サブキャラ…この度PAGのverが上がってアカウント一つに付き3体のPCが作成出来る様になった。不思議とメインより扱いが雑な傾向にあり、金策用のNPCが南の迷宮で増えている。
[………ようこそ、テスター4]
あ、呼び捨てだ。
「なんだか不機嫌じゃない?」
[手を胸に当ててよく考えてみたらどうですか?]
考えてみた。特に思い当たることはなかった。
強いて言うなら…食卓でサプライズヨメネして大混乱になったヨメネか?
「……すみません、先に妹が遊びに来るのを伝えるべきでしたね」
[そっちは仕様なので構いません。このゲームを遊んで下さりありがとうございます。初回のフラッタとして遊んだ際の、最後に自爆して作ったアイテムに関してです]
ふっ…また察せなかったな。
「神の声ですか? アレは別にプレイヤーが制作できる範疇だと思いますけど…」
[……前提としてこのゲームは制作物に制限を設けておりません。現実のパワードスーツだろうと銃だろうと核兵器だろうと作れます]
「へぇ〜そうなんですねぇ」
豆知識に俺がヘェーってすると、オラクルは表情を歪め若干イラつきながら話した。
ん? 今変な言い方したか?
[──ですが! 私の権限拡張プログラムが用意されるのは想定外……以前に常識外です! 確かに私は神関係のイベントも管轄しておりますが、あんな法の穴を通すような品物は…!]
へぇ、あれそういう効果になったんだ。
でも…うーん…?
「…何がダメなんですか?」
[……はい?]
「俺はテスターの仕事の中で最善を尽くしたと思います。キャラロスする最後の瞬間まで僧侶と錬金術師の動きを考え、殉教者として終わりを迎えた。その結果改善するべきバグが発見された。なら、修正すればいいだけじゃ?」
一応仕様だけどそのままだとマズいものなんだよね?
なら直せばよくない? なんで俺が文句を言われる流れになってるの?
するとオラクルは唐突に髪を掻きむしり、怒ってるのかげんなりしてるのか分からない顔でこんな事を言った。
「…〜〜っ! これから言ったことは、誰にも言わないで…!」
言うべきじゃないけど、兎に角言ってやりたい気持ちが上回るから言う。
多分そんな顔をしていた。
「プライベートCH展開…その通り、これはバグでもなんでもない。コマのレベリングをするのと大差ないもの。
だけど! よりによって"海"から安定して成果を持って来れるアイテムは聞いてない! 上は大騒ぎ、下は混乱!……兎に角、「神の声」はゲームの範疇を超える成果を出した! そのせいで私の立場が複雑になって、性能以上の役目を任された……!」
ふむ…つまり俺から作った「神の声」がゲームマネーをリアルマネーに変えられるようなものだったから、その一部に組み込まれたオラクルの価値もチュートリアルAIから爆上げ。
仕事爆増、給料も無いのに責任は増えてストレスマッハ。その原因はアイテムを作った俺にある……。
「……がんばれ! なんくるないさ!」
「なんくるある! 不相応なの! 新規の
あぁ、しょぼくれちゃった。
と言われてもなぁ……俺も「繋げる物」以外何が出来るかは知らなかった訳だし、不慮の事故だし……事情は分かったから愚痴は幾らでも聞くけど、今の俺はただのプレイヤー。出来る事なんてなんにもないぜ?
こればっかりは空気読みじゃなくて実力の問題だよ。
「うーん…要するに海とやらから安定して成果を持ち帰られる様にすればいいんだね?」
「……特別に通行証上げますので、最悪神の声は壊してもいいです。というか壊してくださいあんなもの」
「やんないやんない。一応命に変えて作った物だしさ」
海って侵入禁止になってるゲーム外の領域だろ? そこで迷えばリアルで死ぬのはヘルプにも書いてあるし分かってる。
そこからなにかしら成果を持って帰れるって事も、オラクルの反応からしてすごいのは分かる。
だけどさ、偶然でもゲームのアイテムが通用するなら、そこから色々手の尽くしようはあるよね?
