PC フラッタ 僧侶Lv.20/錬金術師Lv.15
能力傾向:完全に生産職
身体:3
技術:20
精神:52
アビリティ
【声の信奉】【錬丹学】【錬金術】【妖精魔法】【素材学】【物理学】【幾何学】【建築】【酒造り】【鉱石学】【植物学】【魔物学】
「祈りLv.8」「モンスターテイムLv.4」「指揮Lv.5」「農業Lv.3」「設計Lv.2」
現在時刻22:04
目覚まし 6:00
自動ログアウトまでおよそ 40日
アドバイス:寝過ぎです。1日6〜8時間の睡眠を心掛けましょう。
能力値…大枠に身体、技術、精神がありその中に生命力、攻撃力、防御力、技力、知力、信仰、神秘がある。能力値は職業のレベルと共に自動的に上がり、同時に自由に振り分けられるポイントが与えられる。
アビリティ…開祖を基準としたレベルがあり、レベルが上がる程補正が上がる。生産職においては補正の範疇で出来る物は過程を省略して製作出来、如何に戦闘が上手いプレイヤーが居るか、高度な製作能力のあるプレイヤーが居るかで全体の質、ゲームの快適さは変動する。
PAGの運営は特殊な民間軍事企業と規格外のテスターを引き入れる事で土台を築こうとしていた。
「あ、あの〜…なんで森の中に?」
恐る恐るいつの間にかリーダーに化けていたトーラちゃんに質問した。
クエストクリアは別に良いとして、それがどうしてこうなるのかが理解出来なかった。なに? 俺が空気読めてない感じ? 普通こうなるのか?
「フラッタ医、私はあなたのお陰で治るだけでなく、この呪いを祝福に変えて下さいました」
「あ、うん……そうなるね?」
なんか……いつの間にかトーラちゃん賢くなった?
あれかな、よく俺と話してたから知恵が付いたのかな。錬金と研究に集中していて気付かなかったけど、色々質問して来たような気がする。
「その上、我々はあなたのお陰で妖精という新たな隣人と、戦う力を手に入れました──都市ヘーグイに従わなくていいこの力が!」
「「「おおーー!!!」」」
「ぜ、前衛を用意する為のあれそれがなんでそうなるの…」
トーラちゃんの後ろで村長が感動し、村人がそうだそうだと声を張り上げている。
どうも都市に対する不満と俺に付き合って成長したのが合わさって森に住む選択を選んだようだ。
どうしよう、別に止める義理は無いけど死んだら目覚めが悪いぞ。
困った事に此処にいる全員がサブ職が無い影響か最低でもレベル20を超えてるし、敵になれば俺は一瞬でフルボッコのこてんぱんだ。
でも……俺は都市ヘーグイの公認錬金術師だ。お世話になった記憶は無くても、属してる以上その立場として立つ義務がある。
あれだ、風紀委員がどれだけやっかみを受けようと違反を指摘しないといけないのと同じだ。俺は小学校の時はそうしていた。お陰で俺を風紀委員にしない暗黙の了解がクラスに広まったがそれは兎も角……。
「……トーラちゃん、どうしても森に行く気ですか?」
トーラちゃんの所々褐色に変わった皮膚を見てそう言う。
かつて石化した部分だ。燃やされて炭化したのかは知らないが、石から肉に戻った部位はこうして浅黒いものに変わっていた。後遺症という奴だ。
正確にはまだ完治した訳じゃないが、見ていて痛ましく感じる。現時点で最高品質の丸薬を使ってもこれは治らなかった。布を持っても治らない辺り、一種の適応でもあるのだろうな。
「む、村の放棄は都市に対する反逆です……私は立場上、止めないといけません」
「……何故ですか?」
えっ何故って言った? 錬金術師だから……あ、まだ医者扱いなのか!
