Q.やり直し有りなの?
A.梟が生きている限り二部の初めからになるけど有り。今は神の声で出来た思念体だから装備もアイテムも全部引き継ぎでよし。
[ねー、平瀬って俺の事好きみたいだけどさ]
「ブッ!!!?」
突然のことだった。あの変人の先輩が急に私の核心をついて来たから。
え、は? なんですか急に。え? は、もしかしてこれまでずっと私が好きなの知っててそこに居たとか言いませんよね?
もしそうならすっごいクソボケ先輩なんですけど!? 私の乙女心がブレイクダンスしますよ!?
[俺らってデートの一つもしてない訳じゃん]
「あばっあばばばっあば」
[そんな驚く要素ある?]
「だっだだだって先輩ですよ!?」
[その反応はちょっとショックなんだけど]
えっ!!? 先輩が図星突かれてショックを!!??
明日は宇宙人の雨でも降りますよこれは!!??!?
[身体用意するから行こうぜ、夕方にデート。そしたらお互いのこともうちょい分かるし、これは良い提案だよね?]
「それは是非是非是非是非なんですど先輩どうしましたか風邪ですか!?」
[落ち着こうよ。それと風邪じゃない。単に俺を好きになった人にやってみたいことをしているだけだよ]
ウッ。
危なかった、急に私側の誤解でもなんでもなく純粋な好意で私とデートしたいと言われたかと思いました。
そんなことありませんよねもしそうなら私先輩の急な成長に尊死しちゃいますからね。死んでないってことは私の夢だったということ。はーちょっと残念だけど安心しました。
「先輩夢じゃ──あ、あれ? 居ない……あれぇ!? 時間がいつの間に2時間も経ってる!」
[ただいまー。じゃ、早速行こうか]
「夢じゃ──ない──!!?」
おかしいな、いつの間に世界は私に好都合に完成したのでしょう。
あ、でもあれだな──お化粧しなきゃ(キャパオーバー現実逃避)。
「よっほっ……とと。よーし、初めてだけど上手くいった」
そして時間は一瞬で30分が過ぎ、私はあまりの急展開にメイクアップをささっと済ませる事しか出来ませんでした。あまりに早過ぎます。なんですかあの青いジジジって光線は。あんな雑に人体錬成しちゃうのはチートですよもう。
でも…あれー? 先輩って身体を創る為にダンジョンにこれから行く筈で……もしやもう身体は材料を集めるだけだったりしたんですか?
「ごめんねー、ちんまくて。全身生身の方が良いかと思ったんだけど、その分スケールがちっちゃくなっちゃった」
「いえいえいえそんなそんなそんな」
「落ち着けー?」
そんな先輩は私より少し身長が低いくらいで、見た目は画面の中に居た時より少し幼くなった感じの、鮮やかな黒いセミロングの髪に、あどけない顔と小さなおててと手足の子供になってました。
身長は……147くらい? 私より10は低いでしょう。並んでるとなんだか妹が出来た気分になります。ほら、雰囲気顔似てますし。
「ほら、ちゃんと見る」
ほあ。
先輩が私の頬を掴んで眼を合わせて来ます。
青白く透き通った綺麗な黒眼。本当に出来立てほやほやの、なのに成熟してる矛盾を成立させた純粋な眼。それと、少し生々しい血の匂い。産まれたばかりの赤子のような、独特の、甘く
「俺は、俺だからね。平瀬、逃げちゃダメだよ」
……ずるい。
ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい……!!
そんな、そんな──そんな事言われたら私、もう!
「せんぱい、今ここで」
「…っぷは。だから──欲望に逃げるなって言ってるの」
コツンと先輩の顔が近付いて、額同士がぶつかりました。
──途端、頭と下半身に溜まった血が引いていきます。
「………!?」
一体なんの力でしょうか。冷静になった私は現状を理解しようとして……。
既にお互いキスをして、先輩から何かを口移しで食べさせられている事に気付きました。
「夢の種。ビブラダンジョンから取れる成果物の一つだよ。食べたら冷静になれるから、それで落ち着いてね」
はっえっはっ──ハッハッハッ(過呼吸)。
ハッハッハッハッ(犬の発情)。
ハーッハーッハーッハーッ(沸騰する頭を冷却中)。
「タイム」
「認める」
はい、先輩にタイムの許可を頂いたのでちょっと自分同士で作戦会議しましょう。
<まずですね、今日の先輩エッチ過ぎませんか?