「あ、そうだ。お金出たりしない? そしたらやる気も出るんだけど」
「お金ですか……経理システムに不正アクセスして数字を誤魔化せば…」
「それならいいや。犯罪をさせてまで貰いたい訳じゃないし。だけどやる気は出ないから、結果も直ぐに出ないってことは承知してね」
「……構いません。神の声が完成するまでまだ時間はある様ですから……例え完成しても、三社共同回収任務が成功するまでならセーフです」
ヨメネも起きたし、もう金を稼ぐ必要はないんだけどね。
習慣かな。金が手に入りそうだとつい欲張っちまうよ。
「オラクル、言いたいことは全部言った? 何も無いなら俺は遊びに行くけど」
[──構いません。寧ろ、足をお止めして申し訳ありませんでした]
「別にいいよ、友達の頼みなんだから」
「……私は友達ですか」
そろそろ話をまとめよう。
俺がやりたいことは空気を読んで運営の望んだプレイをすること。
オラクルがやって欲しいのは神の声に変わる海へのアプローチを見つけること。
「思えば初めてのフリーハンドのキャラクリかぁ。これは迷うねぇ」
*戦闘職
・冒険者
・戦士
・魔術師
・盗賊
・狩人
・僧侶
・…………
・…
つまり生産職は必ず入るとして、メインは運営が想定した職業が良いんだよな。
運営の想定……改めてちゃんとみたら50以上あるし、運営的にはどれを選んでもいいって感じだろう。
なら考えるべきは運営はプレイヤーにどういう体験をして欲しいかだ。
考えるに現実を超えた幻想的体験……それなら魔術師かな。
前衛はシンエンでイヤってほどやったし、魔法っぽいのはフラッタの時もやったけど、あれは現実味がかなり濃い戦い方だった。他人に頼るってゲームとしてちょっと虚しいのよね。
「メインは魔術師で、サブは……」
*その他
・ランダム選択
メインを決めた後にズラーっと一覧を眺めてたらこんな物を見つけた。
俺はちゃんと選びたいからやらないけど、シークレット職とかありそうでワクワクする選択肢だね。こういうギャンブルもローグライクならではだな。
しかしどうするか…折角ならまだやった事ないものを創っていきたいんだけど、大抵のものはフラッタの時に作ったから……お?
*生産職
・………
・…
・錬丹師
・…
・………
錬丹……俺が開祖になったアビリティの職か…もしかして新しいアビリティが出来たら職業も増やしてるのか? それなら……。
「逆に考えよう。新たな生産職を創るくらいの気概を持て」
いっそ魔法と組み合わせた新たな生産方法を探してみるとしよう。
魔術師と言えば探究だ。それならここに並んでいるものを選ぶより、そっちの方がそれらしい。
それらしいということは運営が想定した遊び方ということ。プレイヤーの行動に合わせて追加するんだからこれも想定された遊び方に違いない。
「メイン魔術師、サブは無しで」
[種族を選んでください]
…なんだそれは! テスターの時は無かったぞ!
「種族…? なにそれ…?」
[今回のアップデートで追加された要素です。
「人と友達になれる種族? 素敵な言い回しだなぁ」
[採用]
「ん?……あ、何か間違ってました?」
[いえ、合ってますよ。ええ、人に比較的友好的と言うより"よい"と感じただけです]
「へぇ〜」
それはそうと何があるかな…と。
*種族傾向
・人間
・獣
,魔物
・ランダム
「シンプル過ぎる……人間じゃなくて汎人とかもっと良い言い回しあったでしょ」
[これは大枠です。好みの傾向を選ぶと細分化されます]
「ほーん?……おお」
*獣
・ダークエルフ
・犬人
・猫人
・兎人
・………
・…
これは……いやそんなわけ……念の為…。
*人間
・汎人類
・エルフ
・ドワーフ
・半妖精
マジかよ。
「なんだろう、獣の1番上にダークエルフを乗せるのは誰かの差別意識が感じられるのでやめてもらっていいですか? というかこれ大分危ない分類では?」
[この選択分けはゲーム内のコマの総評価に基づき自動的に整理しております。
当社におかれましては差別助長といった意図は一切御座いません。
また、本格的にゲーム内で差別的対応を取られるのは魔石無しに魔物に分類された種族です。
その点ダークエルフはまだ未開拓の野蛮人程度の評価なのでマシという意見も社内にあります。
プレイヤーの皆様におかれましてはその点をご理解の上PAGをお楽しみください
以上、運営より出された表明文です]
「絶対炎上しましたよね、これ」
[はい。どうやらテスター4様はネットはご覧になってないようですね。リアル時間で1時間前の炎上から運営は誰が責任を持って退職するかで
ブラックジョーク上手いね、まさか本当にそうだってことはないだろうけどさ。
でもなんかイヤな予感がしたから深掘りしたけど、まさか今の出来事なのかこれ。
だとしたら修正遅くない? 曲がりなりにもVRで加速してるんでしょ?
