エンド集(下に行くほどGOODエンドになる訳じゃない)
F…幻想。第一部で完結した場合のエンド。何も終わってない。
E…爆発。何もかも解決したようでなにも解決してない終わり。
D…削除。出会った者全て殺した場合の終わり。
C…切除。現政権打破を達成し乗っ取った国家能力を用いて異世界との融合に対処する。
B…安牌。リザルトの☑︎を全て埋める。
A…??。ヒント:自分がやるべき事をやれ。
「で、俺はここに居る訳だけど…どうしたい? 全て元通りにしたいなら、俺を殺してでも戻す気概じゃないと無理だけど」
小洒落た喫茶店で山本家の姉妹と平瀬が雑談で盛り上がっていた頃、カランコロンという音と共にやって来た者は三人の席に近付いて突然そう言った。
姉妹が怪訝な顔で見つめるも、しばらくすると目が見開かれ驚愕に染まる。
「………あ、おにぃ!?」
「えっうそ…あ、マジだ!」
「久しぶり。随分と小さくなったけどね、頑張って戻ってきました」
平瀬を奥に行かせた不審者がそのまま横に座り、手に持っていたオレンジジュースを飲む。
その間にどういうことかた山本姉妹が平瀬に眼で訴えるも、平瀬は曖昧に笑うばかりだった。
「色々有ったけど団長の説得は終わったからね。それで平瀬、なんの話してたの?」
「えっと…お二人に何故そんなに兄を取り戻したがってるのかーとか、そんな感じですかね」
「どんなこと言ってた?」
「……如何に自分達が兄を大切にしているかについて……ですかね? なんというか、わざとらしかったです」
平瀬が曖昧に、断言し切らずに言う。先ほどまで会話していたにしてはどうにも歯切れが悪かった。
「ふーん。そういえば不思議だよね、俺はこうしてここに居るのに態々身体の方を追いかけてたの。舞台に招いて俺が何処に居るか聞いて訪ねるんじゃダメだったの?」
「それは……そういえばそうですね? 先輩以上に特異な力を使えるならそうしない理由がないというか」
不審者が根本的な疑問を口にして平瀬が同意する。
そうなのだ。今更な話ではあるものの、山本家はバイアクヘーを追いかける一連の騒動には不自然な点がある。
……初手で殺意を込めて追いかけるのが論外なのを置いといてだ。其処は世間一般が取る多数派の選択なのであまり突っ込む必要はない。この世界では夢の世界の存在に家族を乗っ取られたら殺すのは割とよくある事だ。
「此処に来るまでにバイアクヘーがログアウトした辺りから情報を洗ってみたけどさ、二人の力なら見破った時点でまだ舞台主になってないバイアクヘーくらい強制招待出来たと思うんだよね」
「えっそうなんですか?」
「そうだったよ。意外だよね、俺はてっきりバレる前にバイアクヘーが逃げた物だと思ってたからびっくりしちゃった」
「へ…へ〜…ぇ?」
「演劇」はかなり応用が効く戦利品だ。同じ能力が無い相手なら精神を招待して気絶させ無力化したり、バイアクヘーの比較的弱い「演劇」でも相手の能力部分だけ召集して無能化させることさえ出来る。対価が高く付く上に殺傷力の高い戦利品の中でも"無力化"という選択肢が取れて人間性もあまり削れない。
これは挙句に思いつかない最善手という訳でもない。彼女等の父が仕事で常用してる程度には使い易く、ただ演劇の舞台に上げて追いかっこをして殺すよりも簡単な筈だ。
「せ…先輩、なんだかお二人の雰囲気が…」
「追いかけるまでもない。殺すまでもない。追いかけてる最中だったのに平瀬の喫茶店の誘いに乗る……俺を大事にしてるって言うなら、誘いを断ってバイアクヘーを捕まえに行くのが普通じゃない? ねぇ、平瀬」
「へ?……ま、まぁ…そうなんじゃないですかね…? お二人とも、バイアクヘーという方を追いかけてる途中にしてはのんびりしてましたから……ヒィ!?」
カタカタと地震でもないのに空になったグラスが震える。
重くなっていく空気に平瀬が辺りを見渡せば、既に喫茶店に居る人々は全員机にうつ伏せになるか床に転がっていた。
……「演劇」の強制招待。拒否権のない精神の誘拐能力。彼女達の兄が実在の人物に対し使うのを疎んだ理由、招待した相手の状況によっては容易に事故が起きかねない力。
「それで、改めて聞くけどエーコとヨメネはこれからどうしたい?
