運営さまの言う通り   作:何処にでもある

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 時系列
 テスター開始前から3周目開始まで。




リアル小噺集

 

 

[*平瀬・セッコ…フラッタのベースとなった山本の後輩で部活仲間。第二壁内の壁側に住んでいる]

[第一/第二壁内…日本国家の中枢が収まっている第一、民間企業や高層マンションが立ち並ぶのが第二。大本営発表としては壁はあくまでも夢の世界からの侵略を警戒したものであり、防衛や緊急時の内部シェルター化以上の意味はない。現実は資本格差の視覚化を促している]

 

 

 

「そうか、平瀬は引っ込み思案な自分を変えるために入部したのだね」

「は…はい……す、すみません。不純な動機で……」

 

 ああ、またやってしまった。

 そう思った時には、既に吐いた言葉はとっくに部長の耳に届いていて、送り返しは到底期待出来なくなっていた。

 

 私は平瀬。誰かに関わるのが苦手で、自分を変えたくて演劇部に入った。

 思った事をつい口にしてしまう悪癖。そのせいでずっと本音で話してしまって、人と上手く関係を作れなかった。それが中学までの話。

 だから人と話さないようにスマホ片手に距離を取る内に人との関わり方を忘れて、言葉もいつの間にか吃って、私はいつの間にか人として劣化し切ってしまった。

 

「ご…ごめんなさい……ガ、ガガチな所にこ…こんな理由で入って……こここ…此処が本気でやってるのをし…知ってたのに……や…あ…」

 

 自分の変え方を間違えた。

 だから高校では自分の考えだけで自分を変えるんじゃなくて、他の人を手本にしようとした。

 それが演劇部に入った理由。たった今、入部理由を聞いた部長につい教えてしまった本音。

 

「やぱ…やっぱりやめます……あ、入部……ごめんなさい、すみませんでした……」

 

 この高校の演劇部は有名だ。高校生なのに各地に赴いては演劇をやって、人々に演劇の良さを広める活動をするくらいガチだ。私だって去年に3回路上で見かけたのだから、相当だ。

 そのおかげで本職の人からスカウトもあるって聞くし、なんなら一緒に共演したとも聞く。

 

 最早部ではなく団。そんな演劇を率いるのが目の前の前髪パッツン金髪娘……もとい、部長の各務・べーべルさんだ。

 本音を言っては入る資格が無いと思われる。いや、間違いなく思われた。

 

 だから私は逃げようとして……各務さんに腕を掴まれてた。

 

「待ちなさい! その想いのどこが不純なものか!」

 

 ……思ってもみなかった言葉を、トパーズのように輝く眼で私を見据えながら。

 

「寧ろ王道だよそれは! いいね、実に良い! そうだよ、君みたいな人材こそ演劇部に相応しい!」

「え…え? で、ででも……演劇部はすごくガチなもので……」

 

 途端、部長の眼が濁る。

 すると熱線でも発射されてるんじゃないかってくらい輝いていた眼圧が消えて息がし易くなった。

 あ…危なかった……もう少しで脳がアッチッチになって戻れなくなる所だった……。

 

「違う違う違う違う違う………そうじゃない…違うんだよ山本ォ……私が求めたのは涼しい部屋にお菓子片手に演劇のビデオ観ながら駄弁るくらいの緩い部活で、決して週四で路上演劇する様な熱量なんてこれっぽっちも……」

 

 顔が近いからか、部長のぶつぶつと漏れ出る声が耳に届く。

 あ、私と同じだ……思っても見なかった共通点にそんな共感が胸に飛来して、なんだか部長が親身な存在に感じた。

 そっか…部長も最初は同じくらいだったのかな…それなら、私も部長みたいになれるかも。

 

「…おっと! 失礼したね! 兎に角、君は遠慮する必要なんてこれっぽっちもないのさ! さぁさぁ、肩の力を抜いて! 山本とかいう奴の言葉には耳を貸さずに僕とお菓子でも……」

 

「あ、部長。その子新人ですか?」

 

「出たな演劇怪人! 今日こそ貴様を倒して平穏な部活を取り戻す! うおーー!!」

 

 ‭─‬‭─ダァァーン!!

