運営さまの言う通り   作:何処にでもある

9 / 9
 予・ミ・二・投。
 予約投稿ミスったので本日は二話同時投稿です。


 各地推奨レベル
 中央地
 都市アテラス/都市ヘーグイ…Lv.1〜10
 街道/キーラ大森林・浅瀬…Lv.8〜15
 キーラ大森林・街道…Lv.13〜20
 キーラ大森林・道外れ…Lv.15〜30
 燃える森…Lv.40〜???

 北部
 北の街…Lv.8〜20
 雪原…Lv.30〜45
 山…Lv.7〜16
 キーラ大森林…Lv.23〜50
 凍えた森…Lv.50〜???

 南部
 南の街…Lv.10〜15
 砂漠…Lv.17〜25
 草原…Lv.30〜35
 キーラ大森林…Lv.12〜30
 迷宮の入り口…Lv.1

 海…侵入禁止エリア

[*推奨レベルはメインとサブの合計値です。また、戦闘職である事が前提である為、生産職のレベルを計算に含めるのは推奨致しません]




賞金狩り/依頼を受けてみよう

 

 

 カランカラン。

 

「えっ誰か来‭─‬‭─ここは薪と祈り手の宿(クエスターズキャンプ)です! 依頼を受けたい場合は……あはは…あそこから持ち出してください」

 

「こんばんは、暫くここで働かせて貰いたいのだが、直ぐに受けられる依頼はあるか?」

 

 

[クエスターズキャンプ…○○の宿という名前で別れてはいますが、中身は各地に点在するクエストをまとめて確認出来る、冒険者の為の活動拠点です。大抵の依頼はここに張り出される為便利ですが、場合によっては依頼者から直接受けた方が報酬が良くなる場合があります]

 

 

「はい、それでしたら……」

 

 カランカラン。

「はぁ〜さむさむ…やっと師匠が建物に入ってくれたぁ〜…! なんであんな軽服なのに平然としてるんだか……」

 

 依頼を提示されようとした時、受け入れるべき空気を作ってそうだったから、着いてくることを許可した小僧が入ってきた。俺としては精々頑張れとしか言いようがないが……テスターの仕事の邪魔にならないならなんでもいいか。

 

「ようこそ、薪と祈り手の宿へ」

 

 受付嬢の意識が其方に向けられる。

 

「こんばんは! 僕は師匠の弟子です!」

 

「お連れですか?」

「他人だ。強いて言うなら観客だろうよ」

「は…はぁ?」

 

 何故梟と殺し合いに来た俺が此処にいるかと言えば、北の街で装備と道具を整える金を稼ぐ為だ。

 周囲の敵が強い場所の方が強い装備があるという算段で道中はスルーしたから一銭も持ってないんだよね。

 なのでヘルプに従って此処に来た訳なのだが……ヘルプの説明通り、掲示板には色んな依頼が手付かずで張り出されていた。

 ……いや、多過ぎじゃないか? 一部なんて掲示板からはみ出て床に落ちてるじゃん。

 

「しかし…ふむ」

 

 見渡すまでも無く誰もいない。ここは宿と言うには受付と掲示板、それから個室に続く廊下しか見えないからだ。酒場なんて物はなく、どちらかと言えば寮の印象を受ける。廊下に灯りはなく、薄暗く肌寒い。歩けばギシギシと…いや、歩くまでもなく外の強風と屋根に積もった雪でギシギシと鳴っていた。もう雰囲気がダークファンタジーだな。

 

「嬢さん、他の連中は? 随分と依頼が溜まってるみたいだが」

 

 受付嬢が見た方には所狭しと張り出された依頼が張り出されているのだが……場所によっては20枚は重なってそうなものもある。放置ってレベルじゃないな。

 

「あ〜…今は厳冬期ですので、みんな冬籠り中なんです。依頼はこの辺りの依頼を出したい人のものが自動的に集められますから仕方ありません。依頼人は攻略者(クエスター)を考慮しませんので」

 

[*クエストボードと依頼書…依頼は各地のクエスト‭─‬‭─コマが報酬を渡すと内心決め、やって欲しいと願った情動‭─‬‭─を元に自動的に書き出され、張り出されます。その為依頼書は考える者が尽きない限り消えることもありません]

 

 へぇ、ゲーム的で便利なボードだなぁ。そりゃあ考慮もされる訳ないか。

 

「溜まり過ぎるとどうなる? なに、儂はこういう場所は初めてなものでね」

「私が捨てます。依頼人も忘れてるようなクエストが有っても仕方ありませんから。今の状態は……すみません。どうせやる人は居ないと思ってサボってました」

「なら目端の利かん儂の代わりに、あそこからまだクエストとして有効な討伐系を全部持ってきてくれ。できれば古いのを上に並べてくれるとなお良い」

「承知しました」

 