「ワタシは今まで医者と名乗ってましたが……正確には錬金術師なんです。都市ヘーグイに認められた錬金術師…なので」
俺は空気が読めない欠点を補う為に、ルールに対して真面目だからな。みんなが寝静まった時にストレージに入ってた法律本や公認錬金術師の役割は確認しているのよ。
その結果俺はキーラ森林の長期調査の為にこの村に訪れていたことが分かったりもした。その内報告に帰らないとな。
「
「……えぇ?」
これで納得しないのか…。
「此処に来る者は見捨てられたか、追われた者ばかり。フラッタ医もそうなのでは?」
普通に違うが……あれ、普通のプレイヤーは罪人や忌み人としてこの森に来るのか?
頭に疑問符を浮かべつつも俺は首を横に振り、ストレージの肥やしになっているバッチを胸に付けて立場を示した。
「……し、知らない仲ではないので教えますけど…ワタシは医者ではなく錬金術師です。都市ヘーグイに成果物を認められ、軍人として超法規的な権限を与えられています。この村に来たのも、キーラ森林の長期滞在調査の為です。
未調査の素材、食べられる植物の研究、それらを使った新たな錬金術のレシピ開発……あ、あなた達はワタシによく尽くしてくれましたよね…? その功績があれば、軍法第三条四項目の民間の集団的貢献に対する報酬規定に従い、税だって30年は取られずに済む筈。それだけの時間が有れば、この村を一つの街にだって出来る筈です……寧ろ、ワタシの方が何故と問いたいですね…」
俺が与えた力があればキーラ森林は災害だけじゃなく恵みだって齎してくれるし、森の最も近い街になれば扱いだってかなりの物になる筈だ。
そうなれば例え罪人や忌み人でも周りは過去を水に流してくれる筈。その可能性に向かわない理由が、俺には理解できなかった。普通文化人の生活は捨てないよな?
「フラッタ医が……"軍人"!?」
しかしトーラちゃんは俺の説得に興味は無かったようで、ただ俺が軍属であるという事実だけに着目した。
「軍人……」
「俺達の村から全部奪った奴ら…」
「俺に罪を被せた奴……」
「騙していたのか?」
それは他の村人にとってもそうなのか、困惑の意思は瞬く間に広がり、次第にその眼には敵意が宿り始めていた。合図一つあれば、きっと彼らは俺を襲い始める事だろう。つまり……キッカケ一つで流れか?
「──手を降ろすのですぞ、者共」
一触即発の空気が張り詰めてると俺が予想している時、間を割って入る声がした。
トーラちゃんの父である村長、出会った時に俺が錬金術師から医者と言い直すのをしっかり聞いている仲介者だった。
「父さん…?」
「フラッタさんに与えられた恩を忘れていないのなら、武器を降ろしなさい。これは世話になった相手に向けるべき物ではないのですぞ」
「……全員武器を降ろせ」
トーラちゃんが村人に指示して、そこで漸く村人達の武器が降ろされる。
良かった、彼らの武器も俺が新調したものばかりだから、襲われてたら間違いなく死んでいた。
「フラッタさん、申し訳ありません。ここまで手を尽くしてくれたのに武器を向けた非礼をお詫びします」
「べ、別に構いません……騙していたのはワタシですから」
「寛容な判断に感謝します」
村長はそう言って一礼し、トーラちゃんの方へ顔を向ける。
トーラちゃんはどこか気まずそうに、村長は達観した顔でお互い向き合っていた。
「知っていたのですか」
「秘密にすれば医者として振る舞うと言外に伝えられたが故に」
「私の為ですか」
「それ以外にあるか? 俺はお前のためならなんだってするって知っていただろう」
「…………」
