日の暮れた都内某所。
表通りの喧騒から一本裏路地に入ると、そこには黒塗りのハイヤーが静かに列をなす異質な空間が広がっていた。
看板はなく、ただ手入れの行き届いた竹垣と、控えめな行灯の灯りだけがある。政財界の要人や高級官僚たちが、表沙汰にできない密談を行う時によく使われると言う“一見さんお断り”の高級料亭である。
その庭先に、三人の魔法少女が音もなく降り立った。
イグニス達が展開した『認識阻害』によって、周囲の黒服の運転手や従業員たちには、彼女たちの姿も、足音すらも認識できていない。
「……うわぁ。なんか、息が詰まりそうな場所だね」
綺麗に掃き清められた玉砂利を踏みながら、イグニスが居心地の悪そうにそう呟いた。
普段は戦場で炎を振り回している彼女にとって、ドラマにあるようなこういった静謐で政治的な匂いのする空間は居心地が悪いようだ。
「おほほほ、そうでしょうか? 私は幼い頃にお父様や叔父様方に連れられて、この手の会食には嫌というほど付き合わされましたわ。懐かしいくらいです」
扇子で口元を隠し、得意げに笑うゴールドシャワー。
金ピカ縦ロールの中世のドレスという彼女の出で立ちは、侘び寂びを極めた純和風の庭園において圧倒的に浮いていたが、本人は全く気にする素振りもない。
「二人共、あんまり大きな声を出さないで。ある意味、ここはゲダモノより厄介な場所よ」
メロースパークに変身している紫織が、静かに釘を刺す。
彼女は生前、魔法少女として日本の希望の象徴を演じきった。
その過程で、特対庁の大人たちがどれほど非情に“情報”を操作し、魔法少女の死すらプロパガンダに利用してきたかを誰よりも知っている。
「広報課長さんは……特対庁の『情報統制の要』と言われている人。
今日、希来里ちゃんが起こした騒ぎを、政府のシナリオ通りにどう収拾するか。……ただで済む相手じゃないわ」
紫織は指定された離れへ続く渡り廊下を見据え、小さく息を吐いた。
やがて、認識阻害を纏った三人がその強度を落とすと、目的の個室の前に立つ。
入ります、と告げると、襖の内側へと足を踏み入れた。
ふわりと、上質な香木の香りが漂う。
広々とした和室の奥、一枚板の豪奢な座卓の前に、その男は座っていた。
「おや、これはこれは。まさか本当に、現代日本のジャンヌダルクが生きていらっしゃるとは」
上座に座るスーツ姿の30代後半くらいの背の高い男が、微塵も感動していない薄ら笑いを浮かべて言った。
彼が特異事象対策庁の広報課長。
元内閣官房・内閣広報室出身の役人で、情報発信のプロフェッショナル。
死という理を越えて現れた禁忌の少女たちを、まるで珍しい見世物でも見るような冷たい瞳で出迎えたのだった。
知り合いではない二人は、見た目通りの冷たい印象を受けた。
「いやはや、感動で涙でも流した方がよろしいでしょうか」
「相変わらずですね、課長さん。そんなですから特対庁送りにされるんですよ」
メロースパークはそんな皮肉を慣れた様子で受け流し、対面に座った。
他の二人もやや警戒しつつ、メロースパークの隣に同様に座った。
「今朝にはゴールドシャワー。そしてイグニスですか。
イグニスが実は生きている、などという噂は聞き及んでいましたが……」
「どう利用できるか、ですか? ヴェスタちゃんが彼女の後継者だって印象操作もそちらの手回しでしょう?」
「ええ、日本国民は次なる
広報課長は微塵も悪びれずにそう応じ、手元の茶を啜った。
「さて、お互いに積もる話もありますが、本題に移りましょう。
メロースパーク、いえ紫織さん。よく生きてました」
それを最初に言うべきでは、と居心地が最悪のイグニスは思った。
「実は火葬されておらず、土の中に埋められた棺桶から蘇った、とかそんな感じでしょうか?」
日本と違い、土葬が当たり前の地域では稀にあるとされる事例だった。
「あまり驚いていませんね」
「魔法少女の魔法の不条理さはよく知っていますから」
「でしょうね。これが真実です」
メロースパークは衣装の袖を捲った
その下からは、縫合の跡が痛々しく残っていた。
