前回のあらすじ
おい、デュエルしろよ。(身内争い)
伝説って? ああ!(神々の争い)
「「完璧な手札だ…!」」(もらい事故)
「それはどういう…」
「誰かが助けるのはどんなやり方でも"1つ"……だ」
「……ミコ殿?」
「だから……3人では3つしか未来を使わない……僕は零落してようと地母神を本気で殺す気で槍を生み出した……刺されてそれが分かったんだろ?」
「……はい」
……絶望が漂い始める。
「では……どうすれば?」
「分からねー。もう一度魔性を使えば一発で分かるだろうが、今度こそ僕は人には戻れねーだろうし……僕はそれでもいいが、二満月のキャリアに傷が付く」
「何故そこで儂の名が…?」
「人に戻れたのは二満月が技を使わせてくれたからだ。それを無為に出来るほど……けど……でもやれる事が……僕はどうすれば……」
阿佐美が恩と命、ここ至るまでの自分のやらかしへの後悔に蹲る。
……どれだけ取り繕おうと、元は友人一人作るのすら出来なかった影の者。
追い詰められた末に彼女はその頃の自分に戻っていた。皮肉にも、「魔性」を宿して1番本来の人間性を取り戻した瞬間でもあった。
「そこの泥は見れるか? 元が同じならば活路も見える筈じゃろう」
『……ムリ、その槍は、わえを、殺す為のもの。わえの眼には"詰み"しか、映らぬ』
「そうか……そうか……」
出来る事がない。助からない。
「○○が助けたから助かる」という大きな枠組みで30コの未来が死に繋がられている以上、リスナーに聞く事も、ここで地上に戻ったりビブラの医療を受けるのも対象内だろう。
30。
なんの変哲もない数字が、なんとも重く、分厚く立ち塞がる。
それだけしか塞げないのではない。それだけ塞げば十分確殺出来るという数字。
人の悪意に神の力が合わさったそれは、今も着実に……バイアクヘーと共に山本の身体から血を零させていた。
「死な……死なないでくれ……君が居なくなったら、僕は、僕はどうすれば……」
阿佐美がバイアクヘーの手を握る。
血の気が引いて青ざめた阿佐美よりも冷たく、白い。
雪のようであり、山のような絵の具が被さってるサマはキャンバスのようでもあった。
「……手段」
『手段?』
「塞いでる枠組みは手段か? それとも展開か?
手段ならば人も物もありったけ試そう。されど展開ならば……無理だが」
柳田が知恵を振り絞る。
阿佐美に聞きたい事は二つ、未来の塞ぎ方が大枠なのは分かった。ならばどういう塞ぎ方をしているかで活路は変わる。
誰かが助けた……は人を道具と見做せば手段だ。それなら30人以上用意すれば誰かが助けられる。地上に戻りプレイヤーを阿佐美のユニークで見つけ、試していけばいずれ治せる。地上に戻って治療する方針に活路を見い出せる。
代わりに展開であれば……ポーション、手術、応急手当てによる回復、泥による再出産、幸運や奇跡、祈り、自力……使えるものはグッと狭まり、不可能になる。
そして阿佐美が出した答えは。
「……両方だ。展開を塞ぎ、同時に手段も塞ぐ。二つの壁で未来を一網打尽にするのがこの槍だ」
「塞ぐ順番は」
「上から順に。最も高い可能性から選ばれる」
より深く、3人を絶望に叩き込む答えだった。
果たしてどれだけ確実に泥を殺し、或いは山本を助けたかったのか。柳田は思わずそう問いただしたくなるほどこの槍の力は凄まじかった。
「……あー…では泥よ、奴とまた一体となり欠落を補完するのは?」
『きみの、想像通り、無理。補完しようとしても肉が溶け、血が流れ、わえも纏めて、死ぬだけ』
「……呪い極まれりか」
3人、内二人は万能なのに何も出来ず観ているしかない。無為に時間が過ぎていく。
バイアクヘーも次第に苦しむ声を弱め、衰弱していく。
かつて誰かが台本に定めた通りに破綻し破れた関係のほつれが、誤解は解けた。
なのにその先の、既に誰の手も入ってない未来は余白が広がっている。
死は避けられない。
では詰みかと言えば。