トーラちゃんが複雑そうな顔をしてる中、俺もまた顔を悩んでいるものにしていた。
ふーむ…家族の話か。それなら俺が口を挟んじゃいけないし此処から離れるべきだな。こういうのは身内だけにするのが礼儀だろう。
そうだなぁ……いっそ機織りは諦めるか。嵩張るし、コマにストレージは無いし、ストレージあってもアレは仕舞えないし、後々此処に来て転がってたら拾い直そう。そろそろ戦果を持って帰って都市に報告するべき頃合いだ。
「ごく……《妖精、此処に立っていると誤魔化せ。コッソリとやるんだ》」
(《キャハハ、ハーイ!》)
歯に仕込んだ意通丹を飲み込み妖精に指示をする。
俺の姿を写した幻像を立たせ、俺自身は透明になるポーションを飲んでコソコソと逃げた。
どういう選択をするかは予想付かないけど、こうなったら俺がやる事は変わらない。
逃げて仕切り直し、都市から再出発して神の声を届けるアイテムを今度こそ創る……と行きたい所だが、それが運営の想定解か今一度考える必要があった。
「……ふぅ、逃げ延びた。これでもしもの事態は起きない。この後は……都市に行くか、それとも別の村に行くか…」
森の反対、チュートリアルを終えてゲームが始まった時に立っていた草原の茂みに隠れ、改めて次の行動を考える。
俺的には現実的には確実に目的を果たせる都市への帰還が良いと思うが、運営がそう考えてるとは限らないからだ。
「そ、僧侶としては改めて声を届ける方法を見つけたい。錬金術師としては都市で報告したい……だけど、此処から都市に戻るには足がない……行商人の馬車に乗らず来るなら、七日分の食料と道なき道を進み野宿する準備がいる……1週間かぁ」
俺が思うに、丁寧なゲームって楽な模範解答があるんだよ。このゲームはアビリティの開祖の仕様上初期が恐ろしく億劫だが、後からやればゲームらしく快適になる設計になっている。つまりテスターは絶対不便なんだ。
その事を考えれば大人しく地道に歩けってことだが、それは移動のストレスが凄まじい。ゲーム体験に欠けている。つまりパッと行ける方法がある訳だ。少なくとも、一度通った道はワープ出来るのが最近のゲームだ。
つまり何が言いたいかと言えば……。
「……めんどい」
コレである。
正直、生きるか死ぬかの1週間の旅というストレステストを前に俺は臆していた。バイトの範疇超えてるよ。何か行かない言い訳が欲しいね、何かないかな、運営の想定が歩かない方だったら良いな。
「……ワープ…翼…乗り物…ぼ、冒険でも通学でもないのに歩きたく無い…!」
アバターは兎も角俺は都市に行ったことがない。少なくとも孤児院をちょっとしか知らない。
移動に便利な飛べるアイテムやワープは鳥系の魔物を倒せてない時点で創れる見込みがなさそう。
魔物とのバトルがあって楽しみがある森は兎も角、何も無い虚無い道を歩くのは嫌だ。
でも一昔前のゲームなら馬車を手にする前は普通に歩いて街を渡ってたよな……でもVRだぞぉ? 前提が違うよ前提が。
「《キャハハ! バレた! バレた! でも追ってない! 追ってない!》」
そうして茂みでヤダヤダと俺が駄々を捏ねていた頃、幻覚を見せる為に留まっていた妖精が俺の元に帰ってきた。俺に着いて行くと言った唯一の子。大多数の妖精は鮮やかな髪色だが、この子は地味な茶髪の子だ。それが妖精的には奇妙に映るらしく、いつも仲間外れだと語っていた。
「《おかえり。お疲れ様》」
妖精の大半はトーラに、それから他の村人についた。俺は妖精的に女男だからブサイクらしい。アバターと現実の齟齬のせいかぁ…悲しいね。
はぁ〜妖精は良いよなお空飛べるし……そうじゃん妖精の魔法がワンチャンあるじゃん!
