メインストーリー…3体の怪物を主軸に置きつつ、最終決戦まで確実に行く為の道筋。別にパワープレイでぶっ殺してもいいが、このストーリーに従えば確実に会えるし弱体化も出来る。現在プレイヤー達の手によって進行中。他と比べれば可もなく不可もなくといった所。
他のプレイヤーの状況…山本のサーバーでは現在、二つの都市に協力体制を結ばせてる最中である。山本が一切団体行動を取らず個人プレイに走っているので全然出会えてないが、本来は普段オフラインでありながらもプレイヤーの力を継いだコマが繋がりを感じさせ、要所で同じ進行度のプレイヤー同士で同期しオンラインで協力する事になる。
山本は全くメインを進めてないので協力とか夢のまた夢。いい加減最初の村を出てキーラ大森林冒険して生きて帰ってこい。
サーバーによって島の情勢や選べるメイン種族が変わる為、プレイスタイルの棲み分けは自然と行われている。
「………」
(ならばビリデス、明日までに魔法を私に見せなさい。さすればお前の旅立ちを許そう)
「はーい!」
そういうことになった。
「明日までに魔法を見せれば村から出てもいい…かぁ」
あの後村長に村から出たいと言った俺だが、そこで出された難題が魔法を使ってみろという本末転倒なものだった。
兎人でも使える魔法を調べる為に外に出たいのに、外に出るには魔法を使えないと意味がない。つまり独学でやってみろという話である。
「ふふん。だけどここは森の中。ズルをする為の素材には困らないんだよねぇ──深煙流 心得 斬り難きを斬れれば、無手は無刀にあらず…なんちゃって」
フラッタの時に真面目に研究してて良かったよね。
初見なら魔法が使えるユニークを取れてれば…! って悔やし涙を流す場面だっただろうが、俺は既に2回もこのゲームで…やり直し…コンテニュー…転生? そう、転生した!
慣れてる人はアバターを2つ潰した程度で何を粋がっていると思うかもだが、突破出来るんだから別にいいだろ?
「………?」
ズッ…ズサ。
「よっ…と! 痛みなく、己の死も悟らせず刃を入れるのは骨が折れそうだったけど…おかげで素材は集まった! これ、魔法というよりアイテム使いのやる事だけど、言い換えれば魔道具だからセーフセーフ!」
魔法を見せろって話なら、自分が使わなくたって良いじゃない。
という訳で耳を剣に見立てて魔物の首狩りをしつつ、各種素材をポポイと集めてきた。
俺はまだ身体の構造が人より兎より。首狩り兎にしてはデカくないか? という文句は受け付けないよ。
「でも力が貧弱で一太刀で終わらなかったからなぁ…この戦い方はこの辺りでしか通用しなさそうだね」
深煙流は全てを刀に捧げてこそ。魔法を目指す今回の俺では振るう資格がないのだろう。
とはいえ序盤の戦闘を楽に進められるなら使ってなんぼ。おかげで錬金は出来そうである。
問題はこれが運営が想定した通りかって点だが……。
「…微妙。繰り返して手にした力だから大枠では合ってそうだけど、私の力だけじゃないのが…」
ローグライクだし運営の想定通りではあるだろう。
しかし村長が望んだ光景かは……これってかなり屁理屈だよな?
魔法を見せろと言われて魔道具持ってくるのは絶対に想定解ではない。もう少し真っ当な手法も取り入れた方が高得点になりそうだ。同じ屁理屈でもマシなものにしたいね。
「という訳で…用意したのがこの鍵と契約書!」
なので錬金と深煙流はあくまで俺が魔法を得る為の手段にする事にした。
先ずは銀の鍵。銀の錠前もセットであるぞ。爪で軽く弾くとよく響くんだ。
次にサインすると魂が裂けるとアイテム説明欄に書いてあった悪魔の契約書。使うとすごく痛い。
どっちも錬金で出来る経由アイテムだ。
以上だ。
はい、プランA「魂の半分鍵に移してみようぜ」作戦!