はい良い事言った私その1。そうですね、今日の先輩はイケイケですね。男子3日会わざればなんとやらですが、いつの間にかあんなに心を成長させた先輩には肝どころか五臓六腑が抜かれました。
なによりそんな先輩が私を求めてるというのがエロい。もうね、たまんないですよこれ。
<このままじゃ私持ちませんよね。どうします? このままだと死者が出ますよ。
はいそっちも良い事言った私その2。その通り、このままじゃ私は踊り狂って死にます。
それはもう犬にチョコレート猫にまたたび私に先輩の誘いくらいに踊り狂って死にます。
今は先輩が口移しでくれた種のおかげで冷静さを保ってますが、これが無くなるのが私の命日です。
「普通に遊ぶんじゃダメなの?」
それは言わずもがなですよ私その3。普通に近くに居るだけで心臓が爆散するのに食べさせ合いとかショッピングなんてしてみなさいよ。
死者が出ますよ。
「でも自分から俺を誘ったりした時あったよね確か」
あの時とは違うんですよ! 今の先輩は…なんというか…ドエロいんです!
あの筋肉マシマシな姿もかっこよかったのですが、今の先輩は心がガラ空きと言いますか、心の色が見やすいと言いますか、率直に言えば"全裸"なんですよ。
そりゃあもう年頃の女子的に目に毒と言いますか、心の変化や姿がありありと見えてそれはもう……。
「先輩」
「どうしたの?」
「いつから私は自分の口からダダ漏れでしたか」
「私その1と言った辺りから」
「最初からららぁぁぁ〜あう〜ゥゥ!!」
「平瀬ってアレだね。かなりムッツリだし発狂しがちだよね」
なんですか豆腐メンタルって言いたいんですか。
その通りですよ。
「いっそ殺せ」
「なんで?」
「生き恥晒しすぎて生きていけません。殺して下さい」
「やだ」
あ〜^先輩のせいでサドロリに目覚める〜^。
ダメだ……すごいキモい思考になってる自覚がある…。
どうやら私は発狂したらしい。とてもまともに生きていける気がしない。きっと私はこのまま一生キモい陰キャとして蔑まられて生きていくのでしょう。
はぁ…淡い人生でした。でもこんなにあどけなくて白くも可愛い心の先輩に殺されるなら本望……。
「平瀬、俺は思うんだけどさ」
「なんですか」
「平瀬はどんな時でも可笑しいものは可笑しいって言えるじゃん」
「まぁ…はい。だからこそ今くっ殺になってるのですが」
「俺はそんな平瀬が好きだし、カッコいいと思う。平瀬は俺のこと先輩って言うけど、俺からしたらそんな平瀬の方が立派で、俺が学ぶべき人だと思うんだ」
……ああ、ダメですね。
いつもと逆で今日は私がずっと空気を読めてませんでした。
先輩のことより自分を優先して……反省しましょう。そして今からやり直すんです。
きっと遅くはないですし、先輩は待っててくれてましたから。
「先輩、何か嫌なことがあったんですね」
「あ、分かるんだ。すごいね」
「後輩ですから。それが何かまで分かりませんけど、先輩が困ってるなら私は助けになりたいと思ってます」
「それは悪いよ。PCも貸してくれてるし、これ以上頼るのは」
「そんな事ありません! 寧ろドーンと来い! です!」
姿勢を正して胸を……任せろと先ほどの恥を捨てて張ります。
正直すごくみっともない事をした直後なので情けないったらないですけど、それでも先輩が一人抱え込んで悩ませてしまうよりずっとマシだと思いますから。
「それじゃあさ、"俺の彼女のフリして妹達の足止めをしてくれない?"」
「……はぃい?」
ただ……こんな頼み事をされるとは思っても見ませんでしたので。
先輩の一言でショートした私は、マヌケな顔で頷く事になったのでした。
[現在の山本の現実で使える戦力…CUT製爆弾の起爆信号、有機ナノ材の肉体。
前周で知った知識と宇宙人との接触前に国家から指示に従う対価として無理矢理受け取らされたDPで制作した肉体。有機ナノにより大抵の生き物に成れる]
「"起爆"」
裏路地に突如として歯車が噛み合わず砕けた様な音が鳴り響き、見える景色の奥行きがズレ、空間が捻じ曲がる。
それはネットワークに潜みつつ各地に設置していたCUTというテロ組織の物。電脳空間を拡張させ、現実と交わらせる孔を開ける世界を穿つ爆弾。
「──休暇中だってのに、まさかこんなのと出くわすとはなぁ」
ねじれ、周囲のあらゆる物がのっぺりと単純なブロックのテクスチャに置き換わってる中、粉塵の中から一人の男が出てくる。
何者かによる起爆地点の中心に居たにも関わらず、彼は二つの黒焦げの死体を作る代わりに生き延びていた。「演劇」による演者の一時出演させた肉盾。
二人の演者が死を契機に消え去る中、男は「演劇」からスーツの衣装を取り出し、ネクタイを締めていく。
「どこの誰だ。俺を狙った……にしては随分とナメられたもんだが」
返事は追加の爆発により返されるが……男に損傷はない。
肉盾すらもう必要ない。彼が纏う「衣装」の力による物だ。一定以上の損傷を肩代わりする身代わりの服。"「スーツ」アクターのアクションシーンは安全が担保されている"というルールで「演劇」其の物を盾にする為の──象徴の「スーツ」。
「……んを?」
そう、男はいつも通りに概念的な防御服を纏って爆弾を防いだ。
"だからもう詰んだ"。
「おー珍し。"俺のサーカスに直接乗り込む"なんてな。防衛側になるなんざ始めてだ」
CUT製の電脳と現実を繋げる爆弾は夢の世界の要素を混ぜ込む事で融合を成している。
故に夢の世界からの戦利品が由来である「演劇」もまた現実に混ぜ合わせられる空間の対象であり、能力に孔を開ける事で現実や電脳空間から侵入出来るようにする事が出来た。
カチッ。
「……あ、シクッた。強襲は"意識誘導"か」
──パンッ!
