サブタイトル…前者が人の視点。後者がゲーム側の視点になっている。あなたは従ってもいいし、従わなくてもいい。
「コイツらか」
阿佐美が防衛庁に連絡した翌日、彼女の手元には原因と思われる情報の痕跡と交戦履歴、そして捕獲した旨を伝えるメールが1通届いていた。
「思ったんだが、コイツらが爆破すると宇宙人が来て、世界が夢か電脳か知らねーが8割方混ざると異世界な訳だろ?」
コツコツと爪を立てて肘掛けを叩く。
既に阿佐美が籠絡した連中の口証によって全体の数も把握し、各所に設置された電脳夢交路切削孔……「爆弾」も既に解体している最中。
全くもって現実は創作のように悪者の作戦が成功する程甘くないと言わんばかりの状況が進んでいる最中の事である。
「そうですねぇ」
「初手防げばなにも問題ねーじゃねーかなんだよ脅かせやがって」
「けど、最悪の事態を想定し記録したからこそ阿佐美さんも動いた訳ですよね」
「それを言われちゃ何も言えねーな。訂正するぜ、僕が防災の基本を忘れてたってな」
素晴らしきは権力とそれを簡単に動かせる人当たりの良さだろう。それからほんのちょっとした未来の知識。
この組み合わせで大抵の人災は防げるものだ。それこそが集団の強みであり、未来の知識の反則性である。
「あーでも、異世界はこれで防げたとしても宇宙人は確定ですよ。ビブラダンジョンは電脳と夢の混ざり物。条件が正しければそこに突撃する筈ですね」
「それこそ問題ねーよ無策であそこで生き残れなきゃ僕らが相手をするまでもねーんだから」
しかしビブラダンジョンはそこにあるだけで宇宙人の突撃ポイントになる。これはもうダンジョンの構成要素から避けられない事態だ。
果たして宇宙船がロケットなのかワープ有りなのかはたまた次元移動なのか分からないが、その日が来たらそれ相応の何かが絶対に起きるだろう。
ロケットなら地面か人工衛星に激突し、ワープならそこはダンジョンの中。次元移動で漸く安全に降り立てるといった所か。
「んで、無事来れたとして外に待ってるのはうん千万年分が積み重なったビブラの残骸。それが天然の防壁になると思えば、結構余裕あると思うんだよな」
どうあれ電脳と夢の世界を目印してるならそれ相応の知能と技術はあると踏まえて良いだろう。
バイアクヘーが淡く期待しているような、宇宙人が自分達の知らないうちに重力でぺしゃんことかには成り得ないのだ。
どの道相対するのは確定。ならば多少は向こうの戦力が削れるだろう環境が整っている方がいい。
「それにイイノリはニグラスに近いって言ってただろ? だったら御せると思うんだよな。僕一人で殺す一歩前くらいは行けたし、ちゃんと戦力整えれば行けそうじゃねーの?」
「そう簡単にいきますかねぇ?」
果たしてこれを余裕と言うべきか、はたまた油断慢心と言うべきか。
連絡した翌日に解決の見通しが立ったのを確認してそんな事を言い出した阿佐美に対し、バイアクヘーは彼女の思惑通りに行くか訝しみながらも、特に新しい対策の提案もないので黙る事にした。
「要するになにを言いたいかと言えばだ──勝ったな! ガハハ! 余裕のよっちゃんだったぜ!」
「うーん……大丈夫かなぁ……」
「だって似てるっていうニグラスがこっち側なんだぜ? そりゃあ対策も容易だろ。わっはっは」
笑っている様子を見ているとフラグが立ってる最中のようで不安がますます増えていくが、だからと言って再三考えても国が働き掛けている現状より良い方法が思い付く訳でもない。
或いは自分の舞台にその宇宙人の知識等を招いて思惑やできる事を吐かせるという手もあるが……ニグラスのような神様クラスは招くだけでもかなりリスクが大きい。
バイアクヘーはPAGの迷宮101Fに落下してすぐ、山本がその空間の主を招こうとして身体が溶けて死にかけたのを忘れてないのだ。可能ならアレと同じ事が起きるのは勘弁願いたい。
現実で同じことをが出来るほど、バイアクヘーは向こうみずな性格では無かった。
「……でも、ダンジョンにかぁ」
準備は万全だ。それでも不安に感じるのは、その降り立つ場所が自分の作り手である山本が足
どうにもバッタリ出会って騙されてホイホイと現実に案内する……なんて想像が、バイアクヘーの中でみょんみょんと耐えず主張せずにはいられない。
どうか無事で有りますように。
そんな事を願いつつ、バイアクヘーは舞台を使い熟す為の日課訓練を始めるのだった。
[ビブラダンジョンからの成果物…ビブラダンジョンは海底都市ビブラであった際の全てで構築されている。その為その成果物は人類が扱い易いように完成されているものが多く、取れるものも多岐に渡る。
一例)
・DP…海底都市ビブラで流通していた通貨の決定版。DMPを元に造られており、ビブラから採掘出来るものはコレをエネルギーに使って稼働する。何処からでも取れる。
・夢の種…食べると色んな感情の味がして人間性が回復する。ビブラにおける基本的な精神安定剤であり、この種を実らせる木は街路樹として最も海底都市で繁栄した。