(──それで? 誰も動かない以上俺が動くべき場面だと思うんだけど、ここからどう振る舞うのが1番空気が読めて……いや、"俺が1番やりたい事"だろうね)
思考を止めない限り、絶対とは言い切れないものだ。
(阿佐美はこんな感じのことを言っていたね。自分が望む周りとの関係をどうしたいか、結論から逆算して過程を作れ。つまり帰納法、考え方は演劇部でも学んだ事だ。うーん…バイアクヘー、【夢物語】で防ごうとしたけど普通に失敗しちゃったんだよね。これってもしや俺も役任せにせず協力すべき所だったんじゃないの? ふーん、つまりまた空気を読めず失敗したってことか、しょげるわ……)
ぐりんと眼を目一杯動かし周囲を見渡す。それはもう大変キモい光景だったのだが皆は眼を伏せて思考の袋小路に入って気付いていない。
つまり、頼りには成らない。そもそも阿佐美達が自分の口で手出しできないと言っているのだ。ならば自力でなんとかしてみるしかないだろう。
(聞いた感じいつもはやらない方法をやれば良いんでしょ? よし、それなら先ずは俺に乗っかっている絵の具を使ってみよう。丁度今も絵の具で風穴の傷口を塞いでいるし、なんだかコレはまだ未完成な気がする。
そうだなー……絵は解釈次第とも言うし、槍の効果も同じだよね。だったら三十死説、"何処までが俺で何処までお前の効果が及ぶのか"試してみよう。先ずはコレ、現状ゲームのアカウントと紐ついてるのは俺なんだけど、これを
図らずの成果だが、山本は既に自分の隣にいる役を絵の具に移すのに成功している。
だったら出来るだろう、役の絵の具移しは。そしてアカウントがどちらも舞台の上に立つ主役から離れていて、役者としても存在の格も何もかも同じなのが山本とバイアクヘーだ。違いは制作されて何年選手かというだけで、見た目だって元は同じ存在で同じ特技だし似たような存在……ゲーム側が一卵性の兄弟姉妹で同じアカウントを共有出来る仕組みなら、この場での譲渡も然程難しくはない。
なのでこの考えは成功するだろう。
「"ぐ…げん"…」
「……!? 絵の具が急に──!?」
「……ちょっと不完全な見た目だけど、アカウントも手元にあるし、記憶も何もかもほぼ同じ存在……これって成功?」
"だって、バイアクヘーがこうなる事を見越し、絵の具の奥に自分の姿絵を描き上げているのだから"。
「やっほ、バイアクヘー"は"戻ったよ。ただいま二人とも」
(……ふぅむ、俺の人格と風穴空いた身体以外は助かったけど、俺は助かってないな。どうしようか)
先に言っておくと山本はバカである。
【夢物語】がちゃんとした絵じゃないと具現化出来ない事を忘れて今の作戦を実行したし、バイアクヘーがこれまで絵の中に役を封じる手助けを影ながらしていた事にも気付いて無かった。
自分とほぼ同じなら誰よりも自分を蹴落としに来るという発想を思い付いて無かったし、このまま山本のフリをしてログアウトすれば周りからは一切中身が交代したと気づかれないことも考えに及んで無かった。
「助か…えっ助かった…? のか?」
「なんとかなりました」
「バイアクヘー……いやバイアクヘーなのだろうが……ん? いやまだこっち息しとるよな……ん? なんか分裂しとらんか?」
「あっちは別の役ですね」
(そうだ、そもそも風穴空いてようが特に問題のない身体になればいいのか。あーでも、問題は俺が自力で助かるのは封じられているだろうから……)
というか、自分をほぼコピーした役を作った自覚すら未だに持っていない。シラフで振る舞いながら別の役をやるのがそういう事だと認識すらしてなかった。まぁ、ちゃんと演じないと自己複製するとは普通思うまい。致し方なし。
つまりバイアクヘーは山本の100倍賢く思い通りに場の流れを利用したのだが、この際そこは置いておこう。問題は未だ考えを止めてない山本である。ここで色々悟って諦め止まっていればただ主役が
("この場でAIの壁打ちをします")
