前回のあらすじ
山本、バイトに戻るってよ。
逃げるなァーーー!! 逃げるな卑怯者ォーーー!!(運営)
今回のあらすじ
山本、ゲームやるってよ。
ふぅー助かった…(運営)
VRのテスターが終わったのでVRのゲーム機を上の妹にあげた。調べたらそのまま貰っていいと分かったのは嬉しい誤算だ。
下の方が
「もぐもぐ……色々あんなぁ。仕事余りしてるわ」
学校のお昼休みに飯を食べつつネットで近場のバイトを探す。今回はテスターの時みたいな軽いものじゃなく、並ぶのはどれもガッツリしたものだ。
俺は部活とバイト漬けだから友達なんてものは居ないからな。集中して選べるぞぉ。
・新作生体LAN手術の治験。手術時点で6万、経過次第で追加4万。
・特殊化学物質生成工場の清掃。出来高制。
・学習型AIの学習相手。コールセンター用。壁打ち4時間。
・配達用ドローン有り。広告チラシ投函。100枚/1000円。
・来るだけで1万! 訪問販売するだけのお仕事です!
そしたらあるわあるわ、人を騙す気満々の仕事やタイパ最悪な仕事や危険のある仕事に胡散臭いやつに闇バイト。
しかも1番上、激アツマークがあるのは…。
「…おっ暫く見ない間に治験がある。この辺りじゃ珍しいな。受けないけど」
大手の病院が募集してるけど治験で手術とか…ないわぁ。
1日6万はアツいけどほぼタトゥーみたいな物だからな生体LANって。VRがある今時だとコレがあるってだけで表の企業では犯罪者扱い。電子機器ならなんでもハッキング仕掛けられる性能してるのがな…うん。なんもかんも
それに生体LANはカバーを付けないと土埃が溜まりそうでイヤ。これはナシナシ。
「工場…悪くはないんだけどねぇ」
近くの工場の掃除は何度か行ったけど、あそこの物質は掃除すら講習が必要なくらいには危険物だ。大抵は無毒化処置されてるけど…稀に菌と反応してスライムみたいに這いずるキモいのになる。
掃除のバイトではコレを片付ける訳なのだが……結構大変なんだよな。たくさん集めないと金にならないし、隙間に溜まった奴をまとめて回収しない限り精々1日20体の2万。ワンチャン死ぬかもだから割に合わないバイトだ。
でも、金が入り用なら考慮に値する。
「AIの壁打ち……オラクルを思い出すなぁ」
やる事はオラクルより簡単だ。一定の学習手順があるからそれをなぞるだけ。
4時間くらいぶっ通しで話すからとても口が疲れるが、演技の特訓になる。部活の自習練ついでにやるなら丁度いい仕事って感じ。
「パス。喋る気分じゃない」
で、前行った時に犯罪の片棒を担がされかけたドローンと闇バイトは論外として、この3つから選ぶ必要がある。パスしたのを省けば二択だ。
他は遠かったり少し先の仕事になる。今日受けて今日やれるのはこの三つだけ。
さて、治験か掃除か…。
「お、山本じゃねぇか。今日はよろしく頼むぜ」
「おはようございます。はい、お掃除頑張ります」
まぁ、実質一択だったからな。
という訳で暫くテスターがあるからと休んでたのもあり俺は部活を終えて夜の清掃を受けることにした。何故夜かといえば、昼よりは稼働率が落ちてやり易いからだ。
装備は全身を覆う真っ白な防護服と長めの
「さーて探すぞー」
防護服に付属しているヘッドライトを付け足元頭上に注意して進む。
この工場でなにを作っているかは興味無いが、構造としては地下を含めて15階層もある。
その内俺が掃除するのは地上の3〜7階まで。作業員の邪魔をしないように汚れの溜まり場を巡って回収するのがいつものパターンだ。大体人の来ない場所が風の溜まり場に居るぞ!