・アプリ…現実のものと違い、魔術と電脳の掛け合わせて出来た物の総称。一時的に自身を別存在に置換させる、能力を上げる、架空物質を生成する。戦闘用から日用のものまで様々。
・ペット…アプリの一つ。夢の世界の存在として生き物を創造し、命令出来る。山本は人間っぽい生き物が入ったペットを持っており、これを肉体にする方針だった。
・鍵…海底都市ビブラはいずれ来る救助の為に初期区画だけでなく、増加した人口の全てを下へ押し込め拡張していった。より加速した領域、より早く増えていく人類。指数関数的に掘り進められた先になにがあるのか、最低限の救助だけ済ませた山本達には分からない。分かるのは、その先が混沌と異文化に満ちたものである事だけ。「鍵」とは、稀に初期区画から回収出来る、封じられた深層へ向かう為の使い捨てキーだ]
「……──という訳で、ここでは下の居る者ほど、上より劣る身分なんだ」
『………なるほど』
阿佐美が笑いバイアクヘーが不安を抱えていた頃、ビブラダンジョンの深層、奥の奥の、そのまた奥の底にある祖に人類の名を刻まれた者達の都市の、1番下。
錆まみれのパイプとタンクがあちこちに繋がり、その間にトタンの屋根を持つ小屋がスラムの様に敷き詰められた底の街、巨大な穴を囲んで構成された街の端の、隕石が屋根にめり込んでる一つの家で、噂の宇宙人は現地民から情報を提供されていた。
『一旦まとめよう。此処は地を掘り「都市」を拡張する「バスの階」。
そこから上に行くにつれてバリトン、テノール、アルト、メッゾ、ソプラノと階級が続く』
「おう。そんで「都市」は掘った物を「黒天」に捧げ、代わりに空気やテックとかの色々な必需品や便利な物が落ちてくる。その循環で発展して、いつか一つの「音符」として完成すれば「譜面」の仲間入りが出来る」
『最後に沢山の子供と資材を掘り進め出来た奈落に落として仲間入り。時間差を利用して指数関数的に得られる資材で永遠の繁栄を……か。よくもまぁ……利益だけでこんな大規模で不平等なサイクルを築き上げたものだ』
宇宙人が粘性の身体を震わせて嘆く。
彼の種族は宇宙連合の中でも幸福権には頓着しない方だ。
そもそも種族として母体と種の差があり、種は各惑星に向かって発射されその地に根付き繁栄する。
そんな大規模で原始的な生態な物だから、自分の生きたいように生きるという願念には余り縁がない。種族全体の為に母体が他の惑星間を移動可能な文明や種族と擦り合わせして何処に種を植えていいかまで決める。
何処までも規定的で機械的な在り方なのが彼……〈泥花惑星〉という種族の在り方だ。
『仕組みは理解した。俺らの酸性と粘度を変える言語を翻訳出来る辺り、オタクらは宇宙に進出してないだけで相当な技術と文明を持ってるんだろう』
「おう! 百均で治療用人間化光線銃とかあるしな! 仮に心や身体が変形しても一発だ!」
『だが倫理観はゼロだ。この惑星に文明がないと誤解した俺らも悪いが、あるかも分からない宇宙人対策で文明の光や痕跡を隠蔽して俺みたいな奴をこんな異空間に打ち込む連中はかなりイカれてる』
同種族内での奉仕種族と上位種族の関係。これは自分達もそうだから別にいい。繁殖目的と利益目的とこの構造にする必要性はかなり違うが。
だが普通ワープ技術まで拓けば宇宙に進出する所を「もしかしたら自分達より発展した連中が居るかも知れない」という妄想だけで近場だけで取り止め、夢やら電脳やらと別次元の方向に発展するのは種族全体で被害妄想を抱えているとしか思えなかった。
『クソっなんだこの星は……どうやったら脳の記憶整理に過ぎない睡眠がこんな時間の捻れた異空間に繋がるきっかけになるなんて確信持って発展出来んだよ……普通金が集まらんだろうが』
「そこら辺は俺も知らねえなあ。かれこれ俺らからすればこの「無限採掘計画」は始まって943億5007万3999年は経ってるらしいし、そんな前の記録は何処にもないぜ?」
『だろうな。俺としちゃ正確な年月が出てくるだけでも驚きだわ』
同時に、そんなに掘り進められた穴の底に落とされた自分が地上に出るのがどれだけ絶望的かもよくよく理解させられた。
異空間という幾らでも資源を回収できる場所。そして自身のような外からの脅威を封じる領域。
原始的な質量と暴力は宇宙スケールの直下掘り空間で餓死を狙い、理性的なら既存の社会に馴染む楽な道を選ばせる。
全体構造の知識とどれだけ掘ったか分かる時間だけ正確に伝わってるのは諦めさせる為のものか。
狂気的ながらも、確かに此処には合理的な防衛システムとしての機能が備わっているのは認めざるおえないだろう。
『よし、諦めるか。幸い此処には擬似太陽もあるし、馴れればいい場所だろ』
「なはは! じゃあ明日から俺と一緒に採掘するか? アンタのできる事を聞いてからやりたい事があ──」
──ッゴン!