バイアクヘーがアカウントを持って行く際に危険分子として置いていったバイアクヘー用の簡単AI──ありとあらゆるものを持っていかれた結果バカの山本でもそこにあるのに気が付いた物を使う事にした。
とはいえここで人格を生やし別人にして助けて貰うには山本の時間が足りない。ではどうするか。
("「神の声」を完成させる最後のピースとして加工します")
1つ、フラッタが命と引き換えに産み出した「神の声」は"海"の中を漂いじっくり製造している最中である。ここは復元もされず泥が産んだ子供に囲われただけの海の中である。海は不安定な空間であり、一瞬なら縁を辿り物理的距離を無視して"触れるくらい"は出来る。
2つ、山本はAIの壁打ちが上手い。設定上でも実際にやって学んだ経験でも、名実ともに自分が望んだ通りにAIを育てる力を持つ。未だに完成してない神の声を完成させる最後のピースを雰囲気で創れるくらい訳がない────なんて事はなく、これは普通に失敗する。台本で成功が確定されてなければそんな奇跡何度も起こせる訳がないのだ。大事なのはAIを届けようと神の声を呼び寄せた事である。
(よしコレで良いでしょ。おーい、神の声やーい、カモーン……ん? なんか入って──)
……3つ、これは山本が想定してない事だったが、今の山本は被っているゲームアバターも次第に溶けていってるくらい存在が消えかかっていた。「未来を都合よく解決していく役」すらも降ろされた今の彼は最早何者でもなく、唯一残っている人格も未設定の空欄だらけの空っぽだ。
しかし何もない訳ではなく、殆ど空っぽな器は有った。
それこそ器だけが足りなかった存在にとっては大変都合が良く、"触れれば"そのまますっぽりと入るくらいに。
「どうする? なんか怪しいけど聞いた感じ本人なんだが……」
「違和感はあるのう。しかし記憶は合っている。ならばあっちの死にかけは精神の抜け殻と考えるのが妥当じゃろう」
『……後遺症?』
「それ1番僕が苦しむ事になる事実だな」
[おー…なんか助かった]
『「「「!?」」」』
故に誰しも想定していなかった、31つ目の活路は通った。
「神の声」が「縁のある山本が呼び出した事で衝突事故を起こし」て「合体に怪我が無くなる」という、そんな偶然も必然も合ってたまるかと言いたくなる方法で。
「…………諦めなって、そこは」
『……厄介』
バイアクヘーが筆を、泥がぶわりと己を巨大化させる。
[私も助かった所で……どうしますか? バイアクヘー、泥の方。現実の俺の身体は一つ、3人揃って纏まることが出来ればいいんですが、どうもそうしたくないご様子だ]
コキコキと首を鳴らし、山本は自分の身体を確認し……それがフラッタに、オラクルによく似た黒髪の人間の姿である事を認めると、それ相応の振る舞いで対応する。
もう既に夢の世界とはいえ、電脳的でも
「……泥の方、一旦渡されたそれを返す気は?」
『わえは……勝った方にチケットを渡す』
「力を返す気はないし、片方は受け入れないと」
『一つの役に、二人も要らない。ログアウト権を持つ、バイアクヘーと協力すれば、終わりだけど……わえは慈悲深い。手出ししなければ静観する』
「山本、私に譲る気は?」
[うーん……肉体のホストを決める戦いが始まってるって事でいいですか?]
山本、情報量で3周遅れである。仮にも演劇の主役を張っておいてなんとも言えない状態であった。バイアクヘーは全て言うかどうか迷ったが……流石に話が通じなきゃ戦いも何もないので正直に説明する事にした。
「……私は「演劇」がないと存在を保てない。泥はログアウトしないと現実に行けない。私は主役じゃなくてもいい。だから私と泥は協力できる。だけど……山本はこれまで主役を張った実績と正当性があり、「演劇」を泥から奪い返せるだけの力がある。だからサドンデスをする。OK?」
すると山本はふむと頷きこう言った。
[なるほど。よく分かんなかったので身体と立場を譲るって事でいいですか?]