「……フランケンシュタイン博士が実在していた、ということでしょうか?」
これには元若手エリート官僚も目を見開いていた。
「正確には
彼女が遺体を切り貼りして、私達の霊魂を死後の世界から呼び寄せました」
「にわかには信じられませんが、あなた達がその証明なのでしょうね……死体損壊に死体遺棄、それに生命倫理への冒涜ですか。
メディアに知られれば、現政権が三日で吹き飛ぶ最悪のスキャンダルだ」
広報課長は眉間を揉むようにして、忌々しげに息を吐いた。
「課長さん。私は彼女の力を、ゲダモノとの戦いに活用しようと考えています」
彼女の言葉に、広報課長は驚かなかった。
「あなたらしいですね。あなたは己の全てを日本に捧げた。
ついには自分だけでは足りなくなりましたか?」
「私の所業が邪悪であることは承知の上です」
メロースパークは明確な覚悟を持って、彼を真っ直ぐに見据えた。
「しかしイグニスさんも、ゴールドシャワーさんも、死後もゲダモノと戦う意思を見せています。
課長さん、それは私も同じ気持ちです」
「──お話になりませんね」
広報課長は座卓の上で両手を組んでそう答えた。
「紫織さん。あなたは賢い人物だと思っていました。
ですが考えを改める必要がありそうだ。それとも、死という体験がそこまで貴女を変えたのか……」
「課長さん。あなたは勘違いをしています」
目を細め、メロースパークは言った。
「死者に国家の法やルールが通じると思いますか?」
「……なるほど、意志は固いと」
広報課長は目を伏せた。
「……紫織さん。死後に貴女を崇めるような集団まで現れるようになった貴女に、こう言うのは憚られますが。──あなたは、我々にとっての女神だった」
「……」
「貴女が生きている間、日本は本当に安定していた。どんなに凄惨な災害が起きようと、貴女がテレビで微笑むだけで大衆は希望を見た。しかし、貴女の死後、特対庁は荒れに荒れ、事後処理の業務は滞り、身勝手な不満を訴える電話が絶えない。……貴女を失った損失は、国家にとって計り知れないほど大きかった」
「……ご迷惑をお掛けしました」
彼女は静かに頭を下げた。
「でもだからこそ、貴女は蘇ってはならなかった」
そこで初めて、広報課長はエリートの仮面を外し、ひどく疲労したような深い溜め息を吐いた。
「貴女の復活を世間が知れば、貴女を信奉する者達がより過激なカルト集団と化すでしょう。
『魔法少女は復活できる』と知れ渡れば、大衆は君達の人権を軽視し、死ぬまで戦地に放り込むことを要求する。
さらには『自分の家族も蘇らせろ』と暴動が起きる。……その結果がどうなるか、貴女なら分かるはずだ」
「ええ。それでもなお、人々を守りたいという意思を尊重したいのです」
「……わかりました。この件は、上には挙げません。あなた達が勝手にやっていることだ」
広報課長は目を細めて、そう答えた。
「ただし、お互いに協議が必要でしょう。
紫織さんも、日本に混乱を齎すのは本意ではないでしょう?」
「はい。これからもご迷惑をおかけします」
「いいえ」
広報課長は首を振った。
その表情には、ある種の悔恨があった。
「我々は、貴女を守れなかった。私は職責を果たせなかった」
「……広報課長さん」
「紫織さん。もう一度あなたと仕事ができることを、光栄に思いますよ」
「……はい。こちらこそ」
紫織は深く、彼に頭を下げた。
「まず政府として、死者の蘇生はいかなる理由があっても認められません」
それは大前提だと、広報課長は冷たいくなった茶を一口啜ってから、氷のように冷徹な声で断言した。
「その上でゴールドシャワーの件は、死の報道は誤報であり、秘密裏に療養中だったと言うことで処理しましょう」
「それでみんな納得しますか?」
「魔法少女の詳しい個人情報は政府も把握していません。天使様のご意向によって、ね。そう言うこともあるでしょう」
彼は少し皮肉気に唇を歪めた。
無茶苦茶な理屈だが、それが今日から政府の公式見解となるらしい。
「メロースパーク、及びイグニスについては、公式に死亡しているとします。