 あぁそうそう、装備と言っても武器は間に合っているから買いたいのは防具だけで、受ける依頼は討伐だけにするつもりである。

 フラッタとしてプレイした経験から採取や生産系ができない訳じゃないんだけどな。

 今回のプレイ方法とは趣旨が違うから控えたいんだ。やれと言われたらやるけどね。

 

「古い順ですと……このようになります」

「全部貰うぞ」

「えっ!? ちょっと、依頼は一人3つまでと…!」

「それがどうした。どうせ誰も受けないなら儂が取って行っても変わらんよ」

「それは…! そう、ですね…?」

「なにより一々戻るのも面倒だ。一気に終わらせる」

 

[依頼を168コ受けました!(168/3)]

[*過剰受注です! 本日中に過剰分の依頼を辞退するか攻略しない場合、ペナルティが発生します!]

 

 渡された束を有無も言わさず引っ掴む。ペラペラ捲れば下は下水道の鼠退治から上は氷血竜とやらの討伐まで。敵、敵、敵のオンパレード。目的は金だが報酬は二の字で良いだろう。どうせ殺せる相手を全部殺すプレイなんだし。

 受付嬢はあれ、良いのか? でもどうせ捨てる訳だし…と頭を悩ませていたが、最後はすごく良い笑顔で見送りしてくれた。柔軟で良い嬢さんだな。

 

 さて、外に出た事だし夜の間に煙を撒いていくか。

 

「師匠、あれ自殺希望者を観る眼でしたよ。笑顔なのにあんなに眼が冷たい顔、僕初めて見ました」

「儂は殺しで泡銭を貰えればなんでもよい」

 

 小僧が軽く引いてたが、プレイヤーなら出逢う相手全員に斬りかかる。

 俺は運営の想定通りに遊ぶテスターだからまだ大人しい方だ。この程度で一々驚いてたら将来苦労す‭─‬‭─‭─‬‭─。

 

 チン………どさ。

 

[依頼「雪に紛れし殺人鬼」 完了]

 

 ああ、誰かと思ったら殺人鬼だったんだ。

 

「あれ、誰か倒れましたよ師匠」

「依頼に書かれた(殺人鬼)が居たから殺した」

「えっ?……ずっと僕の隣に居たのにどうやって?」

「煙で奴の首を刎ねた。今は夜な上に吹雪も酷い。煙も目立たぬから容易に殺せる」

「えっコワ……うわ、良く見たら師匠の煙が漂ってる!」

 

 怖いって言われても……急に目の端に理想の俺が暗殺決めてたのでその通りに動いただけだし…。

 でもそうか、この目は戦闘での最適解を映すもんな。それなら依頼を受けて敵を作れば、それだけで敵の居場所を自動追跡してくれるのか。へぇ〜すっごい便利〜ぃ‭─‬‭─‬‭─‬‭─。

 

 ミ"ィィイ"イ"‭─‬‭─‬!!

 ギャァァア!

 ◼︎◼︎◼︎‭─‬‭─‬っ

 

[依頼「下水道の大鼠退治」 依頼「密売人への復讐」 依頼「屋根裏の蝙蝠退治」 完了]

 

「………あの」

 

[依頼「ベッドの下の怪物」 依頼「屋根の雪精払い」 依頼「墓地の幽霊退治」 完了]

 

「なんだ、今は忙しい。手短に話せ」

 

[依頼「大嫌いなアイツ」 依頼「蟲屋敷の解体」 依頼「防壁の巣落とし」 完了]

 

「あちこちで悲鳴が聞こえるんですけど……師匠ですよね? どうやったらただ歩いてるだけで殺せるんですか?」

 

[依頼「井戸底のタコ助」 依頼「グール討伐」 依頼「呪われた首輪と犬と」 完了]

 

 あー…何度も聞かれるのも面倒だし教えるか。出来るかは兎も角、真似されても問題はない。

 

「吹雪を使っている。煙に混ざった塵が敵の首に届く頃、丁度一筋の斬撃に並ぶように撒いた。後は風が勝手に殺していく。屋内の奴は煙を満たし、息を出来なくして殺すか、堪らず外に出た時にスパッとな」

「未来でも見てるんですか?」

「否、見えるのは理想よ。眼を一つ捧げて手にした力で、"ズル"だ。儂はいずれ、この眼が無くとも同じ剣を誰しも使えるようにしたいと思うておる」

「………」

 

 こんな芸当が出来るのはさっきマクロがやった身体を動かし方を覚え、その上この眼が手本を見せてくれているお陰に過ぎない。現実で同じ事をするには足りない物が多いし、まだまだ未熟だな俺は。もっと簡単に使えるように改善するのも視野に入れないと…。

 

[依頼「違法薬物売買グループの壊滅作戦協力申請」 完了]

 

「よし、一通り殺せたな」

 