「アホバカマヌケ何考えてんのおバカ」
しかし山本、説明の半分も理解出来なかった為自ら勝負する資格なしと痛恨の譲渡を決行!
あんまりな選択にバイアクヘーも思わず筆をしまってビンタをかました!
阿佐美と柳田と泥、この状況に困惑のまま棒立ちとなる!
「思考回路は分かるよ!? でも理解度が高い方がやるべきとか考えなくていいの! 自分の身体は大事でしょ!?」
[丁度現実でも女性の身体ですし収まりが良くないですか? それよりビブラの人達を助けに行きましょう。話はそれからです]
「執着とかないんか?」
[それにほら──あなたの方が"山本らしい"]
その言葉にバイアクヘーの言葉が詰まる。
確かに、「山本」は山本・イイノリではなく彼の都合が良いように未来を操作する為産み出された役だ。そこに山本・イイノリの再現度は問われておらず、だからこそ彼は別人と看做された。
しかしバイアクヘーは違う。「山本」がシラフの振る舞いとして山本・イイノリらしく演じた事で創られた、演劇の事も山本イイノリの顛末も全て我が身の事として把握している……バイアクヘーと名付けられなければ過去に死んだ山本・イイノリが呼び出されていたくらい在り方が近い。
だからこそ彼女は主役を奪い自分の身体に思えて仕方ない山本・イイノリの身体を手に入れようと画策していた訳なのだが……だからこそ、目の前の「山本」が自分の都合の良いように創られた存在として、罪悪感も抱いていた。
「それは……そうなんだけどさ」
[でしょう? ではビブラをなんとか出来る人を連れ出しましょう。私の事情より、そっちの方が重要です]
「……そうだけどさぁ…あー…クソ…」
山本はそういった背景を把握していたとかとても言えないが……「都合のいい未来にする山本」として振る舞って来たサガとして、いつも通り周りのために動く事にした。
だってここは199F、時間差はビブラ側とそう大した違いは無いとはいえ、それでも目と鼻の先なのだから喧嘩をするならそっちの方が時間を使わない。
そんな大したことない考えで催促したが、そんな振る舞いが理想的な自己犠牲に見える事も事実。
『待て、この先、まだ環境整えてない』
[あーそうでしたね。ではお願いします]
先を行く山本に泥はササッと先行し、阿佐美と柳田は自分達が何か言う事では無いと気不味そうな顔でバイアクヘーの横を通り過ぎる。
「……自分がやった訳じゃないけど、ホント業が深い産物だね。バカなのもそうしないとやらないような突飛な事を台本に書いた結果だし……譲られるなんて嫌だけど、都合が良いから断れない……あー…気持ち悪い」
それを眺めていたバイアクヘーは、結局自分がこの提案に断る言葉はないと着いて行く事にした。
よって、その後に選択の余地はなし。事態は決着と成る。
『じゃあ、道を創るよ』
[お願いします、泥の方]
『……わえ、泥じゃなくてシュブ=ニグラス』
[ではお願いします。ニグさん]
『……まぁ、それでいい』
その後の顛末を話すとしよう。
「……ふぁぁ?」
「……ううん…おにぃ?」
「おはようエーコ、ヨメネ。体調はどう?」
「長い夢を見ていた気分…だけどさー」
「誰ですかあなた。私たちの兄ではないですよね?」
「知ってるー? おにぃは頭の代わりに花を咲かせてるんだよ? 見た感じ観客席にも居ないしー…事情、説明してくれなきゃ」
「あー…やっぱり分かる? まぁそうか、二人は私が「山本」になった後しか知らないもんな」
先ず、ビブラの商品トラブルはその後無事に1日を待たずに解決した。
世間は様々な反応とこれからの責任の追及をするのに忙しくなるだろうが、ビブラの人達は海底都市で過ごしていた記憶を全て破棄して復帰。
捨てた情報がネットの海の8割を占領し大迷宮として鎮座する事になったけど、人々は長い夢を見ていた感覚だけを残して特に後遺症もなく現実に帰還する事となる。