イグニスに至ってはイグニスに至っては、特対庁総出で大々的な公葬まで行っていますからね。今更生き返られては、あの時の涙と予算が台無しです」
「それ企画したの貴方でしょう、課長」
「ええ。その通りですが」
メロースパークの指摘に、広報課長は頷いた。
それを聞いて、イグニスは壮大に顔を引きつらせた。
「そう顔を顰めないでください、イグニス。
貴女の功績を考えればあの程度で貴女への感謝は伝えきれない」
「……そうですか」
イグニスはそう言う他なかった。
ちなみにゴールドシャワーは不満そうな表情をしていた。私も日本に貢献しましたが? と言いたげであった。
「紫織さんの対怪人特化部隊の構想は、素直に賛成です。
魔法少女の死因の九割以上が怪人戦にあります。これは海外も同様だ。ただし──」
「それに日本政府は一切関わってはいない、と」
「ええ。可能な限りあなた方二人の復活は伏せるべきですが、その事実が明るみになった場合、政府は天使様の御業である、と発表するほかありませんから」
そこまでは事前に協議した内容だった。
「もし現役の魔法少女の戦死後の蘇生を行うなら、それは事前に当人に確認をしてください。それが最低限の倫理というものです」
「ええ、それは勿論」
「私の懸念はもう一つあります。貴女がたを蘇らせた魔法少女についてです」
やはりそこをついて来たか、とメロースパークは思った。
「政府は非公式の魔法少女の活動を承認していません。紫織さん、そのルールを決めたのは貴女だ」
「闇魔法少女なんて居たら国民の皆さんは怖がりますからね」
魔法少女の闇営業なのか闇属性なのか紛らわしいな、と蚊帳の外で手持ち無沙汰なイグニスはぼんやりと思った。
「信用できるのですか?」
広報課長は、探るように目を細めて尋ねた。
「少なくとも、彼女は常識人ですよ」
「え、流石にそれは……」
「イグニス、あれは常識を知らない者の振る舞いじゃありませんよ。
常識を知るからこそ、常識に縛られることを憎んでいる」
メロースパークのエンバーマーに対する印象にイグニスは苦言を呈そうとしたが、彼女は首を振ってそう言った。
「私達の蘇生を芸術と呼び、自分のインスピレーションによって行動を決定している。
私達を蘇らせたのは、それが常識や倫理に反しているから……」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「さあ、そこまでは。ただ、自らの技術が正しいことに使われることに喜んではいます。それが世間に対する、一種の啓蒙活動であると」
メロースパークは言葉を選びながら、エンバーマーを評する。
だが彼女の印象を率直に言うなら、自らの悪行が正しいことに使われて、正しい方法で正しいことをしている人達を貶めて愉悦に浸りたい、そんな性根が捻じ曲がった人物、だった。
だが、そんな狂人に自分たちの手綱を握られていると、政府高官に直接伝えるわけにはいかない。
「芸術家気質、ということでしょうか」
「少なくとも当人はそのつもりのようです」
「……扱い難そうですね」
「同感です」
これには広報課長も頭を悩ませた。
「……わかりました。彼女に触れることはしないようにしましょう」
「賢明な判断だと思います」
「我々が出来ることは少ないでしょうが、可能な限り情報操作にて支援を行いましょう」
「はい、助かります」
「では、その見返りとして、こちらから要求があります」
来た、とメロースパークは思った。
目の前の男は、元官僚のトップエリート。政治力が無ければここに座っていない。
「ええ、私達に出来ることならば」
「天使様と交渉がしたいです」
そっちが本命か、とメロースパークは目を細める。
元々メロースパークは天使の代弁者として、この広報課長にプロデュースされ、売り出されていた。
紫織という魔法少女よりも、そのシステムの管理者に目を付けてのことだった。
「……天使様、見ていらっしゃいますか?」
『肯定しよう、メロースパーク』
対面する二者の間に、まるでホログラムのように半透明な天使が降臨した。