俺の精神が大事ならもう事態は解決だよね。
でも、元々の肉体が大事なら引き続き追いかけて──」
言葉は不審者の頭部が両断される事で中断された。
目の前に伸ばされた大鉈の刺突、エーコの「演劇」、小道具の具現。
平瀬が短く悲鳴を上げる。頭がカチ割られた事よりも、そこからぞるりとスライムのように位置をずらして頭部が再生された事への悲鳴だった。
「ダメでしょ……おにぃ」
「兄の頭をかち割るよりもダメな事があるものかねぇ?」
「頭ワル……「妹」は「兄」を心配する物……なんだからさぁ…! 折角「妹」らしく振る舞える"舞台"なんだから、ちゃんと配役は守ってよ」
不審者が平坦な感情のまま妹二人を見つめる。
両者共に光のない眼。役と舞台、実態より空想の
「発狂だね」
「演劇」は対価が少なくとも、確実に人間性を削っていく。
人間は重い対価を少なく渡すより軽い対価を沢山使う形式の方が気軽に使いがちだ。
どうやら……二人は「演劇」の使い方を教え、それを阿佐美の「魔性」制御に繋げて無理やり迷宮潜りの仲間にした対価が来たらしい。
「それも俺に原因がある奴だ」
因果を根本から辿れば。
そういう台本を書いた山本・イイノリが悪く。
彼女達に「出来る」と気付かせた山本が悪く。
軽率に使い続けた彼女達の浅慮が悪い状況だった。
「いいよ姉妹達、その演技に付き合おう。筋書きはこうだ。
"二人は家族を殺そうとしたから力を失いました。ちゃんちゃん。"
だから──痛い目に合うのは我慢してくれ」
二人が一斉に銃の小道具を取り出すのと同時に不審者が平瀬を自分の背後に投げ──歯車が砕けたような爆発音が喫茶店に響き渡る。
「う…あ…っ?」
「イタ……よくも…!」
「"
空間がねじれ、物体のテクチャがチープでデジタル調に変化する。
直撃して多腕になり、多眼になる姉妹が其々の方法で肉体を戻し切る前に起爆され──二度、三度と続く。
躊躇はない。一度狂えば戻れないのが「演劇」だ。戻れるなら父は団長ではなく父で有っただろうし、初手でバイアクヘーを「ホラーの被害者役」を被せて追いかけっこを始める事も無かっただろう。
「「…………」」
「沈黙…やっと死んだね? 二人揃って舞台が頑丈なんだから困ったものだよね」
「え……殺したんですか…!?」
「うん、殺した。有機ナノを十分注げば蘇るから問題ないけどね」
爆発に直撃し怪物のそれに変わりきった二人に有機ナノが注がれ、元の形に修復されていく。
鎮圧に従い随分と酷いことになったが、お陰で「演劇」をもう二度と使えないように破壊する事が出来た。
これが正しいかは兎も角、二人にこれ以上人間性を削らせないなら最も有効的なやり方だった。
「身体諸共になったけどこれで能力は破壊できたよ。ありがとね平瀬、お陰で
「それは…えっと、これは…良かった…で、いいんですか…?」
「うん。この喫茶店には悪い事をしたけど…それは俺が直しておくとして、山本家にとって「演劇」は百害有って一利のみだから。能力の奴隷になるより、こうした方がずっといいんだよね」
有機ナノを注いでマスコットサイズに縮んだ血塗れの不審者が平瀬に顔を向ける。
それを見た平瀬の顔は……怯えきったもの。住む世界が違うという恐怖。
それを見て不審者は……ニコリと、少しだけ悲しそうに笑った。
「なるほど。どうやら俺は平瀬の前から消えた方がいいらしい」
「………ッ」
そんな事ないと…平瀬の口から出る事は無かった。
故に不審者はその沈黙を肯定と受け取る。