「ドンドンぱふぱふー」
説明しよう、フラッタの時の妖精との契約が反応しないかな〜とか、魂移せばワンチャンサドンデスから一回リスポン出来るようにならんかな〜とか。
そんな感じの作戦である。プランBと比べると完全ネタ枠だ。
「つまりおふさげ半分の儀式でございまーす」
上手いこと何処にでも繋がる鍵を作れないかな〜とかも考えてるが、上手くいけば残機になる算段である。
フラッタの時に構築した仮説に仮説重ねるような夢見がちな手法だが、まぁ初回くらい景気付けにロマン全振り作戦でもいいだろう。理論が合っていれば、失敗しても鍵がこの島の南にあるっていう迷宮に飛ばされるだけだろうし。
という訳でホイ!
ボッ──!!
はい爆発。知ってた。恒例行事。
「けほ…ふぅ、普通に失敗したし体を弄るかぁ」
ん?……なんか後ろで俺を見ていたAIが何処かに行ったな…まぁいいや。想定通りなら迷宮の隅にでも佇んでいることだろうし、焦る必要もない。
実用面でも俺は生きたままログアウトしたことないし。知能が上がった所でどれだけ恩恵があるか知らないからな。
遊びはこの辺りにしておいて真面目にやろう。
錬金で用意した各種道具を並べて、顔を固定して──ッシ!
「グッ──ガァ!!」
俺は自分の眼に魔石の刃で魔法陣を刻んでいく。当然痛覚弄れないからすごく痛い。
けどコレが1番可能性があるやり方なんだよな。麻酔をやると手元が鈍るから出来ないし。
という訳でプランB「魔眼を錬金しようぜ」作戦だ。
これは本命だから失敗したら俺がすごく悲しくなります。
「オォ"……ギッ!」
さて、俺が苦労して魔眼を作ってる最中に解説でもしようか。
このゲームで魔法を扱うには魔石と触媒が必要だ。
ガソリンと車みたいな関係だな。この辺りの設定はフレーバーに終わらず、魔物に魔法を使えなくするテクにも繋がる実利がある。
検査の結果兎人はどっちも存在しないから、自力で魔法を使うなら両方を身体に仕込む必要があった。単に取り込むだけだと魔物に変わってしまうが…それを誤魔化すやり方には覚えがあるんだ。
具体的には妖精の身体を研究した知見が、肉体の一部だけ変えれば良いじゃんって言ったのよ。
脳とのレスポンスにラグがなく、魔道具でありながら自分自身の力と言えるもの……そうだね、魔眼だね。
「ヒュー……後は包帯巻いて一晩放置か。あー痛かった。おかげで涙が止まらないね」
本当なら眼球の素材に魔法を込めるスクロール系のレシピなのだが、そこは他のレシピも参考に恒常性を持たせた。
魔力を探る、集める、解放する。仕組みとしては魔石と全く同じ。違いは俺を魔物にしないことだけ。後は眼としても使えるってとこかな。
お外で錬金するのはフラッタの時に散々やったし、即興で目的のものを作るのは慣れてますからね、余裕が違いますよ。
というか魔石の効果くらい他に移せないと錬金術師はやっていけません。初歩から半歩飛び出しただからねこれ。だからこそこんな環境でも出来ると踏んだ訳でけど。
「豚で実験した時は此処から何系統か派生を作ったけど……痛いし環境悪いしまた今度。今日は集落でゆっくりしましょ」
両方の眼を加工したから何も見えないしな。うん、片目だけにしとけば良かった。
という訳で音を頼りに余った素材を狩りの成果として集落に投げつつ横になり時間をスキップ。ぼうっとしてたら一瞬で時間が過ぎるのってこういう時便利だよな。腹が空いた時だけ起きればいいもん。
…そうか、コマ扱いだから腹が空くんだな今の俺。それなら風呂とかも気を遣っておくかぁ。
「……お、感覚戻った」
時間になったので包帯を解き、お目目をパチクリ。周りの兎がなにやら警戒しているが仕方ない。
魔眼は瞳孔が仄かに光ってるからな。昼間でも薄暗い洞窟の中じゃあ目立つことだろう。
俺の視界だと大変明るいけどね。魔力が見えるようになったから視界が騒がしいのなんの。光量調整なんて出来ないから眼を閉じてもずっと眩しいねぇ。
「やっほー村長。約束通り魔法を使うから、ちゃんと見ててね」
ちょっと暑いけど魔術師らしくローブを羽織って杖を片手に魔眼に溜まった魔力を解放すれば、杖先に付けた誘引素材に集っていく。
使う現象はとてもシンプル。
勝手に一点集中された魔力が極小の魔力溜まりを生成します。
妖精が生まれます。
魔法と言い張ります。
以上!