そうしてこれだけ文明的なら異次元に住むのも悪くないかと妥協しようとした時、外の方で何かが落ちた様な低い破壊音が二人が居る家を震わせた。
「なんだ!?」
『外に出よう。……もしかしたら、俺を確認しに来た奴かも知れん』
「えっ!? じゃあ……まさか、ソプラノの人か!?」
『どうだろうな──もっと上かも知れんぞ?』
どうしてそんな事が起きたか。上の階を構成する床材が点検不足で落ちたのでもなければ、心当たりは一つだけ。
〈泥花惑星〉の彼は現地民の身体にマフラーのように巻き付き、二人揃って落下したものを確認しに行った。
「あれは……」
[──あー、あー、マイクテストーマイクテストー。うんうん、波の調子は本日も良好のようで何より。さてさてマーカーを辿って来てみたけど……ここ、深層の中でも底よりちょっと上のとこじゃん。へー、こんな所に落ちるなんて、宇宙人はジメっとした所が好きなのかね?]
『……大当たりだな?』
落下地点には、ジジジと身体にノイズを走らせた、女性にも男性にも聴こえる声で独り言を呟く姿があった。
ツルハシにも鎌にも見える得物を携え、背丈に合わない大きな緑のローブ羽織り、人のそれとは違う異質な気配を持つ存在。
[おや……あらー、人間が居るじゃん。で、ヒーローマフラーって感じに首に居るのが探し者と。どーもー、宇宙飛行中に見かけた時よりちっちゃくなってますけど元気ですかー?]
上位者。
そんな言葉をあてがうのに相応しい、超然とした……見えている位置が安定しない相手。
その上宇宙から来た存在を見ていた事を隠しもしない立ち振る舞い。
地上に住む者だと断定するには十分の材料だった。
[おやだんまり。困ったねー、会話してくれないと生殺与奪をこっちで決める必要があるんだけど]
「……っアンタはだ──ッ!?」
『どうした!?』
思わず誰か尋ねた青年に突然重圧が掛かり膝をつく。
しかし宇宙人には何も感じてないようだ。
『お前さん、何をした』
[……ん? ああ、身分も弁えず話しかけたから頭を下げさせただけですよ、お客様。ご不快ならこの通りほいっと]
「っハァー! ハァァ! ハァー!」
[私は別にどうでもいいですが、上の者に対し無礼な真似をすると殺されるのが普通な所ですからねぇ。変な成功体験を与えても宜しくないですし、ご理解下さいませ]
指先一つくるりと回し、青年が重圧から解放される。
止められた呼吸を取り戻した青年を見て宇宙人の彼も冷や汗をかくも、それはそんな様子を気にも止めず彼に語りかけた。
[さて、会話が成り立つ方ならば此処に居させるのはご無礼ですね。然るべき場所へ案内致しますので、どうぞ此方のガラスケースにお入りください]
『ハッ…ここじゃお客様を実験動物と同じ扱いにするのが普通なのか?』
[それは申し訳ない。信用出来ないならこの場で殺して良いと決定しておりますので、これでも譲歩した結果なのです]
彼の皮肉に、それが本気で申し訳無さそうに答えた。
酷い対応だと思うかも知れないが、それが言っている事は事実である。
接触前に阿佐美を経由して国の命令が来た以上想定より相手の戦力が低そうに見えても、それの独断で対応を変える事は出来なかった。
『とんだ歓迎だな』
[コチラも太陽系の一つや二つは一撃で破壊する相手を想定しておりましたので、ご容赦を。本当なら相手の戦力を削り切ってから交渉するつもりでしたので……]
想定戦力に対してその手段を取れるだけの物を用意してなければ出ない強気の交渉である。
種である彼自体が環境侵略兵器も同然な身としては、侮られ無ければ竿無しになる恐怖の判断だった。
『想定より弱い相手の対応マニュアルは無いってか?』
[いえ、隠し持ってそうなので其方で対応してますね。それでどうしますか? 入って外交の席に着くか、此処を火の海にするかの二択ですが]
『そうだなぁ……』
そう言って彼が青年の首元から離れ──宣言する。
『やだね。その態度が気に入らない』
〈泥花惑星〉の種の知性は高くないが、自由意志がある。
繁殖機能に特化した肉体があろうと、時に生存論理より個人的な感情を優先する性質を持つ。
それは彼らに他種族との協調性を持たせる利点があったが……ことこの場において。
[同行拒否を確認。敵性ありの為──"起動"]
数多の人を巻き込み自滅する要因になった。
カチッ。
この場に仕掛けられた爆弾が起動する。
──ゴォォォォオオオオ!!!
