ!!」

 

 (あしゆび)を刀で受けるのは危険だと判断した私は咄嗟に、

 

 縛道の八 斥

 

 鬼道による斥力の盾で、相手の勢いを利用し弾き飛ばす。

 

「まだまだあああ!!」

 

 マルガリーダはそのまま空中で体を回転させると、その反動すら利用し、翼を首目掛けて振りぬいてくる。

 

 ――しかし、

 

 (間に合った……!)

 

 破道の六十三 雷吼炮

 

 相手の名乗りを無視して詠唱を始めていた破道を解き放つ。

 

 「なっ?!」

 

 掌から迸る雷の奔流が中級大虚の体を飲み込み、吹き飛ばす。

 

 今の私の鬼道では、詠唱の長さと術の構築難度から見て実用的なギリギリのラインの破道。

 これでダメージを与えられないと……

 

 「この、ガキが……生意気に噛みついて来やがって……!」

 

 (たいして……効いちゃいないみたいね)

 

 自分のスピードによっぽど自信があったのか、それとも獲物と思っていた存在に反撃されたのが余程屈辱だったのか……

 マルガリーダは多少焦げ跡の残る両の翼をわなわなと震わせていた。

 

「なめてんじゃねーぞおおおおお!!!」

 

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

 

 咆哮と同時に再度の突進。 

 しかしそこからは先程とは打って変わって、間断の無い連続攻撃による猛攻だった。

 乱菊が一合目を弾けば、その体勢が整い切らぬ内にマルガリーダが次の突進を繰り出し、それが躱されればその硬直を狙う。

 二度と反撃など許さない、という意志と殺意に溢れた怒涛の連打。

 

 対して乱菊は嵐が過ぎ去るのをただじっと耐え忍ぶかのように防戦一方だった。

 何とか直撃を避けてはいるが、受け流し、避け、防ぐ度に傷が増えていき、一つ一つは軽傷ではあったものの、そこから流れ出てくる血の量は徐々に無視出来ないものとなっていった。

 

 誰の目に見ても、勝敗は明らか。

 捕食者が獲物を殺さず甚振っているだけ……そう見えたが――

 

 おかしい。

 

 中級大虚、ハーピー・マルガリーダの中で沸騰していた頭を急速に冷やす、そんな考えが浮かんできた。

 

(ダメージを与えているのは私。傷で体力を削られているのは相手の方)

 

 それなのに

 

(死神のガキの霊圧が少しも下がっていない……?!)

 

 鎌首をもたげた一抹の不安に、マルガリーダは一度攻撃の手を止め、距離を置いた。

 息を切らし、全身から血を流しながらも光を失っていない瞳と、圧倒的優位に立っているはずが、警戒に揺れている視線がぶつかる。

 

 そして隻脚の中級大虚が、疑念を振り払うように翼に再度力を込めた時だった。

 

(霊圧が……霊力が上がらない?!)

 

 まるで片足を喪ったあの時のような虚脱感が全身を襲う。

 あれだけ漲っていた霊圧が半分も無い。

 力を込めても思い通りに霊力が湧いて来ない。

 

 まるで“あの時”のようだった。

 

 まるであの時の……

 あの時――

 足を……力を、喰われた……あの時と……!!

 

「オマエ……何しやがったあああ!?」

 

 再びの咆哮は打って変わって怯えの色を含んでいた。

 

 

  

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

 

(気づかれた……削りきる前に……!)

 

 またしても勝ちの目が一つ消えた事に私は柄を握る手に力を込め直した。

 切っ先が震え、息は上がっているがまだ何とか体は動く。

 

 怒りに任せた敵の攻撃を捌きながら『バッドランズ・プレデター』で接触した個所から少しづつ霊力を奪い、相手を戦闘不能に追い込む作戦。

 本当は反撃で斬撃と一緒に叩き込むことが出来れば、ダメージも一緒に与えられたのだが、流石にそこまでの隙がある相手ではなかった。

 死神と霊王の力を融合させた事で、両手以外に斬魄刀の触れた個所からも能力を行使出来るようになった事と、相手がこちらを始解が使えない死神のガキだと侮っていたから嵌った策だったけど……

 

(目論見がばれたら、もう接近戦はやってこないかもしれない……)

 

 今、私にとって一番まずいのは、遠距離からの虚閃による圧殺だった。

 幾ら相手の霊圧の大半を削ったとは言え、体力的に弱ってきているこちらを殺せるくらいの虚閃は撃てて不思議じゃない。

 

(こうなったら、挑発でも何でもして、もう一度接近戦に持ち込むしか……!)