 

「こんにちは、山本です。今日からよろしくお願いします」

「あ…あぁあ、あ……ひ…平瀬です……おね、お願いします……」

「自分を変えたくて此処に来ましたか? それでしたら演劇部はオススメですよ。なんてったって部長も最初は演劇好きなのに人嫌いという偏屈だったのに、今では立派な部長ですから」

 

 噂の山本さんが部室に来ると、部長はガバリと起き上がって山本さんに突撃して、そのまま投げられて受け身を取っていた。

 そして肝心の山本さんは一見普通の男の人に見えたけど……話す所作が堂々としてて、制服越しに見える体格がどう見てもマッチョのそれだった。ふ…腹筋凄そう…さ、触ってみたい。

 

「山本ォ…言っておくが私は人嫌いじゃなくて男嫌いだったんだぞ! それを貴様が空気も読まず関わりなんてするから慣れてしまっただけだ!」

 

「そうですか」

 

 足を小鹿みたいに震わせながら喚く部長を山本さんが流して……その一瞬、私は言葉を遅らせたように感じました。

 ……? 気のせい…かな?

 

「では、新人も来たことですし部活を始めましょう。本日の公演場所は第二壁内F区六町西森公園です。即興劇ですので、移動するまでに役と大まかなストーリーを見ておいてください」

「くっそ今日も負けた……あーはいはいこういう役だね。全然モーマンタイさ」

「言っのは部長ではありません。平瀬さんですよ」

 

「え……わ、私が!?」

 

 山本さんの爆弾発言に些細な違和感はすぐさま消し飛びました。

 私新人なのに…! もう役を!? それも即興で!?

 

「大丈夫です。無音の不気味さというものも劇には存在します。怪物は言葉を発してはならず、理解不能であるからこそ不気味なんです。最初ですし舞台に上がり、林檎を姫に渡すだけで構いません。猫背の人の動きを覚えれば出来る簡単な役ですよ」

 

 後は演出で誤魔化しますと続く言葉は私の耳に届かなかった。

 初めて、舞台、観客、演技……ぐるぐると回る単語が終わりを迎えず、思考がショートして煙を吐き出す。とても舞台に上がれる気力なんてありません。

 

「む……むり……」

 

「恥は捨てましょう。大丈夫です。今回の観客なんて散歩に来た子供と保育士くらいです。子供の記憶なんて三時間も経たずに消えるんですから、気を負う必要なんてないですよ」

 

「………や、やっぱりむり…!」

 

「行けるかなって今考えましたね? その通りやれるんですよ。平瀬さんは怖がってるだけです。大丈夫、案外出てみれば大したことじゃないって分かりますよ」

 

 …………

 ……

 

「お疲れ様でした。アドバイスは明日まとめて行います。今日の演技を基盤にこれから頑張っていきましょう!」

 

「……はえ?」

 

 それからの記憶はありません。気付けば全部終わってて、私は高評価を貰って帰路に着いてました。

 他にも色んな部員に会ったはずなのに、胸に残っているのは一人だけ。

 

「……鬼畜…山本鬼畜…あの野郎……!」

 

 山本さんは、鬼畜。

 たったそれだけの言葉を、私はその後寝るまで頭の中でぐるぐるとする事になったのでした。

 

 

 

「声出し改善、吃り直しのトレーニングを文字に(したた)めました。今日からやって行けば三日後には治ります。一緒に頑張っていきましょうね、平瀬さん」

 

「えっ?」

 

 そして後日。

 私は山本さんが付きっきりで特訓してかれたおかげで吃りと声の小ささを治せました。

 自分変え、早速一歩前進です。

 ……鬼畜だけど、良い人かも? いやどうかな…良い人かな…なんなんだ…?

 

 でも、コレだけは関わりの薄い私にも分かります。

 

「変なの……」

 

 山本さんは、変な人です。

 

 

 

[*柳田・ニマン…剣道部のエース。実家から受け継ぐ護身の剣を振るい剣道部を全国大会を連れて行った実力を持つ。快活で世話好きだが、悪戯好きな一面も。性根は人好きだが、将来は親の護衛職を継ぐ気なので今から人を殺す覚悟を頑張って固めている]

[現実の治安…表社会は現実よりも犯罪率は低いが、裏稼業(ランナー)がいるので偉い立場の死亡率はとても高い。なので護衛職は高給取りであり、一族代々の所は特に重宝される。主な相手が暗殺者なのもあり護衛職は軍人同様殺人しても許される。殺さなければ国の重役が死ぬから然もありなん]

 

 

 