UM、GY社共同開発兵器。
夢の世界を砕き太陽内部直通のゲートを開く爆弾。
阿佐美のリークから急遽開発されたその試作品は、ビブラが抱えていた闇の一つ、深層の底を飲み込み、巨大な亀裂を形成。崩落を誘発。
崩落は上部に中継部として形成されていたを幾多も含むビブラ全域を飲み込み、採取出来たであろう計り知れぬ技術の発展の全てを犠牲にする事になった。
ザァァァ──pi.
海が膨れ上がり出来た雨の中、無機質な音が鳴る。
[対象の消滅を確認。同時にビブラダンジョンの崩壊も確認しました。代わりと言ってはなんですが、夢の世界に陸地が……中心に大きな湖がある地形の……カルデラ湖がある島が出来ましたね]
しかし、太陽から逆流した熱はマグマとして夢の世界の海に海底火山と同様の現象を誘発。
夢の世界全域を撹乱しつつも、海底二万mから海底を競り上げカルデラ湖のある島を形成。
これは夢の世界を調査する拠点として、或いは浮島であるドーイラ島をより安定させた物として使えるとして人の手が入る事になる。
同時に爆発に耐えたビブラの遺産が幾つも回収される事になり、その影響もあってかより開発は迅速に行われた。
[これで良かったのかね。もっと穏便に済ませられそうな気もしたんだけど……でも、国に頼んだからには俺がどうにか出来る所ないからなぁ]
交渉人が出来立ての島でゲリラを凌ぎつつそう呟くのも無理はない話だった。
或いはもっと時間を掛けて交渉人が国に無断で会ってたりして交流し、相手との友好を深め、宇宙人の実体をより具体的に人々に教えられれば話は違ったのだろうが……未知に対して潔癖症の様に恐怖するのが人類である以上、未来を阿佐美が知った時点で避けられない話だったのだろう。
フォー、フォー、フォーと、何処からか梟の鳴く声がする。
だからこそ、未来を知る者は口を閉ざされているのだ。
梟のように、夜のように、雪のように静かに口を閉ざせば、焦ってしまう事もない。
しかし人には難しい話だろう。自爆ボタンが視界の隅にあり、それを最後まで押さないのはかなり神経を使う事なのだから。
『フォー、フォー、フォー』
ぐるりと梟の首が回る。
森の三怪。大樹が燃え尽き、山羊が過去の自分に吸われても尚、最後まで倒される事の無かった落丁されるべき梟。
未来を知る鳥は愉快そうに、或いは不愉快そうに久方ぶりにその声を鳴らし、月を背に飛び立つのだった。
舞台崩壊。これにてなんでもありの宴は終わりにて。
ああでもどうか。
終わりたいなら、梟の羽は拾わぬように。
エンド──E
トータルリザルト
・人類滅亡阻止──☑︎
・森の三怪────☑︎☑︎◻︎
・恋人を創る───◻︎◻︎◻︎
・ゲームクリア──☑︎◻︎◻︎
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評価……散体しろ
・歴史の書き手のアドバイス
確かに恋人を創ると人類滅亡に近付くことになるので怯えるのは分かるが、放っておくと物理的に爆発するのでちゃんと踏み込もう。向こうから来るのを待ってると遅いので、例え空気が読めなくても唇を頂く勢いで迫るのが肝心だ。
……とはいえ、ビブラ人類以外は助かり宇宙に潜む脅威も発見された。数ある可能性でこの未来はかなり明るい方ではあるだろう。望むならこのまま終わっても良い筈だ。君は山本・イイノリではないのだし、世界に対し最善を尽くしてやる義理はない。……まぁ、山本・イイノリはそんな義理もなくやったのだがぁー…。
その上で提示するならば。
[*コンテニュー?]
「・羽を拾う
・羽を拾わない 」
「→羽を拾う ピッ
・羽を拾わない 」