異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第10話「出発!」

「う、うめぇぇえ!」

 

「うん! うん!」

「ズゾゾー!! ズゾゾー!」

 

「はふはふはふっ」

 

 豪快に麺を啜る双子に、口の周りコメ粒だらけにして焼きおにぎりを頬ばっているドミトリさんたち。 

 

「お代わりいりますー?」

「「「「ん!!」」」」

 

 全員同時に手を挙げて、まー仲がいいこと。

 

「じゃ、お茶と一緒にここ置いときますね。あ、炭酸とかのほうがいいです?」

「「「「こくこくこく」」」」

 

 いや、どっちやねん。

 ま、いいや。

 

「それじゃ。食べ終わったらゴミはゴミ箱に──。一息ついたら出発しましょうか」

 

 うんうん。と聞いているような聞いていないようなドミトリさんたちをそのまま置いて、事務室の外へ。

 ガチャ。

 そして、朝の山脈で大きく伸びをするー。

 

 

「んーーーーーーーーーーー」

 

 

 臭い!

 

「うわー、超クッサイ!……何かと思えば、昨日のガルダがボロボロになってるしー」

 

 夜になってから、外の監視カメラでチラっとは見えてたけど……一晩でこれか。

 

 どうやら、夜行性の肉食獣がいるらしい。

 

 姿はハッキリしてなかったけど、貪欲なのは間違いない。

 私が外で寝てたら、一瞬で骨まで食われてるなーと、今更ながら顔を引きつらせる。

 

 ちなみに、外に残していたのは肉とかデッカイ骨のみで、ドミトリさんたちが皮や羽なんかは事前にはぎ取って、彼らのアイテムボックスとやらに入れてくれていた。

 

 なんでも、素材として高く売れるんだってー。

 

「さて、それはさておき、いくよ──チハたん!」

 

 

 ──グォォオオン!!

 

 

 エンジン始動。

 外に放置するのもあれなので、ガソリンスタンドの中に駐車していたわけだけど、なんと、ちょっとだけ装甲が回復している。

 

 エンジンのほうの調子も心なしかいい。

 

 どうやら、スタンド内にはスキル『せんしゃ』を回復させる効果があるらしい。

 ……便利だなジョブ【ガソリンスタンド】。

 

「ただ、やっぱりお金かー」

 

 スキルの回復も、インフラも自販機の品物も全部お金に反映されているのだ。

 そして、私の財布のHPはすでにゼロでーす!

 

「あはははー……。気前よく奢ってやったからな」

 

 まぁ、しゃーなし。

 そも奢りというか、建て替えというか……。

 

 あ、ちなみに、彼らにある程度前払いしてもらった。

 とはいっても、さほどお金は持っていないということで、少しだけ。

 

 たしか、銀貨5枚。そして銅貨で60枚というものだったかな。

 

「まー、山奥の冒険にお金は必要ないもんね」

 

 その彼ら曰く、パン一個で銅貨一枚。

 銅貨100枚で銀貨一枚。

 銀貨10枚で金貨一枚。

 あと、町の衛兵の一月の給料がだいたい金貨二枚なんだって。

 

 つまり、銅貨一枚でだいたい百円くらいっぽい。なので、貰ったお金の合計は56,000円ってとこだ。

 

 ちなみに、お金の入金はステータス画面に直接入れる形だったりする……。

 両替もここでできちゃう便利仕様だった。

 

「さて、ドミトリさんたちはまだかなー」

 

 チハたんに意気揚々と跨乗(こじょう)すると、車内にあったゴーグルを首にかけて彼らを待つ。

 すると口の周りに米粒をつけたまま、事務室からドタバタと出てくる4人。

 

「な、なんだぁ?!」

「さっきのは何の音だよ!」

「げ! これ昨日の鉄の荷車じゃん!」

 

 ポカンとしたドミトリさんたち。

 

「あ、ご飯終わりました? じゃ、そろそろガソスタ片づけるんで乗ってくださーい」

「「「「へ? 片付け? そして、乗るぅ??」」」」

 

 うん、わからんよね。

 ま、説明するより見てもらった方が早いよね。

 

 

   あ、そーれ。

   ガソスタ収納!!

 

 

「「「「おぉー?!」」」」

 

 出てくるときと同じく、一瞬で消えるガソリンスタンド。

 なにせ、屋外で地下さえあればどこにでもだせるからね! 片づけるのも一瞬さー。

 

「な、なんか、色々ビックリしすぎてどこからツッコメばいいのかわかんないねぇ……」

「姉御、深く考えちゃダメです」「そーそー」

 

「僕は、この鉄の荷車が動いてるほうがドン引きなんですけど」

 

 ガソスタをしまうために少し小移動しただけで腰を抜かさんばかりに驚いているチビッ子のミルヒ君。

 ふふんん、チハたんは凄いだろう。

 

 ま、いつまでも驚いて居られても困るし、さっさと乗ってもらおう。

 

「はい、そろそろ行きますよー」

 

「……い、行くって? ま、まさか、これでかい?」

 

 ん?