「……おかえりなさい! パパ、ママ。私が誰か分かる?」
「イイノ…! いや違うな。おいパチモン、自分が限りなく近い別物と分かっているなら、サッサと本人に譲れ。お前は息子が遺した「理想の自分役」じゃないだろう。台本が終わったのなら、その内側に居る奴と一緒に何処かに消えろ」
「あー…」
「あなた、言い過ぎ。ごめんなさいねぇ、家族でもない人にそこまで言うのは失礼だもの。でも邪魔だからどこかに行ってくれる? 死者にチケットを渡すくらいその力なら余裕でしょ? やらなきゃ私達も家族の為に全力であなたを殺さないといけなくなるし……ああ、その前に脅して催促するのが先よね!」
「おっとー…」
「あなた、やっちゃってー!」
「ああ……久々だな?──他人の精神を舞台に戦争劇をやるのは」
「──よし逃げよう、ニグさん手伝って!」
『よいぞ──"産まれよ"』
ただ……夢の世界の影響で女となり成長した山本イイノリの身体を手に入れたバイアクヘーは、家に居場所を無くしてしまった。
山本程ではなくても元は同じだからだろうか、彼女は自分の家族が全員「演劇」を持つ超人一家で、山本・イイノリはその中でも弱い方なのを忘れていたらしい。
幸いニグラスがまだ彼女のなかに居たから生き延びられたが……これからずっと会う人全員を警戒して過ごす日々が待っているだろう。だって彼女は架空の存在、演劇無しでは成り立たない。
「演劇」の力をかつて死んだ山本・イイノリに渡さない限り終わらないのだから、彼女の命もごく僅かだろう。
『こんにちは、日本政府』
「これはこれは、あなたの事はミコミコchで把握しております。よくぞおいでくださいました」
『わえは人類と協力したい。だから意見の擦り合わせをしよう』
「勿論。あなたの力も既に確認しておりますし──既に研究や活用したいと連絡が来た企業があります。どこがどういう集団か解説しますので、一緒にコレからを決めていきましょう」
『うむ──期待しておるぞ?』
そして泥の方もといシュブ=ニグラスという神は、山本一家からバイアクヘーを逃した後日本政府の門を叩いた。
改めて現実でちゃんとした身体を作って、頭が良くなった彼女がどんな選択をするかは……完全に彼女次第だけど、きっと悪く無い関係になるだろう。
「──よう視聴者諸君☆ 完全に「魔性」の制御を覚えてシラフで配信が出来るようになったミコミコちゃんだぜ! 昨日は配信してなかったけど、元気に待ってたかよ?」
[-夥しい量のコメント-]
「よーし全員元気みたいでよろしい! 色々大変だったけど、変わらないようで僕も一安心だ」
[-果てしなく愛を叫ぶコメント欄-]
「PAG? いやー流石に僕は懲りたさ。もうやんねー。ああだけど、PA社はこの件で謝罪してお詫びに夢の世界関連を初めに全技術を世界に公開させられたみたいだし……今の僕は他の企業が作ったこれ! 夢の世界に行かせない事だけに特化した奴を使う事にしたんだ。心を身体のあるべき所にがキャッチコピーのFC社製の奴。
いいだろ、今日発売された最新モデルだぜ? 普通の夢は見れるみたいだし、体感速度も現実と等倍速だ」
[-大量の自分も買ったという宣言コメント-]
「ありがとう、ありがとう。宣伝大使としちゃ嬉しい事言ってくれるぜ。
──それより聞いたかよ、ドーイラ島が別会社の管轄になるって話。ああ別にまたあそこに行く訳じゃねー。ただ、あんな大冒険した所がどうなるかは気になるだろ?
なんでも、宇宙採掘の大企業、最近出来たベンジャーの中でも伸び良く大手に並んだUniverse Mining社。通称UM社だ。そう、名前から分かる通り2文字の席に座る歴とした大企業だぜ? 普段耳にしねーけどな。
いやーロマンあるよなー! だって宇宙だぜ? 実体が太陽系の各惑星から貴重な元素を集めるだけだとしても、そんな企業が今度は夢の世界を根こそぎ掻っ攫う!