 

 そう思い、何とか息を整えて私が口を開こうとしたその時だった。

 

「……い、イヤだ……もう失うのはイヤだ……」

 

 今までからは想像もできない程に弱々しく震える声で、マルガリーダが呟きだした。

 

「戻れないのはイヤだ……下級大虚に落ちるのはイヤだ……」

 

 その全身を覆う白色も相まって、石像の様に空中に静止する中級大虚。

 

「だからアイツの話に乗ったんだ……それがそれがそれが!こ、こんな事……!」

 

 怯えは徐々に恐慌へと至り、やがて……

 

「奪われるのはもうイヤだ……帰れないのは……イヤなんだああああああ!!!!」

「――しまっ!?」

 

 明らかに様子が可笑しくなったことで油断していた。

 それまでぶつぶつと独り言を繰り返していたか細い声から一変、月まで轟くかの様な絶叫を上げ、マルガリーダが突撃してくる。

 それは先程までのような技ではなく、ただがむしゃらな突進だった。

 しかし、虚を突かれた事と、血を流しすぎたせいか私の体もまた、先程までのようにはいかなかった。

 

「うぐっ?!」

 

 刀が上がり切らず、突進を防ぎきれない。

 あの鋭い嘴や爪、刃物のような翼の一撃であったなら私はそれでお終いだったろう。

 しかし、マルガリーダが選んだのは鉤爪で私の首を締め上げる事だった。

 

「死ね、死ね、死ねえええ!」

 

 腕を差し込み、首の骨が折れるのは防いだが、今度は腕ごと圧迫され息が出来ない。

 私が窒息に喘いでいると、それが効果的だと判断したのか、マルガリーダは足で私を掴んだまま、真下の海へと急降下し出す。

 

 背中から海面に叩きつけられたことで、なけなしの空気が肺から吐き出され、その空いた場所に我先にと海水が流れ込んでくる。

 私は急速に視界が暗くなっていく中で、それでも刀だけは手放すまいと必死に力を込めた……

 

 

 意識と体が、落ちていく。

 

 

 深く深く、海の底へ落ちていく……

 

 

 

 深く、深く――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

 気づいたら、私は地面に横向きに倒れていた。

 海底ではない、乾いた土の感触。

 悲鳴を堪えていた痛みや疲労も無くなっている。

 

 起き上がり自分の体を見下ろすが、出血や傷口も消え、衣服も元通りだった。

 

 「もしかして、ここは……」

 

 思い至ったのは、ここが私の精神世界であるという事だ。

 一護が虚の穴を無理やり開けられた時や、更木との戦いで死に瀕した時に斬月に導かれたように、きっと私も何者かに呼ばれここに来たのだ。

 

 そして、私を呼んだのは多分……

 

 私は辺りを見回してみた。

 立っているのは土が踏み固められた道のど真ん中。

 一方には焼け焦げたような民家のようなものの跡。

 もう片側には坂道とまばらな木々。

 

「ここって、あの時の……」

 

 そう、原作乱菊が倒れていて、市丸ギンに発見された場所。

 “私”がその運命を変えてしまった場所……

 

 やはり、ここに何かある。

 そう思った私は改めて辺りを調べる。

 

 そうして、ようやくそれを見つけ出した。

 民家跡の燃え残った大黒柱、その隣に小さな丸い穴の様なものが浮かんでいたのだ。

 

「こんな所に……前に刃禅した時はなかったと思うけど……」

 

 浮かんだ穴は、その中を覗こうとしても真っ暗で何も見えない。

 

 試しに人差し指を突っ込んでみたら、差し込んだ分だけ穴が広がる。

 

 ならば、と今度はそのまま手首、肘、肩と、穴は体を入れれば入れるだけ広がっていった。

 ついに全身がすっぽり収まりそうなところまで大きくなったところで、私は意を決してその中へ全身を飛び込ませた。

 それと同時に、先程まで暗く先の見えなかった穴の中に光が広がる。

 

 

 

「あ……ここ……」

 

 

 

 そこは、“俺”の部屋だった。

 

 尸魂界(ソウルソサエティ)どころか、まだこの時代の現世日本では普及していないであろう、蛍光灯に照らされた一室。

 ベッドと、本棚に、それから勉強机……間違いない、実家にいた頃の“俺”の部屋。

 

「……懐かしいな」

 

 机の上の写真立てには今の私よりもずっと幼い子供が満面の笑みでピースサインをしている。

 机から床の方に視線を下ろすと、充電器に差しっ放しの携帯ゲーム機。

 一瞬拾い上げようとした手を止め、自嘲しながら頭を振った。

 

 次に目を移したのは本棚。

 上の棚から順に、棚一杯に詰まった懐かしの漫画たちの背表紙を指でなぞっていく。

 

 そして……絶対にあるはずのものが無くなって出来た空間で指を止めた。

 

 ――その時、

 

「……?」

 

 何かの気配を感じ、後ろを振り向く。

 

 そこに鎮座しているのは木枠で出来たシングルのベッド。

 

 そのシーツの上に、本棚にあったはずの漫画シリーズが山のように折り重なっていた。

 

 『BLEACH』

 

 黒崎一護が死神と出会い、苦難と挫折を味わいながら、それでも守りたい人たちの為に戦う物語。

 

 そして、今の私にとっての現実。

 

 

 「でも、そうよね……こっちだって、確かに現実だったんだわ……」

 

 

 “私”が私になったからと言って“俺”の世界が夢になった訳じゃない。

 

 あの日、私達は一つの魂になった。

 

 だから、私の世界には、“ここ”もなくちゃいけなかったんだ……

 

  

 

 ――その時、山になっていたBLEACHの中から小さな、しかしはっきりとした声が聞こえた。

 