 そりゃそうでしょ。

 

「移動手段があるのに、なんで歩くんですか?」

 

 あたしゃ現代っ子だよ。

 車があれば乗るのさー。……車っていうか九七式中戦車だけど。

 

「さー。いいから乗って乗って」

 

 まごまごして面倒だから、さっさと乗るように促してみた。

 

「お、おう」

「ま、まぁ、深く考えないでおこうぜ」「そ、そうだな」

 

 うんうん、と頷くドミトリさんと双子。

 

「……僕、届かないんだけど」

 

 そういや君はそうか。

 まぁ、手くらい貸すから乗ってねー。

 

「あ、その辺は熱いと思うから、そこ気を付けて。──君は、その辺ね。……あ、ダメダメ! 中は入らないで!」

 

 そうして、4人を適当に配置すると、いざ出陣。

 調べたところによると、チハたんは4~5人乗りらしいけど、中に乗せるのは狭いからヤダ。

 

 ……それに、まだこの人たちを完全に信用したわけじゃないしね。

 ま、念のため念のため。

 

「乗ったー? さ、いっくよー!」

 

 ゴーゴー!!

 

「「「「お、おおー!」」」」

 

 ふふふっ、楽しいでしょ。

 

 私のテンションに釣られたのか、

 とりあえず拳を上げて乗ってくれるドミトリさんたちも、動き出したチハたんに驚愕の表情。

 

 

 うん。やっぱり悪い人ではなさそうだ。

 

 

 

 

 そう確信しつつ、キュロキュロキュロ! と履帯音も頼もしく、チハたんを前進させるのであった。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 キュロキュロキュロ……!

 

 山脈に響き渡る履帯の音。

 そして、時々、低木をなぎ倒すバキバキという爆音が混じり、動いているだけで頼もしい気配が伝わってくる。

 

「──で、とりあえず、こっちの方角でいいんですか?」

「え? あ、あぁ、多分な」

 

 ふむ。

 ……多分ね。

 

「了解でーす」

 

 自身がなさそうなドミトリさんであったが、まぁ、遭難するような方角に導くこともないでしょ。

 そう考えて言われた方向に戦車を走らせる。

 

 ──ちなみに、昨日の会話を盗み聞きしていたので、彼女らの思惑はだいたいわかる。

 

 彼らも家に帰りたいのだ。

 ただ、地形やら、モンスターやらの妨害で迂回せざるを得なくなり、こうして迷ってしまったらしい。

 

 だから、ここはチハたんの出番である。

 多少の地形の困難さも、モンスターも戦車の前では形無しであーる!

 

「あ、そうだ。ミルヒ君は見張りするならこれ(・・)使って」

「え? あ、うん。……あれ? 僕、名乗ったっけ」

 

 げっ。

 しまった。つい……。

 

「や、やー。ほら! 皆そう呼んでたし!」

 

 うん、呼んでた呼んでた。

 

「ん? うん。そう、だったかな?」

「うんうん! そうそう!」

 

 や、やべー。

 盗聴してたのがバレるー。

 

「そ、それより、それが双眼鏡だよ。両目を当てて、そこのピントを弄ってー」

 

 誤魔化すために戦車の中にあった双眼鏡の使い方を教えてあげる。

 

「お。おぉー、これ凄いね! 遠くが見えるよ」

「でしょ。貸したげるから、案内よろしくー」

 

「あぁ、任せとけ! これがあれば楽勝だよ」

 

 ……そんなにー?

 

 ま、いっか

 

「しっかし、この荷車は速いね! いったいどういう仕組みなんだい?」

 何気ないドミトリさんの問いかけ。

「え?……知らない」

 

 ずるっ!

 

「し、知らないで乗ってるのかい?!」

「いやー、そう言われてもなー」

 

 知識としてはなんとなくある。

 戦車の購入時特典として脳内にはチハたんの能力が謄写(インストール)されてるのだ。

 だけど、それはあくまでも表面的な物。

 ディーゼルエンジンで動いているなー……くらい知識しか持ち合わせていない。

 つーか、普通そんなもんじゃない?

 

「まぁ、そういうものか」

「そうそう。深くは考えないんでしょー」

 

「そ、そうだったね。……うん、深くは考えない」

 

 ありゃ、ブツブツ言いだしちゃった。

 ま、ほっとこ。

 

「それより、ドミトリさんはこの魔の山脈(?)でしたっけ?……ここには何の用事できたんですか?」

「え? あー。そりゃ冒険者だし、もちろん魔物のハントだよ。ガルダを始め、モンスターの素材ってのは強いほど高く売れるのさ」

 

 へー。

 

「ま、肉はさすがに臭くて食えたもんじゃないけどね」

「え? でも昨日はー」

「ありゃ、やむを得ずさ。死ぬよりはマシって程度の味だから、好んで食べる奴はいないよ。中には美味い種類もいるけどね」

 

 はー。

 なるほど、魔物の肉はまずいのか。

 

「ってことは、」

「あぁ、主に魔石、それに爪に牙に骨。……あとは皮だな。鳥なんかは羽も嘴も使えるし、毒がある種は毒腺が薬の材料なんかで重宝されるんだよ」

 

 ほほー。

 余すとこなしですなー。……肉以外。

 

「しかし、あんたはそんなことも知らないのかい? 街だったらその辺のガキでも知ってるんだけどねー」

「え、えへへ。そ、そうなんですね」

 

 やば。

 これは探りを入れてきてるなー。

 

「そのー、実はちょっと全然違う国にいたんですよ。最近は王国? とかにいたんですけど、ちょっと色々ありましてー」

 これは本当。

 日本という違う国にいたし、最近というか数日前まで王国にいたのも本当。

「あー……王国にいたのか。あそこはなー」

 

 ん?