襲撃者が狙ったのはそれによる内部への強襲。前回同様無力化しての安全確保に過ぎない。それ以外の本意は無かったのだが……。
『──自由だ』
……"ただ孔を開けるだけで世界が勝手に混ざるなんて事は起こらない"。
不十分な理解のまま利用した対価は存外早く訪れた。爆弾の効果は孔を開けてから「世界を融合さ終わったら中間素材に利用した「夢の世界の要素」を消し去る」所までがワンセット。それを「演劇」其の物に使用した場合起こる現象は「演劇」の舞台に敷かれた法則を現実や電脳空間のそれと同じ物にする事に他ならない。
『俺達は今!! 自由になったッ!!!!』
要するに──「演劇」に囚われた演者が解放されるのだ。
舞台はただの空間となり、演者は電子生命体となり、特異な空間に敷かれた法則は消え失せる。
仮に彼がCUTの一員であるなら実に見事な手際だと褒められただろう。
爆弾二発で優秀な同族の味方が870名も増える……それも電脳空間を見回っていた警備員達が味方となるのだ。その恩恵は計り知れず、計画を数ヶ月単位で縮めさせる大戦果。
『あなたが誰か知らないが、俺らをあそこから解放してくれてありがとう。だが、一体なんの目的で?』
「──私はCUTという電子生命体に人権を与えんとする団体の者です。ご覧の通り、人を人と思わない連中に鉄鎚を与えつつ電子生命体を人と認めさせる為の活動をしております」
惜しむべきはそれが全くの想定外だった事だろう。一斉起爆して夢の要素を中和しきれず環境汚染したなら兎も角、二発だけなら対「演劇」の特効兵器になるとは夢にも思わなかったのだ。
襲撃者は別に殺す気は無かったし、サーカスの演者を電子生命体にする気も無かった。
襲撃者は元とはいえ父が死んでしまったのは残念だがこの際仕方ないと、それよりも彼ら元演者が無軌道に動かないようにする事の方を優先した。
「助けた理由も当然、あなた方に協力して欲しいからです。元々電脳空間で見回りをしていたあなた方が協力してくれれば、「約束の日」はより早く訪れる──まぁ、イヤだと言うなら別にそれでも構いませんが。我々は人権を目指す者。皆様の活動の自由を認めない訳がありませんので」
故に行われる──"アドリブの演説"。
自らをCUTだと偽り、さもこれが本来の目的だったと言わんばかりの振る舞いをする。
幸いだったのは今の容姿が山本とは似ても似つかないフラッタの色違いな姿であった事か。
続々と額の穴から出て来た妖精サイズの元演者達がそこらに座ったり漂ったり、即座に攻撃して来ない程度には好感触であるようだった。
「それで……どうされますか? 皆々様。我々には電脳空間と現実を混ぜる爆弾も、生身の体に戻れる技術も揃えております。あ、すごいでしょうコレ、「有機ナノ」の身体なんですよ。実用化するのに苦労したんですよこれ」
話が逸れた。
こほんと咳払いが一つ。
「…ではなく、私はこの作戦の為に本日の朝に電子生命体からこの身体になったように、成功した暁には人と認めさせるだけの
どうでしょう、ここであなた方の力が加わればと思うのですが……ぶっちゃけ我々テロリストなので、イヤならそのまま好きに過ごして構いません。それこそ……国家にこの事を密告してもぜーんぜん、我々は痛くも痒くも無いのでね?」
そこで言葉を切り上げる。今回襲撃者が求める反応はここで信用を勝ち取れず、離れた集団からCUTという組織を国に密告する者が出て来ること。
人権こそ無いが電子生命体はかなり自由な存在だ。これまで国家が見つけ次第殺してヨシと通告しているにも関わらずCUTなんて組織が出来ている通り、生身の身体がない事以外はかなりの万能性を持つ。電脳空間で直感的にハック出来たり、人間やそこらのAI以上なんて比べものにならない計算力を得られるのだ。それがどれだけ犯罪に有用であるか言うまでもなし。