「蛍‭─‬‭─"残火"」

 

「うわ……」

 

 適当に教えたホラが現実になった時、人は心底キモいと思うと知った。

 いや、知りとう無かったわこんな事実。なんじゃ残火って、熱を纏めて斬撃を飛ばす奴初めてみたわ。

 

「どうやっとるんだそれ……物理法則無視しとらんか?」

「無視してませんよ。別の法則を刀に宿して斬るんです」

「別の法則ってなんじゃい」

「PAGで拾ってきました。コレに目覚めた昔の人はきっと夢の中で同じ物を拾ったんでしょうね。ゲームで瞑想修行をスキップすることになるとは思いませんでしたが、おかげで言われた通りの剣を奮えました。ありがとうございます」

 

 なにそれ…知らん…こわっ……だが社会の授業で聞いたな…夢の世界だったか?

 そうか、その夢の世界の法則とやらを現実に……最新技術も無しに出来るのか…そうか…初めて知ったわ。

 

 じゃが…いや…まぁ……そういうもの…なんじゃろうなぁ?

 

「よし、眼の前の現実は受け入れる! 故に小僧、その剣を儂に教えてみろ」

「なんでですか? 師匠は出来ますよね?」

「アレだ、教えて学ぶ…だ。言葉にして理解できることもあろう。兎に角言われた通りにせい」

「なるほど、やってみます!」

 

 いやー…適当教えといてなんだが、儂もやってみたいなぁ…燃える剣。

 飛ぶ斬撃とか過程を燃やして斬り込む瞬歩とか、絶対遠距離暗殺者に有効じゃろ。絶対将来の役に立ちそう……というか、コヤツが出来た以上他に出来ない理由も無し。

 

 夢の世界とやらの法則を現実に持ってきて、未知なる手法で暗殺してくる手合いが居ないとも限らん。ならば知を得ずして生は得られんだろうよ。

 護るに然り、攻めに然り。殺しの技は柔軟に学ばぬ者から死ぬ。

 

 儂は目指す職が職故刀だけでなく銃や爆弾も学んでおるが…こうなるとこのPAGというゲーム、儂もやった方が良さそうだ。ただのゲームなら兎も角、寝てる間に現実で強くなれるならやらぬ手も無し。

 

「先ず起刀の煙々羅からですけど、これは言葉で宣言する事にも意味が有って‭─‬‭─」

 

 さて……此奴が暴れるビデオを取って親父に見せるか。

 今時AIで偽装だなんだで喧しいが、カメラで直撮りし本体からそのまま映像を再生すれば本物じゃろ。

 VRを利用してこの様な力を引っ張ってくる手合いが居る。だから調査のためにゲーム機を買ってくれ……なんだか遊びたいから適当なホラを吹いてるようだ。もういっそのこと此奴を親父の前に持ってくるか…? 多分金を渡せば来るじゃろ。

 

「‭─‬‭─という感じで、斬る瞬間と心臓の一拍にタイミングを合わせて内に宿っている法則から夢の世界の力を爆発的に引き出し、瞬時に圧縮を行い、一時的に現実を上塗って斬るんですよ」

 

 なるほど分からん。

 論理的に言っておるようで肝心の感覚的な挙動の説明が抜けておるわ。

 よし、親父に投げるか。

 

「うむ、‬どうやらかなり理解を深めたようだな。ならば折角だ。儂の親父に挨拶せんか? その剣を見せて指導をして貰うといい」

 

「おお! それは良いですね! それで、その人は何処に居るんですか? やっぱり師匠の家?」

 

 む、変なことを聞くな…? 普通親族を紹介するなら同じ家と思うだろうに。

 いやまぁ、事実懸念は当たっておるのだが。

 

「‭─‬‭─鶏の屠畜場。諸事情で儂の母の筋の者が屠畜の手伝いが欲しいと言われてな? 丁度白羽の矢が立ったのが休暇中の親父でなぁ……どうじゃ? 親父に会うついでに屠畜のバイト、受けてみんか? 交渉次第じゃが一日10万も夢ではなかろ」

やります! やらせてください!