──しかも、民間から採掘員を募集予定って噂だ。僕はいかねーが、何処を掘るかは想像付くぜ? 僕らが200Fまで到達し、ビブラの海底都市まで繋げた道。コレからは「坑道」と呼ばれるだろう唯一の道を通って、夢の世界の海底岩盤に……ネットの8割を占領し不可侵と化した「ビブラダンジョン」を、玉石諸共掘り尽くすんだろうよ」
阿佐美は相変わらず日本が誇る世界一の配信者を続けている。
もうドーイラ島に降り立つ気はないみたいだが、あの冒険と呼ぶにはかなりグダってた時の経験で、今までよりもずっとリラックスして配信出来るようになったのは朗報だろう。
視聴者も変わった阿佐美を受け入れてるし、彼女達の関係はこれからも続きそうである。
「……いつでも良いから絶対顔出せよな、山本」
配信が終わった後パソコンを前にそんな事を言っていたけど、それは大した問題じゃないよね。
「──で、どうなったんだい?」
「そうじゃのう…奴はそのまま何処かへ行ってしまったよ。儂らが止める暇もなくな」
「はぁ……最後に会った山本は僕好みだったんだけどね。死んでしまったのは残念だ」
「いやいや、死んどらんて。儂らがコレからの人生、再び会えるは分からんというだけじゃ」
「それは死んだのと変わらないよ。人生で二度と会えないなら、それは僕の中の彼が止まるのと同義さ」
「……まぁ、身体を手にしたバイアクヘーの方は家族に追い出され何処かに消えたそうじゃしな。言えてる事ではあるか」
「まあまあ…あの人のことですしどこかで元気にやってますよ、部長、柳田さん。もしかしたら夢の世界でひょっこり会えるかもじゃないですか」
「「…………」」
「な、なんですか二人揃って黙って」
「いやぁ……」
「居ないと寂しいが、また会いたいかと言われれば…なぁ?」
「良いかい平瀬君、何処かで元気にやってるのを見てる分にはこっちも微笑ましいんだけどね……アレが居ると何が起きるか分からないから」
「儂も将来安泰の名誉を得たが、また奴に巻き込まれるのはごめんじゃ。やはり平和が1番よ」
「ふ、二人とも……そんな事言ったら酷いですよぉ…!」
色々と怪しい場面はあったものの、柳田は無事将来の仕事には困らないだけの名誉を得た。
多様な技と最後に冷静に状況を整理していたのが良かったらしい。実力はまだまだだが、有望株として顧客の眼には叶ったのは幸いである。
演劇部の方もビリデスの件から山本が居なくても回るようになっていたし、山本が通っていた学校は彼が居なくなっても特に変わり映えなく日常を過ごしている。
「ただいまー……おーい、せんぱーい? 居ますかー?」
ピピピ。
[おかえり。二人はどうだった?]
「二人とも先輩が居なくても平気みたいです。信用されてるんですね、先輩。元気にやってるだろうって意見が一致してました」
[だろうねって感じの答えだね]
そして山本もとい俺は、夢の世界と電脳空間を自由に行き来できる珍種として今日も元気に後輩のノートパソコンを住処としている。
なんでこんな所に人に言われるかも知れないが……だって仕方ないじゃん、地上に上がる途中で迷子になって彷徨ってる内に見覚えある顔があったんだから。
平瀬もいいよって言ってくれたしありがたく住まいとして利用している。ありがたい優しさだよほんと。
「それで先輩、どうしたら人間に戻れるかわかりました?」
[あーそれね。考えたんだけどやっぱ「ビブラダンジョン」が1番可能性がありそうかなって]
「やっぱり……先輩、今度こそ死んじゃいそうすし私は反対なんですけど……」
優しいなぁ平瀬は。ちょっと部活で関わっただけの奴の命を心配するなんて。
でもね、俺は責任はちゃんと果たすべきだって思うから、ここは空気を読まず押し通らせて貰うよ。
[ダメだと言っても俺は行くよ。妹達はどうも過去に死んだ山本・イイノリじゃなくて、俺を取り戻す為にバイアクヘーを探しているし……それでゴタゴタしても仕方ないし、俺は生身を得て二人の側に居てやらないと]