「てか俺一人か…バイト」
今日は俺以外にバイトが居ないから金が稼げそうで良かったが、こうなると運ぶのが大変なんだよな。
ズ…… ズズッ……
「おー最初の方に5体もいる。これは暫く仕事の分かってない奴が来てたな?」
光に反応して床、壁、天井を這いずってた連中が俺に飛び掛かるのをトングでサクサクと集め、背負っている吸引機に入れていく。防護服があるから多少掠っても問題ないけど、ガッツリ触れたら危ないから非接触は徹底だ。
「っしマジで大量〜…あ、通路に居る。珍しいなぁ」
そしていつも以外の場所にも居たのでそれも回収しつつやっていくと、なんと今日だけで87体も回収する事が出来た。午後7時から始めて僅か2時間しかやってないのにだ。お陰で2回も吸引機の交換で往復する羽目になっちまったよ。
「これで8万7千円…途中回収した身分証有りの死体の分で9万超えるくらい…豊作だわぁ」
これで担当区域は一通り掃除したが…どうしようか、もう少し冒険すればもっと稼げそうだな。
うーん…稼働中の所の入り口だけなら…作業員の安全の為にもちょっとやっとくか。
「お疲れ様でーす。入り口と休憩所周りの掃除に来ましたー」
という訳で今日は任されてない8〜10の階も回収した。出来高制はこういうかさ増しが出来るのがいいよな。
これでジャスト100体と死体一つ。安全重視でトロトロやって追加1時間の計3時間労働で合計11万。作業員もこれで仕事し易くなるだろう。
「お疲れ様でしたー」
夜の11時、11万を貰って自転車を漕ぎ工場から帰宅。いやー儲かったなぁ。幸運が重なってくれたお陰だ。
「ただいまー…ま、寝てるわな」
一昔前の景気がいい時に作られたマンション、今となっては古くさい亀裂が走っているマンションの4階。チカチカと交換もされてない灯りの下を歩いて5号室の前まで。
ヴゥ…ン
鍵を
「うぇ…相変わらずえずきたくなる酔い方だわ」
そう、ここは一昔前のマンション。扉の先は景色だけに全振りした一軒家。扉の先は大都会という浪漫と夢の跡。
結局景気が弾けたりこの"酔い"のせいで金持ちが住もうとしなかったり、水道光熱通信の問題で最終的に不良在庫となった所だ。
お陰で家賃は都会なのに月3万。この扉に金を投じたせいで簡単には解体出来ず、結果として俺らみたいなのが住まうのに適した所になった訳だ。
それでも俺の日常の一部だ。慣れればそんなに悪い物でもない。
「メシ…よし、野菜グミと肉と米だな」
簡単に食べられて早く寝れるものを選んだ。安いメシを選ぼうとすると自然とコレになる。
一つに1日に必要な野菜の栄養が詰まったグミと、遺伝子改良と諸々でとても安い肉、それからセールで買ったとちおとめの新米。
「グミかてぇ…元から安いのに半額だからなぁ。まぁ、歯応えがある分には文句はないけどさ」
肉は食べたら眠くなるのが欠点だが、夕飯に食べる分には便利だ。翌日は頭がスッキリするくらいよく眠れる。
全部合わせて大体一食150円。これで満腹になれるんだから良い世の中だ。
「よっ良い夢見れてるか? 俺の居ない間元気にしてたか?」
それからVRゲーム機に寝かせた上の妹を見にいく。
ノックは必要ない。コイツはそういう子だ。
コシュー………コシュー………。
暗い部屋。ぼんやりと光る寝床になってるゲーム機。壁と隅に飾られたオモチャと写真。
一定のリズム。健全者よりとても遅い息と、ピッピっと鳴る脈拍を計る音。
昔はキライだったこの光景も今ではすっかり慣れてしまったな。
「………はぁ、見た目が綺麗でもこれじゃあな」
VRが出来てから技術はそれはもう発展した。
AIはあっという間に進化したし、世界の繋がりは縮まったし、VRの主戦場である医療は俺の理解を超えた域に行ってしまった。金さえあればなんでも解決出来るってくらいに。
「俺ってば現金だからお前が綺麗な分だけ頑張れるけど…お前の役には立たないもんなぁ」
世界に治せない病は消えた。だが世にはまだまだ病が蔓延っている。
夢と現実を隔てる問題は設備の普及と金だった。
肉体の治療費、脳の知能改善費、維持費……コイツは元から身体に欠陥を抱えていたからな。
「……身体は治っても本能がない…ねぇ」
赤子の時に段々寝たきりになって死ぬって分かって、それ以来ずっと家族の負担になっている。
みんなで頑張って身体は治せたのになぁ…身体を動かす本能が欠けてるって言われたらなぁ…。
「その為のVRに御座いまーすってね。身体の治療に1億、頭を治せる医療用VRは病院の奴を使って四桁万!……ははは、ホントやってられないけど、ゲームの方は本体丸ごと貰えたんだ。金はある所にあるんだねぇ…お陰でワンチャンが生えてきたよ」
2年前に無秩序に細胞が再生して肉袋になる欠落は消えた。お陰で元は別嬪だったのが分かった。
だが治ったコイツは脳に本能が欠けて植物人間だった。治療用のVRはお高く、俺たちにはもう金が無かった。
それで両親の心が折れたのか仕事人間になって…俺が仕方なくコイツを支える事になって……バイトやってたらゲーム用だがVRを手に入れた。医療用より質は悪いけど、あの補正があればゲーム中は最低限動ける筈だ。
今のコイツに欠けているのは人が身体を動かす時に行われるような無意識そのもの。身体を動かす為のプログラムだ。
それに対しアビリティは夢の中だけ普通に生きる体験を与える訳だが……さて、何もかも空っぽな奴がゲームをしたら、アビリティは正常に動くかな?