「うおっ!? 急に耳元で叫ぶな…ビックリしただろうが」

 

 そんな訳で親父には先に連絡を済ませ、今日中に此奴と親父を合わせる予定を組んでおいた。

 親父がどんな反応をするかは未知数だが……まぁ、悪いようにはせんだろう。

 上手くいけばゲームが手に入り、上手くいかなくとも親父が夢の法則を現実に持ってくる輩を一人知れる。

 

「連絡終わったぞ、出来るのであれば鳥ウイルスに感染した9,500頭を一日で殺せれば出来高で良いと向こうも‭─‬‭─おぉ…もう行きよった…あれは相当本気で仕事を終わらせる気じゃな…」

 

 刀一本で転移しよったな……態々移動する時間を斬り取ってまで駆け付けるか。

 金が絡んだ時の此奴は周りが見えなくなる程全力じゃのぉ……ん? もしや斬るのが早過ぎて親父と関わらなかったり、視野が狭くなってるせいで見せるだけ見せ、金だけ貰って話もしない可能性も……。

 

 purrrrr‭─‬‭─‬…

 

「……儂しーらね」

 

 ……よし! 儂がやれることはやった!

 後は親父に任せる! 儂はもう知らん! 精々困惑しながら帰るとよいわ! わっはっは!!

 

 ……はぁ。

 説明が憂鬱じゃあ…覚えておれよ小僧め、近い内にゲームの中で意表返ししてやるからの?

 

 

 

[*山本家…都心に繋がる相対座標固定式テレポートゲートから行ける場所にある。地球の何処かにあるが、具体的に何処なのかは山本家の誰も知らない。土日に窓から出て周りを調べたイイノリ曰く、星空と季節からアメリカの北側辺りらしい。周りに草原、少し離れた先に小川、家から離れると電波圏外になる。不思議なことに動物は虫一匹として見かけない]

[山本・エーコ…山本家の末っ子。今年で13歳になる。面倒臭がり、逃避癖、現実舐め腐りのダメ人間予備軍のメスガキ予備軍。最近性に目覚めてオカズに眼がない。ずっと寝てる姉は人ではなく姉のラベルが貼ってあるインテリアくらいの認識だった]

 

 

 

「バイトで貰ったVRを遊ばせたらヨメネの脳が治ったからこれからは家族五人だよ。喋れるけど無知だから色々教えてあげてね」

「初めまして……久しぶり…? ですはい。私はヨメネ…らしいです。これからよろしくお願いします」

「挨拶、名前、最後に一礼……うん、教えた通りの完璧な自己紹介だね。これで家庭平和は俺の物だな」

 

 ワタシが言うのもなんだけど、おにぃは変人だ。

 突飛なことをする訳じゃない。寧ろ真面目で社会っていうのに適応しようとしてる努力家だと思う。

 けど、私にも分かるくらいおにぃはズレてる。

 

「俺は自己紹介してるから先に食べるね、いただきます。久しぶりのトンカツうめぇ〜」

 

「…………」

「…………」

「………えっと」

「へぇ、ビョーキ治って良かったね。じゃあこれからよろしくね、おねぇ。ミニトマトうまぁ」

 

 現にほら、ワタシより先にご飯に手を付けてるし。

 普通さぁ、おにぃが連れて来たならおにぃが仲を取り持つケアとかすべきなんじゃないのぉ?

 ま、ワタシは面倒だからやんないけど。あーあ、おねぇかわいそ。

 

「いも……エーコ、せめて自己紹介してから飯食えよ。いただきますもちゃんと言え」

 

 あ、妹が二人になったからおにぃが名前でワタシを呼んでる。ちょっと新鮮。

 でも……めんどくさいなぁ。

 

「えー……いただきます。もぐもぐ…」

「名前」

「おに言」

「俺が言ったからいいでしょじゃない。最低限の礼節は守れよ」

 

 おにぃが紹介してからの方が会話の入り口増えるって分かんないのかなぁ。

 

「さな言」

「略語もやめなさい。何言ってるか分かんないだろ。ヨメネ置いてかれてるでしょうが」

 

 最低限の礼節とか仲介放棄してトンカツ食べてるおにぃが言うこと?

 なんか笑っちゃうよねこういうお間抜けな言葉って。

 言ってて説得力がないんだよねぇ。 やぁい、空気も読めないざぁこ♡

 

 って言ったよおにぃ。悪口言うよりマシだからいいでしょ?