「付き合ってくれてありがとね。お礼は今の俺を構成してる有機ナノの管理権をどうぞ。性能は見ての通り念じるだけでどんな怪我も治せるし、いい感じに若返りだって出来る万能薬だよ」
「…ッそんなの…いらな」
「それではさようなら──二度と会う事もないようにするね」
お礼は要らないから隣に居て欲しい──そう自分に嘘を付くには、その返事はあまりに遅かった。
「……先輩」
後に残るのは、小瓶に閉じ込められた有機ナノが一つ。
ある記憶──D エンド
『さーて……どうしてこうなったかな』
改めて思い返しても不思議だよね。
『片っ端から倒して探索を進めただけで、家族も平瀬も阿佐美もバイアクヘーも……全人類が死ぬとはね』
俺からすればビブラの探索をしてただけなんだけど……完全に放置してたのが悪かったのかね。
だけど団長とヨメネとエーコに追いかけられていたバイアクヘーはまだしも、阿佐美とかがそうなるとは思わないじゃん。
『えーと?……あ、UM社の死亡者リストに阿佐美の名前がある。会いに行かないとまた潜りに来るんだね』
もう迷宮探索はしないと言ってたのになー…アレかな? 俺に会いにとか、そんな所なのかね。それくらいしか俺には心当たりがないけど……あーでも会ってたとしても俺には分からないか。"UM社の探窟家は例外なく同じアバター"だからね。もしかしたら誤射してたかも知れない。
『その後は阿佐美の死をキッカケに悪い事がゴロゴロと繋がって…終わりが人類滅亡か。お陰で色々と便利なものをビブラから持ち帰れたけど、明らかに人類滅亡とは見合ってないよねぇ?』
仕方な……くはないけど、こうなったからには梟の羽根を持ちに行くしかないか。
[……やり直す気か?]
『あ、歴史の書き手さん。そうですね、流石に全人類滅亡はこうするしかないので』
巻き戻るために夢の世界の地上、ドーイラ島の雪原を訊ねると俺に梟の羽根がどんなものか教えた人が立っていた。
足首まで届く黒く長い髪に白いワンピースを着た、赤いガラスみたいな眼を持つ色白の女性である。俺の演劇の観客席の角を陣取ってたり、かと思えば現実のコンビニで同じ姿で立ち読みしてたり、割と長い付き合い割に何も分からない神出鬼没な人だ。
なんでもオリジナルの梟とコピーの梟を始めに、それから俺のような成果物を持ち帰った人とかも一括で管理してるFC社の偉い人なんだと。そんな本当の事を言ってるも定かではない無口で影が薄い暇人だ。
[実質クリアしただろうに……終わらせるのが最善だと思わないのか?]
『まだ終わる訳には行きませんから』
[このゲームの話だ]
『……? ゲームだとしても全滅エンドはやり直し案件じゃないですか?』
返事はない。
……どうやらもう会話する気を失ったらしい。
この人は気まぐれだからいつもこうだ。こっちから話しかけても返事はなくて、向こうから話しかけられた時だけ少しだけ話せる。そしていつも書き込んでる本には俺や知らない誰かの思考や状況が記録されていて、少しだけ不気味なのだ。
[進めば良くなる訳じゃない]
「ん? それはどういう…?」
[羽根を使った者達が何故皆して黙りを決め込むか考えろという話だ……後は自分で考えろ。これはゲームだからな]
「……助言ですかね。頭に書き留めておきます」
……よく分からないが、やる事は変わらない。
次はそうだな……技術は素材は十分集まったし、CUTをなんとかしてみようかね。
「"
さーて、やり直しだ。