だが今は村の方だ。丹の効果が残ってる内に聞き出そう。レシピ創りは言葉がなくても出来る。
「《……ふむ、バレたが追われてない…? 彼らはなんと言っていた》」
「《森に行く! 村に残る! 言葉別れた! キャハハ、喧嘩ケンカ! フラッタ、もう眼中にない! あっという間に私と同じ扱い! カワイソウ、カワイソウ!》」
「《……力を与えて気紛れに去った妖精か。はは、言い得て妙だな》」
妖精の言葉に苦笑いする。気紛れに恩恵や被害を与える者という意味では、俺はコマにとって妖精とさして変わらないと感じたからだ。
「《それとアイツラ、ぎぃぱたを持ってる方がセイギだって! キャハハ、おっかしいの!》」
「《機織りがある方が正当性がある…という意味か? どうあれ大事にしてくれるならそれでいいか。ありがとう、お礼にクッキーをやる》」
「《わーい! ウマイ! ウマイ!》」
サクサク食べてる妖精を連れて次の村を探す。
正当性ねぇ…誰に言い訳しているのか知らないが、どうもあの後の公開は見ていて気分が悪くなりそうな顛末を迎えたらしい。
「《しかし…ふむ》」
「《どした──ハハ?」
「……丹の効果が切れた。あー…
「
「……かもね」
意通丹はあると便利だが、それはそれとして薬は取り過ぎれば毒だ。常用していい物では無い。村人と殆どの妖精はやろうとしなかったが、俺とこの妖精だけはこの村での生活でお互いの言葉をちょっとだけ話せるようになっていた。なんだか似た者同士特有の親近感を感じる。
いや、魔物にも個体差を作るゲーム側がすごいだけか?
「もしかしたら…ほ、本当に過ぎてたのかも?」
それにしても一ヶ月滞在したにしては呆気ない幕切れだ。
村人と過ごし、トーラちゃんを治し、妖精と出会い……1日がまるで1時間で過ぎ去ったような感覚だ。まるで予めやりたい事を決めておいて、殆どの時間をゲーム側が代わりにやったみたいな感覚。
夢現に過ごしたように研究の時以外意識が飛んでいた気がする。夢の代わりにやるゲームだから当然と言えば当然なのだろうか。
「……ヘルプが欲しいなぁ。用語と仕様の解説が乗った奴。送っておこう」
テスターとして改善案を送り出しつつ、俺は妖精と共に無心で草原を進む覚悟を決め────る直前にその場を飛び退いた。
──ズゥン。
遅れて先ほどまで居た場所に「何か」が降り注いだ。
土煙に紛れ急いで草むらに潜んで土で身体を隠し、周囲の匂いと同化する同香丹で気配を誤魔化した。
「妖精、意識逸らし」
「
妖精は知識と魔力さえあれば大抵の魔法を扱える種族だ。辛抱強く概念を覚えさせ、魔物の心臓から取れる魔石を砕いた粉を降り掛ければ痒い所に届くようになる。なのでヘイトを晒す魔法を行使させた。
そしていざという時の為に身体にトレントボアの要素を付け足す「植亥丹:B」を取り出し……じっとする。
妖精はあくまでも補助が最も適している種族。攻撃には向かず、そして回復を捨て逃げ足も遅い生産職に出来ることは一つだけ。即ち隠れる事のみ。
俺は魔女っぽい冷静な演技をしつつ、妖精はいつも通りニコニコ笑いながら俺の胸辺りでうつ伏せになった。
「「…………」」
相手は突然空から降ってきた……と思う。俺を狙ったものじゃない事を祈っておこう。
ここは森の近くだ。何が来てもおかしくはないし、死んでも甘んじて受け入れる準備をしなければならない。
……緊急時に備え、自分の命を使い切る錬金術を準備もした。錬金術師が生涯一度限り行使出来る、ストレージの全アイテムも対価にして自分の実力から一歩先の物を創る錬金法。
「────"ホシヲミヨ"」
次第に煙が晴れ、襲撃者の正体が露わになった。
鉄でも青銅でもないステンレスを思わせるも何かが違う金属の鎧、幾何学的な光が走る剣、黄色の点滅をしているバイザー──総じた評価、SFからの刺客。
「……な、なんで」
もっと言うなら……
確か夢を守る傭兵企業の制式装備……うん、勝てない。文明のレベルが違う。
「ワ、ワタシよりアイツ…空気読めてなくない?」
ファンタジーなんだからやめようぜそんな現実の最新兵器を再現してみたとか。テスターは配信者じゃないんだぞ。
だから頼むぅ〜! 絶対テスターだよねそのまま森に行ってくれぇ〜! 生産系のユニークを利用したのか知らないけどローグライクなんてPK上等なんだからこっち見られたら終わる〜ゥ!