 面倒だから解説はしないけどね。

 

「……はぁ。ワタシは山本エーコ。いちおーアンタの妹だけど姉扱いする気ないから。精々ワタシの妹として頼れば? 4回に1回は助けてあげる。よろー」

 

 ま、冗談だけど。頼ったら毎回ちゃんと助けてあげる。ワタシは優しいもん。

 

「うん、よろしく…?」

 

 あ、生意気なガキだなぁって顔してる〜。ワタシより何も知らない癖に生意気♡

 でも許してあげる。いびったりするのめんどいから。格付けとかめんどいしワタシが1番下でも良いよぉ。家族だし。

 でもどうしようっかなー? ワタシより顔が良いし、いちおーママもパパもワタシが産まれる前はお熱だったみたいだしー? でもコイツが植物になったストレスでワタシが産まれたらしいしー…向こうから来たら適当に相手しよーっと。

 

「……ヨメネ、最初は実感が湧かないだろうが、俺がヨメネのパパだよ。これから‭─‬‭─‬…」

「私がママよ。目覚めてくれてとっても嬉しい……本当よ? 毎日あなたの顔の世話をしてた‭─‬‭─…」

「はい、これからよろしくお願いします」

 

 あ、パパとママが色々言ってる。まぁいいや、お野菜食べるより価値のない言葉だろうし無視しちゃおー。

 でも出来ないんだよね。ホント親の言葉って厄介♡ 聴きたくなくても身体が勝手に聞こうとする♡

 

「ひさびさに食べたなー。おにぃのトンカツ。うまいなぁ」

 

 あーおいしー。パパとママの嘘も忘れられそうかもー。

 

「ホント嬉しいなぁ。赤ちゃん頃よりもお前は本当に‭─‬‭─…」

「アレは覚えてる? あなたが2歳の時に行った旅行の‭─‬‭─…」

 

「ははは」

 

 ホント……絵面最悪♡ 耳塞ぎたい♡ 胃の熱くて吐きそう♡ でも舌は最高だ。

 

 ぜんぶめんどくさい。あーあ、部屋に戻りたいなぁ。

 

「……おおか」

 

 おにぃはワタシが産まれる前はパパとママはおねぇを大事にしてたって言ってたけど、ワタシからするとパパとママは、ずっとおにぃもワタシもおねぇも無視して仕事に熱中してた人達だもん。

 親というより一緒に住んでる他人♡ 愛してるってワタシにも言ってみろ♡

 過去のおねぇより今の右も左も分からないおねぇを見てあげなよ。気不味そうにしててかわいそうじゃん。

 

 って言ったけど、そのまま言うと怒られるだろうから言わない♡

 嵐は通り過ぎるまで耐えるもの♡ 死神ゲームに敗者は要らない✖︎

 

「ふぅ……ごちそうさまでした。俺は風呂行ってくるわ」

「ごちそうさま。じゃあワタシは洗い物するから、みんなご飯は早く済ませてねー」

 

 家事はめんどくさいけど今日だけはありがたい。

 逃げる口実になる♡ 今の親と話しかけられるくらいなら逃げるが勝ち♡

 

「エーコ」

 

 ……………パめ。

 はいはいお口にチャック。余計な事は言わない、黙り過ぎない。そしたら物を投げられなーい。

 ………よし、振り返ろう。

 

「なに?」

「俺達は仕事で時間が作れないから、お前が色々教えてあげなさい」

「お願いね、実質お姉ちゃんなんだから」

 

 ……年齢なら、ワタシが妹なんだけどなぁ♡

 最初にワタシが頼れって言ってたの忘れたの? 態々言ってくるなよめんどうくさい。

 なに? やる気ないって思われた? 怠いよ、あんなの冗談じゃん。普通に毎回助ける気だったの。

 そんなに信用ない? ワタシ、そんなに家族に不親切に見える? はっ? うっっざ。

 

 パパとママより家族扱いするつもりだっての。おねぇは不幸だっただけで罪はないからさ。

 

「………分かってるよー。でも今日はもう遅いし明日からねー」

 

「おい!」

 

 パパが叫んでるけど無視ー。ヨメネには悪いけどこれ以上話してても気まずいだけだし、ワタシは相手したくない♡

 だから盾になってねー。辛いだろうけど、代わりに明日はその分良くしてあげるからさ。

 今日はもう無理。

 

「はぁ……♡」

 

 くそだりぃなぁ、カゾクって。

 おにぃの服でも嗅ごうっと♡

 ストレス発散したいから許してね、おにぃ♡

 

 






 次回、ゲーム側小噺集。
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