 

 丁寧に本の山を崩し、現れたその声の主をしっかりと両手で抱え上げる。

 

 「そっか……だからずっとここで待ってたのね、最初から」

 

  

 BLEACHの世界の死神と、異なる世界の人間の魂魄が融合し私になった。

 その結果私の中に死神の力と、完現術の力が生まれ、やっと最近その力同士を融合できた。

 

 きっとそれまで、この子が“ここ”にカギをかけていたんだ。

 魂の在り方とそこから生まれる力が完全に一致する事で、ようやく斬魄刀が正しく魂の精髄を写し取れると知っていたから。

 

 それをこの子が最初から知っていたのか、鳳凰殿であのラッパーから聞かされたのかまでは分からないけど……

 

 

 「お待たせ……ようやくあなたの名を呼んであげられるわね」

 

 

 話しかける私に呼応し、一際高く鳴き声を上げる私の斬魄刀。

 

 その姿は頭の天辺から尻尾の先まで炭を流したかのような、漆黒の猫だった。

 

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

 

 荒い息を繰り返す鳥人型の中級大虚は、未だ少女が没した海面から目を離せずにいた。

 

 あれからしばらく経ったが浮かんでくる気配はない。

 相当の手負いだったのだ、既に死んでいるはず。

 

 (死んでいるはずだ……)

 

 今更ながら愚行とも言える手段でとどめを刺した事をマルガリーダは後悔していた。

 きちんと死体が確認できるように殺せばよかった。

 何だったら霊圧を奪う妙な技を警戒するなら、虚閃で遠距離から吹き飛ばせばよかったのだ。

 残った霊力でも血塗れの小娘くらいなら十分に可能だったはずだ。

 

 しかし、それを選ばなかった。

 

 一刻も早く目の前から消えて欲しかった。

 

 あの時の恐怖が、未だに心と体を支配し、失ったはずの片足は幻痛に疼いていた。

 

 「くそが……!」

 

 苦し紛れについた悪態は何の気休めにもならなかった。

 

 

 

 ――虚圏(ウェコムンド)での生活は食うか食われるかの日々。

 勝者が敗者を食らい、進化する。

 食われた敗者は死ぬか、生き残ってもそれ以上の進化の道を断たれ、現状維持すらも出来なくなれば退化する。

 特に中級大虚以上は下級大虚に退化すると、それまでの自我も失い、一生そのままだ。

 それは事実上の死と変わらなかった。

 

 死んで失った心を求めて他者を食らい、進化の先にまた死を恐れて他者を食らう。

 

 そうした日々の連続の中で、ハーピー・マルガリーダもまた敗北を喫した内の一人となった。

 片足を食われ、仲間の元に帰ることも出来ず、強者と退化の影に怯える毎日。

 

 そんな時に、マルガリーダはあの死神と出会ったのだ。

 どうやって虚圏に?何の目的で?

 そんな疑問はその男が開口一番に放った言葉で、警戒心と一緒に吹き飛んだ。

 

 『こちらの頼みを聞いてくれれば、失った足を取り戻し、更なる力を与えよう』

 

 その内容とは、死神の学校に通う少女を生死問わずに男の元に連れてくる事。

 

 男はこうも言った。

 中級大虚は護廷十三隊の副隊長と同程度。多少優秀だろうと霊術院生など敵ではないと。

 

 確かに、最初は少女の霊圧に鼻白んだが、練度の差は歴然。

 男の言葉通り、いざ戦闘が始まれば終始圧倒していたのは自分の方、そのはずだった。

 

 ……それが、この体たらくだ。

 

 未熟な死神見習いの妙な技にトラウマを刺激され、我を失った。

 

 そして更に情けないことに、その死が確認できていない事で、彼女の死体を引き上げに行くことにすら躊躇している。

 

 (まだだ……もう少し待つ……)

 

 海の底から微かに、少女の体にこびり付いてるであろう霊圧の残滓の様なものを感じる。

 せめてあれを感じなくなるまでは待とう。

 

 ――そう、思っていた時だった。

 

 「なっ!?」

 

 突如、海面が揺れ、波を崩して波紋が生まれた。

 

 それと同時に感じる海面下にあった霊圧の急激な上昇。

 

 「ば、バカな!?」

 

 ソレが霊子を足場に水中を蹴る音が響くと、波紋の中心に水柱が立ち上った。

 その飛沫に視界が奪われ、マルガリーダが大きく飛び退る。

 

 水煙が治まり静けさを取り戻した海上に、あの少女が立っていた。

 

 「なん……だと……」

 

 吹き飛んだ衝撃か海中でか、その面貌からいつの間にか黒縁の眼鏡は無くなっており、ただ蒼い炎の様な瞳が鳥人型の中級大虚を見据えていた。

 

 弾かれた様にマルガリーダが我に返るのと、乱菊が斬魄刀を構えるのはほぼ同時だった。

 

 そして、その攻撃態勢が整うよりも早く、

 

 死神が、真に斬魄刀へと昇華させた、己が刀の名を告げる――

 

 

 

  廻せ  『燼・灰猫』

 

 

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