『乗った』
「…はい?」
そして……元演者達はそれを追いかける側としてよーく知っていた。
そこに生身にいつでもなれる「有機ナノ」が加わればどれだけ厄介になるのかも、襲撃者以上に理解出来た。
それこそ…襲撃者を構成する「有機ナノ」に直接ハックして性能を閲覧すれば、明瞭に。
『質量さえあればどんな生き物にも成れるナノテクノロジー。そして電子生命体の身体──それがどれだけ無敵の組み合わせか分からない訳じゃねぇ』
「あらら?」
『私も賛成。この技術さえあれば或いは──現実と電脳の比重を逆転させて、それこそ現実をゲームの舞台として貶める事だって出来る筈よ』
「あらま?」
俺も私もと声が上がり、想定外の好感触に襲撃者が首を傾げた。
悲しきかな、ここにいるのは国家所属の「演劇」使いが殺し支配下においた悪人外道戦犯政犯老若男女なんぞ問答無用の免罪無しの野蛮人である。
これまで演劇の見せ物され散々教育されようと折れない不屈の野心と悪意を胸に耐え忍んだ彼らからすれば、CUTのテロリズムは好感を持てるもの。寧ろ人権なんてものの為に精一杯頑張る慎ましいあまちゃん集団。ヤクとガキすら売ってないなんて潔癖だねぇだと鼻で笑えるくらいだ。
協力して上手く乗っ取れば暴権を振えそうな技術と思想を持つ集団なんてカモネギ、仲間として取りいらない理由が無い。
『お嬢ちゃん、案内してくれよ。俺達の輝かしい未来のために…な?』
「いいですよ。その為に皆様を助けましたので。では皆様、コチラの通信機の電波の流れに従って移動してください」
という訳で、襲撃者はここで逃げられても困ると全会一致でついて来る870名の電子生命体達をCUTの所へ案内──すると見せかけてビブラダンジョン送りにした。普通にCUTが今何処に居るかなんて知らないのだから然もありなん。一度電波の流れに乗ったら途中で逃げ出すのは難しいからこそ成立する罠である。土壇場で思い付いたからこそ通った策でもあった。
「ふぅ……お待たせしました団長。今有機ナノで脳細胞を補完しますね。恐らく直近の記憶とか無くなってると思いますが、この音声はナノによりおぼえているでしょう。襲った理由はあなたが強いとバイアクヘーが困るので……あと、息子さんは死んだままにして下さい。誰も幸せにならないと思うので」
肉体の一部を分離させて対象の脳や血管を補完し、内部に残った弾丸を摘出する。遠隔で有機ナノに指示を飛ばせば心肺蘇生も容易である。流石はビブラのテクノロジーだ。
「コレでよし……蘇生するついでに代わりに今言った事を守らないといけないようにインプットしました。守らないと有機ナノが自動的に補完を止めます。抜け穴を探そうとするのもダメです。ナノを排除しようとしても無理ですよ、これは何処を補完してるか調べても分からないやり方なので」
ヘマした分は何とかなった。ついでに説得する手間が省け、代わりに身体の体積が拳一つ分減った。身長が1センチ縮む程度の割と辛いコストである。
「それでは、仮にも2児の父なら電子生命体への差別はなきようにお願いいたします。襲撃者でした」
襲撃者が立ち去った後、後に残るのは蘇生し気絶した男だけ。
次に向かうのは──平瀬に足止めされてるヨメネとエーコだ。
(ほっとくと背中を刺して来そうなのは倒せたね。これでバイアクヘーを阿佐美の元へ避難させなくてもいいように交渉する余地が出来る)
・彼の考え
…爆発エンドは阿佐美にバイアクヘーを預けた事が発端となった。
…父は和解不可。なので説得しに行き結果的にいい感じに成功。
…妹達が欲しいのは俺の人格。肉体には執着してないようだからこの説得さえ終わればバイアクヘーの問題は解決する。他の問題はそれからだよね。