 ひっきりなしに出てくる依頼完了の通知が落ち着く頃、依頼は50にまで減っていた。残りは全て街の外に居る難敵である。

 この街魔物居過ぎだろと思わないでもないが、プレイヤーが溢れれば168は寧ろ足りないまである数だ。サーバーを分けるとしてもこれでは一つにつき千人から三千が精々。とてもじゃないが収容人数が少な過ぎる。

 

[*変動を確認しました。依頼達成につき北の街の治安が上昇しました]

[*北の街の治安が異常数値です! メインストーリーとの兼ね合いの為逸脱度を正常値に戻すイベントが発生します]

 

[*「比類なきスタンピード」が氾濫します。十全な準備を整えてください]

 

 ユニークでマクロを組めた件、長距離射程で依頼の超効率解決の件と一緒に報告しておこう。管理費は安く出来るならそうした方がいいだろうからな。テスターが意見を挙げるだけならタダだ。

 オマケにもっと通知の方の世界観もゲームに合わせるように書いておこう。マスクデータは自白しちゃダメでしょうが。

 

「ねむ……ししょお…もう寝ましょうよぉ…」

 

「吹雪も止んだ。明け方も来た。依頼はまだあるが‭─‬‭─さて」

 

 カン!カン!カン!カン!

 

 朝焼けが雪原を輝かせ、雪の塵(ホワイトダスト)が辺りが幻想的にする時間帯、北の街にカンカンと危機感を煽る鐘の音が聞こえた。

 

「‭─‬‭─魔物だ! 大氾濫(スタンピード)が街に来るぞォオ!!!

 

「運命はちと神経質じゃな。人が泡銭を稼ぐだけでこの様な連中を寄越すとは……まぁよい」

 

 通知が終わり完了した依頼の紙が報酬金に変わりジャラジャラと俺に降り注ぐ中、残りの依頼と真っ黒に視界の方に映る理想の俺の動きを見て丁度良いと笑う。

 そうか、今から来る連中に依頼の相手が居るのか。

 

「……あ、おいアンタ! サッサと逃げろ!」

 

 門を越えて街から出る。衛兵が何か言っているが、味方が増えるんだからお前にとっては何も問題ないだろうと無視した。

 

 目先には…なるほど。地平線から大小様々な魔物が血走った眼で並び走っている。数は……凡そ千はいるだろうな。

 

「コチラから向かう手間が省け、その上殺し甲斐のある難敵がずらり、実に楽しい戦場よな」

 

[*バグ報告ありがとうございます。マクロ行為とアイテム等を利用した遠隔依頼達成は調整の為一時制限させていただきます]

 

 さすが運営、タイミングは悪いがプレイヤー有利な現象を即座に規制したのは運営らしい空気の読めた行動だ。さすが社会人、俺の目指すべき相手なだけはある。

 

 しかしこれで俺の甘えである反則(禁じ手)は消えたわけだ。全く背水の陣は気合いが入って最高だね。

 

「ふぅ……我が道を塞ぐならば、何者であろうと斬り捨てよう」

 

 どうあれ、こうなったのは一晩で依頼を攻略しまくった俺のせいっぽいんだ。

 こんなので赤の他コマが死ぬのも目覚めが悪い。昨晩の理想をどれだけ追えるか次第だが、やれるだけやろうじゃん。

 

[過剰受注です! ペナルティまで残り19:30:54(50/3)]

 

 全部殺せば依頼も減るだろう‭─‬‭─刀に火を灯し、煙を纏う。

 片や地平を埋める魔物の群れ、片や煙を纏い街を背にする修羅が一人。

 中々絵になるんじゃないか? きっとプレイヤーも俺と同じ事をするだろう。

 ならば……運営が想定した遊び方はこれで合っているはずだ。

 

『儂は煙の修羅、シンエン。北の街に貴様らを殺せと任された者‭─‬‭─‭─‬さて、鏖殺じゃ』

 

 楽しい楽しいバトルの時間だ。一切合切鏖殺だ。目の合う敵は皆殺しだ。

 そんな後に続くプレイヤーが進みそうな道を歩んでみせようじゃないか。

 

『奇跡‭─‬‭─"大輪鎖"』

 

 それが、テスターの俺が出来る1番の仕事でもあるのだから。

 

 






 レベル…プレイヤーとコマに成長における経験値、ステータス上昇ほ格差はない。しかし死に対する価値観、命の軽さにおいてLv.15までリスポンするプレイヤーはコマより成長し易い存在である。
 しかしLv.16以降はプレイヤーもコマも平等だ。この領域に至った時、死と隣合わせで這い上がったコマと、アバターや周囲との関係に愛着が湧いて死にたくないプレイヤーで成長速度は逆転する。

 とはいえ、やはり死んでもやり直せるプレイヤーの方が有利なのに変わりはない。
 このゲームでは何度も死んだプレイヤーが、誰よりも生き残れるように設計されているのだから。
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