──ピン。
その時、相手のバイザーから何か感知したような音が鳴った。
あ、バレたわ。こっちに振り向いてないけど"もう視られた"。
「ッ!!」
理解と同時に反射的に避け、俺が隠れていた場所が文字通り"消滅"した。
ひぇぇ〜光線銃だぁ! 全部終わったら今はテストプレイだから良いけど発売までには能力に制限掛けるよう報告してやる!
「──交渉余地は」
「ナイ」
はい、交渉決裂PK上等マンです。予想してたのでこれは空気読めた判定としますやったー。
そう思わないとやってられない。まだ僧侶としてのテストプレイが出来てないんだぞこっちは!
「"ヒセイヲミアゲヨ"」
機械的な声と共に相手の持つ銃に赤い光が宿った。
あ、俺これ知ってる。CMであなたの夢を守る数多を翔ける天の川の流れ星〜って言われてた奴だ。
つまり散弾モード。ただの僧侶に容赦無くて涙が出そうだよ。
「け、けど……火属性なら対策があるんですよ」
「!!」
ばさりとストレージから取り出したマントをカポーテのように翻し、火を包み閉じ込める。
あ、そうだ。それ竈の代わりになりそうだな。
「紅くて綺麗な布でしょう? "常秋の呪い"──ワタシが成果物を持ち帰ればいずれ祝福と呼ばれるようになる力で織った布です。治療に付随して出来た副産物ですが、火を集め閉じ込めたり出来ます」
材料は常秋の呪いに掛かった魔物の命を最低三つ。作り方は
「──"ミズホシジシン"」
今度はとても振動している圧縮水が放たれた。相手の動きを見てタイミング良く素材を取り出して無力化する。
コォ────ン
「ハッ!? クソッ──」
いや……正確には大量の水と振動を与えられて成長した化物花が相手を足止めしてるのだが。
森にあった洞窟を探索している時に偶然拾った花だが中々良い仕事をする。種を神の囁きの振動感知部分に採用するだけの力があると見事証明したな。
「……フフ、流石水と振動だけで繁殖してた地底植物。ダメで元々だったけど、あの一瞬で超振動高水圧弾すら食べ切れるなんて…その内厄介な魔物になりそうね、この子」
ローグライク醍醐味、用途が限定的な変な効果持ちのアイテムだ。ストレージに入る辺り体組織の殆どが鉱石に近い花。過剰に栄養を与えれば現代の超人兵士相手に足止めすら出来るとは。
「ッシ、倒した──」
「そ、その鎧はすごいけど……構造以外で何の耐性も付与されてないアイテムだよね?」
「…動けねぇ!」
「……第一大原則、錬金中に伴う素材の停止現象。戦闘において完成された錬金術は、対策してない相手を拘束する技になる……代わりにダメージは与えられないけど、全身鎧にはよく効く現象」
花は倒されたが、異物の彼を中心に錬金術の場を構築出来た。
錬金には大釜やフラスコやビーカーといった化学用品があると楽に出来るが、別に品質に拘らなければ素材を盛大にばら撒くだけで出来る。今回はそれを利用して活路を見出す事にしてみた。
「あ、安心して? ワタシも錬金をこのまま放置することは出来ない。専用の準備が無い分、命を代用にしてるから、そんな事をすればあっという間にお婆ちゃんになっちゃう」
「……テスターの癖にコマと話してる気分になるな、お前は」
「そ、そういう君は……よく見たらちょっぴり偉そう。誰かを率いるリーダーの眼だ」
「はっ……よく見てるな、その通りだ。気分が良いから解放されたら直ぐ殺してやるよ」
「し、知ってるよ……戦士である君の鎧を剥いだ所で、ワタシを殺すのに支障がないことは」
散弾の火力を収めた布の竈、鉱石としては最高級の現代兵器に使われる合金、錬金先の構造に関わる