「はい、演劇の力ですよね。それがあればどんな人も自分の中に呼び寄せられるって……ひう、考えただけで怖い……」
[それに妹達の舞台に招かれて話し合って約束したからね。ホント、人によって舞台の飾りや椅子の座り心地が違うって始めて知ったよ]
あれはビックリしたなぁ……突然意識が引っ張られて気づけばドールハウスみたいな舞台に居たんだから。エーコの舞台ってあんな窮屈そうな舞台なんだね。何でもかんでも糸に縛られてて不気味だったし、なにか悩みでもあるのかも知れない。
[人外の身で人と約束する。いやー…忘れてたよね、お陰で絶対生身になって戻らないといけなくなった]
《山本一家は「山本」を舞台に招かない代わりに俺は絶対に生身になって帰る》。
ニグラスが言ってた人と行う約束の効力を人外側で味わう事になるとは思わなかったが、お陰で暇な俺にもやるべき事ができたのでトントンだろう。
どうも最近は何かをやるべきか分からなくなってたからな、人はやっぱり生きる目標がなきゃダメだと実感させられた。
にしてもこの姿で直接会いに行っちゃダメだったのかな。なんか端から会えない前提で約束結ばされたけど、そこら辺あっちは把握してたんだろうか。まぁいっか俺が頑張ればいいだけだし。
「バイオやクローンとか、その技術じゃ難しいですか」
[どうも半分夢の世界の物で出来てるのがダメっぽい。普通のお肉じゃ適合出来ずに死んで終わり。ニグラスさんの力は……今は大企業が管理してるから、許可を貰って現実に帰っても、妹達を支える暇は中々作れないだろうね]
色々と話したが、よーするに超常的な技術の一つや二つが必要だってことだ。
そして都合がいい事にそんな技術が眠ってそうな夢とネットが融合したダンジョンがある。
それが「ビブラダンジョン」。
妹達も長年閉じ込められた完全ブラックボックス。
事態の収集が着いた頃にはネットにドンと鎮座していた謎の真っ黒オブジェは、世界各地のハッカーが調べた感じビブラで起こったことの全ての記録なんだそうだ。
だったら行くっきゃないだろ、丁度都合がいい事に今の俺は電脳空間と夢の世界の素材を合わせたハイブリッド珍種なんだから。同じく電脳と夢が合体してるダンジョンと相性は良い筈だ。
[平瀬は期待して待っててね! 絶対に住まいを提供してくれた分は返すから!]
「いやー私はあなたが生きてたらそれでー……」
[えい、えい、おー!]
「あー…お、おー!」
という訳で、俺となんでもありの島はお互い姿を変えつつも再び関わる事になる。
もう空気読みがどうこうの領域を超えてしまったが、俺的にはその辺は阿佐美のアドバイスを実践して頑張りたい所存だ。
ただ、舞台を失った俺は果たしてどんな
なので俺はこのダンジョンで、俺なりの役割を見つけようと思う。
──山本の挑戦は、こんな所で終わらないのだから!
[*固有能力【
色々と周りに問題を残しつつも、山本が抱えていた空気読みの問題は無事に決着。
なのでこの話はここでおしまい────とコレまではやってましたが、今回ばかりはそうは行きません。
何故なら山本の奴が全然他の人を深掘りせずにガンガン進めやがったからです。
ドーイラ島で全て出す筈がいきなりラスダンからの最短経路のクリア。急ぎ足の話にしない手筈なのにRTAをかまされました。
なのでここで第一部完として此処からは第二部の延長戦です。丁度人との話し合いから逃げられない身体になったのでビブラダンジョンとか置いといてヒロインの攻略をして貰います。
ここからはゲームや冒険ではなく、帰った後のコミュがメインです。
山本……私もね、これまでサーシャ達のその後やシールとアリスの恋愛譚といった展開を話の綺麗さの為に泣く泣くお蔵入りにしてきましたが……始めてですよ、私をここまでさせたクソボケは……テメェだけは逃さんぞ……お前だけは……。