「はい、妖精召喚〜」
「「キャハハハ!!」」
「はい、小瓶で確保〜」
コンコンコン!
妖精に暴れられても困るのでさっさと魔力絶縁体で作った小瓶にしまう。中から抗議の壁叩きをされているが、別に死にはしないからスルーだ。
仕組みとしては魔法というより魔力を使った手品だが、妖精が産まれる様子はまるで召喚したように見える事だろう。
俺の(魔眼から解放された)魔力で、杖先に(勝手に)魔力が集まり、妖精が
これが俺的に村長の想定を考慮し今出来る範疇で頑張った結果だ。やっぱり屁理屈なのに変わりないが、よりそれっぽくなったと自負している。これで認められないなら脱柵だな。
「それでどう? どう? 言われた通り魔法を使ったし、もう旅に出てもいいよね!」
「………」
(はぁ……仕方ない。何処へなりとも行くがいい、ビリデス)
「ありがとう村長〜! それじゃあまたねー。良いお土産見つけたらこの子達に送らせとくわー」
村長は結構柔軟であらせられるらしい。俺は小瓶を軽く振りながら洞窟を後にした。
ふぅ良かった…父と母の兎が誰か見分け付かないからそこの許可を取れとか言われたら詰んでいた。独り立ちが早い種族で良かったねぇ。
「……ん? そういえばクエストが見えなきゃ、この後どうすればいいか分からないんじゃ?」
それから暫くぴょんぴょんしていると、肝心な事に気付いてしまった。
そうだよ、俺はメインクエストが村から出ろって言ってたから出ただけで、この後何をすれば良いか特に分かってないんだった。
「ネット検索はログアウト必須だし…調べる間もこっちは動いてるからなぁ。なによりゲームは初見でやりたい……」
……仕方ない。今回はメインストーリーを追うのは諦めて魔法を修めていこう。
アレだよ、ローグライクで理想のビルドを目指す奴。余計な能力はこそぎ落としつつ、コンボを決めて暴れ散らすのだ。
でも魔物は前回散々狩ったし……そうだなぁ、魔法…魔術師……先ずは魔法と魔術の違いを知る所から始めよう。今はヘルプもないし、学校に通いたい気分だね。
「なら都市に行こっか。確か都市選択でヘーグイを選んだ気もするし、先ずはそこだなぁ」
ジャンプしていく内にズレた背中の杖を背負い直し、そこら辺に実っていたリンゴっぽいのを齧りながら先に進む。
どっちが都市なのかは魔力の流れを見ればすぐに分かるから迷うことはない。大体都市から森の奥に流れるから、それを遡ればいいのだ。魔力は眩しいが、この辺りは便利だと思う。
「シャク……道中に街があったら良いなぁ。出来れば錬き──ッグ!?」
独り言をぽやぽや言っていると、喉が急に詰まる感覚に襲われた。
リンゴを喉に詰まらせたんじゃないぞ? この感覚は過去編でプレイヤー発言を検閲されたのと同じものなんだから。
つまり近くにコマかプレイヤーが居ることになる。
慌てて何処に居るか耳を澄ませてみれば……俺から見て前方左に魔物と戦っている奴がいた。
ほーん…魔力視より耳の方が先の情報を拾えると。やっぱり開眼したばかりならそんなものか。
「……助けない理由もないし、助けに行くかぁ」
聞いた感じだとゴブリンに取り囲まれており、剣のぶつかり合いも押され気味だ。
コマなら死んだらそれまでだしな。それは目覚めが悪い。
メインストーリーが分かればそっちを優先したのだろうが……今回は何も分からないし寄り道するとしよう。学校よりも人の命だ。
「さて…杖の嵌める石を火種にして、魔力の経路を弄れば……準備オッケー!」
所でこの杖は未完の杖という、意図的に錬金効果を受けやすくした未完シリーズのアイテムだ。
ナイフと素材があれば魔力の流れ方や組み込む素材も簡単に変えられる便利な杖だが、代わりに同じ錬金術師を相手にするとデクの棒になる。ステータスの補正とかもかなり安定しない。そして脆い。