 

「……なんかヤバいとこなんです?」

 

 私、興味津々!

 

「んー。ヤバいっちゃヤバいね。住んでたなら知ってるだろうけど、あそこは昔から王家がねー……」

「あー」

 

 それだけでなんとなくわかったわ。

 やっぱ、あのクソおーじ様を始め、ヤバい連中だったんだ。

 

「そこの国の関係者に言うようなことじゃないかもしれないけど、とにかく好戦的でさ。……魔族と戦ってる分にはいいんだけど、その戦闘が落ち着くと、兵士を遊ばせるのが嫌なのか、近隣の国にまでちょっかい出してきてさ──ま、隣近所の国は正直うんざりしてるって話だよ」

 

 はー。

 やってるねー。

 

「……え? でも、その話しぶりからして、ドミトリさん達の国は違うんですか?」

「ん? あー、アタシらの国は、王国から遠いし関係ないってこと。……ま、たまーに戦争してる国には同盟国として、兵士を出したりしてるって聞くけどね」

 

 マジかー……。

 

 この話が本当だとすると、あのクソおーじ様め、いったいどこまで捨てたんだよ!!

 少なくとも、半日かそこらの馬車で行ける距離じゃなさそう。

 てっきり、隣の国とか、国境の外とかに捨てられたのかと思ってたけど……どうも違うッポイ。

 

(……たぶん、転移とかそういうのを使ったんだろうなー)

 

 異世界召喚ができる国だ。

 それくらいの技術はありそう。

 

「はぁ……ムカつく」

「あん?」

 

「なんでもないですー」

 

「ふむ? しかし、なるほどね。──王国方面の出身なら、ちょっと浮世離れしてるのも納得……かな」

 

 嘘つけ。

 目が信じてないっての。……ま、いいけど。

 

「ですです。なので、街についたら、色々教えてくれると助かりまーす」

「あぁ、任せとけ。ギルドのイロハから、金の稼ぎ方──このドミトリさんが手取り足取り教えてやるよ」

 

 どーんと胸を叩くとおっきな体のお~きな胸がブルルンと震える。おー、すげー。

 そして、その瞬間だけ、男どもの目がこっちをむく。……いや、だからって、ついでにこっちも見んな! そーいう視線わかるんだからね!!

 

 ──なくて悪かったわね!

 

「あ、あはは、お手柔らかに」

「おうよ! ま、この山を出られたらだけど…………なッ!!」

 

 あ、遭難中でしたねー。

 ……って、え?

 

「き、急にどうしたんですか?」

 

 なにやら語気荒く、

 おもむろに立ち上がるドミトリさん。

 

「ナガセ。悪いがおしゃべりはここまでだ。どうやらお客さんの御出ましだよ。……お前ら、準備しな!」

「「あいよぉ!」」

 

「……へ? お客さん?」

 

 何の話かと思ったところで、ドミトリさんが突然戦車の上で大剣を抜き放った。

 

「ひゃー!」

 

 こ、こわー!

 そして、剣デッカー!

 

「姉御ぉ、確認しました! 2時方向……ダイアーウルフが5騎です!」

「5騎ぃ? 馬鹿言うな。奴等、連携してくる! たったそんだけのはずがないよ!」

 

 ミルヒ君が双眼鏡を構えた先には、なるほど。ダイアーウルフとやらが群れで疾走していた。

 見た感じ、巨大な犬というかオオカミって感じのやつ。

 

「姐さん、真後ろからも3騎!」

「9時からも1騎きます!」

 

 わ、わーお。

 みんなよく見えるね?! あたしゃ何もわからんよ。

 

「ふんっ。こっちの脚が早いから、三方向からしか回り込めなかったみたいだね!──いいかい、9時方向のはボスだよ。お前たちは雑魚を蹴散らしな!」

 

「「「合点ッ!」」」

 

 お、おぉ?!

 あれよあれよという間に、戦闘態勢を整えていくドミトリさんたち。

 

 まさかこのまま戦闘する気かな。

 

「えっと、私はどうしたら?」

「あん? あー……、アンタはコイツ(・・・)を好きに走らせといてくんな。動いているだけでこっちとしては大助かりだよ」

 

 コイツといってチハたんをコンコンッと叩くドミトリさん。

 どうやら止めてから迎撃する気はないようだ。

 

「り、了解! それならお安い御用です」

 

 走るだけだってさ。

 いくよ、チハたん!

 

「全速前進ッ!」

 

 グォォオオオン!!

 

 

「「「「どわぁっぁあ!?」」」」

 

 あ、最大速度出すっていってなかった。

 まいいや。

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