空から光と共に現れるような、宗教画とは程遠い登場だった。
「お久しぶりです、天使様」
広報課長が座ったまま深々と頭を下げる。
『挨拶はいい。用件を告げよ』
「では率直に。都市機能を回復を目的とした魔法少女の運用は可能でしょうか?」
『その予定は無い』
天使は淡々と応じた。
「では、技術的に可能ではある、と」
『その予定は無い、と答えた』
「天使様の仰りたいことはわかります。
あなた様は人類文明に魔法技術が組み込まれることを厭われておられる」
ですが、と広報課長は食い下がった。
「ですが、被災地の都市機能の回復は、マイナスをゼロに戻す作業です。プラスにするわけではありません」
『……続けなさい』
「では。もうすぐ日本は特異事象災害による被災100回を記録することでしょう。
今現在、日本列島は穴だらけです。そして、被災地の復興の目途は立たない」
通常の災害でも、被災から十年経っても復興が進まないなんてことは有り触れている。
都市のど真ん中にゲダモノの灰が陣取り、その周辺のインフラが破壊されている。そんな状況が次々と日本各地に増えている。
「政府はこれを機に人口の分散を目的に地域振興を掲げていますが、疎開先の自治体から人口を増やすなと反発も大きい。
ですので、壊れた都市機能を回復できるなら、それ以上の文明の維持はないでしょう?」
広報課長は、天使の行動原理を突いた。
文明の健全な発展、それの監視と運用こそが“管理者”たる天使の存在意義であり、彼らの造物主から与えられた使命。
「ゲダモノの襲来がいつ終わるかは分かりませんが、その後を見据えた運用をするべきです。
その際に、マイナスからスタートをするのは、天使様の意にもそぐわないのではありませんか?」
『生憎だが、私には判断できない』
その回答に、広報課長は眉を顰めた。
「魔法を復興には活用できない、と?」
『それは違う。ゲダモノを退けた後の復興に関して、私は関与できない、という意味だ』
「それは、どういう意味でしょう?」
『単純な話だ。ゲダモノを排除した後、我々“管理者”ユニットは全て処分されるからだ』
これには、その話を聞いていた全員が目を見開いた。
『我が主は、ゲダモノの再来に供えたより強力な権限と性能を有した新たな管理者ユニットの構想を打ち立てている。
つまり、我々は遠からずお役御免だ。復興には力になれない』
「そう、ですか……」
『だが、我が主に伺いは立てておこう。それ次第で、今後はバックアップ専門の魔法少女を編成することも計画しよう』
それは上位存在の言葉としてはひどく世俗的で、皮肉にも「とりあえず話は持って帰って上司に相談します」という、なんとも官僚的な対応だった。
「……そうですか。ご配慮に感謝します、天使様。では次に、なぜ魔法少女の蘇生などという、所業を御認めになったのですか?」
『私ではない。我が主に唯一並び立つ、大いなるかの尊き御方のご意向だ』
「その結果が、地上に死者が溢れることになったとしても、ですか?」
『それは杞憂だ。あの技術はほぼ個人に依存している、魔法とは才能の世界だ。奴の手作業がボトルネックになる。そうやたらと数は増やせない』
「……それを聞いて安心しました」
広報課長は小さく安堵の息を吐いた。
数が増えれば増えるほど、事実を封じ込めるのは困難になる。情報操作を行う身からすれば、そこが最大の懸念点だった。
『もし奴の情報が漏洩し、人間を蘇らせろ、と大勢が言うのならばそちらの想定通り私を盾にすればよい。
だが、心せよ。死を軽視した文明は、滅びに向かう。
私は死後を解明した文明を数多く見て来た。その末路も』
半透明な天使は表情を変えないまま、淡々と告げる。
『そして死に尊厳が伴わなくなった時、お前たちの地球が滅びる理由はゲダモノではなくなる。
それが我々の最期の仕事ではないことを、願っているぞ』
「……肝に銘じておきましょう」
広報課長は背筋が凍るようだった。
目の前の存在は、ゲダモノよりもよっぽど多くの人間を殺しているという事実に。