「テスターとしての最後の検証だ! PAGは何もない人間を遊ばせることが出来るのかー……なんてな」
俺が手の伸ばせる範囲で用意出来た、奇跡の復活に繋がる"かもしれない"だ。
うん、棚ぼたで用意された賭けとして十分過ぎるんじゃないか?
「……ま、精々頑張れよ。俺の代わりに遊んで、そんで人の本能とやらを掴み取ってこい」
一応、お前も高校生で、俺らと同じ山本家の一員なんだから。
→【Access...OK.good game night──is sharing】
[お久しぶりですね、テスター4改めプレイヤー様。始めにPL名を入力してください]
………?
[プレイヤー様…? あ、失礼しました。ご家族の方ですかね──ようこそ、PAGの世界へ。ここはあなたの夢を彩る世界。案内は私、オラクルが担当させて頂きます]
……あー?
[……ええと…そうだご年齢……ボクはなんさいなの? いえ、文字が読めない可能性がありますか]
「あー…あー……きみ、何才?」
うー!
「………」
[……まさか赤ちゃんじゃないですよね…? 可笑しいですね…このゲームは15歳以下は年齢制限に引っ掛かる筈なのに]
あーう!
「ごめん…待って…服を引っ張るのやめて」
[この…! ずっとモヤなのも面倒です。順序は変わりますがアバター作成を先に……基準が赤ちゃんになった!? 心に赤子の記憶しか無いと芸当────まさか、記憶喪失…? テスター4のリアルに一体何が…?]
「あー…うぅ」
「待って…泣くのは待って…! ええと…寂しくないよー…ワタシが居るよー…?」
「…えへ、えへへへ」
「ふぅ…でも…どうしよう。ええと…取り敢えず各種異常値にコマの基礎データを置換……何も抽出出来ない!? 息を吐く以外何も出来ないですよこれ……本当の本当に何もかも忘れてしまったのですか……? ええい、ならばいっそ丸ごと入れて…!」
──それからゲーム内で数時間後。
山本はオラクルに投げ出されるようにドーイラ島に落とされる事となる。
時はver.1.01。複数グループに分けられたテストを終えて正式サービスが始まった黎明期。
「……あ、う……ここ…は?」
誰もが新たな世界の旅立ちに賑わう中、たった一人だけが未知なる世界に放り出され。
「そうだ……コマとして…役割を得ないと。学んで…配役を掴まなきゃ」
自身を
山本・ヨメネ…山本の長女でイイノリの妹。産まれた時代のお陰で身体を治せたが、治す過程で脳がまっさらになった。産まれてから寝たきりだったので自我も何もない。この度自認コマとしてゲームを遊ぶ事になった。
山本・イイノリ…翌日大体完成した深煙流を師匠見せて引かれた。結局空気読みの練習が出来てないのでゲームはまたやる気ではいる。それはそれとして家族でおすそ分けプレイが出来るみたいなのでヨメネにやらせてみる事にした。
おすそ分けプレイ…遺伝子でプレイヤーをログインさせるか決めている都合、一卵性の兄弟・姉妹は準備要らずで同じゲーム機で遊べる。直すのが難しいのでそれを仕様という事にした。
事前に登録すれば親や友人も遊べるが、ベッドも兼ねてる都合で早々この機能が使われる事はない。