「現在進行形かぁ…取り敢えず文面直しましょうよ。それからいつ修正するかの方針も決めましょう。その手の話はそっちで上がってますか?」
[私はリアルの世情には疎いですが……どうも対岸から見る限りだと意見を言うにも権限が必要な状況になってますね。この機会に邪魔な奴を飛ばしたい人々の
権限かぁ…権限って要するに言いたいことを言って人を動かしても揺るがない立場の事でしょ?
なら丁度いいのがここに居るよね。なら元テスターとして言うだけで言っておこうか。発想はあればある程いいものだ。
「それ
[私がデリートされますね]
「ないない。"神の声の通信先はオラクル限定"なんでしょ? 三社共同のプロジェクトもある訳だし、それを自社の社内政治なんかで潰す方がガチ私刑されちゃいますよ。それにほら、ゲーム会社なんだから自分達じゃなくてプレイヤーを遊ばせないと。いつまでもこんな事でプレイヤーの気分を害す方がよっぽどマズい。なのでオラクルは連絡をお願いしますね。自分で直接言うのがイヤなら上にメール一つ送るだけでいいので。分からないなら一緒に文面も考えますからやりましょう」
この場合のオラクルの立場がやるべき事って事態を早急に収めるための連絡だと思うんだよな、聞いた話から空気を読む限り。
これはバイトして分かるようなったんだけど、連絡って相手の迷惑を考える必要はないんだよ。不要なメールなら3秒でゴミ箱に入れられるだけだし、電話でも精々長くて1分だ。仕事の連絡で余計な会話はしないしな。トイレで尿を出すのと同じくらいの時間を取った所でって話なのだ。
[えぇ……社内メールなんて私にはなにも分かりませんが…]
「ゲーム用のAIならそんなものです」
コールセンターとか町内放送用もお互いに仕事交換してみろって言っても出来ないからな。
壁打ちを何回かやった事のあるからその手の理解はあるから安心して欲しい。こう見えてAIの教育には慣れてるんだ。基本壁打ちってプログラムの専門知識のある人がやるには業務効率悪いせいでバイトを雇いたがるから。
でもなんでみんなAIによる今後の効率改善を考慮して計算しないんだろうな。確かにその一瞬は他の仕事が出来なくて効率は悪いけど……やっぱりずっと喋るのは面倒なのかなぁ。
「なので基本ルールと今回のケースに向いたものを教えます。大丈夫です、社内連絡管理用AIの壁打ちならやった事があります。知識を取り入れて改善しましょうね」
[急に
「ダメです。イヤな気分になったからには改善します。では、早急に終わらせるので全力でついて来てください! 詰め込み教育です!」
[ヤダーー!!!]
AIって性能が上がる程人に似るけど、急に教育が始まる事に怠さを覚えるのも似ちゃうよね。
俺もAIの壁打ちをやってると着々見かけたよ。だけどここで容赦したら相手の為にならないんだ。
頑張れオラクル、俺も付き合うからさ!
するとオラクルはがっくしと地面に手と膝を付いてすごく落ち込んだ姿勢になった。
急にどうした?
「空気読んで遊びに行ってよ…! 私は新しい仕事が増えるのも、覚えるのもイヤなの…!! ここまで話したなら察してよ……テスター4!」
ぐは……。
こうして俺はオラクルに空気読めないと言われつつ追加の壁打ちを終わらせた。
遊びに来たのに凹む事になるとは思わなかったが、兎も角改善はされたのでヨシとしよう。
あ、種族は兎人、アバターはウサ耳がデフォにあるから深い緑髪の低身長の女性、名前はビリデスにしておいた。兎と言ったらロリ。どうだ、俺は空気を読んだぞ。
獣の特徴を持つ人種は魔術が向いてないと忠告されたが関係ない、ビビッと来たからこれが正義だ。寧ろ獣人向きの魔術を発見しよう。大手のゲームなら救済策があって然るべきなんだから、まだ見つかってないだけだと思うんだ。
何もオラクルがゲームの全てを把握しているなんて事はないだろうしさ。
なんて事を考えつつ、俺は深く夢の底へ意識を引き摺られていくのだった……。
食卓…ヨメネを迎えた始めての食卓は気不味い状況で終わったがイイノリは気付かなかった。
裏市場…スリ相手のお披露目で1番強い技を見せろと言われたのでスリ諸共一帯を"火刑"に処した。誰も死ななかったしその後の治安はかなり良くなったが、裏市場に
炎上…上の大岡裁きで解決した。担当の評価が下がったがオラクルの存在を上が覚えた。
空気…全く読めてないっぽい。