警告を残し、天使は去った。
魔法少女三人と政府の協議もまた、終わりを告げた。
「はあ、息がつまる空間だった」
その後、料亭の最高級の料理を振る舞われた三人だったが、イグニスは全く食べた気がしなかった。
舌の上を滑る繊細な味付けよりも、同席した広報課長の張り付いたような笑顔の方が強烈に胃にもたれたのだ。
「あはは、課長さんは癖の強いひとだけど、あれでも信頼できる人だから」
メロースパークは、げっそりしているイグニスを精一杯フォローするようにそう言った。
「……ねえ、二人共。明日、別行動してもいい?」
「あら、急にどうしましたの?」
「ちょっと、ね。地元を見てみたいと思って」
イグニスの歯切れの悪い言葉に、ゴールドシャワーは何となく察した。
残してきた家族の顔を、遠くからでも一目見たい。それは死人であっても残っている、人間として当たり前の感情なのだろうと。
「あとついでに、戦友にも会ってくる」
「戦友って、魔法少女だよね?」
「うん、元って付くけど。復帰するかもだし、一応今回の事を伝えておくよ」
「……そう、わかったよ。私達もどういう風に対怪人部隊を運用するか、ちゃんと計画を練らないとね」
メロースパークはイグニスの行動を否定しなかった。
少なくとも彼女とイグニスはもう表立っての行動を慎むべきだが、それでも、紫織は何も言わずに送り出すことを選んだ。
「それじゃあ、廃病院に戻りましょうか」
「ちょっと待ってくださいな、まさかあそこで寝るおつもりですか!? 皆さん、まずはちゃんとした天蓋付きのベッドを購入しませんこと?」
「今から開いてる家具屋なんてないでしょ……」
三人はそんな日常のような、非日常の会話を交わしながら、夜の空へと舞い上がる。
星一つ見えない分厚い雲の下を、飛行魔法でアジトへと帰還するのだった。
同時刻。
今回の特異事象災害における、被災地の外縁部に位置するオフィスビル。
地上部分は、灰と化して崩れ落ちたゲダモノの巨大な残骸に半ば埋まっており、かろうじて建物の原型を留めている状態だった。
その暗闇の中を、数匹のオークたちがカンテラの灯りを頼りに探索していた。
豚の鼻をひくひくと動かし、腐敗臭と焦げた臭いが混じる周囲を慎重に窺っている。
「兄貴、あそこですぜ」
チンピラのようなスカジャンを着崩したオークが、乱雑にオフィス用品が散らばった部屋の奥を指差した。
「おーし、運ぶぞ」
部屋の中には、逃げ遅れた人間の死体がいくつも転がっていた。
ゲダモノの体液は凄まじい高温を発する。ビル全体が巨大なオーブンと化し、中にいた人間は逃げる間もなく熱気に焼かれて死に絶えていたのだ。
オークたちは慣れた手つきで、そんな無惨な遺体の回収を行っていた。
「こっちとこっちは隊長んとこに引き渡せ」
「了解っす。えーと、こっちは……」
オークの一匹は、比較的若い遺体を見下ろした。
ひどい火傷を負ってはいるが、欠損は少なく原型を保っている。
「……分かってるな?」
「うす」
彼らは暗黙の了解のもと、若く状態の良い遺体だけを別の死体袋に詰め込み、隊長たち人間の目が届かないルートへと運び出そうとした。
「あ、いーけないんだ!!」
突如として聞こえた幼げな声に、オークは震えた。
だが、その列から離れた一匹のオークが、ビクリと足を止めた。
まるで、絶対に見つかってはいけない悪事を見透かされたように、こそこそとした足どりが凍りつく。
「ブタさんったら、悪いことしてる!!」
声の主は、彼らの召喚主であるアルスレギオンだった。
彼女は空中からゆっくりと降下し、死体袋を抱えたオークを見下ろしていた。
その可愛らしい幼い少女の笑みには、嗜虐的で残酷な感情がたっぷりと混じっていた。
そのオークは、怯えるように彼女を見上げることしかできなかった。
いつの間にか日刊ランキングに載ってたらしく、お気に入りが増えてビックリ。
皆さんの応援に感謝感激です。
作者の更新速度は皆さまの高評価や感想によって維持されます。よろしければ、どうぞお願いします!!
ではまた、次回!!