最後に必要なのは──最善を尽くした99%を後押しする1%のひらめきだけ。
神の声を世界に届ける俺の努力の結晶の完成図を完璧に思い描くこと。
「キャハハハ!!」
「あ、ありがとう。後は……お願いね」
「──あ、おまっ!!」
それから、死んでも構わないように都市に渡すべきものを持っていく運び手だ。
行くのが面倒なら配達させれば良いじゃ無いってね。
妖精は知識さえあれば魔法として使える。それはプレイヤーがデフォで持っているストレージも対象だった。それを土煙が晴れるまでに思い出した俺は、今に至るまで大量の魔石と共に妖精に都市に渡したい全ての成果と情報を譲る作業を行っていた。
そして今、配送したいアイテムの選択が終わった所である。
「……よ、妖精は小さく、速く、隠れられると誰にも見つけられない。例えワタシが殺されようと、どこかに足跡は残る。鎧を失った君には追えない」
「小癪なマネを…!」
これで後願の憂いは断った。俺は安心して最後の錬金術に励める。
創り出すならかくそれを残すのが難しかったからな。別に都市に全部運べなくてもいい。色んな街に宿を借りる代わりに俺のメモでも残してくれれば後に繋がる。
さて、晴れ舞台だ。
「すぅ──今からあなたの財貨を再構築する! それを冥府の手土産にさせて貰おう!
"
そして完成した品は此処に現れる事はない。
錬丹を応用した期限無制限の焼き待ち時間、地下深くに繋げ星の圧力で圧縮させる座標ずらし製造、このアバターに蓄積された情報をアイテムの回路に変える機能配合……アイテムの仕組みは単純に、だけど学び得た全てを使って全力で。
いつか神の声が世界に届くように、俺は己の全てを燃やし尽くした。
[DATA LOST──キャラクターが死亡しました]
[初回終了に伴い別種族と所属都市の選択が可能になりました]
[緊急大規模メンテナンス中の為、再ログインは行えません。メンテナンス終了は約十日後です]
[それまではログインしても通常の睡眠と同様に処理しますので、ご了承ください]
「平瀬、ちょっといいかな」
「……? ど、どうしたんですか…山本先輩」
「ほら、今度の劇で平瀬って魔女役だろ? それで声が張れないって悩んでたじゃん。それについて俺なりにアドバイスしたくてさ」
「は……はぁ…?」
その後、平瀬はこれまでとは見違えて劇の悪役として素晴らしい演技をする事が出来た。
自分を変えたくて演劇部に入ったらしいので、その手伝いが出来てとても良かったと思う。まぁ、振る舞いと声を借りた代金を払ったようなものだから一概に良いこととは言えないが。
平瀬からも何故かお礼を言われたし……当初の目的はちょっとだけ達成出来たということにしよう。
「これは……喜んでいい雰囲気か?」
……どうも空気読みはまだまだ全然の様だな。
そこはこれから頑張っていくとしよう。テスターしつつ、空気読みつつだ。
「いやぁしかし…人の声を勝手に借りるのはマズった気がするなぁ」
ちょっとモヤった俺の眼には、見上げた青空は少しだけ霞んで見えた。
PAG新聞見出し
・声の錬金術師、運営のお仕置き用処刑キャラの鎧と銃を行方不明にする暴挙と共に消滅。
・森に逃亡した村人と妖精の潜伏によりデリート困難。いっそ自分達が思い付き組み込んだ歴史として処理。上司と部下、世界観が深まる良いアイディアと成果だとお褒めの言葉を預かる。
・空気読み深刻。運営の想定に一切従わず。平瀬からいい先輩という評価をいただくも山本気付かず。