しかし箸も赤子も使いよう。錬金術師がいなきゃちょっとの準備で状況に適したものになるマルチツールになるのが未完の利点である。
先ほどまでは集魔の杖と同じ効果だったが、今は火礫の杖と同じ効果。
その上オプションで周囲の魔力を集め勝手に発射される機能を付けた。
見た目はあまり変わらないのが不満だが、今の俺が魔術師らしくやるなら最高の杖という訳で…。
「飛び跳ねろ 火よ」
「「「「「ギギャァァア!!!?」」」」」
という訳でレザーアーマーを着た男性を取り囲むゴブリン5体に火をぶつけた。
本調子じゃなくても深煙流を学んだ奴が火を外すなんて真似はしない。無事にゴブリンは倒され、男は助かった。
「…おっ」
そして──相手がコマかどうか、俺は一目見て理解した。
[↓PC くろもち飛び三郎 job Lv.7/Lv.3]
「たっ助かっ……めっちゃめんこいうさちゃんおる!!」
おー、プレイヤーな上に死んでもリスポンする総合Lv.15以下じゃん。
なんだ、心配して損したぜ。でもコマはこうならないのにプレイヤーは表記されるんだな…もしや、コマの眼にはプレイヤーかどうかこうして見えてるのか?
まじかー…ちょっと意外な真実知れちゃったな。
「そんなに元気なら助ける必要は無かったかな? じゃあねー、ゴブリンはしっかり腰を落として横凪すれば上手く首を刎ねられるよー」
「あ、待って待って
────!一回撫でさし
てな! な!?──な? あ?」
「こんな感じでねー」
殺した。
許可なく人の耳触ったから縦に切った。シンエンじゃないから実際に切れてる訳じゃないが、そこは殺気による幻覚で補える。
そしたら困惑したまま身体が消えていくので、リスポンでもするのだろう。
「ここにはゴブリンしか居なかったねー。人間なら最低限感謝と自己紹介!
それから一言断りと許可を得てから人に触れるものでしょ?
こんことされたらぷんぷんしちゃうよ────己を顧みろ、下郎」
消えていくプレイヤーに注意を促しつつ、俺は都市に向かった。
ゲームでもこれVRだし、礼節くらい守って欲しいものだ。俺も不快にはなりたくないしな。
では気を取り直して──。
[↓PC zoon job Lv.9/Lv.5]
「三万でどう?」
「…三枚降ろしか」
[↓PC けれんぼー job Lv.1]
「撫」
「身の程を知れ」
[↓PC ( ´ ▽ ` ) job Lv.17/Lv.10]
「"仲間になれ"」
「頭の下げ方も知らない者は首を」
歩いて数日──。
やたらプレイヤーと遭遇しては切ったり燃やしたりしている内に都市に到着した。
今まで一人で遊んでたのが嘘みたいな遭遇率だな。これがコマの世界かぁ、大変なんだなぁコマも。セクハラ多すぎ、俺に話しかけるより先ずやる事がありそうな初心者多すぎって感じだ。レベル1なら先ず森でレベル上げして来い。
「……にしても、一人くらい初撃を流すと思ったんだけどなぁ?」
ユニークが有るんだから3回に1回は防がれると思ったんだけど……深煙流無しの魔法だぞ? 弱くない?
「……まいっか! そんな事より魔術師の本をさっがすんだ〜!」
先ずは古本屋にでも行って〜、それから──。
「203,060Gです」
「出来れば置いといて貰えますか? 夕方までに買いに来ますのでー!」
そして俺は半日で20万以上稼ぐことになった。
クエストの時間だぁ!
プレイヤー…目の前に可愛いコマが居たら先ずセクハラする連中は案外多い。夢の中で気が大きくなっているのもあるが、山本ほど現実感を持ってプレイしている方が少ないからだ。普通、夢と密接に関わるゲームをしたら現実感なんて普通の夢のように消える。明晰夢は意図的になれないのだ。
平均して10回。このゲームにログインした者は大抵そのくらいで夢の歩き方を身に付ける。